ファントム
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 - 「ファントム」ソン・ハユン“最終回の放送後、胸が張り裂けそうな気持ちでした”- ※この記事にはドラマ「ファントム」の結末に関する内容が含まれています。スパイ映画並みの緊張感を与えて、9日に最終回を迎えたSBS水木ドラマ「ファントム」(脚本:キム・ウニ、演出:キム・ヒョンシク、パク・シヌ)でチョリンガムジャ(ジャガイモの煮っ転がし)と呼ばれた女優がいる。それは、ドラマ「ファントム」で注目を集めた女優ソン・ハユンである。彼女はサイバースペースでの弊害を告発し、深くて重たいこのドラマでチョリンガムジャという親しげな呼び名で自身の魅力を思う存分披露した。映画「火車」「私は公務員だ」などで観客の視線を引き付けた彼女は、ドラマ「ファントム」を通じてソン・ハユンという名前を広めた。彼女の名前よりチョリンガムジャとして覚える視聴者の方が多かったが、それは重要なことではない。満26歳の彼女は、やっと女優としての道を歩み始めた。「『幽霊』が終わって胸がはり裂けそうな気持ちでした」ドラマ「ファントム」の最終回が放送された翌日に会ったソン・ハユンは、「最終回を見ましたか?」という質問に笑いながら「はい」と答えた。彼女は笑っているが、最終回を残念に思っているように見えた。「最終回が放送されて胸が痛かったです。それで監督に『胸が張り裂けそうな気持ちです。皆そうですよね?』とショートメールを送りました。監督は『よくやってくれたよ。お疲れ様。一緒に食事でもしよう』と返信をしてくださいました。本当に胸が痛かったです。『ドラマを愛してくださった視聴者の皆様に感謝いたします』というテロップを見て本当に終わったことを実感しました」「ファントム」の最終回はまさに幽霊らしかった。チョ・ヒョンミン(オム・ギジュン)会長を捕まえるために、パク・ギヨン(ソ・ジソブ)はSNSを利用した。さらに彼に彼が殺したシン・ヒョジョン(イ・ソム)が妊娠していたことを話した。自身が犯した過ちを知ったチョ・ヒョンミンはシン・ヒョジョンを突き落とした所で身を投げた。このような結末の中でミチンソ(狂った牛)クァク・ドウォンの恋人になるソン・ハユンという結末もソン・ハユンらしかった。「結末は気に入りました。クァク・ドウォン先輩の恋人になるというのはシノプシス(ドラマや舞台など作品のあらすじ)に書いてありましたが、はっきりしたことは分からなかったんです。先生(脚本家)が先輩と私のいざこざを良く見てくだったようで、台本をそのように書いてくださったんだと思います」ソン・ハユンの国民的ニックネームとなったチョリンガムジャもクァク・ドウォンとのラブラインを描く過程で誕生した。「元々台本に書いてあったチョリンガムジャはそんなに強く発音しませんよ。でも、撮影に集中して段々強く発音するようになったと思います。先輩に『このチョリンガムジャが!』と言われて、私は『私もブサイクな人は嫌です』と言い返しました(笑)」劇中ではゴタゴタする愛憎の関係であり、恋の相手だったが、実際のクァク・ドウォンは、ソン・ハユンの素敵な演技の先生であった。「クァク・ドウォン先輩はアイデアをたくさん出してくださいます。また、その瞬間ごとにセリフ合わせをしながら先輩の演技のノウハウを教えてくださいました。そんな先輩の気持ちに応えるために、常に撮影1~2時間前に撮影現場に行って準備していました。演技についてたくさん教わりました」「撮影現場では緊張しません」劇中のソン・ハユンはインターネットメディアであるトゥルーストーリーの記者チェ・スンヨンを演じた。初めて記者役を務めて負担を感じ、パソコンを扱ったドラマだけに難しいこともあったが、彼女は見事に演じきった。「自然に演じるのがいいと思いました。スンヨンというキャラクターは記者ですが、大学を卒業して就職するためにあちこちへ履歴書を送ったあげく、トゥルーストーリーの記者になったんです。私も記者という役で負担を感じて先輩方に聞いたり、悩んだりしましたが、多くの方がリラックスしてそのキャラクターを表現すればいいと言ってくださいました」この日、彼女はインタビューをする前に写真撮影に臨んだ。他の女優とは違って写真撮影を恥ずかしがる彼女の姿から、ドラマ「ファントム」の制作発表会でカメラの前で緊張していた姿を思い出した。演じる時には別人のように変わる彼女の姿を見た一人の記者として、写真撮影に緊張する彼女の姿は新鮮である。「演じるときは大丈夫ですが、写真撮影は難しいです。なぜ写真撮影に緊張してしまうのかは私にもよく分かりません。作品以外のことで注目されると大変です。作品の撮影現場ではそうでないのに。私は作品の撮影現場では緊張しません(笑)」「私の存在を知ってくれる人がいるのが不思議です」彼女の本名はキム・ミソンである。彼女はキム・ビョルという名前から夏の日差しという意味のソン・ハユンという名前で活動している。ドラマ「幽霊」は、彼女が名前をソン・ハユンに変えて出演した初めての作品である。そのため彼女は、「ファントム」に深い愛情を示している。ソン・ハユンという名前のためだろうか。ソン・ハユンは女優として注目を集めている。「私の存在を知ってくれる人がいるというのが不思議です。この間アイスクリームを買いにスーパーに行ったんですが、子供たちに『チョリンガム、どこへ行くの?』と言われました。また、あるおじいさんには『君が8階に住んでいるガムジャか。ドラマを楽しく見ているよ』と言われました。その街に10年以上も住んでいるのに本当に不思議で、感謝の気持ちで一杯でした」家より撮影現場にいる時間が楽しかったと笑うソン・ハユンの姿から、彼女がいかに作品に深い愛情を持っているのかを感じることができた。彼女はスターになることより、視聴者や観客と親密になりたがっていた。「華やかな女優よりは、素直で親しげな女優として視聴者に近づきたいです。これが一番いいと思います。私は演じることができて幸せだと思います」 
 - 「ファントム」イケメンスターから名俳優に生まれ変わったソ・ジソブ- 俳優のソ・ジソブがSBSドラマ「ファントム」で一人ニ役をこなし、イケメンのスターから演技の上手い名俳優に生まれ変わった。「ファントム」は、昨年放送された人気ドラマ「サイン」の制作陣が再度タッグを組んで制作した作品で、放送前から出来のいい犯罪ドラマになるとの期待が高かった。韓国社会で問題になった事件を題材にし、数々のどんでん返しで話題を集めた「ファントム」が幕を下ろした。「ファントム」が名品ドラマになった理由としては、安定したストーリーと俳優の名演技が挙げられるが、その中心にはソ・ジソブがいた。ドラマ「ファントム」は、私たちが住む世界とは別の世界であるサイバー世界、つまり最先端機器の中に隠れている人間の秘密を暴き出すサイバー捜査隊員の哀歓と活躍を描くドラマだが、その過程でサスペンスやパズルを解くような楽しみを与える。特に、悪質な書き込み、DDos攻撃(標的となるサーバーのサービスを不能にする攻撃)、高官の汚職問題、成績至上主義など、韓国の社会問題を題材にすることでよりリアリティーを与えた。サイバー犯罪が主な題材であっただけに用語も難しい上、パソコンの前で繰り広げられる犯罪の現場をきちんと再現することは、簡単なことではなかった。だが、ソ・ジソブはチャドナム(クールな都会男)刑事キム・ウヒョン役と天才ハッカーのパク・ギヨン役を完璧に自分のものにして演じきり、名俳優という評価を受けた。一人ニ役は、ややもすればドラマのクオリティを下げる危険性があるが、ソ・ジソブが演じたキム・ウヒョンとパク・ギヨンは、警察大学に入学して違う道を歩むが、自身の方式で世界の不義と戦うキャラクターだ。エリート刑事のキム・ウヒョンとしらじらしい天才ハッカーのパク・ギヒョンが極端に違うキャラクターであることを考えると、相当難しく集中を要する演技だったと思われるが、彼は努力を重ねた結果、表(外見)はキム・ウヒョンだが、内面はチョ・ヒョンミンにナイフを向けるパク・ギヨンを完璧に演技した。これまでソ・ジソブは、端正すぎるルックスのせいで誰にも負けない演技力にもかかわらず、イケメンスターに過ぎなかったと言っても過言ではない。だが、今回は「ファントム」でこなした一人二役で、俳優ソ・ジソブの見事な演技力を十分アピールすることができた。演技は一人でするものではなく、相手の俳優によってより輝くこともできるという点を考えると、クァク・ドウォンとオム・ギジュンに出会ったのは彼にとって幸運だった。サイバー捜査隊のクォン・ヒョジュチーム長を演じたクァク・ドウォンは、最初はキム・ウヒョンをいじめる憎いキャラクターだったが、ギヨンの正体を知ってからは敵から信頼できる同僚に代わり、面白みを与えた。セガングループのチョ・ヒョンミン会長に扮したオム・ギジュンは、怪物としてのカリスマ性溢れる姿でソ・ジソブと激しく対立し、ドラマへの集中度を高めた。「ファントム」で私たちはソ・ジソブという名俳優を再発見した。いつになるか分からないが、次の作品でまた違う姿を見せるソ・ジソブに出会える日が待ち遠しくなる。 
 - あなたは「ファントム」と「紳士の品格」どちらをご覧になりましたか?- 最終回を迎える「ファントム」と「紳士の品格」、現実とジャンルを向き合わせるまず、海外に進出した映画監督たちからジャンルに関する考えを聞いてみよう。「スノーピアサー」のポン・ジュノ監督はNAVERの映画担当とのインタビューで「ビデオレンタルショップに行ってもアクション、コメディと分けられています。僕はどこに置けばいいのか分からない、そういう映画を作りたいと思います」と話したことがある。今はグローバルプロジェクトにまで参加するポン・ジュノ監督。彼はこれまで社会派コメディ「ほえる犬は噛まない」、80年代の農村スリラー「殺人の追憶」、左翼と呼ばれた怪獣映画「グエムル-漢江の怪物-」、母性とセックスが融合された「母なる証明」などの作品に韓国社会の地域性という要素を散りばめていた。「悪魔を見た」のキム・ジウン監督は少し違った。彼は「ジャンルを選択することでテーマが選択される。ノワールは人間の浮き沈みを、ホラーは見えない世界に対する恐怖、ウエスタンは果てない欲望の疾走を描きたかった」と述べた。彼は最近アーノルド・シュワルツェネッガーが出演したハリウッド進出作のアクション映画「Last Stand」の撮影を終えた。補足すれば、ジャンルを混ぜて、積極的にカメラが向けられた現実を引っ張ってきたり、あるいはジャンルの中に入りこんで、ジャンルを脚本家の手により再創造する。そしてその中に反映される韓国社会。映画との直接比較は無理だろうが、2ヶ月間視聴率や話題性の面で視聴者の支持を受けてきたドラマ「ファントム」(脚本:キム・ウニ)と「紳士の品格」(脚本:キム・ウンスク)は、警察スリラーとラブコメディというジャンルに他のジャンルの要素を取り入れた事では、二人の監督が話していた正反対のジャンル論の範疇に入っていると言っても過言ではないだろう。「ファントム」キム・ウニ脚本家のスリラー3部作を期待する理由まずは警察スリラーの「ファントム」。キム・ウニ脚本家は、前作の「サイン」では監察医が暴く事件の真実という前提で、通り魔殺人、財閥の暴行、在韓米軍の犯罪、そして有名アーティストの未解決殺人事件まで、新聞の社会面に登場していた実際の事件を連想させるエピソードで物語にリアリティを与えていた。「ファントム」は一見、その範囲が狭くなったように見えるが、実は拡大している。限定的に行われそうな犯罪が、現代人の生活と繋がってもっとリアルになり、さらに共感を広げるようになる。何よりサイバー犯罪の匿名性と波及力に注目したのは素晴らしい選択だった。例えば昨年韓国社会を騒がせたDDoS攻撃事件(標的となるサーバーのサービスを不能にする攻撃)、女性芸能人を死に追い込んだ悪質な書き込み、毎日のようにニュースに登場するハッキングや個人情報流出、人間の精神まで病んでしまう盗聴や民間人への違法通信傍受。こうした小さなエピソードとともに、コンピューターは人間の脳と一緒という考えを示唆した。ネット世界を支配し、個人的な復讐を実行していくファントムことチョ・ヒョンミン(オム・ギジュン)の存在はまた新鮮だった。各事件を後ろで操っていたチョ・ヒョンミンの世界観は、結局、ネット世界が簡単に犯されるかもしれないという恐怖と繋がる。キム・ウニ脚本家はそれをゴーストハッカーパク・ギヨンの存在と関連付け、「誰も信じられない」というスリラーの基本と繋げ、安定的なストーリーを構成した。即ち、しっかり作り上げた警察スリラーに韓国社会の現実をうまく映し出している。だからこそ「サイン」「ファントム」に続く彼女のスリラー3部作の完成が待ち遠しいのだ。「紳士の品格」ジャンルの融合と2つの品格一方、ラブコメディやシンデレラストーリーではトップレベルともいえるキム・ウンスク脚本家の「紳士の品格」はより興味深いケースである。40代前半の4人の男の恋愛と友情を描いた同作は、男性版「セックス・アンド・ザ・シティ」を連想させるが、それよりは2012年版韓国風のラブストーリーに近い。前作と最も異なることは、4カップルを同等に描いていることである。気難しい建築家のキム・ドジン(チャン・ドンゴン)と典型的なラブストーリーの女主人公、ソ・イス(キム・ハヌル)、40代前半の韓国男性と最も似ている、イム・テサン(キム・スロ)とプロゴルファーのホン・セラ(ユン・セア)、16歳も歳の離れたカップル、チェ・ユン(キム・ミンジョン)とイム・メアリ(ユン・ジニ)、そして物凄いお金持ちの清潭(チョンダム)の魔女パク・ミンスク(キム・ジョンナン)と可愛い浮気者のイ・ジョンロク(イ・ジョンヒョク)まで。並べるにも時間がかかるこの8人の主要登場人物への個性的な描写とドラマチックな共感こそ、「紳士の品格」を視聴者が支持した理由だろう。しかし面白いのは「紳士の品格」のキャラクターに染み込んでいる90年代の情緒への懐かしさと、お金あるいは階級の差への直視が相互補完的になっていることである。「われらの天国」「フィーリング」などで人気を博していたチャン・ドンゴンとキム・ミンジョンのイメージと合わさって、「紳士の品格」は時々90年代、彼らが20代だった時代に戻る。主な葛藤の一つがキム・ドジンと初恋の相手の間で生まれた、息子のコリンである。まだ独身だったり、妻を亡くして独身生活に戻ったり、結婚はしているが浮気者だったり、この4人の男は男は歳をとっても子供っぽいの言葉通りに、または90年代の青春に戻ったように見えるほどだ。この4人に経済的に大きな影響を及ぼす、ビルを何棟も持っているパク・ミンスクの描写も見ておこう。「お金持ちは心じゃなくお金で判断する」とか、貧乏な高校生に「さっきあんたが見たのが、これからあんたが学校を卒業して生活していく世界だ。これが貧乏人が勉強をしなければならない理由よ」というセリフを連発するパク・ミンスクは、「紳士の品格」を面白くするお金持ちの品格の象徴である。そして2012年の韓国でパク・ミンスクは、リアリティのあるキャラクターとして、絶大なカリスマ性を持つ女性として、脚光を浴びている。愉快なラブコメディの「紳士の品格」はこの二つの世界が出会わなければ、成立できない品格を語るドラマなのだ。そして今週は、オリンピックによって番組が休止された「ファントム」と「紳士の品格」がようやく放送されるという。誰かは「サイン」に続き、「ファントム」でも主人公が死ぬのではないかと心配していて、誰かは「紳士の品格」の4カップルがどのようにハッピーエンドを迎えるか期待しているだろう。結末がどうであれ、この2作品が上げた成果は、ジャンルを自由自在にミックスすると同時に、脚本家の目に映った韓国社会を適切に、あるいは問題点を反映したということであるだろう。あなたは「ファントム」と「紳士の品格」のどちらをご覧になりましたか。「紳士の品格」も「ファントム」も『独占中継!2012 SBS演技大賞』でチェック!2012/12/31 (月) 21:30~26:00今年のSBS演技大賞が見れるのは女性チャンネル♪LaLa TVだけ!CS放送 女性チャンネル♪LaLa TVで放送決定!【LaLa TVにてキャンペーン実施中】女性チャンネル♪LaLa TV公式Facebookでは今年韓国SBSで放送された韓国ドラマのポストカード(本国ポスターデザイン)を抽選で100名様にプレゼント!詳しくはこちらまで ⇒ LaLa TV公式Facebook 
 - 「ファントム」が残した三つの成果- ※この記事にはドラマ「ファントム」の結末に関する内容が含まれています。毎週の水、木曜日に視聴者の心を虜にしてきたSBS「ファントム」がいよいよ幕を下ろした。予想通りチョ・ヒョンミン(オム・ギジュン)は、シン・ヒョジョンが妊娠していた事実を知って結局自殺したが、世の中は変わらず前と同じように時間は流れる。怪物一つがいなくなっても一夜にして世の中が良くなるわけではないということを見せたことで「ファントム」は、最後まで自分の役割を果たしたと言える。いわゆる「チョ・ヒョンミンリスト」がネット上に公開され、政界や経済界の50人が関連した史上最悪のスキャンダルが起きたが、死ぬ前チョ・ヒョンミンが最後まで自信満々だった理由は、次の台詞から読み取れる。「人々はすぐ忘れます。一ヶ月?いや、もっと大きな事件が起きたら一日も経たないうちに忘れてしまうのが人の常です」だが、大事なものを守るために怪物になったチョ・ヒョンミンは、本来自分にとって一番大切なもの(愛する女と自身の子)を守れなかったし、復讐の狂気は結局自身に巡ってきた。良いドラマに別れを告げることは残念なことだが、「ファントム」が残した三つの成果を考えながらその余韻に浸ってみることにする。1.ジャンルドラマの拡大「ファントム」が残した成果のなかで一番最初に取り上げたいのは、ジャンルドラマ(犯罪、メディカル、ホラーなど特定の分野を扱ったドラマ)の範囲を広げたということだ。これまで韓国のドラマは、ありふれたストーリーの繰り返しだったり、出生の秘密と記憶喪失のような刺激的な題材がなければストーリーが前に進まないなどの限界があった。だが、全作の「サイン」で特殊捜査ドラマというジャンルドラマを披露したキム・ウニ脚本家の実力は「ファントム」で再び発揮され、本格的なジャンルドラマの時代を切り開いたとの希望を残した。サイバー犯罪を題材にした「ファントム」は、警察庁サイバー捜査隊のチーム員を主人公にし、これまで韓国でたくさん作られてきた警察捜査ドラマの形をとっている。だが、完成度の面では他の警察ドラマとは比べものにもならない水準を誇っている。何より韓国のジャンルドラマが持っている典型的な恋愛話を前面に出さなかったことと「サイン」と同様にスリラーの要素をたくさん入れてストーリーに集中できるようにしたことは、高く評価したい。「追跡者 THE CHASER」(以下「追跡者」)の成功に続き、「ファントム」のヒットで視聴者は韓国にも見ごたえのあるジャンルドラマがたくさん出てきていることに歓呼している。毎話ごとに反転に反転を繰り返す独特の展開もそうだが、DDoS攻撃(標的となるサーバーのサービスを不能にする攻撃)事件と女性芸能人の性行為強要事件のように、実際に起きた事件を題材にしたことも「ファントム」が残した成果だと言える。「ファントム」が終わるのは残念だが、キム・ウニ脚本家の次回作を楽しみにしている日々も悪くない。彼女が「サイン」と「ファントム」に続き、どのようなジャンルドラマを持って帰ってくるのかが今から期待される。2.演技力のある名脇役の再評価最近ヒットしているドラマの共通点は、演技力のある脇役たちがいつにも増して注目されえているということだ。最近の例を見ると「追跡者」に出演する全ての俳優がそうだったし、「ゴールデンタイム」でもイ・ソンミンは主演俳優のイ・ソンギュンとファン・ジョンウム以上の存在感をアピールしている。そして「ファントム」にもクォン・ヒョクジュチーム長役のクァク・ドウォンが存在する。「ファントム」で一番注目を浴びた脇役はクァク・ドウォンだったが、煮詰めたジャガイモソン・ハユンとヘンタイ刑事イム・ジギュもこのドラマが見つけた宝物に違いない。より良いドラマが作られるためには、演技力のある俳優がもっと優遇されなけばならない。その意味で名脇役を発掘し、彼らの知名度を高めた「ファントム」はあらゆる面で意味のあるドラマだと評価できる。3.デジタル社会の問題を提起最後に「ファントム」が残した三つ目の成果は「ファントム」のメッセージや主題にある。「ファントム」は、サイバー世界を象徴する匿名性と波及力が悪用される場合、現実世界でどのような問題が起きるのかを極端に見せてくれた。また、いわゆる情報化社会では誰がより価値のある情報を取るのかによって格差が生じ、ひいては命にかかわる問題にまで発展するという警告を残した。果たしてサイバー世界とは現実とは無縁な世界なのだろうか、そこで通用される価値観とはどんな意味があるのかなど、深刻な問題を「ファントム」は重くない感じで描き、また性急に意味を伝えようともしなかった。全20話で私たちはチョ・ヒョンミン(オム・ギジュン)とパク・ギヨン(ソ・ジソブ)が対立する過程をゆっくり見ながらも、結局サイバー世界も現実と変わらないと感じた。サイバー世界は、1分で9万8千のTwitter文章が掲載され、1億6600通の電子メールが送られる、現実とはまったく異なる世界のように見えるが、そうだとして生命と倫理の価値を1回のクリックで捨てることのできるところではない。デジタル化が進むほど我々はバランスと中心をとりながら生きていかなければならないという教訓を「ファントム」は上手く伝えてくれた。これも「ファントム」が残した成果だと言える。最後に、今日も0と1で構成された世界のなかで幽霊のように彷徨う私たちにドラマが残した本当のメッセージを次の質問に代替する。「もしチョ・ヒョンミンが自殺しなかったら、彼は法律によって処罰されたのだろうか」「ファントム」も『独占中継!2012 SBS演技大賞』でチェック!2012/12/31 (月) 21:30~26:00今年のSBS演技大賞が見れるのは女性チャンネル♪LaLa TVだけ!CS放送 女性チャンネル♪LaLa TVで放送決定!【LaLa TVにてキャンペーン実施中】女性チャンネル♪LaLa TV公式Facebookでは今年韓国SBSで放送された韓国ドラマのポストカード(本国ポスターデザイン)を抽選で100名様にプレゼント!詳しくはこちらまで ⇒ LaLa TV公式Facebook 
 - 「ファントム」最終回、ソ・ジソブ&オム・ギジュンが見せた衝撃の“ラスト5分”- ※この記事にはドラマ「ファントム」の結末に関する内容が含まれています。俳優のソ・ジソブとオム・ギジュンが出演したSBS水木ドラマ「ファントム」の最終話ラスト5分が、人々に背筋のゾクッとする戦慄を感じさせた。韓国で9日午後に放送された「ファントム」の最終話では、チョ・ヒョンミン(オム・ギジュン)の悪行の全貌に気付いたパク・ギヨン(キム・ウヒョン:ソ・ジソブ)がチョ・ヒョンミンを訪ね、最後に事実を確認する内容が描かれた。チョ・ヒョンミンの家に前もって隠れていたパク・ギヨンは平然とチョ・ヒョンミンを迎え、余裕のある表情で自身が思うシン・ヒョジョン(イ・ソム)の死と関連する仮説をじっくり話した。パク・ギヨンの推理は当たった。偶然にチョ・ヒョンミンの犯行現場を動画で撮ったシン・ヒョジョンが、動画を警察に渡す前に彼に自首を勧めたが、チョ・ヒョンミンは彼女を窓から突き落として殺害した後、自殺に見せかけたのだ。だが、当時シン・ヒョジョンはチョ・ヒョンミンの子どもを妊娠していた。これを知らなかったチョ・ヒョンミンは、パク・ギヨンが渡したシン・ヒョジョンの携帯にある胎児の写真を見て混乱し、結局彼女と同様に窓から飛び降り、悲劇的な最後を迎えた。二人が最後に対話するシーンを見ていた視聴者たちは息を凝らした。それぞれパク・ギヨンとチョ・ヒョンミンを演じたソ・ジソブとオム・ギジュンは、特別なアクションや過剰な感情表現なしに台詞や微妙な表情変化だけで息を飲ませる緊張感を作り出した。オム・ギジュンは、殺した彼女が実は自分の子を妊娠していた事実を知ることになった悪魔チョ・ヒョンミンの悔恨を震える瞳一つで表現した。特に、このシーンにはありふれた涙や嗚咽などが登場せず、すぐに続いたオム・ギジュンの飛び降りはより大きなショックを与えた。ソ・ジソブは、父の復讐のために怪物になってしまった一人の男を見ながら冷静ながらも複雑で微妙な感情になるパク・ギヨンの内面を察しがたい冷たい目つきでこなした。彼がチョ・ヒョンミンを見る視線には、憎しみと憐憫が共存していたが、彼の飛び降りを目撃したときは驚きと共に「もう全てが終わった」という安堵感もそこにあった。放送直後に視聴者は各種のSNSで「対話しているだけなのに戦慄を感じだ」「二人は、ただ座っているだけで緊張感をかもし出す」「見ていながらずっと心臓が止まりそうだった」「チョ・ヒョンミンが自殺するとは思わなかった」「二人の目つきが頭から離れない」などの反応を見せながら熱狂した。ソ・ジソブ、イ・ヨニ、クァク・ドウォン、オム・ギジュンらが出演した「ファントム」は、インターネットおよびSNSの波及への警告を内容とするサイバー捜査ドラマだ。2011年「サイン」で犯罪捜査ドラマブームを巻き起こしたキム・ウニ脚本家が執筆し、反転に反転を繰り返す展開で大きな話題を呼んだ。「ファントム」の後続作品としては、高飛び金メダルリストのカン・テジュン(SHINee ミンホ)に会うために男子高校へと偽装転校した男装美少女ク・ジェヒ(f(x) ソルリ)の波乱万丈のストーリーを描いた恋愛ドラマの「花ざかりの君たちへ」が放送される。 
 - 【Dr.アル】私が惚れたのはソ・ジソブではなく“クレイジー牛”クァク・ドウォンです- 好きだというレベルを超えてアリ(恋の病で寝込むような)の境地になる時がある。見ないと死にそうで見ていると会いたくなる、今日もどこかで苦しんでいる全国に数多くいるアリ患者のための「10asia」の相談コーナー「Dr.アル」。今回の悩ましいアリの対象は、「ファントム」のソ・ジソブと対決できるほど、隠れた魅力を見せているクォン・ヒョクジュチーム長。そして可愛くてたまらないクァク・ドウォン。今回の病の処方箋は!?QUESTIONこの文章を書いている今でも認めたくありません。SBS「ファントム」でソ・カンジ(ソ・ジソブだけのかっこいい感じ)ソ・ジソブを置いといてミチン・ソ(クレイジー牛)クァク・ドウォンに惚れるなんてありえますか? スーツと言えばソ・ジソブ、すらりとした体格と言えばソ・ジソブ、目つきと言えばソ・ジソブ、毎日のようにソ・ジソブだけ叫んでも物足りないのに、私1人だけクォン・ヒョクジュ(クァク・ドウォン)チーム長を見つめています。クォン・ヒョクジュチーム長が目を皿にして「この野郎」「ふざけた真似するな」と大声で怒鳴る度に、こんなこと言っていいのか分からないけど可愛くてたまらないんです。もしかしたら私、夏バテしているのですか? (瑞草洞(ソチョドン)/イさん)Dr.アルの処方箋単刀直入に比べてみましょう。ソ・カンジソ・ジソブがスーツ終結者(スーツを極めた人の意味)だとしたら、ミチン・ソクァク・ドウォンは雄の終結者なんです。クォン・ヒョクジュチーム長は従来の強力班刑事のマッチョ的な特性を持っていながらも、意外と素早く勘がいい刑事です。こっそり警視庁に入ってきたパク・ギヨン(チェ・ダニエル)とすれ違っただけなのに怪しさを感じて「あのすみません」と呼び止めたり、結局、キム・ウヒョンに成りすましたパク・ギヨン(ソ・ジソブ)が、自分の正体を先に告白するように誘導した張本人はクォン・ヒョクジュチーム長です。容赦なく暴力を振るったり、巧みな話術で相手を抑圧したりは絶対しません。「俺は今、すごく怒っているから、もし俺の機嫌を悪くしたらどんなことが起きるか分からないよ」といったとりとめのない話を、「でたらめなことを言うな」「こら! 君、何ふざけてるんだ」「最近はスーツを着て救急車を運転するのか?」というように一言に圧縮して怒鳴ります。その方がより怖いですから。特に、「俺は今、とてもイライラしてるからね、今白状するか?それとも、殴られて白状する?」というセリフは、ソ・ジソブの名ゼリフである「ご飯食べる、それとも俺とキスする? ご飯食べる、それとも俺と一緒に住む? ご飯食べる、それとも俺と死ぬ?」と比べても全く遜色がないです。ソ・ジソブのように礼儀正しくはないが、まるで自然に乾いたように全く整ってないヘアスタイルは、彼の野生的な魅力を浮き彫りにします。ソ・ジソブのようにスーツが似合ってはいないが、首周りの分厚い肉が目立つ黒のVネックシャツは、彼をセクシーカリスマチーム長にしてくれます。映画「悪いやつら」で天下のチェ・ミンシク(チェ・イクヒョン役)をトイレでひざまずかせ、悪口を言ったり足で蹴ったりしたチョ・ボムソク検事。そんな彼から底知れないカリスマ性が感じられたのも、関連していると言えるでしょう。彼はまるで24時間CCTV(監視をするためのビデオカメラ、及び監視システム)が監視しているヘミョンリゾートの別館の外部のように全く隙がない人に見えます。しかし、この男、予想もしていない瞬間にツンデレモードを発動します。パク・ギヨンは手伝う気なんか全くないように見えるのに、クォン・ヒョクジュチーム長は1人で「いいよ、手伝わなくて。やるとしても俺がやるから」と大口を叩く。あれは「どうか俺を助けてくれ」という信号なんです。ハン・ヨンソク(クォン・ヘヒョ)刑事の他殺疑惑を明らかにするために自動車ハッキングの実験をする時も、自動車の後部座席に座り安全ベルトをX字形に2つも締めたのをご覧頂けましたでしょうか? 普段は幽霊も素手で捕まえそうなカリスマ性があるのに、こういう時はまるで初めてジェット・コースターに乗る中学生のように見えるんです。もちろん、ハン・ヨンソク刑事が死んだ時、一番先に現場に走って行き、震える声で「ハン刑事! ハン刑事!! ハン刑事、返事しろ!!!」と泣き叫んだ人もクォン・ヒョクジュチーム長でした。実は彼、弱い男、可愛い男、人間味あふれる男なんです。信じられないですか? Twitterで「同じ服、違う感じ」というアドリブが面白かったと褒めたら、「今度、またやろう~ヘヘ」と満足したり、「クァク・ドウォンおじさん!!!」と呼んだら「お兄さんと呼べ~優しく言う時に呼んでみて!!!」と少し怖い感じで文句を言います。だから、もし彼に直接会うことがあったら必ずお兄さんと呼んであげてください。そしたら彼は恐らくこう答えるでしょう。「こいつ、本当に気に入ったよ!」Dr.アルのポイント:クァク・ドウォンの警察庁語録特別講座「こいつ、本当に気に入ったよ」基本概念あとは手錠をかけることだけと思った容疑者を目の前で逃した時、口から即座に反応して飛び出してくる反語表現である。口では「こいつ、気に入ったよ。本当に!気に入った」と相手の素早い逃走を褒めるように見えるが、彼の本当の感情の状態は、無意識にダンボールを蹴飛ばす右足に込められた感情だということをチェックしよう。発展学習逃走より一段階高いレベルの不意打ちを食わせられた時、空気半分、声半分の笑い声とともに下す自己診断である。自分が集めた証拠を利用して危機的状況から抜け出した同僚には、「こいつ、気に入ったよ。本当に気に入った」という基本文章に、「今日、俺が一発やられた。オーケー。認める」と付け加える。一方、わざと偽の情報を流した被害者に遊ばれたことに気づいた時は、まず「ハア」とため息をつき息を安定させて、「ヨム・ジェヒ、こいつ一体何者だ? こいつ、俺をからかったな!」と声の強さを徐々に上げた後、奥歯が見えるように「アハハハハハ」と笑って締めくくればいい。応用問題生意気に警察を盗聴している容疑者たちの手法に気づいた時、彼らの首を締め付けることができる通称トウィンクル(輝きという意味)語法である。盗聴器を自動車の助手席に「隠してもトウィンクルどうしよう」、いくら小指の爪ほどサイズの小さな盗聴器だとしても「目立ちすぎ!」、君たちを操るチョ・ヒョンミン(オム・ギジュン)が「ベールに包まれていてもォォォォ」、それが全て見える「俺はバレバレのトウィンクル」と歌えばいい。怒りを抑えられない時はシャウトを、今すぐにでも彼らに手錠をかけたい時は手首を回す振り付けをすること。 
 - 「ファントム」キム・ウニ脚本家さん、シングルの“ミチンソ”のロマンスは無理ですか?- 最終回を前に、統一の取れた「ファントム」の正直さに感服ロンドン五輪により放送を休んでいた「ファントム」が8月8日、2週間ぶりに放送された。放送休止により、クライマックスに向けて高まっていたドラマの緊張感を忘れたのだろうか。2週間前15.3%の視聴率を記録していた「ファントム」第19話は、全国視聴率12.9%(AGBニールセン・メディアリサーチ基準)で、2.4%下落する結果となった。先週の放送休止に続き、通常の時間帯より早い午後9時40分に放送され、オリンピックの影響をもろに受けたが、競合作の「カクシタル」が、視聴率18.3%を記録し、オリンピックのせいばかりにはできない。しかし、視聴率はともあれ、キム・ウニ脚本家とキム・ヒョンシクプロデューサー以下制作陣はばか正直だった。最終回まで1話を残している状況でも、刺激的な事件などはなかった。もっぱらパク・ギヨン(キム・ウヒョン:ソ・ジソブ)とサイバー捜査隊のチームメンバーが法廷に立たせたチョ・ヒョンミン(オム・ギジュン)を捕まえるための証拠を探すことに注力した。チームメンバーに、自身がキム・ウヒョンでないことを明かしたパク・ギヨンは、ミチンソ(クレイジー牛)ことクォン・ヒョクジュ(クァク・ドウォン)とともに、過去の不正事件と関わっていた証拠である事件報告書を法廷に提出し、最後にシン・ヒョジョン(イ・ソム)が持っていたナム・サンウォンの殺人現場が写った原本の動画を差し出した。全ての犯罪の頂点に立っていたチョ・ヒョンミンを窮地へ追い詰めた決定的な一発だった。自分が仕掛けた罠を利用して必ず難局から抜け出せると信じるチョ・ヒョンミン、事件の出発点だったシン・ヒョジョンの死を再び振り返り、一つ一つ証拠を集めキム・ウヒョンの潔白を証明するために身を投げたパク・ギヨンとチームメンバーたち。「ファントム」をばか正直だと表現したのは、ただこのような第19話の内容だけが理由ではない。また振り出しに戻りシン・ヒョジョン事件を振り返る首尾一貫の構成も逸品だが、キャラクターたちが感情的な対応や刺激的な事件に頼らず、捜査に集中する面で第19話は警察スリラーとしての基本を忠実に実現していると言える。これまでの韓国ドラマが病院で恋愛し、警察署で恋愛し、法廷で恋愛するドラマだと冷やかされた過去を思い出してみるとなおさらそうだ。さらに、サイバー犯罪から出発した殺人事件を、やはりこれと関連した捜査と証拠を通じて捕まえるという基本中の基本を守ったところも、同じ脈絡だ。きめ細かく証拠を見つけ出し、結局法廷にチョ・ヒョンミンを立たせる「ファントム」の選択。自警団に近い私的な復讐を描くドラマと映画が溢れだす中、キム・ウニ脚本家のこのようなシナリオはかえって新鮮だ。何より最終話の予告で「僕を捕まえられるのは、僕しかいない」というチョ・ヒョンミンに、パク・ギヨンが「貴様はすでに大事なものを失っている。貴様が何をしたかを直接確認しろ」とシン・ヒョジョンの妊娠について言及するシーンは、とても意味深いものと言える。サイバー世界を支配するものが結局は勝利するという信念に捕らわれていたチョ・ヒョンミンに悟らせる、死と生命の倫理。これは、ずっとサイバー犯罪を追いかけてきた「ファントム」が内包しているメッセージともどこか似通っている。コンピューターを支配しても、結局はそのサイバー世界を構成しているのは人間だという、単純かつ最も根源的なヒューマニティーへのメッセージ。さらに、チョ・ヒョンミンへの痛烈な懲らしめが、父の復讐を夢見て自分の子供を自分の手で殺す破倫という点は、結構ヒヤリとする。最後に結末について言うと、放送終了を控えた「ファントム」の達成を考えたら、かえって第20話はキム・ウニ脚本家の作家的な能力を思う存分に広げてもよさそうだ。「サイン」のように主人公を死へと追い込む、大衆性を裏切る選択であってもだ。これまで獲得してきた統一性なら、どの展開になったとて、結局「ファントム」が創りだした世界の中に収まるだろうから。極めて個人的な要望を付け加えると、ミチンソクォン・ヒョクジュとトゥルーストーリーの記者チェ・スンヨン(ソン・ハユン)のロマンスは必ず叶って欲しい。現実でもシングルの俳優クァク・ドウォンの(映画とドラマで)生涯初めてのはずの、甘くてロマンチックな演技を観たがる視聴者が、確かにあちこちで息づいていると思う。まるで、ブラウン管の裏で、コンピューターのモニター画面からキム・ウニ脚本家の結末を見守っている幽霊たちのように。 
 - 最終回直前の「ファントム」…”悪魔”オム・ギジュンは、人間に戻れるだろうか- SBS水木ドラマ「ファントム」結末に対するいくつかの推測映画「悪魔を見た」で連続殺人犯チェ・ミンシクは、本当に人間らしさのかけらもない殺人鬼そのものだった。そんな彼が初めて人間らしい感情を表したのは、ほとんど最後のシーンに至ってだった。イ・ビョンホンに捕まったチェ・ミンシクは、綱一本引けば首が飛ぶ危険な状態に置かれ、イ・ビョンホンはその綱をドアにかけたままチェ・ミンシクの家族を呼んだ。ドアノブ越しに家族の声を聞いたチェ・ミンシクは自身の死を家族に見せたくない心で凄まじく泣き喚くが、その瞬間どんな悪魔とて自分の家族の前では最小限の人間の感情を取り戻すしかないものだな、と思ったものだ。言われてみれば、人を悪魔にするのも、また悪魔を人に戻すのに決定的な役割をするのも、他ならぬ家族だと思う。SBS水木ドラマ「ファントム」でチョ・ヒョンミン(オム・ギジュン)が悪魔になった理由もやはり父の死への復讐だったためだ。それなら悪魔になったチョ・ヒョンミンはまた人間に戻れないのだろうか。彼は結局0と1という二つの数字、つまりデジタル世界の裏に潜んだ幽霊に残るだけなのだろうか。あとは最終話だけを残している「ファントム」の結末に対する視聴者の関心が高くなっている。オリンピックの中継で1週間延期され放映された第19話で、事実上チョ・ヒョンミンとパク・ギヨン(ソ・ジソブ)の戦いは、パク・ギヨンの勝利で終わった。この日の放送で二人は、法廷を背景に追いつ追われつの頭脳合戦を繰り広げた。すでにお互いの正体に気付いているだけに、ソ・ジソブとオム・ギジュンは出せる全ての札を出し合って相手を窮地に追い込もうとした。しかし結局、サイバー捜査チームが死んだシン・ヒョジョン(イ・ソム)のもう一つの携帯電話をみつけ、チョ・ヒョンミンの罪が顕になった。加えてこの日制作陣がサービスで放送した最終話の予告で、チョ・ヒョンミンはナム・サンウォン代表殺害容疑者として逮捕されたにも関わらず、結局証拠がなくて解放された。本当の犯人を捕まえたが、結局また目の前で見逃すしかないソ・ジソブにオム・ギジュンは次のセリフを残す。「僕のことを捕まえられるのは、僕だけだ」お金と権力を手に握った悪魔チョ・ヒョンミンをそんなに容易く処罰できるとはもとから期待していなかった。ただ、悪魔の道を歩んできた彼も、最後に至っては人間の感情を取り戻すのではないかと慎重に推測してみるが、これに制作陣は「ファントム」最初話でヒントを残している。シン・ヒョジョンが死ぬ前に薬局に立ち寄り、妊娠テスターを買ったということだ。ここで死んだシン・ヒョジョンが実は妊娠中だったと仮定し、その子の父親がチョ・ヒョンミンだとすれば、最終話でチョ・ヒョンミンが変わる蓋然性は十分生まれてくる。さらに、最終話の予告でオム・ギジュンはソ・ジソブが渡した何かを見てびっくりしていた。妊娠した状態のシン・ヒョジョンを殺したということは、言い換えるとチョ・ヒョンミンが自分の手でまだ生まれてない自分の子供を殺したという意味になる。この事実を知る場合、チョ・ヒョンミンは悪魔の道を歩んで以来初めて、再び人間の感情を感じることになるだろう。「誰も殺害していない」と抗弁する彼も、結局は人間だ。自分の子供を自分の手にかけたという自責感くらいは感じる人間なのだ。父の死によって悪魔になった男が、また自分の子供の死によって人間に戻るという設定は、これまで「ファントム」が伝えようとしたメッセージとも一脈相通ずる。デジタル世界の幽霊として彷徨うどの人でも、最低家族の前では一人の家族構成員として、また人として存在するためだ。ただ、彼が全てを明かして自首することになるか、それとも自ら命を断つかは確信できない。どう考えても、法的な処罰を受けるのはチョ・ヒョンミンらしくない。自殺に重きが置かれる理由だ。最後に至って初めて初回の放送分が伏線として働く、脚本家と監督の緻密な計算と演出力。もしこのような推測が間違っていても、今日の最終話の放送を嬉しい心で見据えようと思う。これまでも、「ファントム」から肩透かしを食らわされたことが一度や二度ではないのだから。 
 - 「ファントム」クリエイティブな警察サスペンスとしての位置づけ- SBSドラマ「ファントム」の1、2話ほど、圧倒的で完結性の高いドラマの出発は、後にも先にもなかったような印象を受けた。キム・ウニ脚本家は法医学を背景にした前作「サイン」でも、大統領選挙出馬候補者の娘が巻き込まれた、アイドル歌手の殺人事件から始まり、権力と正義を説く緊張感のあるサスペンス物語を作ったことがある。このように「ファントム」への期待感は、残念ながらソ・ジソブでも、「悪いやつら」を通じて電撃抜擢されたクァク・ドウォンでもなく、キム・ウニ脚本家の文才から始まった。そして「ファントム」の出発はこれ以上ないくらい、期待以上だった。ハッカーのハデス(パク・ギヨン)の出没、人気スターであるシン・ヒョジョン(イ・ソム)の殺人事件、これを追いかける警察庁サイバー捜査隊キム・ウヒョン(ソ・ジソブ)警部補の活躍。緊迫感やスピード感も優れていたが、殺人犯の濡れ衣を着せられたハデスであるパク・ギヨンとキム・ウヒョンが警察大学の入学同期だったことが早めに明かされ、パク・ギヨンが危険を顧みず、警察庁に潜入したとき、ドラマには張り詰めた空気が漂っていた。そして第2話の20分が過ぎたところで、シン・ヒョジョン殺人事件の犯人であるファントムが仕掛けた罠にはまり、キム・ウヒョンが即死する。主人公であるキム・ウヒョンがドラマスタートからわずか80分で死んでしまうという、とんでもないシチュエーションが発生したのである。そしてそれに続きパク・ギヨンが整形手術でキム・ウヒョンの顔へフェイスオフする設定やオルチャン(整った顔)警察ユ・ガンミ(イ・ヨニ)の助けで成し遂げた完璧な偽装。第2話のクライマックスは、パク・ギヨンを殺すために送った、ファントム側の男が登場した病院でのシーンである。身分を偽装し、解剖室にまで現れユ・ガンミの邪魔をする刑事クォン・ヒョクジュ(クァク・ドウォン)もまた緊張感を高めた要因だった。ここにキム・ウヒョンが殺人事件と関わりがあるとの手掛かりが提示される一方、ファントムに協力する助力者たちと「私は一人ではない」とするキム・ウヒョンの言葉が加わり、「誰も信じられない」という混乱がドラマ全体を支配した。「ファントム」の力はここに起因する。繰り返されるどんでん返しとサスペンス、キム・ウヒョンが真実を暴くためにしばらくファントムのチョ・ヒョンミン(オム・ギジュン)と手を組んだという事実が明かされたのは、17話になってからだった。そのときまで「ファントム」は、悪の枢軸であるチョ・ヒョンミンと対決するかのような大きな流れの中で所々に、パク・ギヨンとクォン・ヒョクジュ、ユ・ガンミを除き、警察と検察、マスコミまで信頼できないというホラー的な要素を入れた。警察ドラマとホラーの境界で「ファントム」が思うままに行き来し、干渉する情念こそが、キム・ウニ脚本家が仕掛けた「ファントム」の核心的な正体である。「インファナル・アフェア」から出発、クリエイティブな警察サスペンスへ位置づけられるユ・ガンミの回想シーン、制服姿で「立派な警察になれよ」と後輩に語る死ぬ前のキム・ウヒョンの姿から、映画「インファナル・アフェア」シリーズの「立派な警察になりたかった」というアンディ・ラウの名セリフを思い出さずにはいられなかった。闇社会の一員として潜入した警察と、警察で成功の軌道に乗った闇社会のスパイ、警察大学の同級生である二人の男の運命の対決を描いた「インファナル・アフェア」は、シリーズ第3弾まで制作され、香港の歴史を描いた時代劇と人間の内面を暴く心理戦に発展した。悲しい場面や、序盤の細かい部分が「インファナル・アフェア」とよく似ている「ファントム」だが、クリエイティブな面は、ハッカーの幽霊であるパク・ギヨンという犯罪者と、それを捜査するサイバー捜査隊の警察(キム・ウヒョン)が親友であり、警察大学の同級生という設定で、この二人を一人の人物として混ぜてしまったことだ。この裏にはまた、キム・ウヒョンが警察で不正をしたかも知れないというパク・ギヨンへの疑心感と信用という二つの心が存在する。つまり、偽装した体と身分の持ち主を絶えず疑いながらも、彼の真実を暴かなければいけない幽霊のような存在でいなければならないのが、整形手術をして生まれ変わったパク・ギヨンの宿命でもある。警察ドラマとしての「ファントム」は「誰も信じられない」という命題を常に絶えず確認する過程である。またファントムのチョ・ヒョンミンを出現させるもう一つの幽霊たちを確認して行くゲームのようだった。回を重ねることに、警察庁トップとサイバーチームの博士、マスコミまでチョ・ヒョンミンの手下だったことが暴かれるといった印象だ。キム・ウニ脚本家は、このような前提を、ドラマの緊張感を高めるサスペンスの材料として活用すると同時に、警察庁の中で捜査を受けていたチョ・ヒョンミンの手下を殺した内部の裏切り者を探すために、1話の分量を丸ごと使用してしまうなど、一話一話を積極的に展開させる。チョ・ヒョンミンに殺されたハン・ヨンソク刑事(クォン・ヘヒョ)の正体もまた、背筋が凍るどんでん返しの道具だったほどだ。また「ファントム」は形式の面で、1、2話で区分されるエピソード構成と、ファントムであるチョ・ヒョンミンを捕まえるための物語構成が混在している。キム・ウニ脚本家はシン・ヒョジョンの死と1年後の悪質書き込み犯連続殺人事件、DDoS(標的となるサーバーのサービスを不能にする攻撃)事件、民間人捜査まで、個別のエピソードを披露し、チョ・ヒョンミンを前面に登場させながら、連続ドラマとしての性質を展開して行く。アメリカや日本のドラマに親しみのある若い層と連続ドラマに慣れた人々を同時に満足させる賢い布石だといえよう。個別の事件を解決する形式をあえて取らずとも、絶えず1年前のシン・ヒョジョン殺人事件と10年前のチョ・ヒョンミンとキム・ウヒョンの父が関わったセガングループ事件を繋ぐ緻密さ。「ファントム」のもう一つの特徴は、続けて人を殺していくチョ・ヒョンミンと、これに立ち向かうパク・ギヨンの武器としてサイバー世界を設定したところにある。サイバー世界の現実性と幽霊という象徴性「パソコンは人の脳と一緒です。それを覗いて見ることは、その人の頭の中を覗いて見ることと一緒です。他人に隠したいこと、脱税、違法裏金、違法不動産、違法政治資金、株価操作。キーボードを何回か叩くだけで全部分かります」チョ・ヒョンミンは父を死に追いやった叔父に、お金を武器とした彼と、自分との違いをこのように説明する。サイバー世界を支配する彼は、マルウェア(悪意のある不正ソフトウェアやプログラム)、ハッキング、DDoSなどで、セガングループの会長の座に上り詰め、さらには警察庁まで手に入れる。悪質な書き込み、電子メール、動画の流布、DDosなどの用語が毎回登場する「ファントム」の現実性は、このようにサイバー世界が、現実世界の包括的なシステムはもちろん、我々の日常までも支配しているという事実から始まる。書き込みによる被害、DDos攻撃による被害、ハッキングによる被害など「ファントム」の中の事件は、国内外のニュースを問わず、いつでも接することができる。チョ・ヒョンミンがセガングループの役職員を巻き込むために、あらゆる不正の証拠をスマートフォンのメッセージで送信するシーンは決定的だ。「ファントム」はチョ・ヒョンミンのこのような世界観を国内の現実に上手く取り入れている。現実にある程度近づきつつあるサイバー世界が、いつでも侵される可能性があるという恐怖、それを後ろで支配する幽霊のような存在が誕生するかも知れないという警告。そしてそれを止める人が幽霊のような存在であるハッカー、パク・ギヨンだという点からくるジャンルが与える面白さ。何よりもサイバー世界の匿名性で繋がっている「誰も信じられない」という「ファントム」のサスペンス装置。このように、幾多の構想と、解釈の余地を持つ「ファントム」の運命は、実際「太陽を抱く月」や「棚ぼたのあなた」のように国民ドラマになれるポジションではなかったと思う。最終回の放送まで2話しか残っていない「ファントム」の最高の視聴率が15%しか出なかったことがこれを証明している。しかし「ファントム」は演出者交代とともに、後半に行くほどぎこちなかった「サイン」とは違い、冒頭から結末に至るまで、一貫した完結性を見せている。「追跡者 THE CHASER」に続き、完成度の高いジャンルのドラマの出現を、長く心に刻んでおきたい。 
 - 「ファントム」オム・ギジュン、最終回を控えて感想を語る“ソ・ジソブ、イ・ヨニと共演できて嬉しかった”- 俳優オム・ギジュンが、ドラマ「ファントム」の放送終了を控えて感想を語った。オム・ギジュンは9日、自身の所属事務所の公式me2day(韓国のマイクロブログサービス)に動画を掲載し、「こんにちは。『幽霊』でチョ・ヒョンミン役を演じているオム・ギジュンです」と、SBS水木ドラマ「ファントム」(脚本:キム・ウニ、演出:キム・ヒョンシク)の放送終了に対する感想を語った。オム・ギジュンは、「9日に最終回を控えていますが、まだ放送されていないためか、今は終わったという実感があまりありません。撮影のほとんどを徹夜して撮ったので、全てのスタッフと俳優が眠気に襲われながら撮影していました。実際、僕はムン常務(パク・ジイル)が台詞を言っている時、その前で寝たこともあります。ほとんどのンーンが睡魔との闘いでした」と語った。また劇中、チョ・ヒョンミンの名場面と名台詞に対して質問されると、オム・ギジュンは「僕の名場面は第20話にあります。最終回で放送されます。たぶん始まってから40分ぐらい経ったら、出てくると思います。楽しんで見ていただければ、嬉しいです」と語り、最後まで結末に対する視聴者の期待を高めた。続いて「チョ・ヒョンミンが開発していたアンチウイルスソフトは失敗にしたことにします。どうせ、復讐は終わったから。そして、チョ・ヒョンミンは外国へと逃げます。誰も掴むことができないところへ。そして、遥か遠くへと逃げ、そこで幸せに暮らすんです」と、自身が望む結末について述べ、笑いを誘った。スタッフや俳優たちに対する感謝の言葉も忘れなかった。オム・ギジュンは、「少しは休むことができた俳優と比べて、少しも休めずに苦労したスタッフの方々に、改めてお疲れ様でしたと伝えたいです」と話した。また、「ソ・ジソブさん、イ・ヨニさんを含め、『幽霊』に出演したほとんどの俳優さんと初めてお仕事させていただきましたが、このように良い作品で共演できて嬉しかったです。また、ミョン・ゲナムさん、パク・ジイルさんを始め、良い教訓を教えてくださった先輩方にも感謝いたします。肉体的には大変でしたが、心だけは幸せでした」と感想を語った。最後に、悪役を熱演したオム・ギジュンは、「皆さん、そんなに嫌わないでください。ありがとうございます」と語った。「ファントム」は、韓国で9日の夜に最終回が放送される。 
 - 「ファントム」と「カクシタル」8日は通常通り放送予定“久しぶりの視聴率対決”- 「ファントム」と「カクシタル」が久しぶりに対決を繰り広げる。8日KBSによると、この日KBS 2TV水木ドラマ「カクシタル」19話は、午後9時55分に放送される。このことに先立って、同時間帯の他放送局のドラマが放送中止になり、「カクシタル」だけが放送された1日には視聴率18.0%(AGBニールセン・メディアリサーチ、全国基準)を記録し、最高視聴率を更新した。2日にはロンドン五輪のアーチェリーと柔道の中継のため、放送が中止された。一週間の放送中止になった「ファントム」は、8日午後9時40分に放送される。「ファントム」は、重量挙げの選手チャン・ミランの特集とオリンピック特集のSBS8ニュースに続いて放送され、その後はロンドン五輪のテコンドーの中継が放送される予定である。このことによりロンドン五輪の期間中、放送中止とソロ放送が不可避だった二作は、久しぶりに視聴率の対決をすることとなる。MBCも8日午後9時55分に、「アイドゥ・アイドゥ~素敵な靴は恋のはじまり」の後続作として15日の初放送を控えているMBCの新水木ドラマ「アラン使道伝」のスペシャル放送である「アラン使道伝を100倍楽しむ」を放送する。「アラン使道伝」は、慶南(キョンナム)密陽(ミリャン)のアラン伝説をモチーフにしたドラマで、自身の不当な死の真実を暴こうとする、記憶を失くした幽霊アラン(シン・ミナ)と、幽霊を見る能力があるクールな使道ウノ(イ・ジュンギ)が出会い繰り広げられる、朝鮮時代を背景にしたファンタジーロマンスだ。 
 - 「ファントム」 vs 「カクシタル」 vs 「追跡者」…復讐劇の全盛期- 復讐をテーマにした3つのドラマの共通点お茶の間が憤りに満ちている。今日も復讐、明日も復讐だ。朝と夜も問わない。午前9時45分tvN「黄色い福寿草」から始まった復讐劇は、午後10時5分放送のSBS「ファントム」、KBS「カクシタル」へと続く。先日高い人気を得て最終回を迎えたSBS「追跡者 THE CHASER」(以下「追跡者」)も、娘を殺された父親、ペク・ホンソクの復讐をテーマにしていた。視聴者は、心の中で、あるいは口に出して悪口を連発しながらテレビに釘付けとなった。短いものは16話、長いものは100話のドラマが終わるまで、復讐が終わらないことを知っていながらも、つい見てしまう。あちらこちらへ逃げまわる加害者を見れば、憤りが込み上がってくるが、テレビを消すことはない。ただ、悪いやつに罪の償いをしてほしいだけだ。復讐は、視聴者の集中度を高め、役者の演技を存分にアピールできるという点で、ドラマによく出てくるテーマだった。1999年「青春の罠」から2012年「追跡者」まで、たくさんの俳優たちが復讐を試みてきた。しかし、時間の経過とともに、復讐の権化も進化を遂げているのだろうか。最近のドラマに出てくる復讐は、過去の復讐とは2%ほど違う。その2%の違いを整理してみたい。私的復讐の全盛期「犯人は自分の手で捕まえる」最初の特徴は私的復讐だ。公権力から裏切られた主人公が自ら復讐に出る。法律がこれ以上、自分のために存在しないということに気づいたためだ。通常なら、悪人への復讐は自分でできなければ法律に頼る。しかし、公権力までも彼らは買収した。その次は手がない。自分自身が頼みの綱だ。公権力を信頼できず、法律で復讐することが不可能になり、自身だけを信じることにしたのだ。「追跡者」でペク・ホンソク(ソン・ヒョンジュ)の復讐の対象は、金と権力で検察と警察をすべて自分の味方にしてしまった大統領候補のカン・ドンユン(キム・サンジュン)だ。自身の政治的な目的のために、ペク・ホンソクの娘であるスジョンを殺したうえ、裁判の過程で援助交際に麻薬の濡れ衣まで着せた。自身の目的を叶えるためならば道端の虫たち(カン・ドンユンの表現)は踏みにじってしまう非道な悪そのものだ。ペク・ホンソクは真実という武器を持ってカン・ドンユンを攻撃するが、結果はいつも牛と戦う蚊のようなものだ。牛カン・ドンユンは、毎回絶妙なタイミングに蚊ペク・ホンソクに致命的な殺虫剤を撒く。「ファントム」キム・ウヒョン、もといパク・ギヨン(ソ・ジソブ)も同様だ。検察、警察、メディアが協力して真実を操作した事件、「シン・ヒョジョン事件」の犯人を明かすために死んだウヒョンの代わりにサイバー警察庁に入った。シン・ヒョジョン事件の犯人は、ウヒョンを殺し、自身をも殺そうとした人物でもある。ギヨンは、真犯人を捕まえ、ウヒョンの復讐を誓い、正義を守ることが目標だ。「カクシタル」も同様。弟のイ・ガント(チュウォン)は、日本の手先となり、カクシタルを捕まえるために躍起になり、兄のイ・ガンサン(シン・ヒョンジュン)を自身の手で殺してしまう。母も日本人の手によって殺された。イ・ガントは、自身の兄の代わりにカクシタルとなり、家族の復讐を始める。植民地支配への怒りもあったが、その前に家族の怨念をはらすための個人の復讐だ。ドラマの中の公権力の崩壊と私的復讐の横行は、崩れた正義への願望を物語っているような気がする。これらの主人公は、2年前に韓国で起きた正義ブームを思い出す。マイケル・サンデルの著書をはじめ、正義とは何かを問いかけていた時期だった。しかし、2年が経った今も正義は私たちにとって手の届かないようなものだ。政権末期の今、検察と警察絡みの不正事件、権力型の賄賂事件などが度々報道されている。そして、私たちは経験的に直感する。報道されている内容は、氷山の一角に過ぎないことを。正義は、あれだけ切なく叫んでも虚しい響きが戻ってくるばかりだ。ドラマの中の公権力の崩壊、同時に展開される私的復讐は、視聴者の疲労感を反映している。復讐対象の巨大化「掘り下げるほど大きい。その正体は」2番目の特徴は、復讐対象の巨大化だ。復讐の対象は、掘り下げれば掘り下げるほど、巨大だ。一歩一歩復讐に近づくほど、その対象は主人公を徹底的に踏みにじる。そのたびに法律は冷たく主人公に顔を背ける。「追跡者」ペク・ホンソクの矛先は、支持率70%を超える大統領候補のカン・ドンユンに向けられる。ここに、財界1位のハンオグループも欠かせない。「ファントム」キム・ウヒョンの復讐の対象は、セガン証券の社長からセガングループの会長になったチョ・ヒョンミン(オム・ギジュン)だ。復讐だけのために10年間刀を研いできたチョ・ヒョンミンは、金で検察と警察を買った。「カクシタル」でもイ・ガントの復讐の対象は、広く見れば日本帝国だ。スケールでみれば前の2つのドラマを圧倒する。このように巨大な復讐の対象は復讐を試みる主体、個人を限りなく小さくする。一生懸命に準備して、やっと主人公が一発食らわす時がきても、それは攻撃にもならない。何かやろうとすれば根こそぎにされてしまう。そのたびに視聴者は無力感を感じる。同時に、憤りのゲージは上昇する。復讐の二重らせん「復讐は良い人ばかりがするものではない。悪い人も復讐する」最後の特徴は、1つのドラマの中に2つ以上の復讐が絡んでいることだ。「追跡者」には娘を殺した人に向けたペク・ホンソクの復讐以外にも、シン・ヘラ(チャン・シンヨン)の復讐がある。ヘラの復讐は、父に濡れ衣を着せて死に追い込んだハンオグループと正義を守らなかった世界への復讐だ。「ファントム」もキム・ウヒョン(パク・ギヨン)の復讐とファントム、チョ・ヒョンミンの復讐が共存する。ファントム、チョ・ヒョンミンの目標は、自身の父に濡れ衣を着せて死なせた叔父(ミョン・ゲナム)を同じ方法で破滅させることだ。「カクシタル」で優しい日本人の典型として登場したシュンジ(パク・ギウン)は、兄を殺したカクシタルに復讐するために日本の警察になった。以前の復讐ドラマでは、復讐をする対象とされる対象がそれぞれ被害者と加害者に二分されていた。しかし、最近のドラマでは加害者もある側面では被害者になる。その中で復讐はストーリーをより強力なものにする。その分、視聴者の共感度も高まる。悪行を繰り返す悪人だが、「悪魔になるには、あの人にも理由があったんだな」と共感することになるといった形だ。悪魔の犯罪そのものを理解することはできないが、悪魔の憤りにはある程度共感することになる。復讐劇の基本が視聴者の共感を呼び起こすという点では、様々な共感できる仕掛けを設けておくことは復讐劇として興行する要素となる。私たちは知っている。ドラマが終わる前までは復讐は終わらないことを。しかし、どれほど腹が立っても最後まで見てしまう。1999年には、「青春の罠」でのシム・ウナのように「あなた、ぶち壊してやる」と叫んだ。13年が経った今、依然として私たちはテレビを見て憤る。主人公の復讐は、その時よりも緻密になると同時に無力になった。復讐劇は13年間進化した。しかし、復讐劇は今後なくなる事はないだろう。この地に復讐を必要とすることがなくならない限り。 

















