善徳女王
記事一覧
「帝王の娘」放送スタート!第2の「善徳女王」となるか?MBC時代劇のパターンを覆した
MBCの新しい連続ドラマ「帝王の娘 スベクヒャン」(以下「帝王の娘」、脚本:ファン・ジニョン、演出:イ・サンヨプ)が強烈な印象を残しながら新しい時代劇の誕生を告げた。9月30日、ついに「帝王の娘」がベールを脱いだ。このドラマは百済(ペクチェ)武寧(ムリョン)王の娘であるスベクヒャン(ソ・ヒョンジン)の一代記を描いた時代劇で、百済の波乱万丈な家族史と彼らの切ないラブストーリーを描く。特に「帝王の娘」は放送前からMBC独立記念日スペシャルドラマ「絶頂」を手がけたファン・ジニョン脚本家とイ・サンヨプ監督がタッグを組むことや実力派俳優たちの出演で話題を集めた。そして、彼らはその期待を裏切らなかった。第1話ではソ・ヒョンジンが予告した通り、強烈なシーンで幕を開けた。ソルナン(ソ・ヒョンジン)とソルヒ(ソ・ウ)は姉妹だが、覇権争いで対立し、一歩も譲らない緊張感を形成した。ソルナンが刀を持つと、ソルヒは「母の最後の言葉を思い出しなさい」と姉の前に立ちふさがった。続いてストーリーは姉妹の悲劇的な運命が始まった過去に戻った。未婚のチェファ(ミョン・セビン)はザピョン(イ・ジェリョン)の子供を妊娠した状態。彼女はときめきながら戦争に出たザピョンを待った。そんなある日、ザピョンのことを思いながら眠ったチェファは夢の中で彼に会う。しかし、ザピョンは東城王(チョン・チャン)のために自害し、チェファは嗚咽した。これはチェファの夢であったが、これからザピョンに危機の瞬間が訪れることを暗示した。この日、第1話を率いたのは、チェファ役を演じたミョン・セビンだった。初の時代劇であったものの、完璧な演技を見せてくれた。特にミョン・セビンとソ・ヒョンジンはルックス的にもかなり似ており、ドラマへの集中度を高めた。イ・ジェリョン、ユン・テヨンとの三角関係がどう展開されるのかも関心を集めた。「帝王の娘」は衣装から映像まで、すべてが華やかだった。武寧王がドラマの中心にいるだけに、アクションシーンもたくさん出た。第1話が放送された直後、連続ドラマにするにはもったいないという好評が相次いだ。何より、朝鮮時代ではなく百済時代を舞台にした点が興味深い。MBCで三国時代(高句麗、新羅、百済)を舞台にした時代劇を披露するのは2009年「善徳女王」、2011年「階伯(ケベク)」以来初めてのことだ。2010年の「トンイ」「チャクペ~相棒~」「馬医」、そして2013年の「火の女神ジョンイ」「ホジュン~伝説の心医~」はすべて朝鮮時代を舞台にしたドラマだった。正統派時代劇ではない「太陽を抱く月」と「九家の書」も同じだった。さらに、MBCの時代劇は、まるである人物の偉人伝を見ているような雰囲気で、視聴者に勇気と希望を与える。そのため、危機・克服・成長というパターンを踏襲しているという指摘から抜け出せない状態だった。このような中で登場した「帝王の娘」は斬新だった。第1話から血飛沫が飛び散り、女同士のすさまじい戦いが始まった。強烈で華やかなイメージや三国時代を舞台にした点など、「善徳女王」を連想させる部分もあった。まず「帝王の娘」は緊迫とした展開と俳優たちの好演で視線を集めることに成功した。「善徳女王」のように興行にも成功するかは最後まで見届けるべきだ。
「張禧嬪」キム・ジミから「野王」スエまで…韓国ドラマにおける悪女列伝
55年の韓国ドラマ史上の悪女たちトップ女優には必須最近SBS月火ドラマ「野王」でのスエの悪行が話題になっている。成功と野望のために、自分のことを愛してくれる男性を冷酷に裏切る悪女ぶりが視聴者たちの怒りを買っているのだ。面白いことに劇中のスエの悪行がひどくなればなるほど、視聴者はドラマにはまり、視聴率も上がるという。悪女に対する視聴者の関心が高いという意味であろう。そのため気になった。55年の韓国ドラマ史を輝かせた悪女たちは果たして誰なのか。ここにスエ顔負けの悪女たちを集めてみた。1.恨む女たち:少女の幽霊から九尾狐まで悪女と言えばまずホラードラマの主人公だろう。その中でも最も有名なキャラクターはやはりKBS「伝説の故郷」の九尾狐(クミホ)である。1977年、第1代目の九尾狐、ハン・ヘスクをはじめ、チャン・ミヒ、キム・ミスク、ソヌ・ウンスク、チャ・ファヨンなど当代のトップスターが相次いで九尾狐役を演じた。当時業界では「九尾狐を演じないとトップスターとして認められない」という雰囲気があったほどで、女優の間で九尾狐役を手に入れようと、プライドを掛けたバトルが繰り広げられたこともあるという。視聴者から愛された九尾狐というキャラクターは、1989年に「伝説の故郷」が打ち切りになってから一時的に姿を消していたが、1996年に「伝説の故郷」が復活し、パク・サンア、ソン・ユナ、ノ・ヒョンヒ、キム・ジヨンなどが九尾狐役を熱演した。特に1997年に放送されたソン・ユナの「九尾狐」は、現在までも度々話題に上がるほど、しっかりとしたストーリーとキャラクターを誇る名作である。同作は2010年に制作されたハン・ウンジョン主演の「九尾狐伝~愛と哀しみの母~」のモチーフになっていることでも有名だ。「伝説の故郷」が過去を時代背景にしたのであれば、1990年代にはその時代背景を現代に移したホラードラマが数多く制作された。1994年のMBC納涼特集ドラマ「M」が代表的である。同作はチョン・セホ監督とイ・ホング脚本家が演出と脚本をそれぞれ担当し、女優シム・ウナが主人公に起用され、52.2%という驚くべき視聴率を叩き出した作品である。青色に変化するシム・ウナの瞳と変声された声は複数のバラエティ番組でパロディ化されたほど大人気だった。「M」の大ヒット後、「蜘蛛」のイ・スンヨン、「星」のコ・ソヨン、イ・ソラなどが納涼特集ドラマのヒロインとして活躍し、SBS「ゴースト」のミョン・セビン、KBS 2TV 「RNA」のペ・ドゥナがその後を継いだ。2.歴史上の悪女:張禧嬪から張緑水まで伝説の九尾狐よりひどい歴史上の悪女もいた。粛宗(スクチョン)の悪妻で朝鮮時代最悪の悪女と呼ばれる張禧嬪(チャン・ヒビン)がその良い例である。第1代目のキム・ジミをはじめ、これまでナム・ジョンイム、ユン・ヨジョン、イ・ミスク、チョン・インファ、チョン・ソンギョン、キム・ヘス、イ・ソヨンが張禧嬪役を演じた。張禧嬪もトップ女優なら誰もが演じたがるキャラクターの一つとして挙げられる。今年3月に放送されるSBS「チャン・オクチョン」では美人女優キム・テヒが9代目張禧嬪としてキャスティングされ、期待が高まっている。燕山君(ヨンサングン)の愛妾張緑水(チャン・ノクス)も忘れてはならない人物である。燕山君の寵愛と朝鮮時代の士林(サリム:儒者集団)の憎悪を一身に受けた稀代の妖婦である張緑水は色気たっぷりな妖艶さと強烈な個性を武器に視聴者を釘付けにしたキャラクターである。1971年から「思母曲」のコ・ウナをはじめ、「朝鮮王朝五百年-雪中梅」のイ・ミスク、「燕山君」のカン・スヨン、「王と妃」のU;Nee(ユニ)などが張緑水役を演じ、そのうち、1995年の「王妃チャン・ノクス~宮廷の陰謀~」のパク・チヨンは圧巻と言えるほどの演技で視聴者から絶賛された。「燕山君に張緑水がいたとすれば、光海君(クァンヘグン)には金介屎(キム・ゲシ、後の金尚宮)がいる」という言葉もあるほど、金介屎も何回もドラマ化された歴史上の悪女である。仁穆大妃(インモクテビ:先代王・宣祖(ソンジョ)の継妃)を廃庶人(ペソイン:王族が庶民の位に落とされること)にさせ、大北派(世子(セジャ:王の跡継ぎ)の座を巡り光海君を推す勢力)の窓口として光海君と密な関係であった金介屎は、後に宣祖毒殺説の背後にいた人物とされるなど、宣祖や光海君時代において最も権力に近づいた女性だった。これまで「暴君 光海君」のウォン・ミギョン、「宮廷女官キム尚宮」のイ・ヨンエ、「ホ・ギュン~朝鮮王朝を揺るがした男~」のイ・ジュファ、「王の女」のパク・ソニョンが金尚宮役を演じた。3.怖い姑たち:「旅路」のパク・ジュアから「百年の遺産」のパク・ウォンスクまで世の中の嫁たちにとって九尾狐、張禧嬪より怖い存在は姑かもしれない。歴代ドラマの中には視聴者をヒヤッとさせた姑たちが数回登場した。そのはじまりをたどると、1972年に放送されたKBSドラマ「旅路」のパク・ジュアが挙げられる。嫁入りしてきたテ・ヒョンシルを酷く虐待しいびり続けたパク・ジュアの名演技は、その後数多くの姑キャラクターの手本のような存在となった。1975年のヒット作KBS「馬夫」のヨ・ウンゲも悪辣な姑の典型とも言えるケースである。嫁いびりが酷い姑役を演じきったヨ・ウンゲはあまりにもリアルな演技のせいで、不本意にも視聴者から憎まれた。同作でヨ・ウンゲが口癖のように言っていた「よくもやってくれたわね」という台詞は、当時の独裁政権を風刺する表現として流行したという。1977年のMBC「後悔します」のキム・ヨンリムにも言及しておきたい。1961年にデビューしてからずっと怖い姑や厳しい母親役を演じてきたキム・ヨンリムは、「後悔します」でも嫁キム・ヘジャを誤解し、ひどくいじめる姑役を見事に演じた。キム・ヨンリムの実の息子であるナム・ソンジンは「『後悔します』が大ヒットしてしまい、母が怖い姑だと誤解されて結婚しにくかった」と悩みを明かしたことがあるほどだった。1970~1980年代にはパク・ジュア、ヨ・ウンゲ、キム・ヨンリム、カン・ブジャなど体格の良い中堅女優たちが主に姑役を演じていたが、1990~2000年代にはパク・ウォンスク、キム・ジャオク、イ・フィフャン、ヤン・グムソク、パク・へミのような華麗な王妃タイプの女優たちが悪い姑役を多く演じた。最近MBC「百年の遺産」で主人公のユジンをいじめる役を演じているパク・ウォンスクは、過去にも「星に願いを」「冬鳥」などで二重人格の様なずるい性格の姑役の真骨頂とも言える演技を見せた。2000年に放送されたKBS連続ドラマ「好きだからしょうがない」でのキム・ジャオクの演技も見事だった。若い頃は恋愛ドラマの可憐な主人公を演じていた彼女が同作では息子のチョン・ボソクと結婚したバツイチのチョン・ソンギョンをビシバシといびるヒステリックな役を演じ、視聴者を驚かせた。キム・ジャオクの変身のお陰か、「好きだからしょうがない」は延長に延長を重ね、30%台という高い視聴率を記録した。4.図々しい不倫女たち:「砂の城」のキム・チョンから「私の男の女」のキム・ヒエまで今も昔も不倫ドラマは女性視聴者がよく見るジャンルのドラマである。不倫ドラマの元祖は1969年のMBC「カエル夫」までたどりつくことになるだろうが、不倫ドラマが全国的な反響を呼んだのは、1988年のMBCドラマ「砂の城」といってもいいだろう。言葉のマジシャンと呼ばれるキム・スヒョン脚本家が執筆し、キム・ヘジャとパク・グンヒョンが夫婦役を、キム・チョンがパク・グンヒョンの不倫相手役を演じた。全8話であるため、スピーディーで大胆な描写で大きなセンセーションを巻き起こし、主婦の間では砂の城ブームが起きたほどだった。「砂の城」の放送当時、韓国ではソウルオリンピックが開催されていたが、同作の人気があまりにも高かったため、MBCはオリンピック中継を諦め、「砂の城」を放送したほどである。そのため「砂の城」はソウルオリンピック期間中に唯一通常通りに放送されたドラマとなった。女優キム・ヘジャは同作で1988年の「MBC演技大賞」を受賞した。キム・スヒョン脚本家はそれから20年後の2007年、「砂の城」の拡大版といえるSBS「私の男の女」を世に送り出し、もう一度ブームを巻き起こした。キム・ヒエが大変身を成し遂げ、不倫女役を演じたことで話題になった同作は、刺激的なテーマにもかかわらず、人生に対する深い洞察力と人間の内面の孤独を冷静に表現して高い評価を得た。最高視聴率は36.8%であり、その年のSBSドラマの中で最も高かった。お陰でキム・ヒエは2007年の「SBS演技大賞」を受賞した。その他にもMBC朝ドラマ「妻の復讐~騙されて棄てられて~」のチ・スウォン、SBS週末ドラマ「糟糠の妻クラブ」のキム・ヒジョン、SBS連続ドラマ「妻の誘惑」のキム・ソヒョンなどが図々しい不倫女役をリアルに演じ、ドラマの人気に貢献した。5.復讐ドラマのヒロインたち:「青春の罠」のシム・ウナから「妻の誘惑」のチャン・ソヒまで男に裏切られたドラマの中の女たちの復讐は、何よりも冷たくて怖い。復讐ドラマの元祖を言うなら、1979年にMBCで放送された「青春の罠」を挙げることになるだろう。金と名誉に目がくらんだ男イ・ジョンギルと彼に裏切れた後、復讐を仕掛ける女イ・ヒョチュンの対立で大きな人気を集めた同作は婚前妊娠、未婚の母、復讐など刺激的なテーマが原因で、早期終了となった悲運のドラマだった。それにもかかわらず高い人気で同名の映画や小説が作られ、当時世間で話題になっていた。「青春の罠」が再び注目を浴び始めたのは、それから20年が過ぎた1999年で、原作者のキム・スヒョン脚本家が「1979年にできなかったストーリーを展開したい」と言い、SBSでリメイクに乗り出した。当時のトップ女優だったシム・ウナが主演を務めて熱演した同作は、50%を超える高視聴率を記録し、1999年最高の話題作となった。劇中の「あなたを潰してやる」という台詞は、今でも名台詞として挙げられるほどであり、その年、シム・ウナは「SBS演技大賞」を手に入れた。1988年に放送されたMBC「明日忘れよう」も、「青春の罠」に負けないほどの人気を集めた復讐ドラマだった。当時MBC最高のヒットメーカーだったパク・チョル監督と人気脚本家のパク・ジョンランが手を組んで作った同作は、当時22歳だった女優キム・ヒエを一躍トップスターにしたドラマでもある。婚約者から裏切られた女の壮絶な復讐を描いた「明日忘れよう」は、男の死という悲劇的な結末で視聴者に強烈な印象を残した。チェ・シラの妖艶なダンスで衝撃を与えた1994年のMBC「息子の女」も記憶に残る復讐ドラマである。父親を殺した女に復讐するため、彼女の息子を誘惑してその一家を破滅させようとする内容の同作は、非道徳的で扇情的だという大きな批判を浴びたが、最高視聴率が49.7%に上るほど大ヒットとなった。チェ・シラは同作で1995年の「MBC演技大賞」を受賞した。2000年代に入り、復讐ドラマの女王として登場した女優はチャン・ソヒである。2002年にMBC連続ドラマ「人魚姫」の主演に起用されたチャン・ソヒは、自分を見捨てた父親に復讐するウン・アリヨン役で迫真の演技を見せ、視聴者を釘付けにした。20年の長い下積み時代を終えて同作一本で大ブレイクしたチャン・ソヒは、2002年のMBC演技大賞をはじめ、最優秀演技賞、ベストカップル賞など5冠に輝いた。「人魚姫」の大ヒット以降、スランプに陥っていたチャン・ソヒは、2008年に「妻の誘惑」で復活を果たし、チャン・ソヒが出演する復讐ドラマはヒットするという新しいヒット法則を誕生させた。ドロドロしたドラマだという批判もあったが、連続ドラマとしては驚くべきヒットを飛ばしたお陰で、彼女はその年の「SBS演技大賞」を手に入れることができた。その他にも「太陽の女」のイ・ハナ、キム・ジス、短編ドラマ「沼」で陰湿で暗い演技を披露したパク・チヨンなどが復讐ドラマのヒロインとして活躍したことがある。6.野望の化身たち:「愛と真実」のウォン・ミギョンから「善徳女王」のコ・ヒョンジョンまで女性にも野望がある。金や名誉、権力のために身を投じたドラマの悪女が数多くいるのもそのためだ。1984年に放送されたMBCドラマ「愛と真実」のウォン・ミギョンは、この様なキャラクターの元祖である。出生の秘密を知った妹が、一瞬の嘘で姉と運命が変わり、繰り広げられる葛藤と和解を描いた同作で、ウォン・ミギョンは劣等感と虚栄心の強いキャラクターを見事に演じ高い人気を誇った。「愛と真実」で初めてテーマとなった出生の秘密は、その後様々なドラマで使われる定番のテーマとなった。2003年に韓流ブームを巻き起こしたSBS「天国の階段」のイ・フィヒャンも忘れてはならない。「あんたはどきなさい!」という印象的な台詞がまだ耳に残っているほど、「天国の階段」のイ・フィヒャンの悪行は言葉にできないほど強烈で凄まじかった。チェ・ジウの子役だったパク・シネにビンタを張るシーンは、「天国の階段」の中で最も衝撃的なシーンとして視聴者の脳裏に刻まれた。「天国の階段」と共に韓流の主役となったMBC「宮廷女官チャングムの誓い」(以下「チャングムの誓い」)でチェ尚宮役を演じたキョン・ミリも、イ・フィヒャンに負けていない。2003年に放送され50%を超える高視聴率を記録した同ドラマは、イ・ヨンエのドラマであると同時にキョン・ミリのドラマでもあった。水刺間(スラガン:王の食事を準備する場所)最高尚宮になるための激しい競り合い、様々な策略と裏切り、悲惨な最後に至るまで、キョン・ミリが演じたチェ尚宮役はドラマの緊張感を高め、人気を支えた唯一無二の存在であった。チャングムの反対側で活躍したチェ尚宮がいなかったら、おそらく「チャングムの誓い」は退屈なドラマになっていただろう。「チャングムの誓い」を手がけたキム・ヨンヒョン脚本家による、2009年のMBC「善徳女王」のミシルも印象深い役であった。悪女と女傑の境界にいた、「善徳女王」の実質的な主人公とも言えるミシルは、コ・ヒョンジョンの迫真の演技でさらに視聴者を魅了したキャラクターになることができた。「人は間違いを犯します。しかし私の人はいけません」「すべてあなたののせいです」「天の助けが少し必要です」など、ミシルの名台詞は話題の的となった。同作でコ・ヒョンジョンは2009年のMBC演技大賞を勝ち取ることができた。「善徳女王」と同じ年に放送されたSBS「華麗なる遺産」にも注目すべき悪女キャラクターが登場する。女優キム・ミスクがデビュー以来初の悪役にチャレンジしたというペク・ソンヒ役である。夫が死んだ後すぐ義理の娘と息子を家から追い出して保険金を横取りするだけではなく、実の娘ユ・スンミ(ムン・チェウォン)のため、主人公のハン・ヒョジュを窮地に追い込ませ続ける悪辣な継母役を演じたキム・ミスクは、「二度と悪役はやりたくない」と感想を語ったほど、圧巻の演技を披露し絶賛された。7.恋に執着する女たち:「シンデレラ」のファン・シネから「火の鳥」のチョン・ヘヨンまで1990年代のトレンディドラマの特徴はいい女と悪い女の対立構図が明確だったことだろう。さらにその悪い女がいい女をいじめる多くの理由が三角関係の男性のためであった。1997年に放送されたMBC「シンデレラ」のファン・シネ、1998年のSBS「ミスターQ」のソン・ユナ、1999年のSBS「トマト」のキム・ジヨンもすべてこのようなケースだった。このような極端な設定にもかかわらず、これらのドラマは視聴率40~50%を上回るほど大人気だった。2000年代初めにもこのような設定のトレンディドラマが多く作られた。代表的な作品は2000年にMBCで放送された「真実」だった。主人公のチェ・ジウをいじめる悪い女役だったパク・ソニョンは、鳥肌が立つほど見事に悪女に変身し、ドラマが終わるまで視聴者の目を釘付けにした。パク・ソニョンの役者人生は「真実」の前後で分かれると言われるほど、同作は女優パク・ソニョンを代表する作品として視聴者の記憶に残っている。「太陽の女」「赤道の男」のキム・インヨン脚本家と「華麗なる遺産」「いとしのソヨン」のソ・ヒョンギョン脚本家の初期の作品でもある。「真実」と同じ年に放送されたMBC「イヴのすべて」のキム・ソヨンは、キャリアウーマンの専門性と堂々とした態度を持った新しいタイプの悪女キャラクターを作り上げたケースである。劇中でアナウンサー役を演じたキム・ソヨンは、プロのアナウンサー顔負けの実力で、上手に原稿を読み上げ視聴者を驚かせた。面白いのは当時キム・ソヨンが20歳になったばかりの若手だったことである。彼女は積極的で自信に満ちた悪女役で見事に成人役者になることができた。2004年に放送されたMBC「火の鳥」のチョン・ヘヨンは恋に執着する女の頂点だった。「何か燃えている匂いがしませんか。今、私の心が燃えています」という台詞でも有名な同作でチョン・ヘヨンは、恋する相手に怖いほど執着する悪女役を演じ視聴者の肝を冷やした。特に彼女が車椅子から立ち上がり、ガラスの破片の上を歩くシーンは、「火の鳥」の最高の名シーンの一つである。愛と欲望に誰より忠実なチョン・ヘヨンの演技だけでも「火の鳥」は十分に見る価値のあるドラマである。韓国ドラマ55年の歴史を輝かせた悪女列伝このように数多くの悪女キャラクターたちは韓国ドラマ55年の歴史を輝かせ、視聴者に愛されてきた。彼女たちの存在は物語に緊張感を与え、作品の人気を牽引し、たくさんの話題を作り上げ、視聴者を楽しませた。これまで様々な悪女役を演じ、役作りに励んできた女優たちに拍手を送りたい。そしてこれから彼女たちがどの様な新しい悪女を誕生させるのか楽しみである。
放送作家協会「ドラマ 『善徳女王』は盗作ではない」
韓国放送作家協会がMBCドラマ 「善徳女王」(2009)の盗作疑惑に対し「盗作ではない」と発表した。(社)韓国放送作家協会の傘下の「ドラマ善徳女王著作権対策委員会」(以下、委員会)が3日、報道資料で「我々審議委員は全員賛同で盗作ではないと結論を出した」と明かした。委員会は「ミュージカル『ムクゲの女王、善徳』側が盗作と主張したトンマンの砂漠生活トンマンとキム・ユシンの愛情関係の設定トンマンとミシルの対立などは歴史的な資料(新羅と西域の交流を類推できる遺跡)や史料(花郞世記(ファランセギ)) などから普遍的に想像できる」とし、「また、二つのテキストの設定や進行も著しく異なるという点から、このような結論を出した」と付け加えた。昨年12月、ソウル高等裁判所は一審判決を覆し、「ドラマ『善徳女王』がミュージカル 『ムクゲの女王、善徳』の台本を盗作した」と結論を出した。当時裁判所は「善徳女王」のキム・ヨンヒョン&パク・サンヨン脚本家に「精神的苦痛に対する慰謝料1000万ウォン(約85万円)など2億ウォン(約1700万円)の賠償を認める」と判決した。これに対し2人の脚本家は「納得できない」と最高裁判所に上訴するとの立場を表明し、著作権対策委員会も今年1月から審議に入った。委員会側は「審議委員らは二審でキム・ヨンヒョン&パク・サンヨン脚本家やMBCの対処が非常に不十分だったことが分かった」とし、「特にMBCは昨年長期間のストライキのため、正常な法務対応ができていなかった。『善徳女王』の盗作訴訟を担当するMBCの法務担当者がストライキ期間中に会社を辞め、それにより2人の脚本家は二審の進行過程をまったく聞くことができなかった」と説明した。また委員会側は「審議委員の判断は決して仲間内のかばいあいで裁判所の判決に反対しようとするのではない」とし、「裁判所で盗作と判決されれば、脚本家には死刑に等しいことになる。そのため、脚本家の魂と人生を潰すことにつながる盗作判断は、慎重に行うべきだ」と強調した。キム・ヨンヒョン&パク・サンヨン脚本家は「宮廷女官チャングムの誓い」「善徳女王」「根の深い木-世宗(セジョン)大王の誓い-」など、人気ドラマを連続執筆し、スター脚本家になった。一方で、放送作家協会は独自の審査を行い、盗作と判明した脚本家には永久資格停止という最も厳しい処分を科してきた。その例として、1999年日本ドラマ「ラブジェネレーション」を盗作したMBCドラマ「青春」の脚本家と、2002年、キム・スヒョン脚本家のドラマ「愛とは何か」を盗作したMBCの「キツネと綿菓子」の脚本家に永久資格停止、2010年にはイム・チュン脚本家の「伝説の故郷」の一部を盗作したKBS「九尾狐(クミホ)外伝」の脚本家には資格停止1年という処分を科したことがある。
「善徳女王」の脚本家たち、盗作の判決に“とても当惑…上告する”
26日、MBCドラマ「善徳女王」の脚本家たちが、ミュージカル「ムクゲの女王、善徳」を盗作したという裁判所の判決に関連して、MBCを通じて立場を表明した。キム・ヨンヒョン脚本家は、「2010年の初頭、このようなことがあってから、ミュージカルの台本を見てみようと思い、台本を手に入れようとしたけれど、どこにも見つからず、結局弁護士を通じてやっと台本を入手できた。それまでは、決して見たことがなかった。それにも関わらず、泥棒扱いされた心境を誰がわかるだろうか」と述べた。また、キム脚本家は、「第1審の判決文を読むと、私たちのドラマが盗作ではない理由について、条目ごとに詳しく書かれていた」とし、「正反対の結果にひっくり返された今回の2審判決に納得することができず、高等裁判所に上告する」と話した。さらに、「私たちが『善徳女王』を執筆しながら何らかの原作の内容が必要だったとするなら、当然MBC側に原作の確保を要請するはずで、放送局は当然それに応じていたはず」とし、「これは、私たちが別途費用を支払うものことではなく、放送業界では普通のことだ」と話した。パク・サンヨン脚本家は、「全体的なあらすじが類似しているわけでもなく、登場人物の性格も類似した点はないということは1審の判決文で明かされているのに、どんな理由で第2審でそんな判決が下されたのか理解できない」とし、「それでは、一体私たちは、人物の独創性とストーリーの独創性はどこで保護されるのだろうか」と話した。そして、「とても当惑し、苦しい。私たちは『善徳女王』『ロイヤルファミリー』『根の深い木-世宗(セジョン)大王の誓い-』『清潭洞(チョンダムドン)アリス』など、すべての作品を多くの脚本家たちと共に、数多くの会議を経て共同制作してきた。『善徳女王』の第1話から第62話までの数多くのストーリーとアイディア、設定、キャラクターたちがどんな過程を経て制作されたのかを、作業に参加した多くの脚本家が全員記憶している。それにも関わらず、こんなことが起こり、悔しい心情は言葉では表しきれない」とし、「できることなら、ミュージカルの台本をインターネットで公開したいほどの心情だ」と話した。最後に、二人の脚本家は「私たちの名誉回復と、盗作に対する基準を明確にするためにも、高等裁判所の賢明な判断を期待している」と明かした。「善徳女王」は2009年に韓国のMBCで放送されたドラマで、イ・ヨウォン、コ・ヒョンジョン、オム・テウン、キム・ナムギルなどが出演して人気を集めた。しかし、ミュージカル制作会社グレートワークスのキム・ジヨン代表は、「善徳女王」がミュージカル「ムクゲの女王、善徳」を盗作したものだとし、MBCなどを相手に告訴した。これに対し、2月に第1審では「善徳女王」が盗作ではないとし、原稿敗訴の判決が下りた。しかし、24日にソウル高等裁判所の民事5部は原稿敗訴判決をした原審を破り、MBCと「善徳女王」のキム・ヨンヒョン、パク・サンヨン脚本家に慰謝料1000万ウォン(約80万円)など、2億ウォン(約1600万円)の賠償金の支払いを言い渡し、原稿の一部勝訴判決を下した。裁判部は、「善徳女王」側がグレートワークスの台本に接触した可能性が高いと見て、ふたつの作品の全体的なあらすじや登場人物の性格、葛藤などが非常に類似していると判断した。
韓国時代劇の歴史を顧みる…1960年代「国土万里」から2011年「根の深い木」まで
2012年、韓国では時代劇がブームを巻き起こしている。年頭から「太陽を抱く月」を始め「武神」「神医」「アラン使道伝」「大王の夢」「馬医」など、数々の時代劇が出ている。時代劇の人気は、昔も今も変わらないようだ。いったい韓国の時代劇の魅力とは何だろうか。韓国の時代劇の歴史は、どういうものなのだろうか。初期野史中心から本格的な王朝史への拡大テレビで放送された韓国最初の時代劇は、1963年にパク・ジンマンが脚本を手がけ、キム・ジェヒョン監督が演出したKBS「国土万里」だった。好童(ホドン)王子と楽浪(ナクラン)姫のラブストーリーを題材にした同ドラマは、当時高い人気を得た。キム・ジェヒョン監督は、「国土万里」で放送業界において自身の能力を認められ、スター監督としても注目を集めた。キム・ジェヒョン監督と「国土万里」の登場は、韓国の時代劇が一歩を踏み出す歴史的な瞬間だった。この時点から各放送局は、どこでも意味があるうえにお金にもなる時代劇を作ることになった。この時期に作られたものが「麻衣太子」「ミンミョヌリ-許嫁-」のような作品だ。当時の時代劇は、王朝史よりは野史や古典を中心に視聴者の民族情緒を刺激することに集中した。このような特性は、1970~80年代にもそのまま受け継がれ、「伝説の故郷」のようなドラマの誕生につながった。興味深いことは、1960年代中盤から後半になって官僚的な権威主義体制だったKBS、商業的で軽快だったTBC、その両局の中間だったMBCが多様な時代劇を制作し、時代劇ブームを加速させたということだ。このとき作られたドラマが「チョンミョンお嬢様」「淑夫人伝」「月山夫人」「首陽大君」「林巨正-快刀イム・コッチョン」「女人天下」「元暁大師」「善徳女王」「キム・オッキュン」のような作品だ。この時期になって時代劇の題材は、野史や古典のみならず、本格的な王朝史へ拡大した。そして、よりスケールの大きい作品が登場し始めた。1970~80年代キム・ジェヒョン監督のライバル、イ・ビョンフン監督が登場放送業界で起きた時代劇ブームで脚本家も世間の注目を集めた。このとき登場したのが、シン・ボンスンとイム・チュンだ。彼らは、当時一番高い人気を得たドラマの脚本家として活躍し、高い原稿料をもらった。シン・ボンスンとイム・チュンは1960年代に登場し、それから30年間韓国の時代劇を左右する影響力を発揮した。時代劇で一躍スターダムに駆け上がった俳優も多かった。そのうちの1人が女優のユン・ヨジョンだった。1971年にMBC「張禧嬪(チャン・ヒビン)」で張禧嬪役を演じたユン・ヨジョンは、ドラマの高い視聴率とともに当時一番ホットな女優として注目を集めた。もちろん、悪役だったためにCMから降板させられたり、視聴者から非難を受けるなどの紆余曲折もあった。それにも関わらず、彼女はその時期を「私の全盛期はその時」と語る。1980年代のカラーテレビの導入は、韓国の時代劇にもう一度変革をもたらした。当時彗星のようにドラマに登場し、韓国の時代劇で波乱を起こしたのが、キム・ジェヒョン監督の永遠のライバルイ・ビョンフン監督だった。彼は、最高の時代劇脚本家であるシン・ボンスンとともになんと8年以上「朝鮮王朝500年」シリーズを演出し、放送業界に新しい変革をもたらした。誰もが口を揃えて不可能だと言った「朝鮮王朝500年」シリーズは、イ・ビョンフン監督の根気と強い意志で誕生した傑作中の傑作だった。8年間にわたって放送され、視聴率には浮き沈みがあったが、彼は太祖から純宗に至る朝鮮500年の歴史の大事件を安定的に演出する手腕を発揮した。このシリーズでイ・ビョンフン監督は、当代最高のスター監督だったキム・ジェヒョン監督と肩を並べる時代劇の達人として名を馳せることになる。面白い事実は、このときのイ・ビョンフン監督が「朝鮮王朝500年」のような王朝史のみならず、「暗行御史(地方官の監察を秘密裏に行った国王直属の官吏)」のような時代劇でも能力を発揮したことだ。イ・ビョンフン監督とキム・ジョンハク監督が手を組んで作った「暗行御史」は、毎回完結するエピソードで3年間人気を得た。恋愛ドラマのスターだった俳優のイ・ジョンギルが暗行御史を演じ、房子(お使い)役を演じた俳優のヒョンシクは、同ドラマでスターダムを駆け上がった。特に、特有のコミカルな演技をアピールしたヒョンシクは、「暗行御史」を始め「馬医」が放送されている2012年まで、20年以上イ・ビョンフン監督の時代劇に出演し、活躍している。1990年代優れた時代劇の作品で社会的ブームを起こした「龍の涙」1980年代に一番注目された作品は、イ・ビョンフン監督の「暗行御史」と「朝鮮王朝500年」シリーズだったが、90年代にはキム・ジェヒョン監督の活躍が目立った。その中でもキム・ジェヒョン監督が演出し、シン・ボンスンが脚本を書いた1994年のKBS「韓明澮(ハン・ミョンフェ)」は、40%を越える高い視聴率を記録し大きな反響を得た。韓明澮役を熱演した俳優のイ・ドクファは、このドラマでその年のKBS演技大賞を受賞し、世祖役のソ・インソク、仁粹大妃役のキム・ヨンランも注目を浴びた。1995年には、KBS「王妃チャン・ノクス~宮廷の陰謀~」、SBS「妖婦 張禧嬪」など、宮中時代劇もたくさん出演した。特に、チョン・ハヨンが脚本を手がけ、俳優のユ・ドングン、パク・チヨン、ハン・ヒョンジョンなどが熱演したKBS「王妃チャン・ノクス~宮廷の陰謀~」と、イム・チュンが脚本を手がけ、俳優のイム・ホ、チョン・ソンギョン、キム・ウォニが出演した「妖婦 張禧嬪」は、それぞれ40%を越える視聴率を記録し時代劇不敗の法則を証明した。だが、明成(ミョンソン)皇后の一代記を描いたハ・ヒラ主演の「燦爛たる黎明」や、光海君から愛された女官キム尚宮(ケトン)の人生を描いたイ・ヨンエ主演の「宮廷女官キム尚宮」は、それほど注目されなかった。1994年に「韓明澮」で人気を得たが、1995年「宮廷女官キム尚宮」の成績不振で面目がつぶれたキム・ジェヒョン監督は、丸1年間歯を食いしばり、1996年「龍の涙」で韓国時代劇の新たな境地を切り開いた。韓国の時代劇は「龍の涙」以前とそれ以降に分かれると言っても過言ではないほど同ドラマの興行成績は、時代劇がドラマのレベルを超え、社会的にどれほど莫大な影響力を与えられるのかを見せてくれた一大事件だった。太祖イ・ソンゲの朝鮮建国から王子の乱、太宗の即位、譲寧大君(太宗の長男)の廃位、世宗(セジョン)の即位まで、朝鮮初期の膨大な歴史を息詰まるほど描き出した「龍の涙」の最高視聴率は、何と49.6%(AGBニールセン・メディアリサーチ、以下同一)で、歴代の時代劇が記録した視聴率を全て上回る記録となった。同ドラマで太宗イ・バンウォン役を演じた俳優のユ・ドングンは、その年のKBS演技大賞を受賞し、ミン氏役を鳥肌が立つほどリアルに表現した女優のチェ・ミョンギルは、演技派のベテラン女優として確実なイメージの変身に成功することになった。1996年、キム・ジェヒョン監督が「龍の涙」でブームを起こしたとき、SBSは当時無名に近かった俳優チョン・フンチェ主演の「林巨正-快刀イム・コッチョン」を制作し、大きな話題を集めた。現代ドラマのようなスピーディーな展開で視線を引いた「林巨正-快刀イム・コッチョン」は、商業放送であるSBSの色を明確に示した企画物だった。「林巨正-快刀イム・コッチョン」で代表されるSBSの企画時代劇は、1998年キム・ソクフン主演の「ホン・ギルドン」につながり、もう一度大ヒットすることになる。1990年代末時代劇の危機、「王と妃」「ホジュン~宮廷医官への道」で乗り越えただが「好事魔多し」と言うのだろうか。次々とヒットした時代劇は、1998年本格的に始まった通貨危機とともに危機に直面する。各放送局は、大規模な制作費を要する時代劇の制作を一時中断することになり、この時期に計画されていた数々の時代劇は撮影中止、または延期されることになった。だが、その時期にもかなり良い時代劇の作品が出ており、それが「王と妃」であった。「龍の涙」の後続ドラマとして制作された「王と妃」は、KBSが制作費を節約するために「龍の男」のオープニング音楽をそのまま使うようにするなど、放送局からあまり支援を受けずに始まった。だが、仁粹大妃を熱演した女優チェ・シラの本格的な登場ともに上がった視聴率は、最高視聴率44.4%を記録し、「韓国の時代劇は死んでいない」という気持ち良い反応を得た。チェ・シラは、この作品を通じてシン・ソンウとの婚約破棄騒動を完全に克服し、KBS演技大賞を受賞した。1996年「龍の涙」、1998年「王と妃」に続き、1999年にはその名も有名な「ホジュン~宮廷医官への道」が登場する。イ・ウンソン脚本家の小説「東医宝鑑」を原作に、チェ・ワンギュが脚本を手がけ、イ・ビョンフン監督が演出を担当したMBC「ホジュン~宮廷医官への道」は、言葉通り韓国全土から人気を集め、大きな話題を呼び起こした。「ホジュン~宮廷医官への道」の放送とともに原作小説「東医宝鑑」は飛ぶように売れ、ベストセラー1位を記録し、全国の漢方病院は例を見ないほど賑わった。最高視聴率63.7%という驚異的な視聴率を記録し、最高の民衆時代劇で国民的時代劇と呼ばれた同ドラマは、イ・ビョンフン監督が10年ぶりに復帰し、直接演出を担当した作品でより意味があった。「朝鮮王朝500年」シリーズで王朝時代劇の可能性を見せた彼は、10年ぶりに「ホジュン~宮廷医官への道」で民衆時代劇の新たな境地を切り開き、韓国が自慢する最高の監督としてその位置を確かにした。また、同作品で主演を演じた俳優のチョン・グァンリョルは、その年MBC演技大賞を受賞する。2000年代初めキム・ジェヒョン監督 vs イ・ビョンフン監督、避けられなかった2回の対決2000年代に入ってから時代劇の歴史は、より一層多彩に発展する。2000年に注目を浴びたのは、キム・ヨンチョル、チェ・スジョン主演のKBS「太祖王建(ワンゴン)」だった。「太祖王建」は、朝鮮時代が中心となっていたそれまでの時代劇から一歩離れ、高麗の歴史に注目したという点で大きな意味を持った作品だったし、最高視聴率も60.2%を記録する国民的な時代劇になった。ほぼ2年近く放送された同ドラマは、2000年には弓裔(クンイェ)役のキム・ヨンチョルに、2001年にはワンゴン役のチェ・スジョンに演技大賞の栄光を抱かせる快挙を達成した。一つのドラマから演技大賞の受賞者が2人も出る珍しい光景が展開された。「太祖王建」が人気を得た2000年を過ぎ、2001~2002年には時代劇ブームが復活する。この時代劇ブームをリードしたのは、やはりキム・ジェヒョン監督とイ・ビョンフン監督だった。KBSを離れ、SBSに移ったキム・ジェヒョン監督は、チョン・ナンジョンと文定王后の一代記を描いた「女人天下」でブームを起こし、イ・ビョンフン監督もチェ・インホの小説を原作にしたドラマ「商道-サンド-」を作り、20%を上回る良い視聴率を記録した。当時「女人天下」と「商道-サンド-」は、同じ時間帯に放送され激しい視聴率競争を繰り広げたが、結果的にこの視聴率合戦で一勝を挙げた、キム・ジェヒョン監督だった。「女人天下」と「商道-サンド-」が激しく競争した2002年には、チョン・ハヨン脚本、イ・ミヨン主演のKBS「明成皇后」も制作され、高い人気を博した。一時期30%に近い視聴率を記録し、人気を得た「明成皇后」は、「私が朝鮮の国母だ!」という流行語を残すなど、数々の話題を呼んだ作品だった。しかし、高い人気にも関わらず、女優のイ・ミヨンが、放送延長に反対し途中で降板し、論議になった。2002年「女人天下」と「商道‐サンド‐」で激突したキム・ジェヒョン監督とイ・ビョンフン監督は、2003「王の女」と「宮廷女官チャングムの誓い」でもう一度激突する。韓国時代劇のプライドのような2人の巨匠の二番目の激突は、意外とイ・ビョンフン監督が序盤に圧倒的な人気を得て簡単に勝敗が決まった。キム・ヨンヒョン脚本、イ・ビョンフン演出、イ・ヨンエ主演の「宮廷女官チャングムの誓い」は、主人公が数々の苦難を克服していくストーリーでイ・ビョンフン監督の時代劇の水準を一段階グレードアップさせたと高く評価され、57.8%という高い最高視聴率を記録した。特に、この作品は韓国での人気をもとに海外に輸出され、幅広い人気を得た。イランでは、視聴率が90%に達するほど高い人気を博した。イ・ヨンエはこのドラマ一つで韓国を代表する最高の女優として認められることになり、イ・ビョンフン監督も演出家として享受できる富と名誉を一気に享受する栄光を得た。「宮廷女官チャングムの誓い」は、いまだに韓流最高のキラーコンテンツであり、輸出の担い手として評価されている。2000年代半ばまだ時代劇の進化は続く「宮廷女官チャングムの誓い」の成功から、韓国の時代劇は様々なジャンルへの変化を試し、もう一度変身を試みた。この時期に登場したのがチェ・スジョン、チェ・シラ主演の「海神(ヘシン)」で、チェ・スジョンはKBS演技大賞を受賞する。2006年には、50%を越える視聴率を記録したソン・イルグク主演の「朱蒙(チュモン)」が人気を集め、2007年にはイ・ビョンフン監督のもう一つのヒット作である「イ・サン」が、2009年にはキム・ヨンヒョン脚本、コ・ヒョンジョン、イ・ヨウォン主演の「善徳女王」が50%に近い視聴率で大きな人気を得た。2006年にソン・イルグクは「朱蒙」で、2009年にコ・ヒョンジョンは「善徳女王」でそれぞれMBC演技大賞を受賞した。2010年には、チャン・ヒョク、オ・ジホ主演の「チュノ~推奴~」がフュージョン時代劇の新しい境地を開き、話題を呼んだ。「チュノ~推奴~」は、韓国の時代劇がどれほど洗練される形になれるのか、その中でどれほど面白さを与えることができるのかを確かに見せてくれた意義のある作品だった。同ドラマでチャン・ヒョクは、KBS演技大賞を受賞した。2011年に注目すべき時代劇は「根の深い木~世宗(セジョン)大王の誓い~」だった。イ・ジョンミョンの同名小説をもとに作られた同ドラマは、「善徳女王」の名コンビ、キム・ヨンヒョン&パク・サンヨン脚本家が執筆し、俳優のハン・ソッキュが出演して大きな話題となった。ハングル創製を題材に、優れた推理ドラマを描いた「根の深い木」は2011年最高の優れたドラマとして高く評価され、主演のハン・ソッキュはその年のSBS演技大賞を受賞した。このように韓国の時代劇は、50年あまりの歴史の中で大きく変化、発展しながら視聴者の期待を満たしてきた。時代劇に含まれているイデオロギーと思想、悠久な歴史はその時代の精神を眺める一つの窓としての役割を忠実に果たしてきたのだ。そして、これを見守った私たちは、その中で新しい時代のイデオロギーと理念をもう一度発見することができた。これまで時代を描くために努力し、歴史を創造するために情熱を注いだすべての方々に心より拍手を送る。また、これからその道を歩いていく方々にも声援を送りたい。
“シン・セギョンに愛されると…”ジンクスが話題に
※この記事にはドラマ「ファッションキング」など、様々な作品の結末に関する内容が含まれています。女優シン・セギョンに愛されると死ぬという、「シン・セギョンジンクス」が話題になっている。22日に最終回を迎えたSBSドラマ「ファッションキング」は、男性主人公カン・ヨンゴル(ユ・アイン)が不可解な銃弾に当たって死ぬという結末で終わった。このような衝撃的な結末にネットユーザーは、「シン・セギョンの呪い」と呼び、シン・セギョンが出演した作品について言及した。2009年に放送されたMBCドラマ「善徳女王」では、天明(シン・セギョン)の夫キム・ヨンス(パク・ジョンチョル)が戦争中に死を迎える。また、MBCシットコム(シチュエーションコメディ:一話完結で連続放映されるコメディドラマ)「明日に向かってハイキック!」では、チェ・ダニエルがシン・セギョンと共に乗った車で交通事故で死亡したような結末だった。昨年放送されたSBSドラマ「根の深い木~世宗(セジョン)大王の誓い~」のシン・セギョンの相手役チャン・ヒョクもやはり、ハングル配布に力を注ぎながら刀で殺された。シン・セギョンの呪いは、テレビドラマだけではなく映画でも同じだ。2006年の映画「シンデレラ」でシン・セギョンの母親役ト・ジウォンは自殺で死を遂げ、映画「青い塩」でシン・セギョンの師匠役オ・ダルスもまた、銃で撃たれて死んでしまう。シン・セギョンの相手役が死ぬということに対してネットユーザーは、「シン・セギョンに愛されると死亡?」「恐いシン・セギョンの呪い」「シン・セギョンジンクスだ」などといった反応を見せている。