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韓国時代劇の歴史を顧みる…1960年代「国土万里」から2011年「根の深い木」まで

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2012年、韓国では時代劇がブームを巻き起こしている。年頭から「太陽を抱く月」を始め「武神」「神医」「アラン使道伝」「大王の夢」「馬医」など、数々の時代劇が出ている。時代劇の人気は、昔も今も変わらないようだ。いったい韓国の時代劇の魅力とは何だろうか。韓国の時代劇の歴史は、どういうものなのだろうか。

初期…野史中心から本格的な王朝史への拡大

テレビで放送された韓国最初の時代劇は、1963年にパク・ジンマンが脚本を手がけ、キム・ジェヒョン監督が演出したKBS「国土万里」だった。好童(ホドン)王子と楽浪(ナクラン)姫のラブストーリーを題材にした同ドラマは、当時高い人気を得た。キム・ジェヒョン監督は、「国土万里」で放送業界において自身の能力を認められ、スター監督としても注目を集めた。キム・ジェヒョン監督と「国土万里」の登場は、韓国の時代劇が一歩を踏み出す歴史的な瞬間だった。

この時点から各放送局は、どこでも“意味があるうえにお金にもなる”時代劇を作ることになった。この時期に作られたものが「麻衣太子」「ミンミョヌリ-許嫁-」のような作品だ。当時の時代劇は、王朝史よりは野史や古典を中心に視聴者の民族情緒を刺激することに集中した。このような特性は、1970~80年代にもそのまま受け継がれ、「伝説の故郷」のようなドラマの誕生につながった。

興味深いことは、1960年代中盤から後半になって官僚的な権威主義体制だったKBS、商業的で軽快だったTBC、その両局の中間だったMBCが多様な時代劇を制作し、時代劇ブームを加速させたということだ。

このとき作られたドラマが「チョンミョンお嬢様」「淑夫人伝」「月山夫人」「首陽大君」「林巨正-快刀イム・コッチョン」「女人天下」「元暁大師」「善徳女王」「キム・オッキュン」のような作品だ。この時期になって時代劇の題材は、野史や古典のみならず、本格的な王朝史へ拡大した。そして、よりスケールの大きい作品が登場し始めた。

写真=SBS、MBC

1970~80年代…キム・ジェヒョン監督のライバル、イ・ビョンフン監督が登場

放送業界で起きた時代劇ブームで脚本家も世間の注目を集めた。このとき登場したのが、シン・ボンスンとイム・チュンだ。彼らは、当時一番高い人気を得たドラマの脚本家として活躍し、高い原稿料をもらった。シン・ボンスンとイム・チュンは1960年代に登場し、それから30年間韓国の時代劇を左右する影響力を発揮した。

時代劇で一躍スターダムに駆け上がった俳優も多かった。そのうちの1人が女優のユン・ヨジョンだった。1971年にMBC「張禧嬪(チャン・ヒビン)」で張禧嬪役を演じたユン・ヨジョンは、ドラマの高い視聴率とともに当時一番“ホット”な女優として注目を集めた。もちろん、悪役だったためにCMから降板させられたり、視聴者から非難を受けるなどの紆余曲折もあった。それにも関わらず、彼女はその時期を「私の全盛期はその時」と語る。

1980年代のカラーテレビの導入は、韓国の時代劇にもう一度“変革”をもたらした。当時彗星のようにドラマに登場し、韓国の時代劇で波乱を起こしたのが、キム・ジェヒョン監督の“永遠のライバル”イ・ビョンフン監督だった。彼は、最高の時代劇脚本家であるシン・ボンスンとともになんと8年以上「朝鮮王朝500年」シリーズを演出し、放送業界に新しい変革をもたらした。

誰もが口を揃えて不可能だと言った「朝鮮王朝500年」シリーズは、イ・ビョンフン監督の根気と強い意志で誕生した傑作中の傑作だった。8年間にわたって放送され、視聴率には浮き沈みがあったが、彼は太祖から純宗に至る朝鮮500年の歴史の大事件を安定的に演出する手腕を発揮した。このシリーズでイ・ビョンフン監督は、当代最高のスター監督だったキム・ジェヒョン監督と肩を並べる“時代劇の達人”として名を馳せることになる。

面白い事実は、このときのイ・ビョンフン監督が「朝鮮王朝500年」のような王朝史のみならず、「暗行御史(地方官の監察を秘密裏に行った国王直属の官吏)」のような時代劇でも能力を発揮したことだ。イ・ビョンフン監督とキム・ジョンハク監督が手を組んで作った「暗行御史」は、毎回完結するエピソードで3年間人気を得た。

恋愛ドラマのスターだった俳優のイ・ジョンギルが暗行御史を演じ、房子(お使い)役を演じた俳優のヒョンシクは、同ドラマでスターダムを駆け上がった。特に、特有のコミカルな演技をアピールしたヒョンシクは、「暗行御史」を始め「馬医」が放送されている2012年まで、20年以上イ・ビョンフン監督の時代劇に出演し、活躍している。

写真=KBS、SBS

1990年代…優れた時代劇の作品で社会的ブームを起こした「龍の涙」

1980年代に一番注目された作品は、イ・ビョンフン監督の「暗行御史」と「朝鮮王朝500年」シリーズだったが、90年代にはキム・ジェヒョン監督の活躍が目立った。その中でもキム・ジェヒョン監督が演出し、シン・ボンスンが脚本を書いた1994年のKBS「韓明澮(ハン・ミョンフェ)」は、40%を越える高い視聴率を記録し大きな反響を得た。韓明澮役を熱演した俳優のイ・ドクファは、このドラマでその年のKBS演技大賞を受賞し、世祖役のソ・インソク、仁粹大妃役のキム・ヨンランも注目を浴びた。

1995年には、KBS「王妃チャン・ノクス~宮廷の陰謀~」、SBS「妖婦 張禧嬪」など、宮中時代劇もたくさん出演した。特に、チョン・ハヨンが脚本を手がけ、俳優のユ・ドングン、パク・チヨン、ハン・ヒョンジョンなどが熱演したKBS「王妃チャン・ノクス~宮廷の陰謀~」と、イム・チュンが脚本を手がけ、俳優のイム・ホ、チョン・ソンギョン、キム・ウォニが出演した「妖婦 張禧嬪」は、それぞれ40%を越える視聴率を記録し“時代劇不敗”の法則を証明した。だが、明成(ミョンソン)皇后の一代記を描いたハ・ヒラ主演の「燦爛たる黎明」や、光海君から愛された女官キム尚宮(ケトン)の人生を描いたイ・ヨンエ主演の「宮廷女官キム尚宮」は、それほど注目されなかった。

1994年に「韓明澮」で人気を得たが、1995年「宮廷女官キム尚宮」の成績不振で面目がつぶれたキム・ジェヒョン監督は、丸1年間歯を食いしばり、1996年「龍の涙」で韓国時代劇の新たな境地を切り開いた。韓国の時代劇は「龍の涙」以前とそれ以降に分かれると言っても過言ではないほど同ドラマの興行成績は、時代劇がドラマのレベルを超え、社会的にどれほど莫大な影響力を与えられるのかを見せてくれた一大事件だった。

太祖イ・ソンゲの朝鮮建国から王子の乱、太宗の即位、譲寧大君(太宗の長男)の廃位、世宗(セジョン)の即位まで、朝鮮初期の膨大な歴史を息詰まるほど描き出した「龍の涙」の最高視聴率は、何と49.6%(AGBニールセン・メディアリサーチ、以下同一)で、歴代の時代劇が記録した視聴率を全て上回る記録となった。同ドラマで太宗イ・バンウォン役を演じた俳優のユ・ドングンは、その年のKBS演技大賞を受賞し、ミン氏役を鳥肌が立つほどリアルに表現した女優のチェ・ミョンギルは、演技派のベテラン女優として確実なイメージの変身に成功することになった。

1996年、キム・ジェヒョン監督が「龍の涙」でブームを起こしたとき、SBSは当時無名に近かった俳優チョン・フンチェ主演の「林巨正-快刀イム・コッチョン」を制作し、大きな話題を集めた。現代ドラマのようなスピーディーな展開で視線を引いた「林巨正-快刀イム・コッチョン」は、商業放送であるSBSの色を明確に示した企画物だった。「林巨正-快刀イム・コッチョン」で代表されるSBSの企画時代劇は、1998年キム・ソクフン主演の「ホン・ギルドン」につながり、もう一度大ヒットすることになる。

写真=MBC

1990年代末…時代劇の危機、「王と妃」「ホジュン~宮廷医官への道」で乗り越えた

だが「好事魔多し」と言うのだろうか。次々とヒットした時代劇は、1998年本格的に始まった通貨危機とともに危機に直面する。各放送局は、大規模な制作費を要する時代劇の制作を一時中断することになり、この時期に計画されていた数々の時代劇は撮影中止、または延期されることになった。だが、その時期にもかなり良い時代劇の作品が出ており、それが「王と妃」であった。

「龍の涙」の後続ドラマとして制作された「王と妃」は、KBSが制作費を節約するために「龍の男」のオープニング音楽をそのまま使うようにするなど、放送局からあまり支援を受けずに始まった。だが、仁粹大妃を熱演した女優チェ・シラの本格的な登場ともに上がった視聴率は、最高視聴率44.4%を記録し、「韓国の時代劇は死んでいない」という気持ち良い反応を得た。チェ・シラは、この作品を通じてシン・ソンウとの婚約破棄騒動を完全に克服し、KBS演技大賞を受賞した。

1996年「龍の涙」、1998年「王と妃」に続き、1999年にはその名も有名な「ホジュン~宮廷医官への道」が登場する。イ・ウンソン脚本家の小説「東医宝鑑」を原作に、チェ・ワンギュが脚本を手がけ、イ・ビョンフン監督が演出を担当したMBC「ホジュン~宮廷医官への道」は、言葉通り韓国全土から人気を集め、大きな話題を呼び起こした。「ホジュン~宮廷医官への道」の放送とともに原作小説「東医宝鑑」は飛ぶように売れ、ベストセラー1位を記録し、全国の漢方病院は例を見ないほど賑わった。

最高視聴率63.7%という驚異的な視聴率を記録し、最高の民衆時代劇で“国民的時代劇”と呼ばれた同ドラマは、イ・ビョンフン監督が10年ぶりに復帰し、直接演出を担当した作品でより意味があった。

「朝鮮王朝500年」シリーズで王朝時代劇の可能性を見せた彼は、10年ぶりに「ホジュン~宮廷医官への道」で民衆時代劇の新たな境地を切り開き、韓国が自慢する最高の監督としてその位置を確かにした。また、同作品で主演を演じた俳優のチョン・グァンリョルは、その年MBC演技大賞を受賞する。

写真=MBC

2000年代初め…キム・ジェヒョン監督 vs イ・ビョンフン監督、避けられなかった2回の対決

2000年代に入ってから時代劇の歴史は、より一層多彩に発展する。2000年に注目を浴びたのは、キム・ヨンチョル、チェ・スジョン主演のKBS「太祖王建(ワンゴン)」だった。「太祖王建」は、朝鮮時代が中心となっていたそれまでの時代劇から一歩離れ、高麗の歴史に注目したという点で大きな意味を持った作品だったし、最高視聴率も60.2%を記録する国民的な時代劇になった。

ほぼ2年近く放送された同ドラマは、2000年には弓裔(クンイェ)役のキム・ヨンチョルに、2001年にはワンゴン役のチェ・スジョンに演技大賞の栄光を抱かせる快挙を達成した。一つのドラマから演技大賞の受賞者が2人も出る珍しい光景が展開された。

「太祖王建」が人気を得た2000年を過ぎ、2001~2002年には時代劇ブームが復活する。この時代劇ブームをリードしたのは、やはりキム・ジェヒョン監督とイ・ビョンフン監督だった。KBSを離れ、SBSに移ったキム・ジェヒョン監督は、チョン・ナンジョンと文定王后の一代記を描いた「女人天下」でブームを起こし、イ・ビョンフン監督もチェ・インホの小説を原作にしたドラマ「商道-サンド-」を作り、20%を上回る良い視聴率を記録した。当時「女人天下」と「商道-サンド-」は、同じ時間帯に放送され激しい視聴率競争を繰り広げたが、結果的にこの“視聴率合戦”で一勝を挙げた、キム・ジェヒョン監督だった。

「女人天下」と「商道-サンド-」が激しく競争した2002年には、チョン・ハヨン脚本、イ・ミヨン主演のKBS「明成皇后」も制作され、高い人気を博した。一時期30%に近い視聴率を記録し、人気を得た「明成皇后」は、「私が朝鮮の国母だ!」という流行語を残すなど、数々の話題を呼んだ作品だった。しかし、高い人気にも関わらず、女優のイ・ミヨンが、放送延長に反対し途中で降板し、論議になった。

2002年「女人天下」と「商道‐サンド‐」で激突したキム・ジェヒョン監督とイ・ビョンフン監督は、2003「王の女」と「宮廷女官チャングムの誓い」でもう一度激突する。韓国時代劇のプライドのような2人の巨匠の二番目の激突は、意外とイ・ビョンフン監督が序盤に圧倒的な人気を得て簡単に勝敗が決まった。キム・ヨンヒョン脚本、イ・ビョンフン演出、イ・ヨンエ主演の「宮廷女官チャングムの誓い」は、主人公が数々の苦難を克服していくストーリーでイ・ビョンフン監督の時代劇の水準を一段階グレードアップさせたと高く評価され、57.8%という高い最高視聴率を記録した。

特に、この作品は韓国での人気をもとに海外に輸出され、幅広い人気を得た。イランでは、視聴率が90%に達するほど高い人気を博した。イ・ヨンエはこのドラマ一つで韓国を代表する最高の女優として認められることになり、イ・ビョンフン監督も演出家として享受できる富と名誉を一気に享受する栄光を得た。「宮廷女官チャングムの誓い」は、いまだに韓流最高のキラーコンテンツであり、輸出の担い手として評価されている。

写真=MBC

2000年代半ば…まだ時代劇の進化は続く

「宮廷女官チャングムの誓い」の成功から、韓国の時代劇は様々なジャンルへの変化を試し、もう一度変身を試みた。この時期に登場したのがチェ・スジョン、チェ・シラ主演の「海神(ヘシン)」で、チェ・スジョンはKBS演技大賞を受賞する。

2006年には、50%を越える視聴率を記録したソン・イルグク主演の「朱蒙(チュモン)」が人気を集め、2007年にはイ・ビョンフン監督のもう一つのヒット作である「イ・サン」が、2009年にはキム・ヨンヒョン脚本、コ・ヒョンジョン、イ・ヨウォン主演の「善徳女王」が50%に近い視聴率で大きな人気を得た。2006年にソン・イルグクは「朱蒙」で、2009年にコ・ヒョンジョンは「善徳女王」でそれぞれMBC演技大賞を受賞した。

2010年には、チャン・ヒョク、オ・ジホ主演の「チュノ~推奴~」がフュージョン時代劇の新しい境地を開き、話題を呼んだ。「チュノ~推奴~」は、韓国の時代劇がどれほど洗練される形になれるのか、その中でどれほど面白さを与えることができるのかを確かに見せてくれた意義のある作品だった。同ドラマでチャン・ヒョクは、KBS演技大賞を受賞した。

2011年に注目すべき時代劇は「根の深い木~世宗(セジョン)大王の誓い~」だった。イ・ジョンミョンの同名小説をもとに作られた同ドラマは、「善徳女王」の名コンビ、キム・ヨンヒョン&パク・サンヨン脚本家が執筆し、俳優のハン・ソッキュが出演して大きな話題となった。ハングル創製を題材に、優れた推理ドラマを描いた「根の深い木」は2011年最高の優れたドラマとして高く評価され、主演のハン・ソッキュはその年のSBS演技大賞を受賞した。

このように韓国の時代劇は、50年あまりの歴史の中で大きく変化、発展しながら視聴者の期待を満たしてきた。時代劇に含まれているイデオロギーと思想、悠久な歴史はその時代の精神を眺める一つの窓としての役割を忠実に果たしてきたのだ。

そして、これを見守った私たちは、その中で新しい時代のイデオロギーと理念をもう一度発見することができた。これまで時代を描くために努力し、歴史を創造するために情熱を注いだすべての方々に心より拍手を送る。また、これからその道を歩いていく方々にも声援を送りたい。
元記事配信日時 : 
記者 : 
キム・ソンギュ
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