あなたは「ファントム」と「紳士の品格」どちらをご覧になりましたか?
写真=SBS
最終回を迎える「ファントム」と「紳士の品格」、現実とジャンルを向き合わせる
まず、海外に進出した映画監督たちからジャンルに関する考えを聞いてみよう。「スノーピアサー」のポン・ジュノ監督はNAVERの映画担当とのインタビューで「ビデオレンタルショップに行ってもアクション、コメディと分けられています。僕はどこに置けばいいのか分からない、そういう映画を作りたいと思います」と話したことがある。今はグローバルプロジェクトにまで参加するポン・ジュノ監督。彼はこれまで社会派コメディ「ほえる犬は噛まない」、80年代の農村スリラー「殺人の追憶」、“左翼”と呼ばれた怪獣映画「グエムル-漢江の怪物-」、“母性”と“セックス”が融合された「母なる証明」などの作品に韓国社会の地域性という要素を散りばめていた。
「悪魔を見た」のキム・ジウン監督は少し違った。彼は「ジャンルを選択することでテーマが選択される。ノワールは人間の浮き沈みを、ホラーは見えない世界に対する恐怖、ウエスタンは果てない欲望の疾走を描きたかった」と述べた。彼は最近アーノルド・シュワルツェネッガーが出演したハリウッド進出作のアクション映画「Last Stand」の撮影を終えた。
補足すれば、ジャンルを混ぜて、積極的にカメラが向けられた現実を引っ張ってきたり、あるいはジャンルの中に入りこんで、ジャンルを脚本家の手により再創造する。そしてその中に反映される韓国社会。
映画との直接比較は無理だろうが、2ヶ月間視聴率や話題性の面で視聴者の支持を受けてきたドラマ「ファントム」(脚本:キム・ウニ)と「紳士の品格」(脚本:キム・ウンスク)は、警察スリラーとラブコメディというジャンルに他のジャンルの要素を取り入れた事では、二人の監督が話していた正反対のジャンル論の範疇に入っていると言っても過言ではないだろう。
「ファントム」キム・ウニ脚本家の“スリラー3部作”を期待する理由
まずは警察スリラーの「ファントム」。キム・ウニ脚本家は、前作の「サイン」では監察医が暴く事件の真実という前提で、通り魔殺人、財閥の暴行、在韓米軍の犯罪、そして有名アーティストの未解決殺人事件まで、新聞の社会面に登場していた実際の事件を連想させるエピソードで物語にリアリティを与えていた。「ファントム」は一見、その範囲が狭くなったように見えるが、実は拡大している。限定的に行われそうな犯罪が、現代人の生活と繋がってもっとリアルになり、さらに共感を広げるようになる。何よりサイバー犯罪の“匿名性”と“波及力”に注目したのは素晴らしい選択だった。
例えば昨年韓国社会を騒がせたDDoS攻撃事件(標的となるサーバーのサービスを不能にする攻撃)、女性芸能人を死に追い込んだ悪質な書き込み、毎日のようにニュースに登場するハッキングや個人情報流出、人間の精神まで病んでしまう盗聴や民間人への違法通信傍受。こうした小さなエピソードとともに、“コンピューターは人間の脳と一緒”という考えを示唆した。ネット世界を支配し、個人的な復讐を実行していく“ファントム”ことチョ・ヒョンミン(オム・ギジュン)の存在はまた新鮮だった。
各事件を後ろで操っていたチョ・ヒョンミンの世界観は、結局、ネット世界が簡単に犯されるかもしれないという恐怖と繋がる。キム・ウニ脚本家はそれを“ゴーストハッカー”パク・ギヨンの存在と関連付け、「誰も信じられない」というスリラーの基本と繋げ、安定的なストーリーを構成した。即ち、しっかり作り上げた警察スリラーに韓国社会の現実をうまく映し出している。だからこそ「サイン」「ファントム」に続く彼女の“スリラー3部作”の完成が待ち遠しいのだ。
「紳士の品格」ジャンルの融合と2つの品格
一方、ラブコメディやシンデレラストーリーではトップレベルともいえるキム・ウンスク脚本家の「紳士の品格」はより興味深いケースである。40代前半の4人の男の恋愛と友情を描いた同作は、男性版「セックス・アンド・ザ・シティ」を連想させるが、それよりは2012年版韓国風のラブストーリーに近い。前作と最も異なることは、4カップルを同等に描いていることである。気難しい建築家のキム・ドジン(チャン・ドンゴン)と典型的なラブストーリーの女主人公、ソ・イス(キム・ハヌル)、40代前半の韓国男性と最も似ている、イム・テサン(キム・スロ)とプロゴルファーのホン・セラ(ユン・セア)、16歳も歳の離れたカップル、チェ・ユン(キム・ミンジョン)とイム・メアリ(ユン・ジニ)、そして物凄いお金持ちの“清潭(チョンダム)の魔女”パク・ミンスク(キム・ジョンナン)と可愛い浮気者のイ・ジョンロク(イ・ジョンヒョク)まで。
並べるにも時間がかかるこの8人の主要登場人物への個性的な描写とドラマチックな共感こそ、「紳士の品格」を視聴者が支持した理由だろう。しかし面白いのは「紳士の品格」のキャラクターに染み込んでいる90年代の情緒への懐かしさと、お金あるいは階級の差への直視が相互補完的になっていることである。
「われらの天国」「フィーリング」などで人気を博していたチャン・ドンゴンとキム・ミンジョンのイメージと合わさって、「紳士の品格」は時々90年代、彼らが20代だった時代に戻る。主な葛藤の一つがキム・ドジンと初恋の相手の間で生まれた、息子のコリンである。まだ独身だったり、妻を亡くして独身生活に戻ったり、結婚はしているが浮気者だったり、この4人の男は“男”は歳をとっても“子供っぽい”の言葉通りに、または90年代の青春に戻ったように見えるほどだ。
この4人に経済的に大きな影響を及ぼす、ビルを何棟も持っているパク・ミンスクの描写も見ておこう。「お金持ちは心じゃなくお金で判断する」とか、貧乏な高校生に「さっきあんたが見たのが、これからあんたが学校を卒業して生活していく世界だ。これが貧乏人が勉強をしなければならない理由よ」というセリフを連発するパク・ミンスクは、「紳士の品格」を面白くする“お金持ちの品格”の象徴である。そして2012年の韓国でパク・ミンスクは、リアリティのあるキャラクターとして、絶大なカリスマ性を持つ女性として、脚光を浴びている。愉快なラブコメディの「紳士の品格」はこの二つの世界が出会わなければ、成立できない“品格”を語るドラマなのだ。
そして今週は、オリンピックによって番組が休止された「ファントム」と「紳士の品格」がようやく放送されるという。誰かは「サイン」に続き、「ファントム」でも主人公が死ぬのではないかと心配していて、誰かは「紳士の品格」の4カップルがどのようにハッピーエンドを迎えるか期待しているだろう。
結末がどうであれ、この2作品が上げた成果は、ジャンルを自由自在にミックスすると同時に、脚本家の目に映った韓国社会を適切に、あるいは問題点を反映したということであるだろう。あなたは「ファントム」と「紳士の品格」のどちらをご覧になりましたか。
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2012/12/31 (月) 21:30~26:00
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- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- ハ・ソンテ
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