イ・ヒジュン「悪役?心が躍ったため選択した」
主人公を苦しめる人物が悪役だとすれば、最近出演した2本の映画「戦場のメロディ」と「ロボット:SORI(音)」でイ・ヒジュンは紛れもなく悪役だ。前者において彼は戦争で片腕を失った傷痍軍人、孤児たちを虐待する手鉤男(「戦場のメロディ」)であり、後者においては目的のためなら手段を選ばない国家情報院の要員(「ロボット:SORI(音)」)だった。時代劇とSFドラマ、ルーツが異なるストーリーの中で誰よりもイ・ヒジュンの役は激しかった。
そのすべては生きるためだった。そういえば、前作の「海にかかる霧」の時もそうだった。純朴な漁師だったが、金と女の前で狂気を明らかにしてしまった可哀想な青年だったのだ。このように厳しい暮らしの条件の中で生き残るために、彼の演じる役は他人を搾取したり、自ら卑劣になった。
先日三清洞(サムチョンドン)のカフェで会ったイ・ヒジュンは「このようなストーリーに心が躍ったし、だから選択した」と話す。自ら悪役専門であることを宣言するのだろうか。
「腕を失った物乞いが孤児たちを連れてあんなことをしたことを観客に信じてもらいたいと思いました。だから『戦場のメロディ』に出演しました。戦争の惨状は自分が経験し難いことなので、知り合いの兄のおじいさんを訪ねました。陸軍傷痍軍人で、義足をしている方ですが、嫌になるほど何度も訪ねました。幸いにもイ・ハン監督が現場のセットを壊す前に是非やりたいことはないか聞いてくれました。創作者として尊重されている気分で本当に楽しくなりました。それでこれまで私が取材したことをもとに、色々なシーンを撮りました。その中でいくつかが映画に使われました。
『ロボット:SORI(音)』のイ・ホジェ監督は本当に絵コンテ通りに撮影します。最初から自分の頭の中でイメージした通りにやるのです。イ・ハン監督が俳優と話し合って撮る方であれば、イ・ホジェ監督は俳優の身動きまで細かく要求します。だから与えられた台本の中でどうやってキャラクターを活かすべきか考えなければなりませんでした。実は(共演した)イ・ソンミン先輩の頬を叩くシーンがありましたが、時間の都合上カットされました。1週間ほど悩んだものですが、仕方ないですね。すべて監督の権限ですから(笑) 私は監督を信頼しています!」
相次いで出演した映画だけで彼を悪役専門とレッテルを貼ってはなるまい。むしろ彼を有名にしたのはドラマ「棚ぼたのあなた」の純情派チョン・ジェヨンのようなキャラクターだったことを思い出しておきたい。「不思議にもドラマでは善役を、映画では悪役を多く演じた」と言って彼は首を傾げたが、彼も知っていた。人々の好感より重要なのは、自身が表現する役の真実性であることを。
「『棚ぼたのあなた』で食べたいものを食べられるようになりました(笑) ある意味で役者は修道僧みたいな職業なのかもしれません。虚構の人物だけれど、心から誰かを理解することが必要ですから。演技で感じる喜悦や幸せを人々に分かち合うべきだと思います。そんな思いや基準がなければ目が曇りやすくなるはずです。ギャラや役の比重にこだわらないことが重要だと思います。正直、最近インタビューをすると私の結婚に対する記事ばかり出るので、プライベートなことで注目されるのが気まずく思いました。しかし、それが気まずいからといって役者を辞めたくはありません。演技がそれほど好きです」
その努力と忍耐の証拠の一つが、激しい取材と間接経験だった。
「どんな作品でも取材は必ずします。もちろんそれが演技にも反映されれば最高ですが、取材の過程そのものが幸せです。『海にかかる霧』の時にはある船員の方に会い、『ロボット:SORI(音)』の時は運良く国家情報院の方を紹介してもらいました。『戦場のメロディ』のあのおじいさんも取材でした。そんな方の話を聞いて自分の人生も振り返り、幸せというものを考えさせられます。私としてはすべて先生です。
国家情報院所属なら特別な人だと思いがちですが、会ってみたら一人のサラリーマンでした。映画で真剣にヘグァン(イ・ソンミン)を追いながらも母から電話を受けるシーンはそんな平凡さを象徴します。監督に特別にお願いして撮ったシーンです。『戦場のメロディ』の時にお会いしたおじいさんは、義足をまるで靴下を履くようにつけていました。義足が日常になったその姿を映画に収めたくて意見も出しました。
作品を一つ終えるたびに、世の中を見る目が少し変わります。0.1mmずつ深くなるというか。腕のない攘夷軍人になる機会はめったにありませんから。作品を終えたら、取材で会った方々をぜひお訪ねします。もちろん、船員の場合は海の遠くへ行っているので会えませんが(笑) 会ったら何だか人生とその人物に一歩近づいたみたいで、一人で感極まったりもします」
「役者として遠大な夢は特にない」と彼は告白した。「ただ世の中を見る目が深くて、良い香りがする人でありたい」とし、イ・ヒジュンは「生き甲斐を感じにくい最近、私の作品が同時代の人々に少しなりとも慰め、または痛快さを与えることができれば、それこそ役者としてできる最も大きな社会奉仕だと思う」と打ち明けた。
「結局、自分の中の音を聞くことが大事ではないでしょうか。日に日に目を曇らせるものが多くなっています。いわゆる有名税や金のために振り回されたくないと思っています。また悪役かよ、などの言葉を怖がってはなりません。私もたくさん間違いを起こす人間です。そのためか、完璧なキャラクターよりは間違いだらけで、こけたりするキャラクターに多く共感します」
4月、彼は昨年から交際してきたフィアンセと結婚する。また、映画「大切な女性」に加わるなど、作品活動にも拍車をかける。「役者として想像して準備する時間が本当に好きだ」という彼が人生の第2幕を始めた。
俳優イ・ヒジュンの選択:「手鉤男」と「国家情報院職員」
そのすべては生きるためだった。そういえば、前作の「海にかかる霧」の時もそうだった。純朴な漁師だったが、金と女の前で狂気を明らかにしてしまった可哀想な青年だったのだ。このように厳しい暮らしの条件の中で生き残るために、彼の演じる役は他人を搾取したり、自ら卑劣になった。
先日三清洞(サムチョンドン)のカフェで会ったイ・ヒジュンは「このようなストーリーに心が躍ったし、だから選択した」と話す。自ら悪役専門であることを宣言するのだろうか。
悪役、善役より重要なこと
イ・ヒジュンの心を躍らせるというのは、その作品が少なくとも生き生きと感じられたという意味だ。「シナリオがどんなに良いものであっても、自分が共感できず、理解できなければ断るほうだ」という彼は、「『戦場のメロディ』は役のため、『ロボット:SORI(音)』は題材のため出演したかった」と説明した。異なる理由で経験することになった2本の作品は、彼の地平を広げるきっかけになった。「腕を失った物乞いが孤児たちを連れてあんなことをしたことを観客に信じてもらいたいと思いました。だから『戦場のメロディ』に出演しました。戦争の惨状は自分が経験し難いことなので、知り合いの兄のおじいさんを訪ねました。陸軍傷痍軍人で、義足をしている方ですが、嫌になるほど何度も訪ねました。幸いにもイ・ハン監督が現場のセットを壊す前に是非やりたいことはないか聞いてくれました。創作者として尊重されている気分で本当に楽しくなりました。それでこれまで私が取材したことをもとに、色々なシーンを撮りました。その中でいくつかが映画に使われました。
『ロボット:SORI(音)』のイ・ホジェ監督は本当に絵コンテ通りに撮影します。最初から自分の頭の中でイメージした通りにやるのです。イ・ハン監督が俳優と話し合って撮る方であれば、イ・ホジェ監督は俳優の身動きまで細かく要求します。だから与えられた台本の中でどうやってキャラクターを活かすべきか考えなければなりませんでした。実は(共演した)イ・ソンミン先輩の頬を叩くシーンがありましたが、時間の都合上カットされました。1週間ほど悩んだものですが、仕方ないですね。すべて監督の権限ですから(笑) 私は監督を信頼しています!」
相次いで出演した映画だけで彼を悪役専門とレッテルを貼ってはなるまい。むしろ彼を有名にしたのはドラマ「棚ぼたのあなた」の純情派チョン・ジェヨンのようなキャラクターだったことを思い出しておきたい。「不思議にもドラマでは善役を、映画では悪役を多く演じた」と言って彼は首を傾げたが、彼も知っていた。人々の好感より重要なのは、自身が表現する役の真実性であることを。
「『棚ぼたのあなた』で食べたいものを食べられるようになりました(笑) ある意味で役者は修道僧みたいな職業なのかもしれません。虚構の人物だけれど、心から誰かを理解することが必要ですから。演技で感じる喜悦や幸せを人々に分かち合うべきだと思います。そんな思いや基準がなければ目が曇りやすくなるはずです。ギャラや役の比重にこだわらないことが重要だと思います。正直、最近インタビューをすると私の結婚に対する記事ばかり出るので、プライベートなことで注目されるのが気まずく思いました。しかし、それが気まずいからといって役者を辞めたくはありません。演技がそれほど好きです」
取材する俳優
好きだと迷わず言ったが、イ・ヒジュンは自らを“才能のない努力派”だと思っていた。25歳という“遅いデビュー”だったためだという。化学工学を勉強していた彼が偶然舞台に立ち、演技を夢見ることになったというのは周知のことだ。劇団チャイム出身の彼はソン・ガンホ、イ・ソンミンなど眩しい先輩の間でも気後れすることなく、自身の道を見つけた根気強さも備えている。その努力と忍耐の証拠の一つが、激しい取材と間接経験だった。
「どんな作品でも取材は必ずします。もちろんそれが演技にも反映されれば最高ですが、取材の過程そのものが幸せです。『海にかかる霧』の時にはある船員の方に会い、『ロボット:SORI(音)』の時は運良く国家情報院の方を紹介してもらいました。『戦場のメロディ』のあのおじいさんも取材でした。そんな方の話を聞いて自分の人生も振り返り、幸せというものを考えさせられます。私としてはすべて先生です。
国家情報院所属なら特別な人だと思いがちですが、会ってみたら一人のサラリーマンでした。映画で真剣にヘグァン(イ・ソンミン)を追いながらも母から電話を受けるシーンはそんな平凡さを象徴します。監督に特別にお願いして撮ったシーンです。『戦場のメロディ』の時にお会いしたおじいさんは、義足をまるで靴下を履くようにつけていました。義足が日常になったその姿を映画に収めたくて意見も出しました。
作品を一つ終えるたびに、世の中を見る目が少し変わります。0.1mmずつ深くなるというか。腕のない攘夷軍人になる機会はめったにありませんから。作品を終えたら、取材で会った方々をぜひお訪ねします。もちろん、船員の場合は海の遠くへ行っているので会えませんが(笑) 会ったら何だか人生とその人物に一歩近づいたみたいで、一人で感極まったりもします」
人生第2幕
そのため彼は初撮影や初舞台の直前に毎回お祈りをする。「素晴らしい俳優の皆様と素晴らしい台本でご一緒させていただき、ありがとうございます」という内容だという。イ・ヒジュンは「演劇に偶然出会った私の21歳は祝福だった」と話す。「役者として遠大な夢は特にない」と彼は告白した。「ただ世の中を見る目が深くて、良い香りがする人でありたい」とし、イ・ヒジュンは「生き甲斐を感じにくい最近、私の作品が同時代の人々に少しなりとも慰め、または痛快さを与えることができれば、それこそ役者としてできる最も大きな社会奉仕だと思う」と打ち明けた。
「結局、自分の中の音を聞くことが大事ではないでしょうか。日に日に目を曇らせるものが多くなっています。いわゆる有名税や金のために振り回されたくないと思っています。また悪役かよ、などの言葉を怖がってはなりません。私もたくさん間違いを起こす人間です。そのためか、完璧なキャラクターよりは間違いだらけで、こけたりするキャラクターに多く共感します」
4月、彼は昨年から交際してきたフィアンセと結婚する。また、映画「大切な女性」に加わるなど、作品活動にも拍車をかける。「役者として想像して準備する時間が本当に好きだ」という彼が人生の第2幕を始めた。
俳優イ・ヒジュンの選択:「手鉤男」と「国家情報院職員」
写真=NEW/ロッテエンターテインメント
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- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- イ・ソンピル、写真 : イ・ジョンミン
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