Vol.1 ― 「クラウド アトラス」ペ・ドゥナ“地に足がついている役を演じて見たい”
女優ペ・ドゥナは、圧倒的な存在感を放つ俳優だ。「ほかの俳優が演じたキャラクターをペ・ドゥナが演じたら?」という質問は簡単にできるが、「ペ・ドゥナが演じたキャラクターを他の俳優が演じたら?」という質問はしづらい。それだけにペ・ドゥナが持つ意味は特別だ。
映画「クラウド アトラス」の監督であるウォシャウスキー兄弟監督とトム・ティクヴァ監督もこうしたペ・ドゥナの魅力を見抜いたはずだ。ラナ・ウォシャウスキー監督は、韓国に訪問した際に行なわれたインタビューで、「映画ごとに多様な役を演じているが、それでもそれぞれ違う役の中で一貫する、ペ・ドゥナならではの何かがある、という感じがした。独自性を持ってそれぞれ違う人物を見事に表現できるのが長所だ」とペ・ドゥナを絶賛した。終始、ペ・ドゥナを称賛する姿を見ていると、彼らもペ・ドゥナしかできない演技に、すっかりはまっているのが伺えた。
ペ・ドゥナは、ソウル三清洞(サムチョンドン)のあるカフェで行なわれたインタビューで、「俳優として小さな希望があるとしてら、子供の頃から非現実的なキャラクターと現実的なキャラクター、両方演じることができる俳優になるのが夢だった」と語った。
実際ペ・ドゥナは、「子猫をお願い」のやさしいながらも無茶な魅力を持つテヒと、「ほえる犬は噛まない」の中の犬を探すために孤軍奮闘するアパート管理所職員ヒョンナムのように、身の回りで見かけることができるようなキャラクターから、「復讐者に憐れみを」の無政府主義者ながらも、彼氏(シン・ハギュン)に子供を誘拐しようと提案するヨンミまで、独特なキャラクターを演じてきた。さらに、是枝裕和監督の映画「空気人形」では、人の感情を抱くようになった空気人形ノゾミ役を演じ、人とも、それといって完璧な人形だとも言えない特別なキャラクターを演じ、生命を与えた。
独特な歩みは、彼女のハリウッド進出作「クラウド アトラス」でも見られる。ペ・ドゥナが演じた役はソンミ‐145(以下ソンミ)だ。ソンミは人間の消耗品のように扱われるクローン人間だが、「クラウド アトラス」が伝えようとする主題を代弁する人物でもある。このように現実的なキャラクターと非現実的なキャラクターを行き来する彼女のフィルモグラフィーは、小さい頃夢だったペ・ドゥナの夢が叶ったという証拠でもある。
ペ・ドゥナは、「小さい頃の夢が叶ったんですね」という言葉ににっこり笑い、「『空気人形』が少し新鮮な挑戦だった。今回クローン人間役も面白かった」と答えた。
彼女は、「ソンミは映画の中で非常に重要な人物だ。最初キャスティングされたと聞いた時、何よりも私がソンミという役を演じることができ、ただ嬉しかった。最初にシナリオをもらった時、私がソンミ役を演じるとは思いもしなかった。当然、ソンミ役はすでにキャスティングが終わっていると思った。『何で私に送ったのか?』『どんな役で送ったのか?』と思った。後で監督と画像ミーティングをする時、『ソンミ役の台詞を読み上げるのを録画して送ってくれないか』と言われた。その時、気が引き締まった。オーディションを受け、監督さんの事務室に行ってスクリーンテストを受ける時も気持ちよかった」と当時を思い出した。
だが、ソンミはそう簡単に演じることができるキャラクターではなかった。表面的には静かに見えるものの、心の中には巨大な渦巻きができていたからだ。これは高圧的な態度を取る父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の代わりに、自分が信じて従う夫(ジム・スタージェス)と意を共にするティルダも同じだ。ソンミとティルダを演じたペ・ドゥナが表面的に自分の感情を爆発させることができたのは、果たしてペ・ドゥナだとは想像もできないほど、特殊メークをしたペ・ドゥナがメキシコ女性として登場した時だけだった。
ペ・ドゥナは、「私は本当に(心の中が)吹き荒れた。性格上、演技をしながら全てのことを見せないよう、抑えている。とりわけソンミの場合、我慢するのが彼女の強さだった。そのため、心の中に渦巻きができているのを表現しないように、感情を抑えて、また抑えた。だが、大きなスクリーンを通じると、何でもかも見えると思う。それを信じて演じた」と説明した。
続いて、「ベルリンで(『クラウド アトラス』を)撮影したのが大きく役に立った。ソンミにどんな感情も与えなくてよかった。当時私がソンミのように一人ぼっちだった。ソンミは自分の考えを支配され、収容所のような悲惨な生活を強いられ、初めて暖かい人に出会い、人間世界に慣れていく。そういう状況が、撮影現場でも起きた。寂しい状況で親切を経験し始めた。ベルリンの文化についてよく知らなかったが、自然に学ぶことができた。ソンミが成長していくように、私も成長していた。もし、本当に気楽な状況で撮影が行われたら演技が上手くできたのだろうか?もっと難しかったはずだと思う」と付け加えた。
観客と同じく、ペ・ドゥナもそれぞれ違うジャンル、時代、人物に構成された6つの物語がパズルのピースのように絡み合ってひとつの物語として完成されるのを見て、驚きを隠せなかった。序盤登場する様々な人物と、韓国の観客には不慣れなオムニバス式構成が、ぎこちない感じを与えるかもしれないが、時間が経てば経つほど、映画に集中していく自分を発見することができる。
ペ・ドゥナは、「よく分からないけど、シナリオを読みながら“素晴らしい脚色だ”と思った。オムニバス式として構成されると面白くないと思ったが、6つの物語を一つの物語として結び、起承転結にしていくのが素晴らしかった。脚色が本当に良かった」と語った。、
独特なキャラクターとしての存在感を発揮したペ・ドゥナは、これからは現実的なキャラクターを演じてみたいという意欲を見せた。フィルモグラフィーを見ると、「空気人形」と「クラウド アトラス」の間に「ハナ~奇跡の46日間~」という映画に出演したが、「コリア」で彼女が演じた北朝鮮のリ・ブンヒ選手も、結局想像力を通じて生まれたキャラクターであるためだ。
彼女は、「逆に、地に足がついている役を演じて見たい。チャンスがあれば、非常に平凡な役を演じてみたい」と語った。
また、「次期作はまだ決まっていない」とし、長い間マネージャーもなしに一人でやってきた海外生活に疲れたのか、「韓国で活動したい」と願いを語った。
映画「クラウド アトラス」は、2004年の出版と同時に各種文学賞を受賞した小説家デイヴィッド・ミッチェルのベストセラー小説を原作にした作品で、19世紀から近未来まで約500年の時空間を越えた6つの物語がパズルのピースのように絡み合ってひとつの物語を完成させる作品だ。
「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟監督と、「パフューム ある人殺しの物語」の トム・ティクヴァ監督が共同演出を引き受け、ペ・ドゥナをはじめ、トム・ハンクス、ヒュー・グラント、ハル・ベリー、ベン・ウィショー、ヒューゴ・ウィーヴィング、スーザン・サランドン、ジム・スタージェスなどが出演する。アメリカでは10月26日に封切られ、韓国では2013年1月9日に、日本でも2013年3月15日に公開される予定だ。
映画「クラウド アトラス」の監督であるウォシャウスキー兄弟監督とトム・ティクヴァ監督もこうしたペ・ドゥナの魅力を見抜いたはずだ。ラナ・ウォシャウスキー監督は、韓国に訪問した際に行なわれたインタビューで、「映画ごとに多様な役を演じているが、それでもそれぞれ違う役の中で一貫する、ペ・ドゥナならではの何かがある、という感じがした。独自性を持ってそれぞれ違う人物を見事に表現できるのが長所だ」とペ・ドゥナを絶賛した。終始、ペ・ドゥナを称賛する姿を見ていると、彼らもペ・ドゥナしかできない演技に、すっかりはまっているのが伺えた。
ペ・ドゥナは、ソウル三清洞(サムチョンドン)のあるカフェで行なわれたインタビューで、「俳優として小さな希望があるとしてら、子供の頃から非現実的なキャラクターと現実的なキャラクター、両方演じることができる俳優になるのが夢だった」と語った。
実際ペ・ドゥナは、「子猫をお願い」のやさしいながらも無茶な魅力を持つテヒと、「ほえる犬は噛まない」の中の犬を探すために孤軍奮闘するアパート管理所職員ヒョンナムのように、身の回りで見かけることができるようなキャラクターから、「復讐者に憐れみを」の無政府主義者ながらも、彼氏(シン・ハギュン)に子供を誘拐しようと提案するヨンミまで、独特なキャラクターを演じてきた。さらに、是枝裕和監督の映画「空気人形」では、人の感情を抱くようになった空気人形ノゾミ役を演じ、人とも、それといって完璧な人形だとも言えない特別なキャラクターを演じ、生命を与えた。
独特な歩みは、彼女のハリウッド進出作「クラウド アトラス」でも見られる。ペ・ドゥナが演じた役はソンミ‐145(以下ソンミ)だ。ソンミは人間の消耗品のように扱われるクローン人間だが、「クラウド アトラス」が伝えようとする主題を代弁する人物でもある。このように現実的なキャラクターと非現実的なキャラクターを行き来する彼女のフィルモグラフィーは、小さい頃夢だったペ・ドゥナの夢が叶ったという証拠でもある。
ペ・ドゥナは、「小さい頃の夢が叶ったんですね」という言葉ににっこり笑い、「『空気人形』が少し新鮮な挑戦だった。今回クローン人間役も面白かった」と答えた。
彼女は、「ソンミは映画の中で非常に重要な人物だ。最初キャスティングされたと聞いた時、何よりも私がソンミという役を演じることができ、ただ嬉しかった。最初にシナリオをもらった時、私がソンミ役を演じるとは思いもしなかった。当然、ソンミ役はすでにキャスティングが終わっていると思った。『何で私に送ったのか?』『どんな役で送ったのか?』と思った。後で監督と画像ミーティングをする時、『ソンミ役の台詞を読み上げるのを録画して送ってくれないか』と言われた。その時、気が引き締まった。オーディションを受け、監督さんの事務室に行ってスクリーンテストを受ける時も気持ちよかった」と当時を思い出した。
だが、ソンミはそう簡単に演じることができるキャラクターではなかった。表面的には静かに見えるものの、心の中には巨大な渦巻きができていたからだ。これは高圧的な態度を取る父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の代わりに、自分が信じて従う夫(ジム・スタージェス)と意を共にするティルダも同じだ。ソンミとティルダを演じたペ・ドゥナが表面的に自分の感情を爆発させることができたのは、果たしてペ・ドゥナだとは想像もできないほど、特殊メークをしたペ・ドゥナがメキシコ女性として登場した時だけだった。
ペ・ドゥナは、「私は本当に(心の中が)吹き荒れた。性格上、演技をしながら全てのことを見せないよう、抑えている。とりわけソンミの場合、我慢するのが彼女の強さだった。そのため、心の中に渦巻きができているのを表現しないように、感情を抑えて、また抑えた。だが、大きなスクリーンを通じると、何でもかも見えると思う。それを信じて演じた」と説明した。
続いて、「ベルリンで(『クラウド アトラス』を)撮影したのが大きく役に立った。ソンミにどんな感情も与えなくてよかった。当時私がソンミのように一人ぼっちだった。ソンミは自分の考えを支配され、収容所のような悲惨な生活を強いられ、初めて暖かい人に出会い、人間世界に慣れていく。そういう状況が、撮影現場でも起きた。寂しい状況で親切を経験し始めた。ベルリンの文化についてよく知らなかったが、自然に学ぶことができた。ソンミが成長していくように、私も成長していた。もし、本当に気楽な状況で撮影が行われたら演技が上手くできたのだろうか?もっと難しかったはずだと思う」と付け加えた。
観客と同じく、ペ・ドゥナもそれぞれ違うジャンル、時代、人物に構成された6つの物語がパズルのピースのように絡み合ってひとつの物語として完成されるのを見て、驚きを隠せなかった。序盤登場する様々な人物と、韓国の観客には不慣れなオムニバス式構成が、ぎこちない感じを与えるかもしれないが、時間が経てば経つほど、映画に集中していく自分を発見することができる。
ペ・ドゥナは、「よく分からないけど、シナリオを読みながら“素晴らしい脚色だ”と思った。オムニバス式として構成されると面白くないと思ったが、6つの物語を一つの物語として結び、起承転結にしていくのが素晴らしかった。脚色が本当に良かった」と語った。、
独特なキャラクターとしての存在感を発揮したペ・ドゥナは、これからは現実的なキャラクターを演じてみたいという意欲を見せた。フィルモグラフィーを見ると、「空気人形」と「クラウド アトラス」の間に「ハナ~奇跡の46日間~」という映画に出演したが、「コリア」で彼女が演じた北朝鮮のリ・ブンヒ選手も、結局想像力を通じて生まれたキャラクターであるためだ。
彼女は、「逆に、地に足がついている役を演じて見たい。チャンスがあれば、非常に平凡な役を演じてみたい」と語った。
また、「次期作はまだ決まっていない」とし、長い間マネージャーもなしに一人でやってきた海外生活に疲れたのか、「韓国で活動したい」と願いを語った。
映画「クラウド アトラス」は、2004年の出版と同時に各種文学賞を受賞した小説家デイヴィッド・ミッチェルのベストセラー小説を原作にした作品で、19世紀から近未来まで約500年の時空間を越えた6つの物語がパズルのピースのように絡み合ってひとつの物語を完成させる作品だ。
「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟監督と、「パフューム ある人殺しの物語」の トム・ティクヴァ監督が共同演出を引き受け、ペ・ドゥナをはじめ、トム・ハンクス、ヒュー・グラント、ハル・ベリー、ベン・ウィショー、ヒューゴ・ウィーヴィング、スーザン・サランドン、ジム・スタージェスなどが出演する。アメリカでは10月26日に封切られ、韓国では2013年1月9日に、日本でも2013年3月15日に公開される予定だ。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- キム・ミリ
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