映画「容疑者S」定まらないジャンルとは?

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写真=トロフィーエンターテインメント

調和の成せない要素たち……アドリブが良かったという評価の意味は

「建築学概論」が2012年春を強打して以来、韓国映画としては初めて「建築学概論」を抜いた映画が「容疑者S(不倫を待つ男)」である。「容疑者S」は“不倫を待つ男”という意味で、不倫専門刑事が偶然殺人事件に巻き込まれるという設定を軸に展開される物語だ。

広報では、パク・シヨンという女優のセクシーさを前面に出しているが、この映画の最大の魅力はスリラーまたは推理劇だ。つまり、無実なのに事件に巻き込まれた刑事が、どのようにして犯人を探すかが最も重要なポイントになるはずである。しかし、映画の広報ではパク・シヨンという女優のセクシーさだけを強調していた。

観客としては、まるで学校に行ったらいきなりテストを受けさせられるような当惑さに似たものを感じたであろう。もちろん映画が基本的に公開しているシノプシス(ドラマや舞台など作品のあらすじ)を見れば予想出来ないわけではないが、いざ知らせなければならない本質は隠しておいて、観客を集めるための素材だけ浮き彫りにした気がする。

次に「容疑者S」にはキム・ジョンテ、イ・グァンスのような、主演ではないにしろ期待出来る人物たちが登場している。観客からは、「パク・ヒスンやキム・ジョンテのような俳優のアドリブで映画が面白かった」という評価もあった。彼らのアドリブが映画のあちこちに存在し、観客を楽しませたという点は否定出来ない。

しかし、そのような役割はあくまでも劇の展開と調和されなければならない。例えるならば、彼らのアドリブは、綺麗だが洋服とは似合わない宝石をつけている感じなのだ。

なぜなら、この映画の本質は観客に本当の犯人が誰なのか推理させ、監督と観客が互いの頭脳で戦うようにしなければならないのだが、(アドリブなどの)コミカルな要素により、観客に“推理しなければならない”という基本的な考えまで忘れさせているためだ。真の助演とは、「建築学概論」のナプトゥク(チョ・ジョンソク)のように、劇の展開にも役立ち、さらに楽しさを与える必要がある。

推理という面から見れば、最初から犯人が誰かと悩みながら観た観客なら、どう考えても犯人は一人しかいない。なぜなら、映画に登場する人物の中で犯人になり得る人物はたった一人しかいないからだ。それなら観客に、どうして、またはどうやって犯人が殺人を犯したか推理させなければならないが、劇の展開だけではそのような推理は事実上不可能だ。

結局は映画の後半で犯人の説明を聞いて疑問が解かれる。犯人は決まりきっており、予想もつかなかったどんでん返しがあるわけでもなく、映画はスリラーまたは推理を基本構造にしてはいるものの、この時点で観客に興奮を与えられないのだ。

基本的な展開でも、映画が終わってからも犯人がなぜ必ず殺人を犯さなければならなかったのかについては説得力が弱く、男性主人公の本当のキャラクターもなんだか曖昧だ。最初は惨めな女たらしの刑事のようだが、物語が進むにつれて純情派にも見える。

結局この映画は、推理、コミック、セクシーという色々な要素をただミックスしただけのように見える。ビビンパはまずい食べ物ではないが、各材料を適切な割合で入れなければならない。その黄金比率を超えて一部の材料を入れ過ぎると、おいしいビビンパは作れないのだ。

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記者 : パク・ソンヨン