「殺人の疑惑」ソン・イェジン“獣のようだという言葉、気持ちよかったです”
父親を疑う娘役でスリラーに挑戦「一難去ってまた一難、逃げたいと思った」
ソン・イェジンは忙しい。いや、それより休まず走ってきたと表現した方が良いだろう。いつからか年に2本の作品に出演している彼女は着実に人々の前に立っている。それも毎回違う姿で。2011年には映画「恋は命がけ」でホラー・ラブコメディという新しいジャンルを披露し、昨年末には「ザ・タワー 超高層ビル大火災」(以下「ザ・タワー」)で激しいアクションもこなした。このニ作品は共に興行に成功した。新人監督との作業、または多少ありふれた話という限界を乗り越え、ソン・イェジンは堂々と自身を立証した。そして彼女はもう一度挑戦状を出した。今回はスリラーだ。スリラーはソン・イェジンが初めて挑戦するジャンルである。「もしやジャンルのグランドスラムを狙っているのか」と聞いたら大きく笑う。女神のような外貌だが、こういうときは気さくな人柄がそのまま表れる。
どんな映画より厳しかった「殺人の疑惑」…なぜ?
推するに、15日にマスコミ向け試写会で公開された映画を見てソン・イェジンが出演したどんな映画より大変だったのだろうと思った。児童拉致殺害事件の犯人が自身の父親だと疑い、絶えず変わる感情のためだ。画面の中で赤くなったソン・イェジンの目は映画が終わるまで変わらなかった。「今までやった作品の中で一番大変だったのは事実です。感情の高低差も大きかったですが、それを繰り返す回数も多かったのです。これまで映画を撮りながら感情を表現するシーンをたくさんしてみましたが、『殺人の疑惑』は本当に“一難去ってまた一難”でした。ある程度やり遂げたと思ったら、また違うシーンがあって、それをこなしたらもっとひどいシーンをしなければなりませんでした。最初から疑い続けるのではなく、ないと思っていたが、ある程度時間が経ったらまた疑いが生じるパターンです。父親を追跡しながら、より大変な瞬間もできていろいろと課題が多かったです」
予告編だけ見ても分かるような気がした。キム・ガプスに向かって「お父さん(犯人)だよね?」と詰めよるシーン。全身を震わせながら相手を見つめるそのシーンをソン・イェジンは一番大変だったシーンだと言った。3回のテイクを終えた後OKサインが出た当時、ソン・イェジンは手先がしびれてきて体から力が全部抜けるような感じだったと言うほどだった。
実は、ソン・イェジンが「殺人の疑惑」を選んだのは自身を少し苛めたいと思ったためだった。「ザ・タワー」以来何だか感情が吹き荒れるシナリオに興味が沸いてきたし、そんな感情演技に挑戦したいという考えも強かった。彼女の演技を見たパク・ジンピョ監督(「殺人の疑惑」の制作を担当)が“獣のような女優”と称賛するほどよくやったが、ソン・イェジンは自ら大きな壁を乗り越える経験をしていた。
「本当に最後の撮影のときは逃げたかったです(笑) 個人的に大変なこともあったし、全てが一気に押し寄せました。仲良くしていた照明監督さんに大変なことがあって一緒に大変だった時期でしたので。実はその中でも獣のようだという修飾語は気持ちよかったです。動物的感覚があるという言葉じゃないですか。身の毛がよだつほど共感させたい気持ちが大きかったです。それだけこの映画への責任感は2倍、3倍でした。
シーンごとにどれだけの感情を見せるべきかというラインがありましたが、私がそのラインを表現できなければおしまいだと思いました。それで逃げたくて苦しかったと思います。やりたくて選択した作品ですが、設定そのものが持っている力が私を否定的にしました」
魅力を感じたことのないスリラー「感情をよく追ってみてください!」
それだけにソン・イェジンはキャラクターにあまり近づこうとしなかった。寂しくて世の中から捨てられた感じを日常にまで持って来たくなかったためだ。代わりに重要な撮影では集中力を発揮し、発散させようとした。それは“一夜漬け”の演技と言えるのだろうか。感情が深いだけ生の演技が必要だったため選んだ方法だった。演技を離れ、この作品は新人監督のデビュー作という点でもソン・イェジンには意味がある。「永遠の片想い」(2002)から始め「君に捧げる初恋」(2003)、「ファム・ファタール」(2007)、「白夜行-白い闇の中を歩く-」(2009)「恋は命がけ」(2011)などソン・イェジンは新人監督と縁が深かった。ジャンルのグランドスラムという言葉と共にこれも注目すべき部分だ。
「女優になることもかなり大変ですが、監督になることも難しいでしょう。私と一緒に新人監督たちがかなりデビューしました(笑) もうやらないと思っていましたが、今回の作品も監督が直接シナリオを書いたので信頼しました。もちろん、感情演技が多くて新人の監督が俳優をどれほどうまくコントロールできるのだろうかと心配もしました。それでもパク・ジンピョ監督の助監督として三作品以上していましたので、よくできるのだろうと思いました。
ところで、ソン・イェジンはこれまでスリラージャンルに魅力を感じたことがないと言う。「見ることはとても好きでしたが、演技したいとは思いませんでした。『殺人の疑惑』はカメラワークなどで緊張感を与えるのではなく、感情をじっくり追っていく魅力があります」と他の作品と違う特徴を述べた。
実は「殺人の疑惑」は、制作費の規模だけで言うと30億ウォン(約2億7800万円)未満で商業映画としては小規模だ。雰囲気も違い、役割も違うが、ソン・イェジンは「あえて『殺人の疑惑』が代表作の一つになればと思う」と話した。誰かが代表作は何かと聞いたとき、ソン・イェジンが「『殺人の疑惑』!」と答えられるようになればと思う。あとは観客たちの選択だけが残った。
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- イ・ジョンミン、イ・ソンピル 写真 : イ・ジョンミン
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