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「追跡者」一本のドラマが数十のメディアよりもずっと“マシ”な理由

TVレポート
写真=SBS「追跡者」スクリーンショット
庶民を担保に捕らえ、貪欲を露にしている財閥や政治界の理不尽な実情をどの作品よりもリアルに描いたSBS月火ドラマ「追跡者 THE CHASER」(以下「追跡者」)が、残すところ最終話のみとなっている。

韓国で5月から放送された「追跡者」は、現代社会でドラマにできるプラスの役割をきちんと果たした作品だった。同ドラマは、庶民の犠牲を糧にする財閥や政治界の力関係をリアルに描き、国民の“知る権利”を相当部分満足させた。

しかし、視聴者が怒りを感じる理由はまだある。権力の思惑を知っていながらも、知らないふりをして記事にしない、ものの言えないマスコミや、それによって知る権利を奪われた国民、すなわち我々自身の姿を目にすることができたためだ。

同ドラマは、これまで理不尽な社会について生かじりの報道だけを並べてきた数十のメディアに、強いパンチを飛ばしたと言える。

劇中でテレビ局の社会部記者、ソ・ジウォン(コ・ジュニ)は、ペク・ホンソク(ソン・ヒョンジュ)事件の真実を報じるために何回も努力を続けた。しかし、ソ・ジウォンの努力は、常にテレビ局の上司たちによって遮られた。権力の機嫌を伺うテレビ局の中枢にとって、ソ・ジウォンが取材した真実は言葉通り“隠したい真実”だったためだ。

これは、ドラマだけに存在することではない。今年KBSの労組とMBCの労組のストライキも、真実を隠し、政権と財閥のみのスポークスマン(代弁者)に転落してしまったマスコミ関係者の自責や喪失感から始まったものだった。

「追跡者」の中で、マスコミへの非難は最後まで続いた。韓国で10日に放送された「追跡者」で、ペク・ホンソクの隠しカメラの映像が国民にまで届いたのは、結果的に財閥総帥の長男、ソ・ヨンウク(チョン・ノミン)の力があったためだった。

ソ・ヨンウクはカン・ドンユン(キム・サンジュン)が大統領になれば、大きな被害があると判断し、隠しカメラの映像が記事になるように力を発揮した。すなわち、財閥の力が、有力な大統領候補に関する記事を躊躇っていたマスコミを動かしたと言える。

それだけではない。カン・ドンユンの落選が確実なものとなった16日の「追跡者」でも、ソ会長(パク・グンヒョン)は自分と距離を置こうとする大統領選挙の当選者に自分の力をアピールしようと、マスコミにこんな指示を与えた。「ハンオグループの経済研究所に電話し、来年の経済成長率を何%か落として新聞に出せ」と。

ドラマとは、現実を反映するものだ。「フィクション」と言っても、現実と離れた人生を描くことはできない。

このように「追跡者」はフィクションであるということを盾に、これまでマスコミが伝えられなかった現実を伝え、視聴者に衝撃を与えた。何よりも国民が「まさかそれほどだとは」と半信半疑でいた権力の世界について、これからは新しい視線で、もう一度疑問を抱けるきっかけを提供した。

「追跡者」の影響力がここまで大きいことを考えると、最終話だけが残っている今、こう思うのは当然なのかもしれない。「追跡者」、この上出来のドラマは、ものの言えない数十のマスコミよりもずっとマシだと。
元記事配信日時 : 
記者 : 
ウォン・スクヨン

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