シン・ヒョンジュン、人々の信頼を回復できた決定的な理由
シン・ヒョンジュンの復活、その中に隠された単純で明快な真理
KBS 2TV月火ドラマ「ウララ・カップル」の勢いが凄い。競争力が最も弱い作品として評価されたが、独特な素材と特有のコミカルな展開で、同時間帯で視聴率1位を獲得している。特にライバル作品が、MBCが制作コスト100億ウォンをかけた大作「馬医」という点でさらに勢いをつけた結果となった。始めの勢いが重要な視聴率争いで「ウララ・カップル」が有利な位置を先取りしたことになる。様々な要因があると思うが「ウララ・カップル」の成功は、俳優シン・ヒョンジュンの活躍なしでは語れない。シン・ヒョンジュンの図々しい演技は、それこそ目を見張るものがある。俳優シン・ヒョンジュン演技歴23年の底力が爆発しているのである。

映画の失敗にスキャンダルまで……スランプに陥る
1990年にイム・グォンテク監督の「将軍の息子」で林役を演じデビューしたシン・ヒョンジュンは、カリスマ性のある外見と強烈なキャラクターで、一躍スターとなった。無名生活もなくすぐに人気俳優となった彼の芸能界生活は順調だった。仕事も順調で、出演する作品は全て大ヒットした。「若き日の肖像」「華厳経」「将軍の息子2-英雄武闘伝説-」「将軍の息子3」など、作品性と大衆性を両方とも兼ね備えた作品に出演し、着実にキャリアを積んだシン・ヒョンジュンは、1996年映画「銀杏のベッド」でファン将軍役を演じ、愛する恋人への執着と渇望を色濃く表現した。

“韓国型ブロックバスター”という物々しいタイトルを掲げ、当時としては破格的な制作コストである15億ウォン(約1億円)を投入した映画「ソウル・ガーディアンズ 退魔録」は、観客に選ばれず、損益の分岐点すらも越えられなかった。シン・ヒョンジュンのヒット力に疑問符が付いたのである。
同じ年に出演したドラマSBS「白夜」の視聴率低迷もまた痛手だった。当初「白夜」は「黎明の瞳」「砂時計」などの神話を作ったキム・ジョンハクが演出を務め、シン・ヒョンジュンやシム・ウナ、チェ・ミンス、イ・ビョンホン、イ・ジョンジェ、チン・ヒギョンなど、韓国の人気スターが総出したドラマで、世間の関心を集めた。
しかし、理解し難い内容と乏しいストーリー構成で視聴率が低迷し、制作費の面で最も失敗したドラマとの汚名を付けられた。シン・ヒョンジュンとしては、意欲的に出演を決定したドラマ、映画ともに最悪の評価を受けたのである。
これに加え、放漫な彼の私生活も問題となった。同じ作品に出演する女優とのスキャンダルに巻き込まれたシン・ヒョンジュンは、頻繁に噂されることになった。特に2001年に問題となった三角スキャンダルは、シン・ヒョンジュンのイメージに大きな打撃を与えた事件だった。イム・グォンテク監督が「いい加減スキャンダルを起こすな」と真面目に忠告するほど、彼の私生活はみすぼらしいものだった。
コメディ俳優への転向、そして副作用
2000年代に入ってからも、状況は好転しなかった。「アウトライブ」「サイレン」「SSU」「フェイス」など、彼が選択したほとんどの映画は失敗し、ドラマでも良い成績を収めることができなかった。SBS「天国の階段」(2003年)で一時期興行に成功したが、スポットライトはすでにクォン・サンウにすべて奪われた後だった。危機と言えば大きい危機だった。
この状況で彼が選択した道は“コメディ”だった。大衆性と興行性がある程度保障されたコメディジャンルは、シン・ヒョンジュンが持つ最後の切り札だった。2005年「家門の危機」を皮切りに、シン・ヒョンジュンは過去のカリスマ的イメージをすべて諦め“コメディ俳優”として確実に変身した。
シン・ヒョンジュンの破格の試みは興行面で大きな効果を出した。「家門の危機」(2005年)、「裸足のギボン」(2006年)「家門の復活」(2007年)など、久しぶりに連続ヒットで成功した。決定的な危機の瞬間に選択したイメージチェンジが功を奏したのである。
しかし、副作用は少なからずあった。まず「家門」シリーズをはじめ、作品性を問わず、複数のコメディジャンルに出演し“チケット商売”に没頭しているとの批判を受け、真面目な作品やキャラクターを演じることにおいても支障をきたした。興行性回復の代わりに俳優としてのイメージが墜落し、演技力が低評価され、予想外の難関に直面したのである。
シン・ヒョンジュンとしては「作品性と大衆性を両方とも掴む」という課題を人々から突きつけられた。
シン・ヒョンジュンの復活、その中に隠されている単純な真理
結局2012年、苦心の末シン・ヒョンジュンはSBS「馬鹿ママ」、KBS 2TV「カクシタル」「ウララ・カップル」を通じて、大衆から突きつけられた課題を確実に解決した。SBS「馬鹿ママ」で多少神経質で滑稽だが、純粋な教授役を見事に演じ、視聴者から好評を受けた彼は「カクシタル」のイ・ガンサン役で演技経歴23年の底力を爆発させる勢いを見せた。バカのふりをしているが、実は国の独立のために日本と戦う初代カクシタルであるイ・ガンサンというキャラクターを強烈に表現した彼は、両極端を行き来するヤヌス(ローマ神話の出入り口を守る神。2つの顔を持つ)のような演技で「シン・ヒョンジュンの再発見」という好評を導き出すことに成功した。弟イ・ガント(チュウォン)に比べ、悲劇的な死を迎えるまで、彼は喜劇と悲劇、コメディと正劇(シリアスで深みのある内容を扱った作品)を行き来する演技で「カクシタル」を力強く牽引した。
「カクシタル」を成功裏に終えたシン・ヒョンジュンは「ウララ・カップル」で再び演技の転換を試みた。女性の魂が入った男性の役をリアルに演じる彼は、完璧なキャラクター分析と、センスのあるセリフ伝達力、緻密なアドリブで、ドラマの活力となっている。シン・ヒョンジュンの“ワンマンショー”といっても良いほど「ウララ・カップル」に占めるシン・ヒョンジュンの割合は大きく、そして深い。
このようにシン・ヒョンジュンは3つの作品を通じて、人々に自身の復活を宣言した。視聴率と作品性を両方とも手に入れただけでなく、今まで低評価されていた演技力も認められたからだ。これは、見事な復活である。批評家、視聴者ともにシン・ヒョンジュンが、2012年に最も輝いた俳優の一人だということに異議を申し立てる者はいないだろう。
シン・ヒョンジュンの復活は「俳優は演技と作品で語る」という、単純で明快な真理の偉大さを再び気付かせる。彼は人々の要求を避けたり、目を背けたりしなかった。ただ良い作品と自身の実力で、これ見よがしに正面からぶつかった。シン・ヒョンジュンの勇気のある選択が、今日の優れた結果をもたらしたのである。
今のシン・ヒョンジュンは「銀杏のベッド」のシン・ヒョンジュンでも「裸足のギボン」のシン・ヒョンジュンでもない。多くの試行錯誤の末、俳優という名前を取り戻した彼は、以前よりも成熟し、以前よりも深みのある品格を誇っている。変身を恐れず、ジャンルを問わない俳優の“今日”に拍手を送りたい。
大御所俳優パク・グンヒョンは「今も台本を受け取ると胸が躍る」と話した。シン・ヒョンジュンもそのような俳優として、永遠に人々のそばにいることを祈る。素敵な今日を生きる俳優シン・ヒョンジュンの“明日”が楽しみだ。

- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- キム・ソンギュ
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