火車
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2012年上半期の韓国映画、観客&興行成績で歴代最高を記録
2012年上半期の韓国映画が、観客動員数と興行成績で歴代最高を記録した。3日、映画振興委員会が発表した「2012年上半期の韓国映画産業」によると、2012年上半期に劇場を訪れた観客数は8279万人で、昨年上半期の観客数6842人に比べて21%も上昇したという。特に韓国映画の観客動員数だけを比較してみても、2012年はこれまで韓国映画の観客動員数がもっとも多かった2006年以上に、韓国映画を見た観客が多いことが分かる。成長率の持続的な低下傾向が見られた2000年代の劇場の観客動員数上昇率は、今年上半期に去年の同じ期間に比べて21%の上昇をみせた。このように大幅の成長を見せたことには、2月~3月のオフシーズンを正面突破し、良い興行記録を見せた韓国映画の力が大きかった。上半期の映画全体に占める韓国映画の占有率は、53.4%に上った。今年第1四半期の60.8%に比べるとやや減少したが、昨年上半期の48.0%と比較すれば、50%を超えたことは明るい兆しである。映画振興委員会は、30~40代の観客層と、上半期の映画市場の拡大を主導した韓国映画のおかげで観客動員数と売り上げが増えたと見ている。なぜなら、「悪いやつら」(2位)、「僕の妻のすべて」(3位)、「建築学概論」(4位)、「ダンシング・クィーン」(5位)、「折れた矢」(6位)、「火車」(9位)、「後宮:王の妾」(10位)など、上半期のヒット映画トップ10に入った韓国映画がすべて30代~40代の観客層を狙った映画であるためだ。また、ハリウッド映画「アベンジャーズ」が上半期の最高興行作として選ばれたが、7本の韓国映画が興行成績でトップ10にランクインしたことから、韓国映画が映画産業の成長に大きく貢献したといえる。
イ・ソンギュン、繊細な演技で“ヒットメーカー”に躍り出る
今年の上半期、映画界では俳優イ・ソンギュンの活躍が目立っている。彼は、興行的成功を収めた映画「火車」と「僕の妻のすべて」で、今年の上半期映画のヒットメーカーに躍り出た。前面に出て一人歩きするよりは、黙々と映画の空気を調整する彼の演技は、特に輝いていた。イ・ソンギュンは、3月に公開した「火車」で240万人余りの観客を集めた。日本の小説を原作とするミステリー「火車」で、イ・ソンギュンは、ある日突然消えた婚約者を探し回る男、ムノを演じて観客を映画の世界へと引き込んだ。引き続き、17日に公開したラブコメディ「僕の妻のすべて」では、公開から12日で200万人の観客を動員し、再び俳優イ・ソンギュンの真価を発揮した。まったく違うジャンルの二つの作品に出演したイ・ソンギュンだが、自然な感情移入を誘導する繊細な演技を見せるという点では共通している。そしてイ・ソンギュンは、「物語の要点を的確に掴む俳優」とも評価されている。「火車」では、婚約者に対する憂慮、怒り、理解、憐憫、愛など、嵐のような多様な感情を自然に表現しており「僕の妻のすべて」では、成功した建築家だが、妻の前ではまったく発言権のない夫ドゥヒョンに扮し、コミカルで愛らしい魅力も披露し、特に男性の共感を得る演技を披露した。インタビューを通じて、自然さを俳優としての本人の一番大きな長所に挙げたイ・ソンギュンは、特に他の俳優との調和、自然な雰囲気を作り出すという強みを持っている。単純にロマンチックなフンナム(優しい癒し系男子)と表現するだけでは、物足りない感じがすることも事実だ。
「火車」ピョン・ヨンジュ監督 ― 不安な私の人生が楽しい
※この記事には映画「火車」の結末に関する内容が含まれています。映画「火車」の中で、いきなり姿を消した婚約者ソニョン(キム・ミニ)を探すムノ役のイ・ソンギュンが、出演を決めたのは2010年10月のことだった。しかし、投資もキャスティングも進展がなく6ヶ月という時間だけが過ぎ、その後も最も忙しい俳優の1人であるイ・ソンギュンはただ待ち続けた。「火車」の公開を控えたある日、ピョン・ヨンジュ監督が彼に聞いた。「一体何を考えてずっと待ち続けたの?」そうすると、イ・ソンギュンは何気なくこう答えた。「私まで抜けたら制作自体が中止になりそうだったから。監督さんはどんどん老けていくし、だから映画が中止になったらいけないなと思った」このつまらないエピソ―ドには「火車」が念願の公開を迎えるまでの決して短いと言えない期間の中に、ピョン・ヨンジュ監督を応援した、韓国映画界の数多くの人々の気持ちが込められている。ピョン・ヨンジュ監督がドキュメンタリー映画「ナヌムの家」で、日本軍慰安婦の被害者たちの話をした1995年から18年が経ち、映画界は大きく変わった。20代だった若い監督も40歳をとうに過ぎたが、ピョン・ヨンジュ監督は今でも映画を作るべきだと思える人に見える。そうやって作られた「火車」は、長い時間をかけてようやく世の中に出た熱い鉄のような映画である。映画よりも、人と世の中に対する愛と信頼の話に夢中になるピョン・ヨンジュ監督は、温かい人だ。映画は映画館で見ることにして、このラブリーな人のストーリーをここで聞いてみることにしよう。―「バレー教習所」以来、7年の時を経て映画「火車」が公開されました。この長いプロジェクトの始まりにはどんなことがありましたか?ピョン・ヨンジュ監督:「バレー教習所」が終わってから入隊したユン・ゲサンから、その翌年の3月頃、分厚い軍事郵便が来た。最前線GOP部隊のトイレで夜にこっそり書いた20枚を超える長い手紙には、自分が映画を撮影しながらどれほど幸せだったかが、切々と書いてあった。しかし、私はそれを読んで恥ずかしくなった。映画をもう少しだけうまく作ることができたら、この子は私たちが得た成果について書くこともできただろうし、より大きな希望を持つこともできたのにと思えて。それで慶州(キョンジュ)へ反省の旅に出て、その時持っていた金城一紀の「レヴォリュ―ション No.3」を読みながらワンワン泣いた。「バレー教習所」で私たちが描きたかったことを、この人は文学的にやり遂げたなと思った。ジャンルの力を利用して当代のストーリーを話すパワーに改めて驚き、慶州の市内にある書店に行って無作為に日本の小説をたくさん買った。そして、その中に「火車」があった。宮部みゆきさんが好きな理由は、時代の空気を絶妙に読み取る作家であるからだ。そしてある日、制作会社のマスルピリが「火車」の版権を買ったという話を聞いて、オ・ギミン代表を訪れた。「宮部みゆきは私の専攻だよ」と言いながら(笑)「目標は予算25億ウォン(約1億6875万円)かのような映画に見せること」―7年という時間がかかった最も大きな理由とは?ピョン・ヨンジュ監督:7年間の内2年間は違う仕事をしていたから、正確には5年間だ。最初の3年間は、バブル経済崩壊後の日本社会の雰囲気がメインである原作を、今の韓国社会に関するストーリーに脚色する作業をした。第1稿から第9稿まで全てが全く違うようにできあがって、一昨年の10月、イ・ソンギュンに第18稿を渡し、午後4時から朝の4時までお酒を飲んだ後、転がる焼酎瓶の中で桃園の誓いを交わして義兄弟になった(笑)しかし、その翌年の4月まで投資をもらえず、キャスティングもうまく行かなかった。よく考えてみたら、私のせいだと思った。「シナリオは少し暗いけど面白いし、イ・ソンギュンの出演も決まったのに監督がピョン・ヨンジュ?」「本当にピョン・ヨンジュがまだ映画を作ることができるのか?」「ピョン・ヨンジュがこんなジャンルを作ることができるか?」といった疑いが、投資するのを躊躇させていることは明らかだった。―どのようにして契約を成立させたんですか?ピョン・ヨンジュ監督:ピラメントピクチャーズから16億ウォン(約1億800万円)で作られるかと提案が来た。シン・ヘウンプロデューサーとおよそ2日間悩んだ末、私たちの給料を削り、俳優たちにも頼んでギャランティーも削った。そして、パク・ゴクジ編集室やブルーキャップ(ミキシング室)などにも今回だけ助けてほしいと話し、現場の一般スタッフたちを除いたヘッドスタッフたちの給料を削って制作を始めた。5月、6月には、プリプロダクション(映画などの制作において、撮影前にする作業の総称)を進行させたが、スタッフたちは本当に苦労した。予算が少ないからといって観客がそんな事情を知った上で見たりはしないから、予算に合わせながらも野心がある絵を作り出したかった。そのため、私たちの目標は予算25億ウォンかのような映画に見せることだった(笑)―A級のニセモノのようなものですか?(笑)ピョン・ヨンジュ監督:私たちはグッチのように見せようとした(笑) 幸い、ある程度は成功したと思う。俳優たちの犠牲が非常に大きかった。カメラ2台が必要なシーンなのに、1台で撮ったことで苦労もしたし、シューティングカーや装備車を2日間も借りるお金がなく、急いで撮影をしなければならない時もあったが、何も言わず楽しく演じてくれた。それから、後半の重要なシーンである龍山(ヨンサン)駅のシーンを、4日間、朝10時から夜6時まで撮影した時、午後4~5時くらいになると焦りだして、ご飯を食べる時間もないからおにぎりを食べながら撮った。ある時周りを見たら、全俳優やスタッフたちが私に向かって「さあ、次は何を撮ろうか?」という視線を送ってきたときは思わず涙が出た。カッコイイな~こいつらって(笑) 私に「シナリオを3年間も書いたなんて大変だったね」と言うが、俳優やスタッフたちの苦労には比べれば大したことはないと思う。―シナリオを第20稿まで書いたとき、このストーリーにしがみつくことに、つまらなくなったりはしなかったのですか?ピョン・ヨンジュ監督:本当に楽しかった。最後まで書いてみないと分からないから、違うストーリーにして最後まで書くことを繰り返した。原作に非常に近いバージョンもあったし、この女を捕まえたら自分もアルコール中毒から解放されると信じる刑事が主人公であるバージョン、繊細で柔弱な医師の婚約者が主人公である恋愛バージョンもあった。そのようなものを全て想像する中で「ストーリーをこのように描いてはいけない」という罠を見つけ出したと思う。でもその罠を見つけたおかげで、撮影中に突発的な事故に遭い、何かを変えなくてはならなくなった時でも、映画が間違った方向に流れないようにすることができた。―原作小説が堅固に築き上げられたお城のような作品だから、脚色の過程で原作の力に押されないように様々な選択が必要だったと思いますが。ピョン・ヨンジュ監督:ミノと従兄である刑事ジョングン(チョ・ソンハ)が、なぜこの女を探し続けるかという疑問を、どのように説明すればいいかについてたくさん悩んだ。最近は諮問とかの情報があるから、正体を隠して結婚することは不可能じゃないし。ニセモノの住民登録証で違う人になりすますことはできるが、区役所に行ったらバレてしまうから、そういうことをどのように解決すればいいか悩んだ。そこで、映画を見ている間はそんな考えが思い浮かばないようにしようと結論を出した。「なぜ彼女を探すか」についてサブプロット(登場人物の関係の変化)を作ったが、それが編集する時に壊れてしまっては、とんでもないストーリーになってしまう。俳優たちにも、君たちが演技する時に切実にやれば人々はだまされてくれると話した。何かを説明しようとすればするほど疑われるだけだから、その代わりに感性を織り交ぜながら映画の前半を進めようとした。結局、原作が持っているストーリーの力を信じてただ前進しただけのことだ。―原作ではヒロインの婚約者は銀行員だが、映画では動物病院の獣医師ですね。このように変えた理由は何ですか?ピョン・ヨンジュ監督:自由業であった方がいいと思った。行ったりきたりしながら彼女を自分で探し回ることができるから。それにジョングンが何かの手がかりを探し出す時に、この人も緊迫感のある仕事をした方がいいなと思って医師に設定した。しかし、ソニョンが自分の身分の上昇を狙った感じがするかもしれないと思って、獣医師にもう一度変えた。問題は、私が「バレー教習所」のスジン(キム・ミンジョン)のように本当に動物が嫌いという点だった。(シン・ヘウンプロデューサー:本当は嫌いじゃなく、怖がっているだけでしょう)―動物病院で撮影したシーンが多かったようですが、そんなに怖がっていたら撮影が大変だったのでは(笑)ピョン・ヨンジュ監督:それでさらに緊張した。動物が好きというより怖がる方だし。撮影は、倫理面から原則を守って動物を扱わなければならないと思ったから、イム・スルレ監督さんに頼んで、カラ(動物保護市民団体)で保護している捨て犬の中で、実際に治療が必要な子たちを連れてきて撮影した。本当に手術が必要な子を手術したり、歯石除去が必要な子は麻酔をして死んだように見せるシーンを撮った後に歯石除去を行った。現場では本当に大変だった。犬や猫がモニターの前を歩き回っても、私たちを手伝いに来たのだから嫌味を見せることもできず、ぎこちなく「こいつらかわいいね」と言った(笑)―ソニョン(キム・ミニ)がサービスエリアから急いで家に帰って、綺麗に装った相見礼(結婚前、お互いの親が顔合わせをすること)の服を着たまま、家の中を拭いたり、洗濯をしながら、自分の跡を消そうとあがくシーンが印象的です。原作ではただ「荷物を持って家を出た」くらいに表現された部分ですが。ピョン・ヨンジュ監督:最初のシナリオにもなかったが、ミニをキャスティングして欲張ったシーンだ。ミニが出演した作品はほとんど見てないが、写真集はかなりたくさん見た。そして、その中のミニの顔からこのシーンに漂う重要な雰囲気を感じた。ミニならできると思って、コンテを作りながらそのシーンを入れたら、それを見たミニから提案があった。身体に少しピッタリ合う感じの服を着て、それを捲り上げて掃除する姿がより凄然な感じがすると思うと。「毎朝、今日はどんなことが起きるかが気になって目が覚める」―悲劇で終わる映画と違って、原作小説のエンディングは緊張感が溢れる中、具体的な結末は見せていませんね。ピョン・ジョンジュ監督:文学ではそれが通じるが、映画では原作通りに行ったらいけないと思った。それは欺瞞だと思ったし、色々悩んで様々なバージョンを出した。最後は彼女が極端な選択をするが、それは罪悪感に基づいた選択として描きたいと思った。―ドキュメンタリー映画でデビューして、今でも「ナヌムの家」の監督だと頭の中に思い浮かべる人は多いでしょう。しかし、その後に作った劇映画(物語性をもち、俳優が演じるフィクションの映画)は主題も題材も色も全く違いますが、何かきっかけがありましたか。ピョン・ヨンジュ監督:「ナヌムの家」の3部作を終えた時、一番多く聞いた言葉が「映画は見ていませんが、本当にお疲れ様でした。お見事だと思います」と言う言葉だった。今は手術を受けたが、当時は目にも問題があって自分で撮影することが難しい状態だったし、一時期はお婆さんほど愛されることができる対象なんて現れないと思った。劇映画に移行した時「見ずには褒めることも悪く言うこともできない映画を作りたい」と冗談を言ったことがある。政治的ではなく、政治的に支援を受けることもない映画を作りたいと思ったからだ。その時、チョン・ギョンリン作家の「私の生涯にたった1日だけであるはずの特別な日」を読んだが、フェミニン風の文体が非常に気に入って、映画「密愛」を作った。しかし、その作品で主婦の具体的な姿やキャラクターを生かすことができず、そのトラウマから「バレー教習所」を作るようになったと思う。だから、その2本は全く違う作品だが、私の中ではつながりがある作品だ。そして「火車」で私が一番好きなジャンルをやることができた。そういえば、私も最後まで追われてきたなもしこれもできなかったら、これ以上できるものはないね(笑)―ミステリーやホラージャンルが好きである特別な理由はありますか?ピョン・ヨンジュ監督:ストーリーが持つ力が非常に強いからだ。しかし、それがその時代を細かく説明するのではなく、細かい空気を入れてその時代を証明しているから好きだ。ジャンル文学が持っている素晴らしいパワーだと思う。計算して謎を解くのは飾りの役を果たすだけで、その時代の空気を盛り込むことがより重要になる。そうじゃない推理小説は必ず面白味がなくなると思う。創作者としての私も同じだ。「火車」を最初作った時も、これは同時代を生きているこの地域、この時間帯の人々と共有すべき映画にすることが、正しい道だと思った。―監督は現場で絶対的な存在のように見えますが、市場の中で興行に成功しない場合は苦しくなります。そんな状況になった時、どのように耐えればいいと思いますか。ピョン・ヨンジュ監督:「あ、失敗した」ではなく「なぜ観客が見なかったか」「なぜこのシーンが面白くなかったのか」「現場で私が逃したことは何か」を繰り返して考えて、同じようなミスは2度としないように気をつける態度が必要だ。そして、また失敗するかもしれないが、それでもこの映画を通して自分はやり遂げたと信じるプライドを失わないこと、チャンスが2度と来ないとしても私がこの仕事をやる理由を忘れないことが大切だ。46歳になったけれど、依然として人生が不安であることについて恥ずかしいとは思ってないし、1つのトランクの中に私の人生の全てが入ることを嬉しく思うべきだ。そういうこと全てが、私にとって意味のあることだと考えれば、その次の道が見えると思う。―作品と作品の間の数年間、映画を作っていない期間がありますが、監督はどんな生活をしていましたか?ピョン・ヨンジュ監督:食べていかなくてはならないから、アルバイトをした。講師をやったり番組に出演したりするが、そんな中で遊ぶことまでしたら、本当に時間があっという間に過ぎていく(笑)実際、ドラマを見たり小説を読んだり音楽を聞くことは、私たちにとって仕事であるから、いつも仕事をしているだけと、あえて思いながらその時を耐える。もちろん、12月31日になったら「今年も作品できなかったな」と思って、1月1日になったら「今年は作品ができるかな?」と思っているうちに、ずっとできなさそうに思えて泣いたこともある。キム・テヨンとイ・へヨンと一緒にお酒を飲んでいる時、映画界で働いている若者がその2人だけに挨拶するのを見て「私はこのまま忘れられてしまうか」と思ったこともあった。あ、数日前、MBC everyoneの「できる者が助けよう」に出たエピソードのように、私をイム・スルレ監督と間違える人も本当に多い。最近はそんな人に「実は、『私たちの生涯最高の瞬間』は適当に作った映画なんです」と言ったりするけれど(笑) とにかく、自分をかわいそうだと思ったり焦ったりしないことが重要だ。―分かっていても、そう思うことは簡単ではないと思いますが。ピョン・ヨンジュ監督:私は今でも、今日は何が起きるんだろうと気になって目が覚めたりする。そして、世の中の全てのドラマや映画、小説がそんな時間に耐えるための力になる。いつも面白いものがあるから。それから、「火車」を準備する長い間、ストレスを解消してくれたWOW(World of Warcraft:アメリカのオンラインゲーム)のダラランサーバーのギルド員たちに感謝の気持ちを伝えたい(笑)―レベルはいくつまで行ったんですか?ピョン・ヨンジュ監督:最高レベルまで行って、野戦司令官を務めた。WOWが面白かった理由は、クエストを1つずつクリアするたびに、巨大なファンタジーの中でストーリーが広がったからだ。しかし、私に切られた戦士たちには本当に悪かったと思っている。幼い子が多かったと思うが、姉さんがその時は本当に苦しんでいたから(笑) 今はもうWOWをやっていない。これ以上、アジェロスの平和を守ることができないことに気付いた。「映画が最も重要だったり、映画だけが重要だという人間ではない」―自分の思うまま、自由に生きていた20代の頃に「こんな風に生きていては、家もなく飢え死をするのではないか?」といった悩みがあったか気になります。ピョン・ヨンジュ監督:20代前半の私は、ダメ人間だった。革命家になれると思ったのにそれが不可能で、そして実際の自分は柔弱で臆病者であることに気付いた。それから私は自分を信じられなくなった。しかし、勉強して就職するような平凡な学生に戻るには、私の母親の視力より低い1.98という卒業成績が、世界と私を分離する巨大な壁になっていた(笑) だから、20代の私は「将来にこうなったらどうしよう?」ではなく「全然ダメだな」に近かった。映画を選んだのもうまく行きそうだと思ったからではなく、どうせダメになった人生だからやりたいことをやりながらダメになろうという心境からだった。もちろん、私が20代や30代の頃想像した40代は、今のような40代ではなかった。その時は、40代になったら面白いこともなくなって世の中に知りたいものなんかもうないと思った。しかし、数年前に40歳を過ぎてから、世の中が気になって、私の不安な人生が楽しかったなと思うようになった。そして、映画を作れず苦しい時がもう一度来るとしても「火車」の現場で人々から受けた気持ちは私にとって大きな力になるはずだし、それをもう一度感じたくて次を準備すると思う。―今までどのように生きてきて、これからはどのような人間として生きていると思いますか。ピョン・ヨンジュ監督:毎回変わるから、いつも今の私しか説明できない。そして、私は世の中で映画が最も重要で、映画だけが重要な人間ではない。私が信じることや私が正しいと思う世界に向けて、それを築きながら生きていく人間になることが、今の私にとって最も重要なことだ。言い変えれば、私にとって自分の次回作と同じぐらい、サンヨン自動車(韓国の準大手自動車メーカー)の解雇者問題も大事だ。去年、私は自分を恥ずかしいと思った。撮影に入ったら、監督は非常にいい待遇を受ける。私が1食でも欠かすと皆心配してサンドイッチを買ってくれるし、宿も1人部屋をくれる。しかし、ソン・ギョンドン詩人から「姉さん、これから(釜山のハンジン中工業の闘争現場に)行きます」という電話がかかってくる度に、罪悪感を覚えた。そのため、撮影が終わって釜山国際映画祭の期間中、希望バスが現場に行くようになって非常に嬉しかった。私も一緒に闘争現場に行けると思ったからだ。「火車」のVIP試写会の時、ソン・ギョンドン詩人が手術を延期してまで映画を見に来てくれたこともものすごく嬉しかった。そして、最も期待しているのは、釜山での試写会にキム・ジンスクと彼女の友達が一緒に見に来てくれると約束してくれたことだ。このように、私の大切な人々を後押ししながら、ある日鏡を見た時、全く変わらない姿で作りたい映画を楽しく作っていたら、そしてその映画が観客たちに本当にちっぽけでも、何かを与えられることができたら、それが最高の人生だと思う。―そのように自分が思う方向に向かって根を深く下ろして生きるためには、その元になる土壌が必要なのではないでしょうか?ピョン・ヨンジュ監督:今も隣にいるシン・ヘウンプロデューサー、これまで私といつも映画を一緒に作ってきたあのかわいそうな子(笑) そんな彼女や世界を変えたいと思う私の友達が、私には一番大切な土壌である。確かなのは、私において怒りと憎しみが力になったことは1度もなかったということだ。力になるのはいつも支援と愛だ。―自分がなりたいと思う人間像や、作りたいと思う世界について、映画でもう少し表現したいと思いませんか。ピョン・ヨンジュ監督:その逆だ。そんなのはただ私がなればいいと思う。たぶん、私が絶対にやらないと思うのはコメディ映画だ。すでに1人で十分やっているから。鏡を見て10分だけ1人でしゃべっても、一週間が楽しくなるのが私だ(笑)―長い時間をかけて完成したプロジェクトをようやく手放すことができました。次はどんな作品を作りたいか考えたことがありますか?ピョン・ヨンジュ監督:ある程度のイメ―ジならある。血まみれになりながら前に進んだけれど、結局自分の顔に唾を吐くような自業自得の人、失敗した若者、熱く燃え上がったが誰もそれを止めてくれず、崖っぷちまで疾走して落ちる人。そういうものに惹かれ続ける。
Vol.1 ― 女優たちの逆襲… “韓国映画界に女優は不在”は過去の話
今年の上半期を見ると、韓国映画界に女優は不在というのは過去の話になったようだ。最近公開された映画「ハナ~奇跡の46日間~」のペ・ドゥナ(33)、「ウンギョ」のキム・ゴウン(21)をはじめ、「容疑者S(不倫を待つ男)」のパク・シヨン(33)、「建築学概論」のハン・ガイン(30)とmiss Aのスジ(19)、「火車」のキム・ミニ(30)、『GABI / ガビ-国境の愛-』のキム・ソヨン(32)など、異色な作品での女優たちの活躍が熱い。中でも特に「ウンギョ」のキム・ゴウンと「建築学概論」のスジを除いた他の女優たちには、再発見という共通点がある。アラサー世代の彼女たちは、これまで見せてきたイメージとは違う姿でそれ以上のものをスクリーンで見せつけ、好評を得た。中には、20代のころに演技力に対してバッシングを受けていた女優もいたが、それを払拭することに成功し、女優として再び高い評価を得た。また、彼女たちは皆、今春久々にスクリーンへ復帰したという点でも注目を引く。ペ・ドゥナの場合、2006年の映画「グエムル-漢江の怪物-」以降、しばらく韓国映画界から離れていた。日本や韓国ドラマを通じて活躍してきた彼女は、「ハナ~奇跡の46日間~」で北朝鮮の卓球選手リ・ブンヒ役で強い存在感を見せ、さすがペ・ドゥナと絶賛を浴びた。「容疑者S」のパク・シヨンは、結婚後初めての作品で露出度の高い演技に挑戦。R指定のこの映画で彼女は、観客動員数100万人突破を記録した。演技の部分でも「神秘的な小悪魔役を安定した演技でみせた」と評価された。「建築学概論」のハン・ガインも久しぶりのスクリーン復帰だった。2004年の「マルチュク青春通り」で女子高生役で登場した彼女は、「建築学概論」ではアラフォーバツイチ女性として登場し、8年という歳月を感じさせた。そしてこれまで演じたキャリアの分だけ成長もみせている。初恋の女の子というイメージはそのままに、バツイチ女性の複雑な心理を繊細に表現しているという部分でも好評を得ている。「火車」のキム・ミニは、モデル出身でテレビドラマで女優として活動しはじめ、これまで演技力に対してバッシングを受けてきた。だが、ひたむきに演技のキャリアを積んできた彼女は、「火車」で事件の鍵を握り、様々な顔を持つ女性ソニョン役の演技が認められ、絶賛された。「キム・ミニの、キム・ミニのための『火車」だ」と言われるほど高く評価された。「GABI / ガビ-国境の愛-」のキム・ソヨンも久しぶりとなる映画出演だった。彼女は、子役タレント時代に映画「チェンジ」に出演しているが、事実上、映画は初挑戦だったと言える。主人公ターニャを演じたキム・ソヨンは、劇中、珈琲、ロシア語、乗馬、アクションなど、演技のために様々な分野を身に付けなければならなかった。デビュー18年目という長いキャリアを持つ彼女は、「GABI / ガビ-国境の愛-」が映画デビュー作で、初めての時代劇でもあった。様々な挑戦をしたスクリーンデビューに「これまでキム・ソヨンをキャスティングしなかった監督は職務放棄だ」とささやかれるほどだった。今春公開の映画では、様々なジャンルの作品に個性豊かな女優たちが存在感を発揮している。彼女たちの後に続いて、「僕の妻のすべて」のイム・スジョン、「蜜の味 テイスト オブ マネー」のキム・ヒョジン、「後宮の秘密」のチョ・ヨジョンらも劇場に足を運ぶ人々の評価を待っている。夏へと続く女優たちの好演が、待ち遠しい。
「火車」キム・ミニ、初の主演女優賞受賞するか
映画「火車」で演技派女優として再評価されている女優キム・ミニが、今年初の授賞式である「第48回百想芸術大賞」で最優秀女優賞を受賞するのか、関心が集まっている。「火車」で結婚1ヶ月前に姿を消した衝撃的な秘密を持つミステリーな女、カン・ソニョンに扮して熱演したキム・ミニは、今回の授賞式でソン・イェジン(恋は命がけ)、シム・ウンギョン(サニー)、オム・ジョンファ(ダンシング・クイーン)、チョン・リョウォン(痛み)と共に女性最優秀演技賞の候補に選ばれた。錚々たる顔ぶれが並んでいるが、キム・ミニがここ最近で一番目立つ女優であることは否めない。「火車」公開後、彼女の演技を見た人々は口を揃えて演技派女優キム・ミニの再発見最有力の主演女優賞候補と評価する程、形破りの演技変身を遂げた。モデル出身のキム・ミニが役者として初めてデビューした作品が1999年のドラマ「学校2」だ。当時キム・ミニの演技は酷評を浴び、彼女には大変厳しいデビューになった。その後、作家ノ・ヒギョンのドラマ「グッバイ・ソロ」(2006)に出演し、役者としての基盤を固めるように見えたが、大衆にはファッションスターとしてのイメージが強かったのが事実だ。だが、キム・ミニは「火車」で翼を手に入れた。劇中でキム・ミニは、限りなく弱い女性に見えるが、過去の残酷な人生から抜け出すために殺人までする二面性を持つソニョンを鳥肌が立つほどリアルに演じた。熱い好評の中で、上半期に最も輝く女優になったキム・ミニが、今年初の主演女優賞の主人公になれるのか注目される。百想芸術大賞の授賞式は26日にソウル、芳夷洞(バンイドン)のオリンピック公園内のオリンピックホール、特設ステージで午後6時30分から開かれる。
キム・ヒョンスク「火車」のパロディ「終電」で爆笑を誘う
パロディの女王キム・ヒョンスクが、今回は映画「火車」のパロディに挑戦した。最近、オンライン上ではネットユーザーによって作られた映画「火車(ファチャ)」のパロディ「終電(マクチャ)」のポスターが話題となっている。ポスターは、「火車」の主人公キム・ミニの上半身にキム・ヒョンスクの顔を絶妙に合成したもの。tvN「ブッとび!ヨンエさん」シーズン10で、キム・サンホ(サンホ)と付き合い始めたキム・ヒョンスク(ヨンエ)が、オールドミス(適齢期を過ぎても未婚の女性)の称号を取り下げることができるかどうか注目を集めている中、映画ポスターのキャッチコピーである「人生を盗んだ女」は「サンホの唇を盗んだ女」に、「火車」は「終電」に変わっており、笑いを誘った。これまでキム・ヒョンスクは、映画「トゥームレイダー」のアンジェリーナ・ジョリー、「アジョシ」のウォンビン、さらにはツタンカーメンまで、様々なキャラクターをパロディしてネットユーザーに愛されてきた。ポスターをみたネットユーザーは「さすがパロディの女王」「期待を裏切らないパロディの女王」「本当におもしろい」などの反応を見せた。20日の午後11時50分から韓国で放送される「ブッとび!ヨンエさん」シーズン10の第2話では、サンホが一人暮らしを始め、ヨンエとの恋愛を本格的に展開する。さらに、4次元(個性が強く、ユニークな考え方を持つという意味)な魅力を持つハ・ヨンジュ(ヨンジュ)がヨンエと一緒に仕事をすることになり、衝突する2人のストーリーが展開される。
“興行の女王”オム・ジョンファ“演技の女王”キム・ミニ…1四半期の映画スター
2012年第1四半期(4月~6月の3ヶ月間)の映画界の最も大きな特徴は女風だ。それだけ女優の活躍が目立っていた。既存の俳優の「再発見」とセンセーションを巻き起こしそうな「ニューフェイス」の登場があった。第1四半期の映画界を飾った女優には誰がいるだろうか。興行の女王オム・ジョンファ第1四半期の興行の女王はオム・ジョンファだ。ファン・ジョンミン、オム・ジョンファが夫婦役を演じた映画「ダンシング・クィーン」は、今年1月の正月に公開され、観客400万を突破しヒットした。オム・ジョンファは映画で、立ち遅れて歌手の夢に挑戦しながら、ギリギリの二重生活を送る、かつての新村(シンチョン)マドンナ、ジョンファを演じ、観客に夢と家族が与える意味を思い出させた。毎回様々なジャンルと様々なキャラクターに挑戦し千の顔を持つ女優であることを証明したオム・ジョンファは、コメディにも才能があることを見せた。演技の女王キム・ミニ第1四半期の映画界で演技力が再評価された俳優はキム・ミニだ。キム・ミニは、3月8日に公開された映画「火車」で250万に達する観客を動員、演技への好評と興行成績の二兎を得た。映画では、ある日突然婚約者の傍から消える謎めいた過去を持つ、ミステリアスな女性ソンヨンを演じたキム・ミニは、繊細かつ戦慄させる演技で観客の目を引いた。多くの話を持っていそうな顔と、繊細に変わる表情などで強烈な印象を残し、その口コミで「火車」興行の主役となった。卵たち第1四半期は映画界で新しく注目したり、華やかにデビューした新人の活躍もあった。Araは、映画界では新人として関係者や大衆に新しく刻印された。今年2月に公開された「ペースメーカー」で映画デビューし、翌月「パパ」に引き続き出演する。いずれも期待以上の演技力と魅力的なビジュアルを披露した。ガールズグループmiss Aのスジは、第1四半期の最後を華やかに飾った映画「建築学概論」で最も成功した俳優だと言える。スジは、このデビュー作品で歌手を超え、女優としての可能性を垣間見せた。破格的なデビューを果した主人公もいる。今月26日に公開される映画「ウンギョ」のヒロイン、女優キム・ゴウンがその主人公だ。劇中で爽やか且つ官能的な17歳の少女を演じ、早くも映画界で期待されている。
私は“キム・ビョル”……悩みのトンネル、出口が見える
「火車」で女優人生の節目を迎えたキム・ビョル実は、彼女が苦しいトンネルから抜け出していることが、映画「火車」を見て分かった。「火車」でイ・ソンギュンの働く動物病院の看護師として出演したとき、キム・ビョルに以前の元気ハツラツとした姿は見られなかったものの、落ち着いた様子だった。彼女の演技が安定しているのは、苦しいトンネルを抜けつつあることの証明でもある。女優としての内的な葛藤と悩みなくして、そのような180度違う演技の波長を見出すことは難しい。キム・ビョルは、ドラマ「テルン選手村」(2005)で一気に関係者とファンの注目を浴びた。堂々として気が強く、ユニークな彼女ならではの魅力は、映画「赤ちゃんと僕」の主演にキャスティングされるほど凄い勢いだった。しかし、映画「飛翔」以来2年のブランクを経てから出演した映画「火車」では、違うトーンの演技を披露した。それも、余裕たっぷりの笑みを浮かべての演技だ。果たしてこれまでの間、キム・ビョルに何があったのか。「『テルン選手村』『赤ちゃんと僕』でちやほやされました。本当に私うまくやれたんだなと思ってたんです。別に努力もしてないのにちやほやされて、調子に乗っていました。本当にバカみたい 実際は、もともとの性格とキャラクターがよく合っていただけで、演技がうまかったわけではありませんでした。後になってそのことに気付いたんです」「『飛翔』の監督とスタッフたちに、6ヶ月後にお詫びの電話」キム・ビョルがこのようなことを悟ったのにもきっかけがあった。キム・ボムと一緒に主演を演じた映画「飛翔」を通じてのことである。「飛翔」を終えて、1ヶ月に1回、6回も「飛翔」を観たが、最後の6回目にその映画を見る途中、自分の過ちに気付いたという。「その瞬間、自分の人生から血の気がサーッと引くような思いでした。5回目まで映画はヒットしなかったけど、綺麗に写ってるじゃんくらいの気持ちで観てました。そんな中、テレビのチャンネルを回していて、6回目に『飛翔』を偶然観たんですが、いきなり悟ったんです。『あ、私に問題があったんだ。それで映画がヒットしなかったんだ』全身から血の気が引く感じがしました。本当に辛くて、パニック状態に陥ったんです」キム・ビョルは、自分が出演した映画「飛翔」を6回も観て初めて過ちを悟ったのだ。もう映画は幕を下ろして6ヶ月後だった。遅ればせながら、監督とスタッフたちに申し訳ないと言いたかった彼女はお詫びの電話をかけ始めた。「大して人気もなく、認知度も高くなかった私をヒロイン役にキャスティングしてくださったのに、それをあまりにも軽く受け取っていたんです。そのことにもまた、あまりにも後になって気付いてしまって、本当に申し訳ないと言いました。私のせいでその方々の努力が台無しになって、申し訳なかったことも付け加えました。監督とスタッフに、『またいつどこで会えるか知らないけれど、後でこの借金は全部返済したい』と言いました」自分の過ちに気付いても、後で詫びることがどんなに勇気を要することなのか、経験した人たちは分かるだろう。にもかかわらず、キム・ビョルは勇気を出して受話器を取り、お詫びの言葉を告げた。そのように詫びながら、涙を流したという。「飛翔」を通じて演技者として役に取り組む姿勢、現場での態度などに対して深く反省し、キム・ビョルは大いに悩んで、自分を振り返り反省と懺悔の時間を過ごした。気苦労が絶えなかったことは、インタビュー中、彼女の眼差しと震える息遣いから伝わってきた。「『火車』、演技の勉強だけでなく、人生の勉強にもなった大切な作品」そのような辛い時間を経て、2年ぶりに復帰したキム・ビョル。いまや27歳の女性になっており、眼差しから一層成熟した姿が感じられた。また、胸の奥にはまだまだ演技者としての課題が多く残されているとも言った。でも確かなのは、以前の元気ハツラツなティーンエイジャーの魅力より、今の姿の方がはるかに美しく見えるということだ。特に、映画「火車」でキム・ビョルは、イ・ソンギュン、チョ・ソンハなどの俳優とともに呼吸を合わせ、流れを滑らかにしながらも映画を活気付けた。以前は星の国のお姫様のような異色的な魅力があったというならば、「火車」でのキム・ビョルは、どこでも見られる、リアリティのある、地に足をしっかりつけているような、そんな演技をした。「『火車』は、私にとって非常に意味のある作品です。演技の勉強だけでなくて、人生の勉強もできました。本当に、とても大切な時間でした。主演でない助演の立場から現場を見て、自分自身をもっと振り返ることができましたし、現場でどのように作業すべきか、どのようにコミュニケーションを取るべきかも学びました。何より、できるだけ私という人を目立たせず、普通に映したかったんです。話の流れになる人物ですから。そして、ソンギュンさんのペースに合わせて、彼のペースに従いました。なので、自分の演技を気にせず、ソンギュンさんのペースに従ってやりとりできたと思います。普通に演技しようと務めたんです」「27歳、分かれ道今は楽な道の方が怖い」27歳のキム・ビョルは、最近分かれ道に立たされているような気がすると告白した。19歳でこの仕事を初め、一気に注目されたこともあるし、また2年あまりの間人々から忘れられたりもした。彼女が考えたトンネルは、思ったより長くて辛かったそうだ。「最近、人生に対する悩みが多いです。これまで自分を認めて、認められようとしてきただけで、反省はしていなかったと思います。今は、自らも反省して、役者としても大いに悩んでいます。楽な道の方が、今はもっと怖くなりました」キム・ビョル。彼女が人生に対して、そして役者としての悩みと反省を持って選択した映画は「火車」。そして「火車」と同時期に撮影した「私は公務員だ」は、下半期の公開を控えている。キム・ビョルの悩んだ痕跡が盛り込まれた「火車」が観客の心を掴んだように、「私は公務員だ」も期待される。キム・ビョルが悩むトンネルの出口は、もう目の前まで来ているように見える。あと少しだ。キム・ビョル、ファイト!
映画「火車」恐怖と悲しみの泥沼
高速道路のサービスエリアで婚約者ソニョン(キム・ミニ)の姿が跡形もなく消えてしまった。残されたムノ(イ・ソンギュン)は唖然とするばかりだ。彼女を探すためにあらゆる手段を使うが、跡を追えば追うほど、ムノが向き合ってきたソニョンの姿は、自身の記憶とすれ違う。いとこの弟・ムノからの頼みで、ソニョンを追跡し始めるチョングン(チョ・ソンハ)にも、彼女の痕跡は薄くぼんやりしたものだった。しかし、愛していたソニョンの真実を明かそうとする強迫観念に苦しむムノと元刑事として秘密を暴きたい衝動に駆られるチョングンは、ソニョンの消された足跡を追って行くうちに彼女の隠されていた実体と一つずつ向き合うことになる。【鑑賞指数】彼女を信じないで下さい。嫌わないでください7/10点「人生を台無しにしたいのか」ソニョンの行方に執着しているムノに、チョングンは諦めることを勧める。誰もそのような結果を望んではいない。それにも関わらず、手を打つ暇もなく奈落に落ちてしまう人がいる。そんな世の中だ。映画「火車」はそのように運悪く人生を台無しにした人々の孤独な戦いを追っていく。突然、婚約者をなくした理由が分からずに苦しんでいるムノや、賄賂を受け取ったことで仕事を失い、転換点をつかめず苦しんでいるチョングンにとって、ソニョンは到達しなければならない目標のようなものだ。彼にはそれ以外に追っていくものがないからだ。しかし、ソニョンこそ、第三者によってどれだけ人生がぶち壊されるかを切実に見せてくれた人物だ。そして、生き残るためにもがくほど、深いどん底に嵌っていく彼女の姿を通して、この映画は世の中が泥沼だということを描いている。表からのぞくと、その中に何があるのか分からず、適当に手を入れてみても見当がつかない恐怖と悲しみが、この世界では漫然としている。映画はスリルよりもドラマ性を強調している。ソニョンを疑っては信じ、そしてまた疑い、判断を留保する様子は、混乱を誘導するというよりは、感情移入のための装置だった。そのため、追跡する側から捉えた陳述とソニョンの過去が交互に登場するにも関わらず、鮮明に謎を説明し、事件をスピーディーに進行させるストーリーの中盤は、この映画で最大の美点である。混乱も退屈もないという点で半分の成功を収めたわけだ。しかしバタフライ効果(ささいなことが大きなことへ繋がっていく現象)を使う方法やソニョンが結末を迎えるシーンは多少露骨で、都心と郊外の境目が曖昧な映像は洗練されたものとは言えない。ストーリーはぶくぶく沸くように熱いが、その熱い温度をスクリーンでは表現しきれていなかった。特に難易度の高いジグソーパズルを合わせながら、最後のピースをもとの所に置いた瞬間のカタルシス(解放感)を正確に狙った宮部みゆきの原作を読んだ観客なら、映画のスタイルに対してより一層物足りなさが残るだろう。欲望という名前は明らかだが、燃え上がる火力は充分ではない列車だ。
「火車」キム・ミニ、新スタイルの悪女役で観客を魅了
公開10日目にして150万人の観客を動員した映画「火車」は、女優キム・ミニにとっての代表作となった。本作品は、一部でキム・ミニのための映画と評価されるほど、彼女の演技に注目が集まっている。デビュー13年目のキム・ミニが、映画とドラマを合わせ、出演13作品目となる映画「火車」を通じて、ファッションリーダーのイメージを脱ぎ捨て演技派女優の仲間入りを果たした。この映画で彼女は、過去にイ・ヨンエ、チョン・ドヨンが演じた悪女に匹敵する、新しいスタイルの悪女を見事に演じ、賞賛を受けている。宮部みゆきの同名小説が原作のこの映画でキム・ミニが演じた役は、結婚式を1ヶ月後に控えて突然失踪した女性ソニョン。婚約者であるムノ(イ・ソンギュン)と彼のいとこで元刑事であるチョングン(チョ・ソンハ)が、ソニョンの消息を追い、彼女の衝撃的な過去が次第に明らかになっていく。普段、ゆったりとした話し方と特有の表情でつかみどころのない女優のイメージであるキム・ミニが、天使と悪魔のふたつの顔を持つ人物を演じて観客を魅了した。映画の中で他人の人生を奪って生きていく人物を演じたように、キム・ミニのこれまでの人生も決して順風満帆ではなかった。街角でモデルとしてスカウトされたキム・ミニは、雑誌やCMに出演し、たちまち新世代の顔として浮上した。1999年にドラマ「学校2」で女優デビューし、ドラマ「ジュリエットの男」(2000年、SBS)や「純粋の時代」(2002年、SBS)、映画「サプライズ」(2002年)などで個性的な演技を披露してきたが、興行には恵まれなかった。その後、2006年に脚本家ノ・ヒギョンが執筆した「グッバイ・ソロ」(KBS 2TV)で主演を努めて演技力を認められ、2008年の映画「お熱いのがお好き」で百想芸術大賞、釜山映画評論家協会賞などを受賞し、演技派女優として世に認められることとなる。だが、それ以降に出演した映画「女優たち」「モビーディック」などは、興行が振るわなかった。モデル出身の華麗なルックスとスタイルで、長い間女性たちの憧れの対象であったが、女優として認められた作品はそう多くはなかった。映画のタイトルの「火車」は、生前に悪行を犯した亡者を地獄に連れて行くという、日本の妖怪「火車」にちなんでいるが、この映画はキム・ミニにとって、スターや女優としての華々しい成功を載せてきた花車となった。また、映画の中で最も魅力的な存在として外せないのが、悪女である。映画「親切なクムジャさん」のクールな悪女イ・ヨンエ(イ・クムジャ役)や「ハウスメイド」の過激な悪女チョン・ドヨン(ウニ役)のように、決して憎みきれない悪女を演じて、キム・ミニは映画ファンたちの愛を一身に受けている。
映画俳優の悩み“イメージチェンジ”はキム・ミニから学ぼう
イ・ソンギュン、ソ・ヨンヒのイメージチェンジについての悩み、大胆なキャスティング、そして努力も必要「多様なジャンルの作品をやりたいです。俳優は作品を選択する際、主体でもあるけれど、選択される立場にもなります。選択する作品、選択された作品を通じてもっと役柄の範囲を広げる努力をすれば、多様なジャンルの作品で多様な役を演じることも出来ると思います」俳優イ・ソンギュンを映画「火車」の公開前にインタビューした。ここで、イ・ソンギュンにファンからの質問を投げた。ロマンチックコメディの作品に多く出演しているイメージが強いが、それを変えたい気持ちはないのか。軽い質問だったが、イ・ソンギュンはイメージチェンジについて自らの考えを打ち明けた。「私にとって今年は重要な時期です。今年上手くいかないと、大きな危機が迫ってくる可能性があるということをよく分かっています。私はロマンチックコメディに頻繁に出演したわけでもありませんが、ドラマのせいかそういうイメージが固まったようです。私も多様なジャンルの映画に出演し、幅広い演技をしたいと思います。もっと広く、もっと深くならないと限界が訪れると思います。今こそ私自身が演技の視野を広げなければならない時期です。この時期に上手くいかないと忘れられるかもしれないという危機感を持っています」固定化したイメージで似通ったジャンルの映画への出演を繰り返せば、危機に陥るかもしれないという話だ。イ・ソンギュンのイメージはロマンチックガイだ。本人の希望通り視野の広い演技を見せたのが今回のミステリースリラー「火車」だ。この作品で彼は消えたフィアンセを探すという一連の過程を通じて、観客と呼吸を一致させる名演技を披露した。拡張された演技あるいはイメージチェンジを追求したイ・ソンギュンは少なくともその半分の成功は収めたと言える。スリラーのイメージから脱皮したいソ・ヨンヒとロマンチックコメディの王はもうやめたいイ・ソンギュン映画「ビー・デビル」で2010年韓国国内はもちろん、海外映画祭の主演女優賞を独占したソ・ヨンヒ。その後、ドラマに出演しお茶の間に戻ってきたが、映画ではまだ顔を出せずにいる。「ビー・デビル」以後、出演の提案があった映画は全て「ビー・デビル」で演じたキム・ボンナムと同じような役柄だったり、被害と抑圧を受けたり、復讐をする役柄ばかりだったからだ。当時ソ・ヨンヒの所属事務所の関係者は「『チェイサー』や『ビー・デビル』などの作品に出演した後、似かよった作品の出演オファーばかり入ってきます。実は、ソ・ヨンヒという女優は、とても快活で明るい人です。監督や制作者の皆さんがソ・ヨンヒが出演した作品だけで彼女を判断しているようで残念です。彼女の他の面を引き出してほしいですね。似たり寄ったりの役にソ・ヨンヒの過去のイメージだけを代入させることはいけないと思います。そのため事務所でも次回の出演作をなかなか選べずにいます」と伝えた。ソ・ヨンヒ自身も明るくて元気な役を演じたいという思いを「ビー・デビル」公開後のインタビューでしばしば伝えてきた。それでチ・ヒョヌと一緒に出演したドラマ「千回のキス」、イム・チャンジョンと呼吸を合わせる「チ・ウンスの人生大逆転」等、前よりはるかに気楽でさわやかな魅力がアピール出来るドラマを選択している。ロマンチックコメディのイメージに閉じ込められたイ・ソンギュンと、スリラーのイメージに閉じ込められたソ・ヨンヒ。二人とも選択するより選択される立場の俳優。一つのイメージだけでアピールすれば、彼らの希少性は下がってしまう。監督、制作スタッフには大胆で斬新なキャスティングをしてほしいだが、熾烈な戦場のような映画企画と制作環境を考えれば、このような俳優の希望を叶えてあげることも難しいようだ。ある映画関係者は「実は、キャスティングをする時、その俳優が持っているイメージを考慮するケースが多い。もちろん、監督や制作スタッフが従来のイメージをそのまま受け入れるよりは、新たな面を引き出す努力が必要なのは事実だ。だが、簡単に行こうとする傾向が強い」と語った。しかし、大胆なキャスティングで反転の効果という相乗効果を得たケースもある。映画「火車」のピョン・ヨンジュ監督とヒロインのキム・ミニのことだ。映画「お熱いのがお好き」を含め、いつも爽やかでハツラツとしたイメージが強かったキム・ミニ。実は、彼女と所属事務所は観客の胸にしみこむような以前とは違う強烈な役を担当したいと、長い間それに合う役を探していた。その中で、映画「火車」と出会い、キム・ミニは魅了された。彼女の中では変化に対する熱望が大きかったが「お熱いのがお好き」以後、なんと5年もの時間がかかった。だが、ピョン・ヨンジュ監督の彼女への信頼と大胆な挑戦、彼女の変化に対する熱望が合わさり、映画「火車」が誕生した。キム・ミニはこのチャンスを逃さんと、これまで培ってきたものを一気に披露した。おまけにイメージチェンジを果たすなど映画界に強烈なインパクトを与えた。「火車」の、ピョン・ヨンジュ監督とキム・ミニのようにイ・ソンギュンとソ・ヨンヒの悩みが解消する日が早く訪れることを期待する。
キム・ミニ「火車」で自己最高の興行記録を達成!
「火車」で演技の幅を広げたキム・ミニ次期作の提案も次々とキム・ミニが、映画「火車」で自身の出演作の興行記録を連日塗り替えている。 キム・ミニは、2007年に主演を演じた映画「お熱いのがお好き」の59万人の記録を優に超えた。3月25日までで映画「火車」が公開3週間で観客200万を突破している。キム・ミニの所属事務所であるBHエンターテインメントの関係者は、「キム・ミニが『火車』で、彼女が主演を演じた作品のうち、最高記録を立てた」とし、「観客がキム・ミニの変身にたくさんの関心を持って頂き本当に感謝している」と伝えた。キム・ミニは、ピョン・ヨンジュ監督の映画「火車」で、結婚式を1ヶ月前に控えて消えてしまった婚約者役を熱演した。自分の存在を隠すために殺人も辞さない殺人者であることが明らかになり、観客を驚かせた。 モデルとして芸能界にデビューしたキム・ミニは、さわやかではつらつな魅力が強い女優だった。どちらかというと、ラブコメディやCMの明るく笑うイメージが強かった。しかし、変身願望が強かったキム・ミニは、「火車」と出会い映画に没頭し、変身に成功した。「今年の主演女優賞は断然キム・ミニ!」と公然と言われるほど、観客と評論家たちにもショックを与える演技だった。演技の幅が広くなったキム・ミニにシナリオの提案も相次いでいる。ある映画関係者は、「今までキム・ミニに見られなかった点を『火車』から見た」とし、「さらに深くなった演技力に目が離せなくなった」と伝えた。事務所の関係者は、「映画を見たドラマや映画制作者が、シナリオとドラマのシノプシスを送っている」とし、「次期作を慎重に決定して、良い作品でお会いしたい」と伝えた。「火車」の投資と配給を担当するCJ E&Mの関係者は、「『建築学概論』『アンタッチャブル』等の新作が公開されたが、日曜日まで210万の観客を超えているだけに、今週末までに250万人を軽く超えられるだろう」と述べた。 「火車」のキム・ミニが、今後の作品でどのような魅力で、深く広い演技を披露してくれるのか期待したい。