ダークホースとなった映画「折れた矢」人々の心を掴んだ3つの秘訣
「なんで片付けにこんな時間かかるんだ?」
今月21日、ソウル広津区(クァンジング)ロッテシネマ建大入口のスクリーン4の前で「折れた矢」のチケットを手にした30代の男性観客が、閉じたドアに向かって吐き出した。隣では「ねえ、これが石弓らしいよ」という20代女性の声も聞こえる。中年の観客が多いだろうという予想は外れ、この日満席となった「折れた矢」の映画館には20代の観客が70%超えた。
「JSA」「その時、その人々」など敏感な政治ネタの映画を数本製作してきたミョンフィルムのマーケティングノウハウと、憎らしいほどヒット作に対する勘が鋭い配給会社NEWの高い戦略が今回も功を奏したという評価もある。
今月18日に公開された「折れた矢」は、23日の一日だけで19万4367人(映画振興委員会集計)を動員し、累積観客数67万2207人を記録した。1位の「ダンシング・クィーン」と比べても引けをとらない数字だ。
損益分岐点(50万人)をはるかに越え、このままの勢いで行けば100万人に届くのも時間の問題だ。昨年10月、釜山国際映画祭で初めて公開されたときも、これほどのブームは誰も予想することができなかった。「折れた矢」はどのようにして、人々の心を掴んだのだろうか。
「折れた矢」は、それらしい嘘よりも、信じがたい実際の事件に関心を持つ20~30代の観客をすぐとりこにした。誰もが終わった事件だと思っていた成均館(ソンギュングァン)大学教授の裁判長テロ事件。しかし、事件記録はねつ造され、裁判所が結託して司法の権威に挑戦した大学教授を懲戒した。「折れた矢」はその告発に注目した。
急いで映画を見たアーリーアダプターのSNSも「折れた矢」のヒットの起爆剤としての役割を果たした。特に、権威主義と腐敗した既得権を告発する映画とSNSは火と油のように、燃え上がる傾向がある。
昨年秋、光州(クァンジュ)のある障がい児特殊学校で起きた人面獣心な犯罪を描いた「トガニ 幼き瞳の告発」もそうだった。「私たちはこの事件を、世に知らせようとしている」という「トガニ 幼き瞳の告発」のキャッチコピーと「この男の憤りに注目せよ」という「折れた矢」のキャッチコピーには悲壮さと背筋が寒くなるようなオーラを上手く表現したという共通点がある。
家でカッピング(背中などに真空状態になったカップをつけて吸引し、滞った血液やリンパ液の流れをスムーズにさせる東洋医学療法)をしていたパク弁護士が妻から浮気を疑われると、カッピングをベランダーの外に放り投げた。下で悲鳴が上がり「早く電気消して。証拠隠滅!」と叫ぶシーンでも爆笑が起きた。「折れた矢」はこのように、法廷映画の最大の弱点ともいえる退屈さを絶妙に避ける。ベテラン監督の貫禄が輝く瞬間だ。
アン・ソンギの演技は言うまでもなく、パク・ウォンサンやキム・ジホの演技も平均以上だった。もっとも圧倒的だったのは裁判長役を演じたイ・ギョンヨンとムン・ソングンだった。イ・ギョンヨンは温厚かつ権威的な裁判長を演じ、キム教授と鋭くにらみ合って緊張感を高めた。極めて保守的に描かれたムン・ソングンも被告と弁護士が主張する証人申請やワイシャツの血痕鑑定申請をすべて棄却し、冷たく神経質な裁判長の姿を完璧に演じた。
2人は主人公と対立する敵役の演技がどれほど大事で、劇を生かすかを示す教科書のような名演技を披露し、映画の雰囲気を盛り上げた。彼らの演技力のおかげで、「イ裁判長、正直言って、裁判したくないんでしょ?」「なんで話をそらすんですか」「検事、裁判長を職務遺棄で告発します」と挑発的に発言するキム教授の台詞が胸に刺さったのだ。
味方だと思ったマスコミがいつの間にかこっそり逃げ出す様子や、キム教授が刑務所で性的な暴行を受けるという信じがたいシーンも、リアリティを生かし観客の共感を引き出した。「折れた矢」は劇中の台詞のように、「純真なダビデと野蛮なゴリアテの戦い」を冷静な視線で告発し、観客をキム教授の味方にした。
今月21日、ソウル広津区(クァンジング)ロッテシネマ建大入口のスクリーン4の前で「折れた矢」のチケットを手にした30代の男性観客が、閉じたドアに向かって吐き出した。隣では「ねえ、これが石弓らしいよ」という20代女性の声も聞こえる。中年の観客が多いだろうという予想は外れ、この日満席となった「折れた矢」の映画館には20代の観客が70%超えた。
アーリーアダプター、SNSがヒットを呼ぶ
問題作「折れた矢」(監督:チョン・ジヨン、制作:アウラピクチャーズ)が正月連休に公開される映画のうち、ダークホースとして浮上し、映画界が再び揺れている。「昨年の『神弓 KAMIYUMI』に続き、今度は『(折れた)矢』か」という冗談交じりの話や「最近、映画がヒットする基準がまったく分からなくなった」という嘆きすら出ている。「JSA」「その時、その人々」など敏感な政治ネタの映画を数本製作してきたミョンフィルムのマーケティングノウハウと、憎らしいほどヒット作に対する勘が鋭い配給会社NEWの高い戦略が今回も功を奏したという評価もある。
今月18日に公開された「折れた矢」は、23日の一日だけで19万4367人(映画振興委員会集計)を動員し、累積観客数67万2207人を記録した。1位の「ダンシング・クィーン」と比べても引けをとらない数字だ。
損益分岐点(50万人)をはるかに越え、このままの勢いで行けば100万人に届くのも時間の問題だ。昨年10月、釜山国際映画祭で初めて公開されたときも、これほどのブームは誰も予想することができなかった。「折れた矢」はどのようにして、人々の心を掴んだのだろうか。
「折れた矢」は、それらしい嘘よりも、信じがたい実際の事件に関心を持つ20~30代の観客をすぐとりこにした。誰もが終わった事件だと思っていた成均館(ソンギュングァン)大学教授の裁判長テロ事件。しかし、事件記録はねつ造され、裁判所が結託して司法の権威に挑戦した大学教授を懲戒した。「折れた矢」はその告発に注目した。
急いで映画を見たアーリーアダプターのSNSも「折れた矢」のヒットの起爆剤としての役割を果たした。特に、権威主義と腐敗した既得権を告発する映画とSNSは火と油のように、燃え上がる傾向がある。
昨年秋、光州(クァンジュ)のある障がい児特殊学校で起きた人面獣心な犯罪を描いた「トガニ 幼き瞳の告発」もそうだった。「私たちはこの事件を、世に知らせようとしている」という「トガニ 幼き瞳の告発」のキャッチコピーと「この男の憤りに注目せよ」という「折れた矢」のキャッチコピーには悲壮さと背筋が寒くなるようなオーラを上手く表現したという共通点がある。
裁判所をあざ笑う、骨のある笑い
「折れた矢」がシリアスな内容だけで埋め尽くされていれば、これほど多くの人に口コミで広がらなかったかもしれない。しかし、映画は賢く、ところどころに笑いを用意して観客を待ち受けた。大部分の司法を嘲弄し、世の中を批判する“骨のある”笑いだった。パク弁護士(パク・ウォンサン)が専門家である自分を信じてほしいというと、キム教授(アン・ソンギ)が呆れたような表情で「韓国に専門家なんてどこにいますか? 詐欺師以外に」と話したり、裁判中、裁判長に「話を切らないでください」と話す部分も笑いが起きた。家でカッピング(背中などに真空状態になったカップをつけて吸引し、滞った血液やリンパ液の流れをスムーズにさせる東洋医学療法)をしていたパク弁護士が妻から浮気を疑われると、カッピングをベランダーの外に放り投げた。下で悲鳴が上がり「早く電気消して。証拠隠滅!」と叫ぶシーンでも爆笑が起きた。「折れた矢」はこのように、法廷映画の最大の弱点ともいえる退屈さを絶妙に避ける。ベテラン監督の貫禄が輝く瞬間だ。
アン・ソンギの演技は言うまでもなく、パク・ウォンサンやキム・ジホの演技も平均以上だった。もっとも圧倒的だったのは裁判長役を演じたイ・ギョンヨンとムン・ソングンだった。イ・ギョンヨンは温厚かつ権威的な裁判長を演じ、キム教授と鋭くにらみ合って緊張感を高めた。極めて保守的に描かれたムン・ソングンも被告と弁護士が主張する証人申請やワイシャツの血痕鑑定申請をすべて棄却し、冷たく神経質な裁判長の姿を完璧に演じた。
2人は主人公と対立する敵役の演技がどれほど大事で、劇を生かすかを示す教科書のような名演技を披露し、映画の雰囲気を盛り上げた。彼らの演技力のおかげで、「イ裁判長、正直言って、裁判したくないんでしょ?」「なんで話をそらすんですか」「検事、裁判長を職務遺棄で告発します」と挑発的に発言するキム教授の台詞が胸に刺さったのだ。
味方だと思ったマスコミがいつの間にかこっそり逃げ出す様子や、キム教授が刑務所で性的な暴行を受けるという信じがたいシーンも、リアリティを生かし観客の共感を引き出した。「折れた矢」は劇中の台詞のように、「純真なダビデと野蛮なゴリアテの戦い」を冷静な視線で告発し、観客をキム教授の味方にした。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- キム・ボムソク
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