「ファントム」現実にも存在している“ソンヨン高校の怪談”

「踏まれたくなければ踏んで立ち上がれ!」入試地獄は現在進行形
SBS水木ドラマ「ファントム」で視聴者の胆を冷やした、ソンヨン高校連続殺人事件の犯人は、同じ学校の女子生徒であることが明らかになった。校内の生徒を次々に死へと追いやり、彼らに送ったメールを跡形もなく削除するなど、計画的に殺人を行ったチョン・ミヨンは、自身の犯行が明らかになった瞬間も、罪悪感を感じていないかのように見える。それどころか「あの子たちは自ら死んだ」と訴える。
普段から、負けず嫌いな性格から来る強いストレスのため、異常な行動を取っていたチョン・ミヨン。程度の差こそあれ、ソンヨン高校のほとんどの生徒は、自分の成績や順位によって深刻な強迫性障害の症状を見せていた。同級生が相次いで死んだにもかかわらず、友の死を悲しむ生徒は見当たらない。彼らの関心事は“試験問題の流出”によって幸運にも全校1位となる誰かである。何人かの生徒が試験がダメだったと泣きわめいている中でも、他の生徒はうるさくて勉強ができないと声を上げる。
生徒たちが連続的に殺害される事件があったにもかかわらず、学校は試験のスケジュールを強行する。そして、試験問題の流出や“伝説の答案の怪談”で不安にかられている生徒たちに、ソンヨン高校の教師は「踏まれたくなければ踏んで立ち上がれ!自分を除くすべてが競争者だ。よそ見をすると負け犬になるんだ」と喚起する。ソンヨン高校に入学した瞬間から耳にたこができるくらいその言葉を聞いてきた生徒たちは、ついに友を殺した後も「踏まれたくなければ踏んで立ち上がれと言ったじゃないか。負けたら後がないと言ったじゃないか」と言いながら、自身に踏まれた同級生が無能力であると責める。

映画「バトル・ロワイアル」さながらのソンヨン高校
1位だけが生き残って、残りは滅びる韓国最高の名門ソンヨン高校の実態は、映画「バトル・ロワイアル」と重なる。生徒たちは生き延びるために、命をかけて銃声無き戦場に飛び込み、競争者を制して生き残ることだけを強要された。勝者には1学期1千万ウォン(約70万)の授業料を免除してもらえる奨学金と名門大学への入学が保証されるが、ほとんどの敗者には競争で負けたという敗北感が残るだけである。ソンヨン高校では誰一人として生徒たちに“共生”を教えたりはしない。ひいては、目の前に迫ってきた期末試験を理由に、同級生の葬式にも行かせない。すでに学校側によって自分を除くすべてが競争者だと洗脳された生徒たちは、誰が死のうと期末試験で隣の誰かを抜いて、良い成績を取ることにしか関心がない。
多少は歪曲され誇張されている部分もあるが、ドラマ「ファントム」の中のソンヨン高校は、悲しいことに韓国の学校の実情と重なってしまう。9年前、ユ・ガンミ(イ・ヨニ)のルームメイト、クォン・ウンソルを自殺に追いやったソンヨン高校の生徒たちは2012年の今も、自身の競争者だという理由で“殺人”という罪を犯す。

高い学費を免除してもらおうと、奨学金をもらうために命まで投げた生徒たちと、彼らの命を狙った生徒のむごたらしい犯行の後も、ソンヨン高校はいつものように生徒たちの競争心を煽りたて、彼らを入試地獄に追いやる。
成績のために校内の生徒に暴力を振るった生徒たちの残酷さを、ただ責めるだけで、日増しに荒んでいく生徒たちを癒す根本的な解決策は設けたりしない大人たちは、依然としてソンヨン高校のように高い学費でエリート教育を行う名門高校を作ろうとするばかりなのである。
ある小学校では、全国規模の学力評価で、クラスの平均を下回る幼い生徒を夜遅くまで勉強させる“熱意”まで見せたという。幽霊や、学校の怪談より怖いという入試地獄は、今この瞬間も現在進行形である。
一方、「ファントム」の視聴率はまた小幅上昇した。視聴率調査機関AGBニールセン・メディアリサーチによると、韓国で21日に放送された「ファントム」は全国基準11.2%の視聴率を記録した。これは20日の放送で記録した10.8%より0.4%上昇した数値である。同時間帯に放送されたKBS 2TV「カクシタル」は視聴率15.5%で水木ドラマ1位となり、MBC「アイドゥ・アイドゥ~素敵な靴は恋のはじまり」は8.9%を記録した。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- クォン・ジンギョン
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