【REPORT】韓国の実力派アーティストが揃い踏み!日本での活躍が期待される5組のショーケース
10月25日、「K-POPアーティストの原石を探せ!」をコンセプトに、韓国の新鋭アーティストを紹介するショーケース・イベント「KOREA SPOTLIGHT」(主催:韓国・文化体育観光部)が渋谷・Spotify O-EASTにて開催された。2013年にスタートし、日本では2度目を迎えた本イベント。今回は、NELL、ADOY、Gaho、SOLE、チョン・ホンイルの5組がステージに立ち、会場には「K-POPのライブを生で見てみたい!」「ダイヤの原石を発掘したい!」と願うK-POPファンが多数、詰めかけた。
デビュー以来、4ピースの編成で活動してきたが、今年に入り、キム・ジョンワン(Vo & Gt)、イ・ジェギョン(Gt)、イ・ジョンフン(Ba)の3ピースへと改編した彼ら。元Piaのヘスン(Dr)をサポートメンバーに迎えてステージに立てば、まずはジョンワンが「Hey」とシャウトし、頭上で両手をクラップ。それに合わせてフロアも大きく手拍子を合わせ、彼が浮遊感を漂わせて「ある日の中のそういう日」を歌う。別れた彼女への想いを綴るが、後半では演奏に激しさが加わり、フロアの熱気は高まっていく一方。
そしてトリッピー&タイトな「All This Fxxking Time」ではステージが赤く染まり、イントロだけでも黄色い歓声が! 続く「Full moon」では弦楽器の壮大な調べにのせてフロアが再びクラップを放ち、ヒートアップするファンに応えるように、大迫力のステージングで魅せていく。さらにラストはジョンワンがオーケストラのコンダクターのように両手を広げて、スタイリッシュにフィニッシュ。「Ocean of light」ではフロアを飲みこむような音の洪水に対し、ファンが右手を高く掲げて呼応し、NELLは圧倒的なサウンドで会場の一体感を創出した。
MCではジョンフンが「今日はKOREA SPOTLIGHTコンサートに参加できて、とても嬉しいです。今日は楽しい時間を過ごして下さい」と話し、左手を掲げて「ファイト!」とファンにエールをプレゼント。「白色矮星」ではじっくり聴き入るファンにドラマティックな解放感をもたらし、ラストの「寄生虫」では再び赤く染まった館内でジョンファンが雄叫びからの「カモン!」を合図に、アグレッシブなサウンドでファンにマックスの興奮を贈る。
終盤には「この後も素晴らしいミュージシャンがたくさん残っているので、最後まで楽しんで下さい。OK?」(ジョンフン)と話して、後輩を気遣ったNELL。「近いうちにまた日本でお会いしましょう」と約束し、コンパクトなステージながらもサスガの存在感を見せつけていた。
まずはバンドメンバーが、彼の出自ともいうべきメタル・サウンドをかき鳴らし、彼のバックグランドを強烈にアピール。ステージに立ったホンイルは胸に手を当て一礼し、スクッと立つ。ブレイク後にリリースしたシングル「手の届かない記憶」を披露すれば、力強くも綺麗に伸びる歌声が炸裂し、その声は客席の耳ではなく魂に響いてくる。続けて、番組出演と並行してリリースした、初のソロ名義EP『息することさえできれば』から表題曲をチョイスし、圧倒的声量と、自在にコントロールするボーカルワークでフロアを完全に掌握。歌い終えれば、改めて左手を胸に当て、ファンに感謝し、ステージマナーにも彼の誠実な人柄が表れていた。
そして、「私たち、皆、それぞれ送って来た人生があります。僕の幼かった頃を思い出して、歌いたいと思います」と話して、メタルバンド時代の名曲「幼い頃、その記憶の中で」をブルージーに披露。バックには夕焼けに染まる広大な海が描かれ、ホンイルが両手を広げてゆっくりとクラップすれば、フロアも拍手に包まれる。その後、「皆さんの前で歌うことが出来て、光栄です。この日を心待ちにしながら準備してきました」と語り、この日にリリースしたばかりの「Welcome」を最速で全世界初披露! それまでの作風とは全く違ったポップなサウンドで、別の貌も見せた。さらに、両手を大きく広げた後には音楽性をまたもガラリと変えて、オク・テギョン主演のドラマ「ブラインド」から挿入歌の「Days in the dark」を。左耳に手をかざしながら「もっと、もっと盛り上がっていきましょう」と煽り、メタルを全開にしていく。歌い終えても、彼は攻めの姿勢を崩すことなく、すかさず両手をクラップし、シンガー・ソングライターのイ・ジョクが20年前に発表した名曲「空を走る」をハードにカバー。ジャンプしながらのパフォーマンスにフロアも縦揺れとなり、「ソリジロ~(叫べ~)」とシャウトすれば、客席から悲鳴にも似た歓声が沸き起こり、熱量の高さがハンパない! 終盤の「ソリジロ~」では自身もまたジャンプし、全力で走り切るかのようなステージングにファンは笑顔で大興奮!
さらにラストには映画『カンナさん、大成功です!』でお馴染みの「マリア」(原曲:ブロンディ)をセレクト。「ラスト・ソング、マリア」と左手を高く掲げながらシャウトした後には「Make some noise」と吠え、メタル・バージョンで演じていく。「シングアゲイン」のセミファイナルで披露されたこの曲は、イ・ソンヒが興奮気味にベタ褒めし、ユ・ヒヨルが「体型、ヘアスタイル、顔、ジェスチャー含め、すべてが本物のヘビーメタル歌手」と称賛した激ヤバ・チューン……それを生で見れるのだから、こんな贅沢はない。彼は「ソリジロ~」と吠えながら、マイクをフロアに突き出し、その態勢のまま、ステージを右から左へ。フロアの歓声を全てキャッチし、それをまた自分のパフォーマンスに反映させていく。こうして客席を熱狂の渦に巻き込んだ後は、「Thank you! 有難うございました」と爽やかな笑顔でステージを後に。歌、パフォーマンス、ステージマナー、その全てがどこまでも格好良かった。
「東京、初めまして~」と可愛らしく自己紹介した後には、9月にリリースしたばかりのリメイクEP『A Love Supreme』から先輩バンドNELLの「心を失う」を選び、じっくりとシンギング。歌い終えてニッコリと微笑んだ後は、「次の曲は一緒に踊って下さいね」と話して、「ウムウム」へ。ハートマークをプレゼントしながら軽やかに舞う彼女の笑顔にフロアも横に揺れる。アルバム持参で駆け付けたファンが多いことに喜んだ彼女は、その後もR&Bなラブソング「LOVIN' U」を続け、マイクを客席に向けると会場が一つになって「ナ、ナ、ナ~~」と声を上げる。そしてラップパートでは2ステップ・タッチのオリジナル・アレンジで演じ、クールネスが倍増!
再びリメイク・アルバムから、レゲエ~ソウル・バンドWINDY CITYが歌う傑作チューン「Love Supreme」をチョイスすれば、その極上ソウルに会場はラブリー・ムード。女性歌手、羅美が92年にリリースした「そばに行きたい貴方」をカバーする際には、左拳を握りしめて「頑張ります!」と気合を入れて臨み、ラストは自身の原点となる「RIDE」を。ファンに語り掛けるように手を振りながら演じ、最後は彼女の呼びかけでフロアの手が大きく左右に揺れていた。
ライブではソウルフルに、ラブリーに演じるが、MCでは彼女の可愛らしい素のキャラが浮き彫りになる。客席にハローキティな応援ボードを見つけると、「カワイイ、So Cute」と喜びながら、それを受け取ったり、ファンにハートマークを贈りながら「愛してる~」と声をかけてみたり。そんな姿にフロアから「可愛い」の声が飛び交い、彼女もファンとの交流を楽しんでいるようだった。終盤、「今日、皆さんと会って、とっても幸せです。皆さんも幸せになるように、願っています」とファンへメッセージを贈ったSOLE。「また、会いましょう」と再会を約束し、手を振りながら舞台を後にした。
どこまでも続くワインディング・ロードを背景に颯爽と登場したGAHO。もちろん、オープニングは「始まり」しかない。彼が右手を力強く突き出せば、会場は一つになって「オッ!」と声を上げ、パワー漲るパフォーマンスがK-POPファンもドラマ・ファンも巻き込んで、大きなうねりを作っていく。ラストはロックなフェイクでフロアをノックアウトし、ここからロッカー、GAHOが迫力のライブをブチかましていく。続く自作曲「Beautiful Night」ではモニタースピーカーに片足を乗せながら、ステージに片膝をつきながら、さらにはドラムの演奏に合わせて何度もコブシを突き上げながらと、歌うことの楽しさを全身で発散させながらパフォーマンス。途中、演奏がレゲエ調にチェンジすれば、ラップ風に歌い、変化自在に魅せていく。
会場に居合わせた全ての人が待ちに待った、GAHOの初ライブ。初のMCでも彼は日本で歌える嬉しさを露わにし、「こんばんは、GAHOです。遂に日本でライブをすることになりました。そして、皆さんの前で『スタート』を歌うことができて、本当に嬉しいです。皆さん、今日来てくださって、ありがとうございます」と話した。
その後、初のアルバム『Fireworks』から選んだ「High」では、ステージを所狭しと動き、片膝をついてファンと目線を合わせるようにしたり、手をかざして後方のファンにも気を配ってみたりと、躍動的なステージはファンへの愛でハチ切れんばかり。イ・ジュノ主演の「キング・ザ・ランド」のOST「Yellow Light」ではポップ・ロック調に盛り上げ、BLACK PINKの「Shut down」はプログレッシブ・ロック・スタイルでカバー。さらに「特別な曲を準備しました」と話してスペシャル・チューンを畳みかける。彼はキーボードの演奏をバックに、丁寧に尾崎豊の「I love you」を歌い上げ、途中、ドラマーが携帯のライトをオンにして左右に振れば、客席も携帯のライトを照らし、会場は光り輝く星空と化す。歌い終えた後には、鍵盤奏者に「よくやった」と声をかけ、彼もダブル・サムズアップでファンに感謝。最後もアルバムからタイトル曲&自作曲の「Right Now」を全身で歌いあげ、シンガー・ソングライターとしての存在感をきっちり見せつけた。
終盤には「もっと日本でいろんな活動ができるように頑張りますので、皆さん、楽しみに待って下さい。今日、皆さんに会えて、めっちゃ嬉しかったです」と話し、日本活動への期待を高めたGAHO。最後は「皆さん、ありがとうございます」と挨拶し、盛り上がる会場をバックにセルフィ―・ショット。その後もステージ上から、ファン一人ひとりとハイタッチを交わし、お茶目な人柄をしのばせていた。この日は、「梨泰院クラス」のGAHOではない、アーティストGAHOとしての日本での歩みが始まった、記念すべき日となった。
この日のステージは「Antihero」から幕を開け、ジュファンのリードでスタートしたクラップで会場が一つに。「I Just Can't Forget Her」ではサイケデリックなサウンドもプラスし、えも言われぬ浮遊感で聴き手を包み込んでいく。そして「Are you ready? Everybody Put your hands up! One two one two three four!」とフロアを煽り、「San Francisco」へ。ジュファンはジャンプしまくりでアッパーに演じ、序盤から自在に攻めていく。そして「盛り上がってますか?」と声をかけて放ったのは、ドリーミンな代表曲。「Wonder」では、サポートのギターリストがステージのヘリに腰かけてファンサービス。そこにジュファンも合流し、二人仲良く、ファンの記念ショットに収まるなど、ワールド・クラスのバンドながらもファンとの密な距離感も忘れない。さらに「Grace」ではちょっとした振付もあって、目にも楽しい。ジュファンは「日本は久しぶりですが、楽しいですね」と話し、バンド全員がこの空間をエンジョイしていた。
今夏に発売した2ndアルバム『PLEASURES』から「Touch」を演じた後は、「Saint」でまた激しさが増し、ラストは場内が一つになって「Hey, Hey」と右手を突き上げる。そしてフィナーレはジュファンが「僕を真似して下さい」と呼びかけ、彼の「オ~~~」と言う雄叫びに、ファンも「オ~~」とレスポンス。「もっと大きく、大きく」とのリクエストにファンも声量マックスで応え、それがイントロになって、「Don't Stop」に突入だ! 聞けば、誰もが青春時代を振り返りたくなる歌に、ファンもジャンプし、最後の最後までファンは「オ~~~」と叫ばずにはいれなかった。
韓国の音楽=アイドル、ダンスポップと思われるかもしれない。でも、この日の5組は別のベクトルを持ち、ソロ名義で参加したアーティストもバンド編成で臨んでくれた。ライブの醍醐味を教えてくれる、素敵なショーケースだった。
(取材:きむ・たく)
ベテラン・ロック・バンドNELLがトップバッター
トップバッターは20年以上のキャリアを誇るベテラン・バンドのNELL。来日公演も度々行い、初来日から10年を数えるため、日本のロックファンにも知られた存在だ。9月にも5度目の来日ライブを行ったばかりーそんなヘッドライナー級のバンドにも関わらず、一番手を買って出て、この日をアツく盛り上げようという漢気が頼もしい。その意外な出番に、フロアからは驚くような歓声が上がった。デビュー以来、4ピースの編成で活動してきたが、今年に入り、キム・ジョンワン(Vo & Gt)、イ・ジェギョン(Gt)、イ・ジョンフン(Ba)の3ピースへと改編した彼ら。元Piaのヘスン(Dr)をサポートメンバーに迎えてステージに立てば、まずはジョンワンが「Hey」とシャウトし、頭上で両手をクラップ。それに合わせてフロアも大きく手拍子を合わせ、彼が浮遊感を漂わせて「ある日の中のそういう日」を歌う。別れた彼女への想いを綴るが、後半では演奏に激しさが加わり、フロアの熱気は高まっていく一方。
そしてトリッピー&タイトな「All This Fxxking Time」ではステージが赤く染まり、イントロだけでも黄色い歓声が! 続く「Full moon」では弦楽器の壮大な調べにのせてフロアが再びクラップを放ち、ヒートアップするファンに応えるように、大迫力のステージングで魅せていく。さらにラストはジョンワンがオーケストラのコンダクターのように両手を広げて、スタイリッシュにフィニッシュ。「Ocean of light」ではフロアを飲みこむような音の洪水に対し、ファンが右手を高く掲げて呼応し、NELLは圧倒的なサウンドで会場の一体感を創出した。
MCではジョンフンが「今日はKOREA SPOTLIGHTコンサートに参加できて、とても嬉しいです。今日は楽しい時間を過ごして下さい」と話し、左手を掲げて「ファイト!」とファンにエールをプレゼント。「白色矮星」ではじっくり聴き入るファンにドラマティックな解放感をもたらし、ラストの「寄生虫」では再び赤く染まった館内でジョンファンが雄叫びからの「カモン!」を合図に、アグレッシブなサウンドでファンにマックスの興奮を贈る。
終盤には「この後も素晴らしいミュージシャンがたくさん残っているので、最後まで楽しんで下さい。OK?」(ジョンフン)と話して、後輩を気遣ったNELL。「近いうちにまた日本でお会いしましょう」と約束し、コンパクトなステージながらもサスガの存在感を見せつけていた。
彗星の如く飛び出たロック・ヒーロー、チョン・ホンイル
年齢は47歳ながら、「原石」というイベントのコンセプトに最も合致していたのはチョン・ホンイルかもしれない。アンダーグランドなメタルバンドのボーカルとして活動してきた彼が、その名を世に知らしめたのは2020年のこと。歌手としてデビューするものの、不運にも日の目を見なかった人たちに今一度チャンスをプレゼントするオーディション番組「シングアゲイン」にエントリーした彼は、韓国歌謡界のレジェンド、イ・ソンヒらから大絶賛され、最終回では審査員の最高スコアをゲット。結果的に準優勝とはなったものの、この番組をきっかけに脚光を浴び、大化けを果たしたのだ。そんな“遅咲き”のロック・ヒーローのステージはエキサイティングの一言に尽きた。まずはバンドメンバーが、彼の出自ともいうべきメタル・サウンドをかき鳴らし、彼のバックグランドを強烈にアピール。ステージに立ったホンイルは胸に手を当て一礼し、スクッと立つ。ブレイク後にリリースしたシングル「手の届かない記憶」を披露すれば、力強くも綺麗に伸びる歌声が炸裂し、その声は客席の耳ではなく魂に響いてくる。続けて、番組出演と並行してリリースした、初のソロ名義EP『息することさえできれば』から表題曲をチョイスし、圧倒的声量と、自在にコントロールするボーカルワークでフロアを完全に掌握。歌い終えれば、改めて左手を胸に当て、ファンに感謝し、ステージマナーにも彼の誠実な人柄が表れていた。
そして、「私たち、皆、それぞれ送って来た人生があります。僕の幼かった頃を思い出して、歌いたいと思います」と話して、メタルバンド時代の名曲「幼い頃、その記憶の中で」をブルージーに披露。バックには夕焼けに染まる広大な海が描かれ、ホンイルが両手を広げてゆっくりとクラップすれば、フロアも拍手に包まれる。その後、「皆さんの前で歌うことが出来て、光栄です。この日を心待ちにしながら準備してきました」と語り、この日にリリースしたばかりの「Welcome」を最速で全世界初披露! それまでの作風とは全く違ったポップなサウンドで、別の貌も見せた。さらに、両手を大きく広げた後には音楽性をまたもガラリと変えて、オク・テギョン主演のドラマ「ブラインド」から挿入歌の「Days in the dark」を。左耳に手をかざしながら「もっと、もっと盛り上がっていきましょう」と煽り、メタルを全開にしていく。歌い終えても、彼は攻めの姿勢を崩すことなく、すかさず両手をクラップし、シンガー・ソングライターのイ・ジョクが20年前に発表した名曲「空を走る」をハードにカバー。ジャンプしながらのパフォーマンスにフロアも縦揺れとなり、「ソリジロ~(叫べ~)」とシャウトすれば、客席から悲鳴にも似た歓声が沸き起こり、熱量の高さがハンパない! 終盤の「ソリジロ~」では自身もまたジャンプし、全力で走り切るかのようなステージングにファンは笑顔で大興奮!
さらにラストには映画『カンナさん、大成功です!』でお馴染みの「マリア」(原曲:ブロンディ)をセレクト。「ラスト・ソング、マリア」と左手を高く掲げながらシャウトした後には「Make some noise」と吠え、メタル・バージョンで演じていく。「シングアゲイン」のセミファイナルで披露されたこの曲は、イ・ソンヒが興奮気味にベタ褒めし、ユ・ヒヨルが「体型、ヘアスタイル、顔、ジェスチャー含め、すべてが本物のヘビーメタル歌手」と称賛した激ヤバ・チューン……それを生で見れるのだから、こんな贅沢はない。彼は「ソリジロ~」と吠えながら、マイクをフロアに突き出し、その態勢のまま、ステージを右から左へ。フロアの歓声を全てキャッチし、それをまた自分のパフォーマンスに反映させていく。こうして客席を熱狂の渦に巻き込んだ後は、「Thank you! 有難うございました」と爽やかな笑顔でステージを後に。歌、パフォーマンス、ステージマナー、その全てがどこまでも格好良かった。
キュート&ソウルフルなディーバ、SOLE
プロデューシング・ユニット、ディヴァイン・チャンネルのメンバーとして、2017年に「RIDE」で鮮烈デビュー。スムース&洗練されたR&Bで、シーンの注目株として一躍クローズアップされたSOLEは、両手をフリフリさせながらの登場だ。まずは、名刺代わりに1stアルバム『imagine club』からタイトル曲の「ずっと」をパフォーマンスし、愛と自由をテーマに、軽やかに歌い上げる。「東京、初めまして~」と可愛らしく自己紹介した後には、9月にリリースしたばかりのリメイクEP『A Love Supreme』から先輩バンドNELLの「心を失う」を選び、じっくりとシンギング。歌い終えてニッコリと微笑んだ後は、「次の曲は一緒に踊って下さいね」と話して、「ウムウム」へ。ハートマークをプレゼントしながら軽やかに舞う彼女の笑顔にフロアも横に揺れる。アルバム持参で駆け付けたファンが多いことに喜んだ彼女は、その後もR&Bなラブソング「LOVIN' U」を続け、マイクを客席に向けると会場が一つになって「ナ、ナ、ナ~~」と声を上げる。そしてラップパートでは2ステップ・タッチのオリジナル・アレンジで演じ、クールネスが倍増!
再びリメイク・アルバムから、レゲエ~ソウル・バンドWINDY CITYが歌う傑作チューン「Love Supreme」をチョイスすれば、その極上ソウルに会場はラブリー・ムード。女性歌手、羅美が92年にリリースした「そばに行きたい貴方」をカバーする際には、左拳を握りしめて「頑張ります!」と気合を入れて臨み、ラストは自身の原点となる「RIDE」を。ファンに語り掛けるように手を振りながら演じ、最後は彼女の呼びかけでフロアの手が大きく左右に揺れていた。
ライブではソウルフルに、ラブリーに演じるが、MCでは彼女の可愛らしい素のキャラが浮き彫りになる。客席にハローキティな応援ボードを見つけると、「カワイイ、So Cute」と喜びながら、それを受け取ったり、ファンにハートマークを贈りながら「愛してる~」と声をかけてみたり。そんな姿にフロアから「可愛い」の声が飛び交い、彼女もファンとの交流を楽しんでいるようだった。終盤、「今日、皆さんと会って、とっても幸せです。皆さんも幸せになるように、願っています」とファンへメッセージを贈ったSOLE。「また、会いましょう」と再会を約束し、手を振りながら舞台を後にした。
「梨泰院クラス」から飛び出たロックスター、GAHO
「冬のソナタ」のRyu、「美しき日々」のZERO……韓流ドラマは多くの優れた歌手を世に送り出してきた。そして、2020年、「梨泰院クラス」から新たなスター歌手が誕生した。彼の名はGAHO。主題歌「はじまり」のシンガーとして全国区の知名度を誇り、2021年、日テレ系「THE MUSIC DAY」出演時には、ドラマのロケ地から生中継で披露し、お茶の間でもホットな話題に。さらには、北海道日本ハムファイターズ時代の渡邉諒選手が自身の登場曲に選ぶなど、注目度は高いのだが、シンガー・ソングライターとしての彼の才能はまだ知られていない。また、韓国ドラマOSTと聞けば、誰もがバラード歌手をイメージするかもしれない。日本初舞台となったこの日のライブは、そんな予想をいい意味で軽々と裏切るものだった。どこまでも続くワインディング・ロードを背景に颯爽と登場したGAHO。もちろん、オープニングは「始まり」しかない。彼が右手を力強く突き出せば、会場は一つになって「オッ!」と声を上げ、パワー漲るパフォーマンスがK-POPファンもドラマ・ファンも巻き込んで、大きなうねりを作っていく。ラストはロックなフェイクでフロアをノックアウトし、ここからロッカー、GAHOが迫力のライブをブチかましていく。続く自作曲「Beautiful Night」ではモニタースピーカーに片足を乗せながら、ステージに片膝をつきながら、さらにはドラムの演奏に合わせて何度もコブシを突き上げながらと、歌うことの楽しさを全身で発散させながらパフォーマンス。途中、演奏がレゲエ調にチェンジすれば、ラップ風に歌い、変化自在に魅せていく。
会場に居合わせた全ての人が待ちに待った、GAHOの初ライブ。初のMCでも彼は日本で歌える嬉しさを露わにし、「こんばんは、GAHOです。遂に日本でライブをすることになりました。そして、皆さんの前で『スタート』を歌うことができて、本当に嬉しいです。皆さん、今日来てくださって、ありがとうございます」と話した。
その後、初のアルバム『Fireworks』から選んだ「High」では、ステージを所狭しと動き、片膝をついてファンと目線を合わせるようにしたり、手をかざして後方のファンにも気を配ってみたりと、躍動的なステージはファンへの愛でハチ切れんばかり。イ・ジュノ主演の「キング・ザ・ランド」のOST「Yellow Light」ではポップ・ロック調に盛り上げ、BLACK PINKの「Shut down」はプログレッシブ・ロック・スタイルでカバー。さらに「特別な曲を準備しました」と話してスペシャル・チューンを畳みかける。彼はキーボードの演奏をバックに、丁寧に尾崎豊の「I love you」を歌い上げ、途中、ドラマーが携帯のライトをオンにして左右に振れば、客席も携帯のライトを照らし、会場は光り輝く星空と化す。歌い終えた後には、鍵盤奏者に「よくやった」と声をかけ、彼もダブル・サムズアップでファンに感謝。最後もアルバムからタイトル曲&自作曲の「Right Now」を全身で歌いあげ、シンガー・ソングライターとしての存在感をきっちり見せつけた。
終盤には「もっと日本でいろんな活動ができるように頑張りますので、皆さん、楽しみに待って下さい。今日、皆さんに会えて、めっちゃ嬉しかったです」と話し、日本活動への期待を高めたGAHO。最後は「皆さん、ありがとうございます」と挨拶し、盛り上がる会場をバックにセルフィ―・ショット。その後もステージ上から、ファン一人ひとりとハイタッチを交わし、お茶目な人柄をしのばせていた。この日は、「梨泰院クラス」のGAHOではない、アーティストGAHOとしての日本での歩みが始まった、記念すべき日となった。
ワールド・クラスのドリーミン・ポップADOY
トリを飾ったのは、80年代をイメージさせるメロディアスなシンセ・ポップが特徴のバンド、ADOY。バンドを率いるのは2009年から2010年代中盤まで活動したバンド、イースタン・サイドキックでボーカルを担当していたオ・ジュファン(Vo & Gt)で、結成は2015年末。イースタン・サイドキック時代はワイルドな歌声を響かせていたジュファンだが、ここでの歌声はとっても甘やかでドリーミン。それがバンドのカラーにもなっている。現在は、ZEE(Key)、チョン・ダヨン(Ba)、パク・グンチャン(Dr)の4ピースで活躍するADOY。2019年の来日時には、日本のバンドTempalayと2マン・ライブを開催し、その翌日には、下北沢で開催されたイベント「下北沢サウンド・クルージング」にも参加。日本だけでなく、世界各地のオーディエンスを沸かすワールド・クラスの登場に、会場は興奮しっぱなしだった。この日のステージは「Antihero」から幕を開け、ジュファンのリードでスタートしたクラップで会場が一つに。「I Just Can't Forget Her」ではサイケデリックなサウンドもプラスし、えも言われぬ浮遊感で聴き手を包み込んでいく。そして「Are you ready? Everybody Put your hands up! One two one two three four!」とフロアを煽り、「San Francisco」へ。ジュファンはジャンプしまくりでアッパーに演じ、序盤から自在に攻めていく。そして「盛り上がってますか?」と声をかけて放ったのは、ドリーミンな代表曲。「Wonder」では、サポートのギターリストがステージのヘリに腰かけてファンサービス。そこにジュファンも合流し、二人仲良く、ファンの記念ショットに収まるなど、ワールド・クラスのバンドながらもファンとの密な距離感も忘れない。さらに「Grace」ではちょっとした振付もあって、目にも楽しい。ジュファンは「日本は久しぶりですが、楽しいですね」と話し、バンド全員がこの空間をエンジョイしていた。
今夏に発売した2ndアルバム『PLEASURES』から「Touch」を演じた後は、「Saint」でまた激しさが増し、ラストは場内が一つになって「Hey, Hey」と右手を突き上げる。そしてフィナーレはジュファンが「僕を真似して下さい」と呼びかけ、彼の「オ~~~」と言う雄叫びに、ファンも「オ~~」とレスポンス。「もっと大きく、大きく」とのリクエストにファンも声量マックスで応え、それがイントロになって、「Don't Stop」に突入だ! 聞けば、誰もが青春時代を振り返りたくなる歌に、ファンもジャンプし、最後の最後までファンは「オ~~~」と叫ばずにはいれなかった。
韓国の音楽=アイドル、ダンスポップと思われるかもしれない。でも、この日の5組は別のベクトルを持ち、ソロ名義で参加したアーティストもバンド編成で臨んでくれた。ライブの醍醐味を教えてくれる、素敵なショーケースだった。
(取材:きむ・たく)
■公演概要
「KOREA SPOTLIGHT」
日程:2023年10月25日(水)18:00開場/19:00開演
会場:Spotify O-EAST
主催:韓国・文化体育観光部
出演アーティスト:NELL、ADOY、Gaho、SOLE、チョン・ホンイル
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- Kstyle編集部
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