「殺人の告白」チョン・ジェヨンの探求生活…“演技をしなければ何をして生きていくのだろう”
馬鹿正直と緻密さの間における俳優チョン・ジェヨン
根気があり馬鹿正直なところがあった。俳優のチョン・ジェヨンがこれまで選んできた作品も、実際の彼の姿とさほど変わらないように見えた。多少野性的な容貌で、これまで悪役や刑事役を多く演じてきたと勘違いしやすいが、意外にそうでもない。映画「殺人の告白」で刑事役は初めてで、悪役も「黒く濁る村」以外にはほとんど演じていなかった。荒々しい男の魅力は、これまで結構見せたきたのだが。チョン・ジェヨンはキャラクター中心というよりは、作品中心の俳優と言える。どの作品であれ、その中で自身だけのカラーを出す俳優だという意味だ。映画「殺人の告白」は今人気を得ているが、彼の前作「カウントダウン」は惨敗だった。チョン・ジェヨンは、「ヒットしないと思いましたが、そこまでになるとは思いませんでした。“メンブン”(メンタルが崩壊するほど慌てること)でした」と振り返っているが、作品性だけには今も自信を持っている。
チョン・ジェヨンの“持久力”が目立った「私は殺人犯だ」
「私は殺人犯だ」で彼は時効が成立した後、突然社会に戻ってきた連続殺人犯を追う捜査1課の刑事に扮した。最初のシーンから走って倒れ、殴って殴られた。単純なアクションではなく、連続殺人犯にまつわるどんでん返しが面白いスリラー映画でもある。「これまで僕が演じた役の中で一番頭がよくて勝負事が上手な役でした。時効成立後に登場した犯人がいましたよね。愛する人がそいつのせいで死んだのに、法律の審判から逃れたのでどれほど無念だったことでしょう。刑事としてできるすべてをかけて勝負を始めたわけです。映画のタイトルが序盤では見えないですね。そこまでの映像で計画を立てる姿を見せているのです」
警察大学出身のエリートだが、ものすごいアクションをこなさなければならなかった。車の上に這い上がったり、狭い路地のあちこちを走って転がった。本当に大変な撮影だったはずだが、チョン・ジェヨンは「精神的には大丈夫でしたが、身体が大変でした」と笑ってみせた。今回のアクションのために特に運動をしたわけではないという。すでに前作で数回もアクション演技をしていたし、そのときから鍛えてきた体力で勝負したという。
「演出を担当したチョン・ビョンギル監督が『私たちはアクション俳優だ』を以前発表していますね。それで、アクションを適当にしたくなかったです。武術監督とも友達で。映画の半分がアクションでした。『殺人の追憶』と比較する方も多いですが、それに対するオマージュというよりは、想像力に基づいた作品だと見ればいいと思います。
普通の人ではないような感じですね。監督の立場では、長い間捜査網から逃げ続けてきただけに犯人は頭もいいし、人から人気を得られるイケメンで想像もできないほどの悪人を表現したかったのでしょう」
写真=多細胞クラブ
特定ジャンルにこだわらない!見た目と違ってSFが好き?
強くて荒々しいキャラクターの中で「小さな恋のステップ」という映画が目を引く。俳優チョン・ジェヨンのまた別の真価を知らせた作品で、恋愛映画だった。スリラーやアクションドラマを中心にしてきたと見られるが、コメディ映画も多い。どんな服を着ても自身の個性に合わせる俳優とは、こういうことなのだろうか。「特定ジャンルへのこだわりやジャンルに対する特別な哲学はありません。あえて好きなものを言うならば、観客の立場としては男の映画が好きです。また、SFとパニック映画がとても好きです。でも、韓国では珍しいですね。年に1、2本出るか出ないかくらいですが、人気がないと残念な気がします」
最近見たSF映画を聞くとリドリー・スコット監督の「プロメテウス」を挙げた。映画「エイリアン」シリーズを誕生させたあの巨匠監督のことだ。だが、チョン・ジェヨンは「期待したが、失望した。多彩なストーリーや哲学的な要素を期待したが、曖昧だった」とそれなりにマニアらしい分析をした。
一緒に仕事をする監督についてもこだわりはなかった。チャン・ジン監督をはじめ、親しいベテラン監督とも仕事をするが、新人監督とも作品をしてきた。作品の選択においても監督の名前より、面白いストーリーなのかを見るチョン・ジェヨンだけの基準があった。
普段は何もしない?作品をするときがむしろ元気だ
鍛えた身体に強い体力を持つ彼であるだけに、普段暇なときも活動的なのではないかと思った。だが、彼は何もしないと言った。家でテレビや映画を見ることを楽しむという。これは、典型的な“会社員の週末モード”ではないか。面白いかどうかが彼には動機づけの重要な基準になるという。「運動は、特にしません。地道にしなければならないけれど、面白くない!何かを習得するのが遅いほうで、他人に遅れを取るからまたつまらなくなって(笑) ところで、実はアクションは身体ではなく、感情でするんです。アクション自体は、そのときそのとき練習しながら適当にすればいいけれど、感情で説得させるわけですね。必要な新しい技は、撮影する度に習っていきます。そのため、かえって撮影をしているときの方が身体が元気です(笑)
仕事を休むときは、考え事も休みます。テレビを見たり、映画を観てもただ感じるだけです。映画出演でインタビューを受けながら自分の考えを整理します。おかしいのかな。普段は考えずにいますが、質問を受けてから、それから考えますね。今回が1年ぶりのインタビューですが、言ってみれば『昨年と考えが変わったのかな』と振り返ってみるきっかけにもなります(笑)
もっと若いときは正解を見つけ出そうとする情熱がありましたが、今は何か閉じ込めておくことは悪いと思います。考えの整理も、科学者でも、哲学者でもないので何かを確立する必要はありません。理論的に何かを確立する必要がない職業ですので、ますます固定観念を捨てるようです。そうしないと速く吸収できませんので。
新しい文化、変化する社会を吸収しなければなりませんが、固定観念を持っていけば衝突します。私たちは、今変化する社会を映画という現象で見ていますので。コメディも流れが変わりますね。前は笑えたことが今は笑えないとか」
まったく執着がないように見えるが、実際には変化に敏感で緻密に反応する俳優がチョン・ジェヨンだった。「演技さえしなければ何をしながら生きていくのだろうか。上手にやれなくてもやらなくては!」と人が良さそうに笑ってみせる彼の姿から、作品ごとに激しく悩む彼の姿を覗き見ることができた。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- イ・ジョンミン、イ・ソンピル、写真 : イ・ジョンミン
topics