
(C)︎ 2025 Disney and its related entities
韓国ドラマがお得意なのは、胸キュンばかりではない。
古くは日本でも大ヒットした『シュリ』(映画だが)や『砂時計』、近年であれば『愛の不時着』や『ミスター・サンシャイン』。胸がキュッと締めつけられ、心が激しく揺さぶられるような、危険と背中合わせの“切な”ロマンスを定期的に世に放ってくるのだから油断ならない。
そんな“心揺さぶり系”ロマンスの名品が新たに誕生の予感。ディズニー公式動画配信サービスDisney+(ディズニープラス)で、9月10日より独占配信中の『北極星』がそれだ。
>>『北極星』の視聴はこちら 韓ドラが贈る危険と背中合わせの“切な”ロマンス

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
主人公は、大統領候補の妻で元国連大使のソ・ムンジュ(チョン・ジヒョン)。
美しく有能だがどこか寂しさを感じさせる彼女は、ある日、目の前で夫を射殺され、その場に偶然居合わせた謎の男ペク・サンホ(カン・ドンウォン)に窮地を救われる。緊迫した空気の中、視線と視線が重なる2人。なぜ彼女の夫は殺されたのか? 助けてくれた男は何者なのか?

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
物語は序盤、大統領選をめぐる権力構図や北朝鮮との緊張関係、米国の介入、そしてムンジュの夫の死をめぐる憶測と陰謀……と、スリリングに展開し、息もつかせない。映画さながらの重厚感、壮大でありながら緻密なサスペンスにぐいぐい惹き込まれていくが、それだけでは終わらない。夫が守ろうとしたものを守るべくムンジュ自ら大統領選への出馬を決意。その途端、自身も何者かに命を狙われることに。
ここで出てくるのが、“守る男”サンホだ。
沼落ち必至!カン・ドンウォンが見せる“現代の守る男”像

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
例えば、第1話、ムンジュを警護するよう依頼を受けたサンホは、影から彼女を監視する。夫の死後、涙も見せず一心に真実を追う彼女を「強い」と評しつつ、その“孤独の影”を見逃さない。ジャケットを落としたことにも気づかず机に向かう彼女のそばを一度は通り過ぎるも、つい引き返し、そっとジャケットを椅子にかけてやる。知らぬ間に“守りたい”気持ちが芽生えていくサンホに、「これはもしや……」と期待してしまう。
あるいは、バス停で再び出会う場面。ムンジュが尾行されていることに気づくや、サンホは静かに彼女の手を引き、山中へと導く。暗がりで周りが見えず取り乱すムンジュに彼は促す。「目を閉じて。もう一度開いて」。その言葉に従い目を開いた瞬間、ムンジュの視界は明るくなり、安堵するのだ。決して慌てず、騒がず、落ち着いて彼女に安心を与えるこの男。正体は不明でも、気にならざるを得ない。

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
信頼する神父のもとを訪ねた際、2人は三度遭遇する。その場に漂う危険を感じ取ったサンホは、黙ってドアを閉め彼女を部屋に隠すと、襲いかかる怪しい男を見事な身のこなしで打ち倒す。危険が降り注ぐとき、なぜいつも彼は現れるのか。正体を疑いつつ後に付いてくるムンジュに、サンホはこう言う。「僕を危険だと思ったら、一緒に来ないはず」。その穏やかな口調と澄んだ目に触れたら、“信じる”という選択しかない。
“守る男”誕生の決定的瞬間は、第3話でやってくる。

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
ムンジュの座席に爆弾が仕掛けられる絶体絶命の危機に、サンホが駆けつける場面だ。サンホは彼女の頬に触れ、こう話す。「こっちを見て。僕は緊迫した任務ほどゆっくり行います」。恐怖のあまり呼吸が乱れるムンジュの隣に徐ろに腰かけると、手を握り、自分の言うとおりにするよう穏やかに諭す。そして、ゆっくりと彼女の体を自分の腿に乗せ、互いの体を重ねるように座席を入れ替えるサンホ。
体温や息遣い、鼓動までが伝わる密着にドキドキさせられる一方、緊迫した状況に息をのむ。2人の関係性の行方を暗示させるようで、目が離せない。

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
さらに、極めつけは3話のラストだ。サンホはムンジュに柔らかな笑みを浮かべながらこう伝える。
「雇ってください」「あなたの警護は僕以外できません」
……完落ち。華麗なアクションもさることながら、物理的に守る以上に、精神的に彼女を守り包み込むサンホの言葉、一挙手一投足にシビレる。謎に包まれながら、無垢な瞳をもつ男(ただし、危険と向き合うときは恐ろしく鋭い眼差しとなる)に、カン・ドンウォンがあまりにもハマっていて、幾度となく心を射抜かれてしまう。

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
『愛の不時着』のリ・ジョンヒョク(ヒョンビン)や『THE K2~キミだけを守りたい~』のキム・ジェハ(チ・チャンウク)、『太陽の末裔 Love Under The Sun』のユ・シジン(ソン・ジュンギ)に並ぶ、魅惑の“守る男”の誕生と言えよう。
ちなみに、屋上から銃を構え、彼女の演説を見守るサンホが、彼女が口にしたある言葉に微かに笑みを浮かべる場面がある。銃口の先で微笑む彼女と視線が交わり、はっとするサンホ。ストイックで謎多き男の心の動き。この先が気になって仕方ない。
痛快な頭脳戦、時には涙も…チョン・ジヒョン演じる“孤高のヒロイン”

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
守る男ばかりではない。命をかけても守らなくてはならないと思わせるヒロイン、ムンジュの凛として美しく、なのにどこか悲しげなオーラも観る者を惹きつける。何より、国連大使として、大統領候補として、大衆の前で演説する彼女のカリスマ性たるや。大統領選への出馬をめぐり、彼女の義母オクソン(イ・ミスク)はこう語る。「民衆はあなたに賭ける。勝つためではなく、一緒に滅んでもいいという気持ちで」。まさに、ジャンヌ・ダルク。

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
一方で、信頼していた人に裏切られ、悔し涙を流しつつも、そのまま引き下がったりしない。義弟の卑劣な脅しにも動じず、その弱点を冷静に攻めていくムンジュ。平和を望み、真っ直ぐで清らかな心をもつ彼女が、理不尽な権力に反旗を翻し、大胆かつクールに追い込んでいく姿がまた痛快で、彼女になら一票入れる! と思うほどだ。

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
“しなやかで強い女性”の象徴として描かれるムンジュだが、サンホだけは彼女の孤独を感じている。例えば、劇中、危険を回避した後に交わす2人のやり取りだ。「早くあなたを待っている人のもとへ」そう話すサンホに、ムンジュは返す。「自分を待っている人はいない」と。多くの人に指示され、能力もある彼女を覆う寂しさ、孤独の正体はなんだろう。美しくもタフなヒロイン像を体現してきたチョン・ジヒョンの抑制の利いた演技は、本作の世界観を作り上げている。

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
そんなムンジュとサンホが出会ったら……。かたや脱北者であり国籍不明のサンホ、かたや米国で貧しく育ったムンジュ。どこか似たものをもつ2人が、心を近づけていくのに不思議はない。しかも、演者はカン・ドンウォンとチョン・ジヒョン、韓国を代表するトップ俳優であり、国宝級の美男美女カップルだ。スター性と実力により同時代を牽引してきた2人は、クールで謎めいた雰囲気をまとい、孤高に咲く華のような存在感を放つ。サンホとムンジュ同様に重なるものがある彼らが、画面に並び、視線を交わすだけで、得も言われぬケミストリーが生まれるのだ。
オ・ジョンセにユ・ジェミョンも!脇を固める豪華俳優陣

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
チョン・ジヒョンとカン・ドンウォンが、ロマンスのケミストリーで魅せるとすれば、サスペンスを担う脇役陣のヒリヒリした心理戦も見逃せない。
その筆頭が、現大統領チェ・ギョンシン役の、名優キム・ヘスク。圧倒的存在感でムンジュの前に立ちはだかり、出てくるだけでこちらまで緊張感が走るほどだ。

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
韓国屈指の海運物流企業の会長イム・オクソンを演じるのは、『涙の女王』のイ・ミスク。息子を大統領にするという野心を抱き、その死後は嫁ムンジュを大統領にすべく政財界の大物たちを手玉に取る。そのしたたかさは、もはや小気味いい。チョン・ジヒョンを軸に、3人のカリスマ女優たちの演技バトルは圧巻だ。

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
さらに、サンホを危険視する国家情報院院長ユ・ウナクには、『梨泰院クラス』『ヴィンチェンツォ』のユ・ジェミョン。ムンジュの義弟で兄にコンプレックスを抱く検事チャン・ジュンサンをオ・ジョンセと、善にも悪にも振れる演技巧者たちが暗躍を繰り広げ、ハラハラの連続だ。

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
また、『おつかれさま』でも深い味わいを見せたパク・ヘジュンが、大きな謎を残して殺されたムンジュの夫チャン・ジュニク役を務め、物語の発端となっている点も見逃せない。
『涙の女王』監督が手掛ける新境地!予測不可能なストーリーから目が離せない

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
本作を推すもう1つの理由が、緻密でドラマチックなストーリーと映像クオリティだ。
それもそのはず。演出を手掛けるのは、共同監督した『愛の不時着』をはじめ『ヴィンチェンツォ』『シスターズ』『涙の女王』など、キャラクターの心理を映し出す美しい映像に定評があるキム・ヒウォン監督。女性監督ならではの繊細な感性は本作でも随所に光る。

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
武術監督として数多くの映画をヒットに導き、『犯罪都市 PUNISHMENT』では監督も務めたホ・ミョンヘンが共同演出に加わり、アクションシーンは保証済み。脚本は、『王の男』から『別れる決心』『シスターズ』まで、映画・ドラマで多彩なヒット作を生み出してきたチョン・ソギョンが参加。ロマンスとサスペンス、双方の要素を魅せる手腕をもつ、まさに最強の布陣だ。

(C)︎ 2025 Disney and its related entities
最後に、個人的推しポイントを記させてほしい。
それは、ムンジュとサンホの“視線と視線の重なり”だ。最初の事件があった教会で、再び出会うバス停で、爆弾が仕掛けられた列車の中と外で、取り調べを受けるために訪れた警察で、視線の先に相手がいて、互いに視線でつながる。そこに浮かび上がる2人だけの世界が、切なく、美しい。ラスト、2人の視線の先にあるのは誰(あるいは何)なのか。ドキドキしながら見守りたい。
(執筆:高橋尚子)
■配信情報
『北極星』
Disney+(ディズニープラス)スターで字幕・吹替版 独占配信中
全9話/初回3話配信、以降毎週水曜日2話ずつ配信
>>『北極星』の視聴はこちら
(C) 2025 Disney and its related entities
【ストーリー】
南北朝鮮の平和的統一を願う大規模な集会の最中、大統領候補が射殺された。妻で外交官のムンジュは、夫の遺志を継ぎ、自らが政党の大統領候補として出馬を決意する。そして夫の死の真相を追い始めるが、やがて自身も何者かに命を狙われることに……その危機を救ったのは、脱北者の男・サンホだった。ムンジュは彼をボディガードとして雇うが、サンホは“ある秘密”を抱えていた。
【キャスト】
チョン・ジヒョン『青い海の伝説』『星から来たあなた』『猟奇的な彼女』
カン・ドンウォン『ベイビー・ブローカー』『新感染半島 ファイナル・ステージ』
【スタッフ】
監督:キム・ヒウォン『涙の女王』 『シスターズ』『ヴィンチェンツォ』『愛の不時着』、ホ・ミョンヘン『犯罪都市 PUNISHMENT』
脚本:チョン・ソギョン『シスターズ』『別れる決心』
■関連リンク
・Disney+公式HP