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Kstyle 14th

Mot イ・イオン「人生と音楽の間でバランスを取ることが僕の課題だ」

10Asia

イ・イオンの音楽はいつも聞き慣れない。もうろうとした旋律に憂鬱を歌ったバンドMotの音楽は、今まで経験したことがなかった感性であり、ソロ1stアルバム「Guilty-Free」はデジタルを前面に出して、様々なノイズまで音楽の一部に溶け込ませた。昨年の12月26日発売された「Realize」もやはり友好的でない。このアルバムは初めてのソロアルバムとしては想像できなかった“アコースティック”を掲げただけでなく、それすら既存のアコースティックのような素朴なサウンドとは程遠い。ただし、初めから今まで変わらなかったことは、イ・イオンが不均質なものの調和の中で一番美しいバランスを見つけるために絶え間なく努力をした人だということだ。そのような理由で、毎回慣れなくても、違和感といったものはまったくないイ・イオンに会った。彼の短い沈黙と戸惑い、小さな微笑がすべて対話の一部だった。まるで彼の音楽が数え切れないほど細分化された音で作られているように。

―昨年の2月、ソロとしての1stアルバム「Guilty-Free」を発売して、10ヶ月ぶりにアコースティックアルバム「Realize」をリリースした。ソロアルバムを発売するまで約4年という時間がかかったことを考えると、今回は準備期間がとても短い。

イ・イオン:ソロとしての1stアルバムの制作は本当に大変だった。4年間アルバムひとつに執着して作業を続けていたら、その間、自分自身が消耗されているように思えた。本来の自分の人生は崩壊しているような気分というか。曲は既に2年前に作られていたけど、さらに気に入るまで編曲をしていたので、さらに2年という時間が経ったのだ。期間をもう少し短くして、アイデアをひねり出す作業ではなく、少し余裕を持った。一種の日課(routine)の概念で作業した。そんな点で今回のアルバムはテスト作業という意味もある。

―そのような理由で最初の発売予定日から3ヶ月しか遅れてないという快挙を達成したと聞いた(笑)

イ・イオン:今までは常に締め切りを守らずに生きてきたけど、それでも今回は公開延長期間を最短期間という記録を立てた。そもそもリリース目標を昨年の9月末にした時に、守れそうだと50%くらい信じていたけど(笑)

「カバー曲は僕のリスナーのゲーム」

―電子音楽からアコースティックに変えたことも、自身を消耗する作業方式に変化を与えようとした手段だったのか。

イ・イオン:明らかにそのような側面もある。Motアルバムやソロ1stアルバムの時は、ほとんどのコンピュータで一人で制作していたので、自分が背負う作業量も大きかったけど、今回はセッションするみんなと少し分担することができた。だけど、それより大きな理由は、アルバムの企画意図からだ。まったく違う方向からアプローチして、イ・イオンの音楽という一貫性を見せようと思った。方法論を変えても、本質や核となる部分は依然として維持されるということを見せるのが最良の方法だと思った。

―確かに「Realize」はアコースティックといった時、一般的に期待する感じもなかったし、今までイ・イオンが続けてきた音楽の基本的な情緒と大きく異ならないので、不思議だった。

イ・イオン:アコースティックはシンプルミニマルなものが良いと言うけど、別の見方をすれば、定形化された先入観でもある。みんなが“Less”と言れば、むしろ“More”の方がより良いものになるかもしれない。だから、わざわざアコースティックギターとピアノ、コントラバス、ドラムといった編成でアルバムの6つのトラックにすべてを取り入れた。このアルバムにはジャジー(jazzy)な雰囲気が漂っているけど、実はジャズでもギターとピアノを一緒に使うケースは珍しい。あえて二つの楽器を一緒に使おうとしたのは、自分なりに自分のアイデンティティを見せられる方法だと思ったからだ。びっしり詰まった雰囲気の中で、お互いがぶつかり合いそうな楽器をよく配置し、調律してよく調和させるという感じで。

―ダフト・パンクの「Harder Better Faster Stronger」をカバーした4番目のトラックの後半部でその部分がはっきりと現れた。それぞれの楽器が最大値の音を出しているのにもかかわらず、それがとても調和しているように聞える。だからどうしてこの曲をアコースティックバージョンにカバーしたのかがさらに気になった。

イ・イオン:原曲が僕がやってきた音楽とは程遠かったので、さらに挑戦する魅力があった。カバーをする時はいつもこのように考える。ある曲がもっている本質があるけど、その曲を違うアーティストが違う方法で表現すると、本質も新しく生まれ変わるようだと。その一方では方法論と対比されながら僕が持つアイデンティティが比較的により際立っていた。

―例えば曲の最も基本的な枠組みだけを残すということのか。

イ・イオン:簡単に言えば、原曲がある場合、メロディとコード、歌詞などリスナーたちが基本的に期待することがある。カバー曲はリスナーの期待を僕がどれだけ満足させ、裏切るのかを、僕とリスナーの共通のルールでゲームをすることだ。そのような遊戯的な側面のせいで、カバー曲の制作はいつも楽しんでいるけど、ただし今回はセッションたちが大変悩まされた。なにしろリズムは早くて、音を一つ一つ細かく埋める編曲だったので、セッションたちに対する配慮はなかった(笑) そのような部分の楽譜を渡す時は、「この部分はたぶん腕が3つ必要だし、そうじゃなかった大変だから、うまい具合に演奏できるように変えてくれ」と言うけど、みんな何とかやり遂げた。だから、僕が要求する限界が少しずつ高くなっているようだ(笑)

―それがまさにイ・イオンが音楽のバランスを取る方法だと思うが、良いバランスとは何なのかに対する正解を考えているのか。

イ・イオン:それは違う。ただバランスに対する感覚を常に学んでいる。より正確に言えば、知っていたことを少しずつ広げているという意味に近いだろう。バランスというのは、楽曲制作だけではなく、生活全般に当てはまる部分でもある。そのような理由で音楽をする前も、バランスを把握することが好きだった。たとえば、会話でも冗談と真剣さの間でバランスを見つけるように。

―ミュージシャンと普通の人間との間でのバランスはどれぐらい取れているのか。

イ・イオン:他の人たちと比べると、まだ未熟だけど、昔の僕に比べたら、現在は結構成長している。ソロとして1stアルバムをリリースした後のインタビューで「音楽に対する強迫観念を和らげて、人生の質を高める方向へ行きたい」と話したが、話しながらも「これはできるかな?」と疑った。だけど、意外に順調だった。今回の作業をしながらもう少し余裕を持ってもいいと分かったのだ。基本的にはセッションたちの才能に任せて、コミュニケーションつ通じて調律していく方法を使ったけど、僕が一つ一つ細かく作業したものとは少し違っても、良い結果を出した。これもそれなりに意味があって、面白い作業だと思う。

―だが、音楽に強迫的にしがみついたこれまでの方式が、傍らではアイデンティティだったのかもしれない。

イ・イオン:それが僕の課題である。人生の質と楽曲制作の間で一方だけを犠牲にしない方向に変えていくことだ。今まで僕が積み重ねてきた作業方式、スキル、コツと開発した楽器プログラムを使わずに、あえて難しい道を選んだ。今は僕が持っているものを、今までうまくやってきたことを十分に生かしながら作業を調律したら、苦痛を和らげるかもしれないと思った。実際にやってみないとどうなるかは分からない。「やっぱり新しいものが必要だ!」と言うかもしれない(笑)

「本当の性格はキツくない方だ」

―よくあなたの音楽に下される“実験的”という評価もそのような理由だと思うが、創作者としてその表現を聞いた時、どんなことを思うのか。基本的に絶賛の意味があるが、一方では“未完”という印象を受けた時、出る言葉でもある。

イ・イオン:よく言われた。僕も僕の音楽を説明しているとよく使う言葉である。だけど、厳密に言えば、僕は実験中の作品を人々に公開しない。実験は一人でして、成功したと思ったものだけを披露する。そうしたら、公開された後、自分のアルバムを聴く時も悔いがほとんど無いのだ。修正する部分があったら、既に制作段階でやり直す過程を経るのだ。でも、あえてそこまでキツく「待ってください、実験的という単語は適切ではないです」と言うのも何だし(笑) その程度なら、適切に意味は通じると思う。

―完璧主義の指向が強くて、そのような部分でも神経質だと思ったけど、違うようだ。

イ・イオン:音楽作業をする時だけ神経質にある。周りの人にも嫌なことが言えないので、Motのときは他のメンバーたちと合奏した時、何か合わなくても、どうしたら傷つけずに話すことができるのか深く悩んだ。ところが、Mot、あるいはイ・イオンという名前をかけた音楽だけに対しては、嫌なことを話すことがあっても、結果がダメになるまで放っておくことはできなかった。作業する間は少し神経質になって、冷静にならなければならないと思ったのだ。それを除くと、本来の性格は昔も今も同じだ。そんなにキツイ性格ではない。

―どうしてなのか。

イ・イオン:子供の時から他人に迷惑をかけずに、礼儀正しく育てられたからだと思う。いつもやりたいこと、望んでいることを表に出す前に、他人のことを先に考えることを学んだ。欲しいものを要求することも簡単ではなかった。例えば、自動鉛筆削りが欲しかったけど、中古の鉛筆削りを貰っても何も言えなかったし、インラインスケートの代わりにフィギュアスケートを貰っても何も言わずに遊んだ(笑) 大人になってお金を稼いだ後は、自分が欲しいものがあったら大胆に買った。ただし、10年前は欲しい音楽装備やプログラムがたくさんあったけど、最近になっては新しく出たものはすべて買うよりは、ちゃんと事前調査をする。「いや!こんな素晴らしいものを開発するとは。想像もしなかったものが出たな」と思う物はチェックして利用するのだ。

―NAVERに書いたアルバムの作業記録によると、人々があまり使わない音楽のソフトウェアも使っていると聞いた。

イ・イオン:世界で利用者があまりないソフトウェアを使っているけど、たまにバグが発生する。そういう時は僕がそのバグのリポートを送らないと、永遠に変わらないと思ったので、いちいち英訳して送った(笑) とにかく僕も仕事を続けるためには、直さなければならない状況なので。見て見ぬふりをしても、それが自然に解決できる問題でもないし。

―それを中断しといたら、他のことができない性格なのでは(笑)

イ・イオン:そうだ。それがなかなかできない。無謀にもずっとしがみついている。例えば試験を受ける時、難しい問題と簡単な問題が混ざっている場合、簡単な問題から解くべきなのに、難しい問題を解決しないと気がすまない性格だ。だから、学校生活が常に大変だった。でも、大学院(韓国芸術総合学校ミュージックテクノロジー課程)は本当に面白かった。勉強ってこんなに面白いんだと初めて分かった。

―音楽的な部分において、どんな影響を受けたのか。

イ・イオン:ソロとしても1stアルバムでデジタルサウンドを前面に出せたのは、大学院に通ったおかげだ。音楽的な視野が広くなったのだ。Motのアルバムを制作した時は、アナログに対する執着が大きかった。デジタルで作業した音さえもアナログの雰囲気を出そうと最善を尽くしたけど、今は少し変わった。デジタルとアナログはそれぞれの長所と美しさを持っていることを受け入れるようになった。Motのアルバムを制作するときは、またアナログな色彩を出すため努力するだろうけど、それはスタイルの違いに過ぎない。

―それでは、Motの新しいアルバムは1、2枚目のアルバムの延長線上にあると思ってもいいのか。

イ・インオン:そうだ。イ・イオンという名前でアルバムを出した理由も、Motが持っている従来のスタイルやアイデンティティを壊したくなかったからだ。変化ということでいきなりそれらを捨てるのは良くないいと思う。たぶん、Motの3枚目のアルバムはMotの情緒をそのまま繋いでいくものになると思う。「Realize」を作った経験をもとにし、ある部分では僕がもう少し介入し、ある部分はコミュニケーションを取りながら合わせていく風に、僕なりの作業ソリューションを作っていくと思う。もちろん、これからも他人に完全に任して「好きなように作ってください」というよりは、変わらずいちいち干渉すると思う。でも、それは両方の長所をどうにかすべて持っていくための方法を考案していく過程だと思う。

―アルバムはいつ頃、完成できると予想しているのか(笑)

イ・イオン:早ければ今年の末かな? 本当は……今年末は少し無理だと思う。冷静に言うと来年になるだろうけど、今年の末と答えなければならないと思ったのでそう言った(笑) そう言っておくことで、もし作業が遅れたとしても来年の初めぐらいには完成できるから。
元記事配信日時 : 
記者 : 
文、インタビュー : ファン・ヒョジン、インタビュー : キム・ヒョジン、写真 : チェ・ギウォン、翻訳 : チェ・ユンジョン

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