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「怖いって思ってごめん!」謎多い多くの伏線から圧巻の展開『照明店の客人たち』ついに全話配信

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『照明店の客人たち』は、不可思議なドラマだ。初見はモノクロで見えていたものが、もう一度観るとカラーで見えてくるような。はじめはよくわからないまま観進めてもいい。4話で「あぁぁ!」となり、7話で「うぉぉ!」となり、怒涛のラストへとなだれ込んでいく。最初の印象と観終えたあとの印象、さらに再度観たときの色合いが大きく変わってしまう、そんなドラマなのだ。

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『ムービング』ファン必見!複雑に交錯する人生が一つの物語へ

本作をもう少し端的に表現すると、あの世の入口、生と死の際でさまよう人々の物語、とでも言おうか。ラブやキュンはないが、『ホテルデルーナ~月明かりの恋人~』などが描く世界と重なる部分はあるかもしれない。ちょっと怖くて、ちょっと切ない。ミステリーと思って観ていたら、じわじわとヒューマンが浮かび上がってくるような。そこには様々なキャラクターたちのドラマがあり(犬でさえも!)、複雑かつ緻密に彼らの人生が交錯し、1本の物語へと昇華されていく。それもそのはず。原作と脚本を手掛けたのは、カンフル。傑作と謳われたサスペンス・アクション超大作『ムービング』の作者なのだ。なんとなく、わかっていただけるだろうか。


「照明店」がつなぐ世界 散りばめられた多くの伏線

さて。物語は、薄暗い路地裏にぽっと光を灯す一軒の照明店から始まる。サングラス姿のあやしげな店主ウォニョン(演じるのは、チュ・ジフン)が開くその店には、夜な夜な引き寄せられるように奇妙な客人たちが訪れる。なんと彼らは記憶の一部を失くしていて……。一方、大病院のICU(集中治療室)に勤める看護師ヨンジ(パク・ボヨン)には、見えないはずの人たちが見えていた。ウォニョンとヨンジが接する奇妙な人々は、生と死の間をさまよっている。彼らは果たして元の世界に戻れるのだろうか?

たとえば、毎晩バス停で見かける女性のことが妙に気になる男ヒョンミン(オム・テグ)、引っ越し先の古いアパートで誰かの気配を感じ続ける物書きのソネ(キム・ミンハ)、母親のおつかいで毎晩電球を買いに訪れる高校生ヒョンジュ(シン・ウンス)、独居老人の死亡事件を追い、あやしい中華料理店にたどり着く刑事(ペ・ソンウ)……。劇中、照明店のドアを開ける人々は、普通のようで普通でない。彼らは何者で、どんな理由で“ここ”にやってきたのか。“ここ”はどこなのか。さらに言えば、生きているのか、死んでいるのか。見ているこちらまで、このミステリアスな世界に迷い込んだ感覚になり、散りばめられた手がかり=伏線を探し始めてしまう。

ネタバレは避けるが、全編を通して鍵になっているセリフがある。それは、劇中繰り返し出てくる「生きる意志は自分1人だけのものではない」というもの。私たちが生かされている理由には、少なからず「誰かの意志」も関わっているのだと。そう言われても、なんのこっちゃ?だろうが、これは観ていくうちに腑に落ちていく。本作の見方を逆転させる大きなテーマで、メッセージとも言える。


「怖いって思ってごめん!」謎の多い描写から圧巻の展開へ

こんなシーンが繰り返し出てくる。路地裏でさまよう人々が照明店を訪れ、店主が問いかける。「何かお探しで?」。しかし、彼らは答えることはない。意志がないのだ。一方で、彼らは奇妙な人やものにつきまとわれ、悩まされる。が、クライマックスに向かうにつれ、彼らを惑わす謎キャラたちの“意志”が明らかになっていく。これがもう、見事。これまで「怖いって思ってごめんね」なのだ。さまよう人々のみならず、彼らを守るため、生かすために彼らの前に現れた謎キャラたちの一連の(愛の)行動が、数珠のようにつながっていき、答え合わせがなされていく展開は圧巻だ。

こうなると、1話から見直したくなる。結果、暗く重く感じていた映像には希望の光が、ゆっくりと流れていた物語はスピーディに感じられ、違うストーリーを見ているような感覚に陥る。何よりセリフの受け止め方の変化だ。バス停で男を待つ女ジウンの「時間がありません」、ヒョンジュの母親ユヒの「私ひとりですか?」、ヒョンジュのためにキャンディの包装紙をむいてやる照明店店主ウォニョンの「まだ子供だから」……。一見なんということもないセリフに、はっとさせられることたびたび。なにげない言葉の裏に隠されていた切なる思いが浮かび上がり、初見とは違った感情に締め付けられてしまうのだ。

死の際にいる人に限らない。日々私たちは誰かの存在があって生きている。どんな状況でも待ってくれている人がいるから、頑張ろうとする。逆に言えば、瀕死の状況でも、応援してくれる人、生かしたいと思ってくれる人がいれば、その意志や思いが誰かの命を救うこともあるのだ。何かとうるさい親の存在もそうだ。生きようとする意志は、誰かが火をつけてくれて初めて生まれるものなのかもしれない。


サングラスの奥に隠された過去!迫真の演技に引き込まれる

もう一つ、演技巧者たちの名演に触れないわけにはいかない。様々な客人たちを受け入れるミステリアスな照明店店主ウォニョンを担ったチュ・ジフンは、サングラスの奥に深淵な人生を湛え、観るものを引き込む。特に後半、彼の過去が明かされる場面で見せる、迫真の演技に心震えること必至。照明店があの世における生と死の境界線であるとすれば、この世における生と死の境界線であるICUの看護師ヨンジを演じたパク・ボヨンも、チュ・ジフン同様、さまよい人たちに寄り添う重要な役どころだ。温かでありながら芯のあるキャラクターを丁寧に演じ、物語を柔らかに包み込んでいる。

ドラマ『遊んでくれる彼女』で新たな魅力を発揮したオム・テグと、アイドル出身で『なにもしたくない~立ち止まって、恋をして~』など女優として瑞々しい感性を光らせているソリョンのヒリヒリした関係性にハラハラし、ドラマに映画に引く手あまたの名優イ・ジョンウンと、『輝くウォーターメロン~僕らをつなぐ恋うた』の名子役シン・ウンスが綴るユヒ×ヒョンジュ母娘の切ない物語は、思わず泣かされるに相違ない。彼らとはちょっと違った立ち位置でキーパーソンとなっていく刑事役(ネタバレになるので言えない)を、映画『ボストン1947』などで知られる演技派ペ・ソンウが滋味深く魅せ、物語を面白くしている点も見逃せない。

本作は、ディズニー公式動画配信サービスDisney+(ディズニープラス)で全話独占配信中。ラストになるが、『ムービング』ファンにはたまらないおまけがあるので、エンドロールの最後の最後までお見逃しなく、ということも添えておきたい。



(執筆:髙橋尚子)

■配信情報
『照明店の客人たち』
Disney+(ディズニープラス)スターで全8話独占配信中!
>>『照明店の客人たち』の視聴はこちら

【キャスト】
チュ・ジフン 『支配種』『キングダム』『宮 -Love in Palace-』
パク・ボヨン 『今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー』『アビス』『力の強い女ト・ボンスン』
ペ・ソンウ 『ザ・キング』
オム・テグ 『遊んでくれる彼女』
イ・ジョンウン 『Missナイト & Missデイ』『パラサイト 半地下の家族』

【スタッフ】
監督:キム・ヒウォン
脚本:カンフル 『ムービング』

【ストーリー】
どこかもわからない、暗い街をさまよう人々。一部の記憶を無くした彼らがいたのは、”生と死の境目”の世界だった。なぜ彼らはこの場所に辿り着いたのか。そして、元の世界に戻ることはできるのか――。やがて人々は、彼らの過去、現在、未来の鍵を握る、ある路地裏の照明店へと引き寄せられていく……。

■関連リンク
Disney+公式HP

元記事配信日時 : 
記者 : 
Kstyle編集部

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