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「暗殺」イ・ジョンジェ“これまでで最も難しい作品のひとつだった”

oh!my star
映画「暗殺」についてイ・ジョンジェは「徹底して寂しく、それだけもっと図々しくならなければならなかった」と述べた。ハ・ジョンウ、チョン・ジヒョン、チョ・ジヌンなど指折りの俳優たちが大勢共演した。彼らが一緒に1930年代に戻り、抗日武装闘争を繰り広げる。その中でもイ・ジョンジェが演じるヨム・ソクジンは、彼らを集め“作戦”を実行する大韓民国臨時政府警務局の長だ。

ストーリーにおいて彼は、すなわちストーリー全体といっても過言ではない。職責のためだけではない。同胞たちを呼び集めながらも、意図を読めない行動のお陰で張り詰めた緊張感が漂う。「その時代にもあんな人やこんな人がいました」とするイ・ジョンジェの言葉から妙な気配が感じられた。最近ソウル三清洞(サムチョンドン)にあるカフェで彼に会い詳しい話を聞いた。


ヨム・ソクジンに対する疑問……独立運動家なのか、生きようとした自然人なのか

「暗殺」は歴史的な事件を扱っているが、登場する人物はすべて仮想の人物だ。そのため日本帝国の2人の大物を暗殺する任務を遂行するキャラクターは十分に現実的でなければならず、それと同時にドラマチックでなければならなかった。

演出を務めたチェ・ドンフン監督からの口頭のオファーに快く承諾の意思を伝えたが、シナリオを読んだ後イ・ジョンジェは「実は、困った」と告白した。「なぜよりによってヨム・ソクジンなんだろう。僕はどうすれば良いのか」が先に頭に浮かんだという。時代の絶望の中で生きる姿を表現するために15kgほど減量し、声のトーンを変えるために毎日発声練習をした。しかし、物理的な努力ではなく、彼が集中しなければならなかったのは、ヨム・ソクジンそのもので生きられるかどうかだった。

「シナリオを読んでその場で30分間何もできずボーっとしていた。『本当に良い映画が出来上がりそうだが、僕はヨム・ソクジンだな。どうしよう』だった。当時は独立運動家とともに同胞を売った人もいたはずで、何もしなかった人もいただろう。しかし、このすべてが我々の姿かもしれないと思った。ヨム・ソクジンもまた、実在する人物の一人だと思った。

映画にキム・グ先生が出る。あの方は全国民が知っている偉人だが、キム・グを演じたキム・ホンパ先生もどう演じれば良いのか分からないとおっしゃった。本当にたくさん準備された。入れ歯で歯を強調したり、顎のラインを伸ばしたり。僕もまた、ヨム・ソクジンがキム・グほど韓国人なら誰もが知っている人物のように思えた。そこで、僕のやり方で感じるまま演じるわけにはいかなかった」

責任感よりもっと大きな重みがイ・ジョンジェを苦しめた。自身に1930年代に生まれていればどんな選択をしたか問いかけたこともある。イ・ジョンジェは「ヨム・ソクジンのように(危機的な状況で)命を乞うか、また違う選択をしたかは分からないが、少なくとも映画のためにヨム・ソクジンは大衆の常識よりさらに悪くなる必要があった」と説明した。主な参考資料は地上波3社および外注制作会社のドキュメンタリーをはじめとするあらゆる文献だった。イ・ジョンジェはさらに密偵、スパイに関する史料を見ながらヨム・ソクジンを埋めて行った。


イ・ジョンジェの飛躍……「多彩なイメージチェンジ?まだ弾はたくさん残っている」

約5ヶ月間ヨム・ソクジンとして暮らした後、イ・ジョンジェは空虚さにしばらくの間苦しんだ。撮影現場でもよく設けられた飲み会まで欠席しながら自らを孤立させるほど愛着を持った人物だったためだった。彼は「空虚さを共有する人がいなく、チェ・ドンフン監督に頼るしかなかった」と告白した。信念が強かった人物が、外部の暴行にいかに崩れるかを表現する課程で倫理的な葛藤も感じた。

イ・ジョンジェのキャスティングについてチェ・ドンフン監督は「イ・ジョンジェは何かを隠しているのは確かだが、それをまだ思い切り見せていない俳優のようだ」と表現した。これを伝えるとイ・ジョンジェは「見せなかったのではなく、見せられなかったこと」とし「まだ弾はたくさん残っている」と返した。2000年代以後彼が出演した作品がその証拠だ。「イルマーレ」(2000)「ラストプレゼント」(2001)など恋愛映画に強みを見せた彼は「タイフーン/TYPHOON」(2005)と「ビッグマッチ」(2014)でタフなアクションを披露した。その中間に「泥棒たち」(2012)のようなとんちの効くキャラクターの作品があった。

「様々な作品を挙げて『暗殺』が最も難しい作品のひとつだった」とイ・ジョンジェは真剣に打ち明けた。誰からも強要されない、本人に対する“切実さ”のためだった。

「どの俳優も同じだと思うが、ターニングポイントとなるキャラクターがある。僕にもそのようなキャラクターがいくつかあり、それが今まで仕事をできるようにした動力だったとすれば『暗殺』のヨム・ソクジンはおそらく、これから僕が演じられるようにする動力になるだろう。成績?もちろん重要だ。この作品だけでも韓国と中国人のスタッフ400人が動いている。特に、韓国人のスタッフは全員が独立運動をする気分で撮影に臨んだ。中国上海と韓国のあらゆる場所を行き来しながら手に負えないことを成し遂げた。撮影が終わった後の打ち上げパーティーで雰囲気がざわついた。ほとんどが泣いた。

実は映画を撮影するときは、どうすればもっと格好良くなるか、どうすればもっと生々しく伝えるかを悩むが『暗殺』は今の時代になぜ作られなければならないのかに対する質問から始めた。映画を見て様々な意味を探す方々が多いだろう。僕もまた、今後演技をしながらどのような色がつけられるかよく分からないが、この作品を通じて違う色をつけられたらとても幸せだと思う」

過去を生きた複数の独立運動家の一代記を通じて、観客は何を問いかけるのだろうか。「善なのか悪なのか分からないヨム・ソクジンの姿も結局あなたの一部」とイ・ジョンジェが述べた。暗殺作戦を展開する様々な人物は剥製されておらず、それぞれの鏡になり今を映しそうだった。少なくともそのような映画の力のためにイ・ジョンジェは献身した。

元記事配信日時 : 
記者 : 
イ・ソンピル、写真 : イ・ジョンミン

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