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【CLOSE UP】イ・ソンギュン ― “あしながおじさん”のロマンスのその後

10Asia
「聖書にも99匹の羊よりいなくなった1匹の羊が大切だと書いてあるから」

映画「坡州(パジュ)」のラスト、妻の妹ウンモ(ソウ)の誤解で保険詐欺の容疑で捕まったジュンシク(イ・ソンギュン)は、先輩に静かな声で話した。自身の妻であるウンモの姉がウンモの過ちにより死亡したという事実を知らせないようにし、そのすべてを自身が抱えて生きていこうと。

おそらくジュンシクに残ったものは撤去対策委員会の代表として人々から得た人望が全てだったのだろう。彼は、人々の噂を受け入れ、その代わりに愛する人のための選択をする。そんな彼は善良な羊飼いというよりは真のロマンチストだ。99匹の羊を手放し、たった一つの愛を選び、翼を失い誰もが見上げる地位から地面に落ちた、人間味溢れるロマンチストだ。

そしてこの作品を通じ、これまで以上に冷ややかな表情を見せたイ・ソンギュンは、MBC「コーヒープリンス1号店」以降、鎖で縛られてしまった“あしながおじさん”のロマンスのその後を見せてくれる。

現実にいるような良い人、素敵な男

「『コーヒープリンス1号店』が終わり『マイスウィートソウル』に出演したが、なぜ似たような役ばかりをやるのかと言われた。明らかに違う役なのに」

少し不満そうな彼の言葉通り、MBC「ベスト劇場 テルン選手村」のイ・ドンギョンから少しずつ蓄積されたロマンチストのイメージは、「コーヒープリンス1号店」のハンソンを通じてイ・ソンギュンを縛りつけ、人々はそれ以降の作品では以前の作品との違いよりも先に共通点を探すようになった。もちろんこれは、どのような役を演じても、ある種の最大公約数のような平凡さを追求する彼の演技法のためでもある。

「コーヒープリンス1号店」のハンソンが、白馬に乗った王子様に実在しそうな落ち着きを与えることで具体化されたキャラクターだとすれば、「マイスウィートソウル」のヨンスは原作の無色無臭なキャラクターを、血の通った人間らしいキャラクターに完成させた。その二つが作り出す感情の振れ幅は異なるが、その左右を行き来する振れ幅の中に位置づく、常識的な人間の本質は共有する。

しかしこのような演技法や人々の固定観念を別にしても、ヨンスと映画「ロマンチック・アイランド」のジェヒョク、MBC「トリプル」のへユンには共通して繰り返されるファンタジーが存在する。それは女性たちが望んでやまない良い男に対する話ではない。彼が演じたキャラクターは、ある程度の理性と倫理を持ち、自分の立場を守り、ドンギョンを除いたすべてが愛を手に入れるのだ。

歌手Toy(ユ・ヒヨル)の歌「いい人」に、愛の成功を重ね合わせたようなこの描写は、正確に言えば女性よりも男性の欲望を代弁している。いつも毅然としているわけではないものの、彼らは分別のある大人であり、自身の分野で認められた職業人だ。彼らは女性に優しくロマンチックだが、実際は自身が握ったものを相手のために簡単に手放そうとはしない。

イ・ソンギュン、良い人という“鎖”を外す

「坡州(パジュ)」のジュンシクやMBC「パスタ」のヒョヌクが以前の人物と違う点は、単純に性格が異なるためではない。以前、彼は演技で「完璧な男ではなく、完璧になろうとする男のへだたり」を見せてくれたが、最近の彼は不安定なへだたりを見せる大人ではなく、愛のために自身のルールを破ってもがく醜い男を表現している。

ヒョヌクが他の場所でもないキッチンでユギョン(コン・ヒョジン)の目にキスをする時、すでに彼の世界の一部は崩れ落ちている。レストラン・ラスフェラを辞めたのも、すでに決められたプロセスだったのかもしれない。そうして墜落した場所には、真実の愛が残る。たとえ、気に入らないことが起こるたびに怒る性格の悪い男だとしても、自身の師匠に「キッチンで恋愛をしました」と恥ずかしそうに告白し怒られるヒョヌクは、さらに人間味を感じさせる。言うならば、熱くて溢れそうな感情の幅を彼は表現したのだ。

イ・ソンギュン本人は「韓国ドラマというと、男女間の恋愛を見せたがるもの」だとロマンチストなイメージが繰り返される理由を説明するが、愛の無い人生は考えられないというように、劇中で恋愛シーンが描かれないことはない。重要なのは、ドラマが100話ならばその100通りの恋愛の描写を、どのように、またはどれだけ視聴者に共感してもらえるように描き出すかだ。

そして、“あしながおじさん”のイメージが定着したイ・ソンギュンは、自身が蓄積させたものとはまた異なるロマンスを作り出した。そのドキドキ感は、簡単ではない大人の世界、あるいはイ・ソンギュンの世界が崩れるのを見る“快感”でもある。

実際、彼の最新作「ケチなロマンス」は、彼の言葉通り「どんでん返しのようなものがないまま物語が進む」ラブコメディと言う面で、「坡州(パジュ)」や「オッキの映画」のような予想外の展開を見せることはなかった。その代わりに、良い人という“鎖”を外し、イ・ソンギュンという俳優がみみっちくケチな現実の恋愛の中で、どの程度しっかりと“遊ぶ”ことができるのかを確認できるという点ではとても興味深い。

想像上の恋敵への嫉妬を漫画に描くことで解消し、恋愛相手や性経験がないことに安心するチョンベには、いままでイ・ソンギュンが見せた平凡な感情よりもさらに繊細な感情を見せる。そして、このロマンスが感動の結末に向かう時、イ・ソンギュンは99匹の羊ではなく、消えた羊1匹を選ぶのだ。その過程に作為的なものを感じるものの、自身が本当に大切にしてきたものと愛との間で揺れる姿を詰め込んで表現し、最期に愛へとたどり着くイ・ソンギュンの演技は、ストーリーの流れまでも安定させる。

だから、イ・ソンギュンの演じるキャラクターは相変わらずのロマンチスト、いやロマンチストを越えたロマンチストだ。しかしこれは、彼が相変わらず良い俳優だという意味でもある。愛がない世界、ロマンスの無いドラマの時代が来ないうちは。
元記事配信日時 : 
記者 : 
ウィ・グヌ、編集:イ・ジヘ、翻訳:平川留里

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