「優しい男」みえみえの展開だが、愛は輝く

このドラマには確かに視聴者を引きつける力がある
KBS 2TVドラマ「優しい男」が第9話まで放送された。第9話では、記憶を失ったソ・ウンギ(ムン・チェウォン)、彼女の行方不明で堕落の道に入ったカン・マル(ソン・ジュンギ)、そしてテサングループの代表取締役になったハン・ジェヒ(パク・シヨン)の話が描かれた。9話だけでなく、毎話事件や事故が絶えず、劇に緊張感を与えているが、その装置は他のドラマと差別化されたものではない。病気にかかった財閥、横暴をふるう主人公の兄、財閥の後継者を心から愛する秘書などは、かなり前に人気を得たドラマ「青春の罠」にまで遡らなくてもなじみのある題材だ。
多様な事件が起きてから解決される過程は、実はドラマや映画で一番簡単に作れる装置だ。また、その事態が深刻になるほど、視聴者はドラマに没頭しがちだ。主人公の悲劇はますます発展するし、交錯するラブーストーリーは毎話を待たせる原動力になる。だが、心理戦でもない事件や事故は結局解決されるはずで、予想する必要さえないように感じられるのも事実だ。
それだけでなく「優しい男」は、数々の劇的な装置で主人公の急変する感情を見せるだけで、関係に伴う成長はきちんと描いていない。厳しい教育を受けながら成長したヒロインが全く予想もできなかった愛に目覚めることになること、そして記憶喪失になって再び愛を取り戻すことが“成長”だと言うなら、これは甘すぎる。
悲劇的なドラマで周辺の人物は、主人公とは違って軽く描かれる。病気を持っているが無邪気なマルの妹(イ・ユビ)や女なら目がない経営学部の学生、パク・ジェギル(イ・グァンス)などがそうだ。これは、脇役の軽い姿と主人公の悲劇を対比させるためだと見られる。だが、ドラマが名作になるためには、主演と脇役の関係が緊密で相互補完するものにならなければならない。第9話に至ってやっと脇役の役割が少しずつ軌道に乗るように見えることは、そういう意味で幸いなことだ。

主人公の指先、つま先一つにも悲壮感があふれる。バックミュージックも彼らを囲んだ空気を一層重く感じさせるようにする。台詞は、俳優の切ない目つきに加え、胸をえぐり取るように痛く聞こえる。貧民街のアバラ屋まで綺麗に映された絵のような美しい風景も見ものだ。
第7話でムン・チェウォンの雨の中での告白、「私にはファーストキスだった。あなたとしたもの」「今、私の唯一の願いは、あなたと毎日向かい合って毎日愛してると言い、毎日同じ夢を見ながら子供も産んで、そのように一緒に年をとっていくことだ」は、もう一度視聴者の日記帳や手帳の片隅を飾ることになるのだろう。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- ハン・ギョンヒ
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