キム・シフ ― 長く暗いトンネルを抜けた青年

「ジュノは何かナンパしようとしたのではなくて、ただ自分が好きな音楽をナミに聞かせたい気持ちだけだったと思います。私は純粋でロマンティックだと思ったんですが、みんな手足が縮むほど恥ずかしかったそうですね? ハハ」
はにかんで投げかける冗談が魅力的な青年

「親しくなった女優さんは本当にただのひとりもいません。監督から『あっちにガールフレンド候補が多いから、行って声かけてみなさい』と言われましたが、ふぅ…声はかけられませんでしたよ。女優さんたちに囲まれていたのではなくて、女優さんたちはここ、私は遠くに、こうやって離れて撮影したのです」
しかし口を閉ざしていれば、彼を包みこむ寂しい空気のせいか、握手を求めることさえ慎重な彼に先に手を差し伸べに行くのは相手も同じだったかもしれない。騒がしい電車の旅でもひとりで窓ガラスにもたれて、ギターを弾いていたジュノのように。しかし、もう少し言葉を交わしてみると、キム・シフは「大学のMT(メンバーシップトレーニング)に行ってみたい理由は……うん、とりあえずお酒をたくさん飲むんでしょう? ふふ」と、数秒の静寂の後、はにかんで投げかける冗談が魅力的な青年でもある。
「男は30歳からですって? ハハ」

「たくさん迷って懐疑心も抱きましたが、それでも演技をしたいという気持ちは最後まで失っていなかったと思います」
限りなく続く空白期間が不安だったキム・シフは、ひとりでバスに乗って映画のオーディションを受けに行き始めた。「もしも映画会社から電話が来たらと思って」携帯番号も気軽に変えられず、「俳優が自ら言いづらい」部分もひとりで解決しなければならなかった。そうするほど「一生やっても飽きないはず」の演技への切実さは増すばかりで、その真心は通じた。マネージャーなしで、ひとりで全てやり遂げた「サニー 永遠の仲間たち」がその証拠だ。
そうやって遠回りをして、かわいい少年はお兄ちゃんになって戻ってきた。最近ようやく新しい巣を見つけ、次の作品「マイウェイ 12,000キロの真実」が昨年下半期に公開された。8年という長い期間に対してあまりたくさんの俳優活動はできなかったキム・シフを、これからは頻繁に、絶えず見ることができそうだ。さらにうれしいニュースがある。24歳の青年の俳優人生はまだ本格的に始まっていないと言うのだ。
「男は30歳からだそうですね? ハハ」
幕が開くまで、まだ6年も残っている。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- イ・ガオン、翻訳:ハン・アルム、写真:イ・ジンヒョク、編集:イ・ジヘ
topics