イ・ビョンフン
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【PHOTO】イ・ジュンギ、イ・ミンホ、少女時代 テヨン、オダギリジョーら「ソウルドラマアワード」受賞の喜びを伝える
10日午後、ソウル上岩(サンアム)MBC文化広場で開かれた「ソウルインターナショナルドラマアワード2015」(「ソウルドラマアワード2015」)でイ・ミンホ、イ・ジュンギ、イ・ヨンエ、少女時代のテヨン、ファン・ジョンウム、スヒョン、THE ONE、オダギリジョー、神木隆之介、AARON(アーロン/炎亞綸)、チェン・ボーリン(陳柏霖)、ウォレス・チョン(鍾漢良)、エンギン・アキュレック、キム・ウォンソク監督、イ・ビョンフン監督らが受賞の喜びを伝えた。2006年に初めて開催され、今年10周年を迎えた「ソウルドラマアワード2015」は俳優イ・ドンウク、キム・ジョンウンが司会を務め、48ヶ国から出品された計212作のうち、24作と25人の制作者及び俳優が予審を通じて本選にノミネートされた。
「馬医」イ・ビョンフン監督“14年間ドラマ出演を拒んでいたチョ・スンウ、彼をキャスティングした理由は…”
「宮廷女官 チャングムの誓い」「イ・サン」「トンイ」など数々のヒット作を生み出し、アジア全土に韓国時代劇ブームを巻き起こした韓国歴史ドラマの巨匠イ・ビョンフン監督。最新作の「馬医」が東京ドラマアウォード2013にて海外作品特別賞を受賞したことを受け、キャスティングや制作秘話、作品について監督ならではの熱い想いを語ってもらった。― 「馬医」を題材にしたきっかけは?イ・ビョンフン:ドラマ「馬医」は私の以前のドラマと類似している部分と異なる部分があります。医療ドラマという点では「ホジュン ~宮廷医官への道」や「チャングムの誓い」と同じ分野ですが、動物を治すという部分が異なります。韓国では動物を治療するドラマは今まで一度もなかったんです。1950年代からの約60~70年のTVドラマ史上、こうしたドラマは一度もありませんでした。「馬医」は動物と人間の交流、動物と自然、自然と人間、これらをテーマに作った新しいドラマだと言えるでしょう。― チョ・スンウさんをキャスティングした理由は?イ・ビョンフン:チョ・スンウさんは前からキャスティングしたかった俳優の一人でした。ドラマの主人公を探すときは別の役柄でのイメージがついていない、新しいイメージを見せられる俳優を探すのが演出家の夢なんです。能力がありドラマのイメージにも合っていて、テレビでの既存のイメージが邪魔をしない、新しい姿を持った俳優をキャスティングするのが夢なんです。チョ・スンウさんは俳優デビュー14年の経歴を持つ、映画やミュージカルのスターです。でもテレビには一度も出演したことがなかったので、とても新鮮な顔だという点で大きな強みがありました。だから、チョ・スンウさんにやって欲しかったんです。7年前にドラマ「薯童謠ソドンヨ」のときにオファーをし、また「トンイ」でもチ・ジニさんに決まる前に一度オファーしたんですが断られました。テレビドラマの制作現場が過酷で大変だからというのが理由でした。実際、韓国のテレビドラマの制作現場は戦場です。寝る時間も食事の時間も休憩も満足にとれず、撮影の繰り返しで何日も徹夜した上に健康も害してしまうような悪条件なんです。そこで自分がやっていけるのか、そんな現場でやりたい演技がちゃんと表現できるのかという疑問があって今まで14年間一度も出演しなかったそうです。でも2作品とも断られてしまったのになぜ今回はOKしてくれたのか?それはずっと後回しだったテレビドラマは影響力が非常に大きく、やはりそれは無視できない、いつかは一度テレビのお仕事をするべきだと思ったのでしょう。彼は20歳の時「ホジュン」を見てすっかり魅了され、「ホジュン」のようなドラマに出るのが夢だったそうです。「ホジュン」に夢中になったのでテレビドラマに出るなら「ホジュン」の監督とやりたいと思い続けていたところに私からのオファーが来て、テレビドラマへの出演の必要性を感じていた時だったのもあり、快くOKしてくれたんです。チョ・スンウさんを起用した理由は2つです。テレビドラマの主人公としてフレッシュな顔という強み。もう一つは彼のまなざしの優しさです。私はドラマの主人公にはまなざしの優しい人を使うようにしています。主人公は正義を代弁する役なので、まなざしが悪人風だったり、純粋でない場合は主人公にはしっくりこないんですが、チョ・スンウさんのまなざしはとても優しいので主人公に相応しいと思いました。もう一つは同じ医療ドラマ「ホジュン」のような厳粛な主人公を描くのではなく、ユーモアがあって茶目っ気がある医師の姿を描きたかったんです。医師ホジュンとの差別化も図れるからです。「チャングムの誓い」は女医でしたが、今回は同じ男性医師なので差別化する必要があったんですよね。チョ・スンウさんにはひょうきんな部分もあるんです。茶目っ気があってユーモアがあると思ったので、それで「馬医」の主人公にはチョ・スンウさんが適役だと思ってラブコールを送り出演をお願いしたんですが、チョ・スンウさんがOKしてくれて幸せな気持ちでキャスティングを終えました。― イ・ヨウォンさんの印象は?イ・ビョンフン:ドラマでは、卑しい身分出身の男性獣医師がトップの医師になって、裕福で医学をきちんと学んだトップの女医と競争し合うという二人の様子も見せたかったんです。でも実際にはペク・クァンヒョンが優秀すぎて途中で競争が曖昧になってしまいました。もともとの意図は最後まで二人が競争することでした。だからこそヒロインには聡明で賢く強いけれども美しいイメージの女性を選ぶ必要があったのです。ご存知のようにイ・ヨウォンさんは4年ほど前に「外科医 ポン・ダルヒ」で医師役を演じました。まっすぐで有能な外科医役を立派に演じて韓国では大好評でした。私もそれを見てイ・ヨウォンさんなら賢くて強い女医を演じきってくれるだろうと思い起用しました。ただ、気がかりなのは「善徳女王」という韓国ドラマでタイトルロールである善徳女王の役を彼女がやっていたことです。あのドラマは韓国では大成功をおさめたので、既にドラマのタイトルロールをやったことのある女優がオファーを引き受けてくれるのかなと思ったんです。「馬医」の実質的な主人公はペク・クァンヒョンだし、イ・ヨウォンさんの役はヒロインではあるけれど、男性主人公が中心ですから引き受けてくれるかなと心配でしたが、意外にも引き受けてくれて幸せでした。「イ監督なら私を必ず輝かせてくれると信じているからこのドラマをやることにした」と言ってくれまして、幸いなことにキャスティングできたんです。― イ・サンウさんについては?イ・ビョンフン:イ・サンウさんは「馬医」の前から韓国でも20代より30代の女性に大人気です。20代ではなく、なぜ30代の女性なのかはわかりません。イ・サンウさんのファンクラブは30代女性ばかりだそうですよ。今回のチョ・スンウさんとイ・サンウさんの共演では20代女性にはチョ・スンウさんが、30代女性にはイ・サンウさんが人気だったようです。びっくりするほどの人気ですよね。だからこそ心配になったんです。イ・サンウさんの役はラブロマンスでは相手に負けてしまう助演です。でも脚本家はイ・サンウさんを望んだんですね。私はイ・サンウさんは愛が成就しない役だからあとで本人が落ち込んじゃったらどうするのって聞いたんです。でも脚本家はイ・サンウさんだ、彼しかいないと言うのでとても心配でした。ドラマでの展開も実際そうなりました。チョ・スンウさんの比重がどんどん高まり、愛する人は奪われてしまいます。イ・ヨウォンさんはイ・サンウさんではなく、チョ・スンウさんにどんどん惹かれていくので胸が痛みました。それでイ・サンウさんに申し訳ないから助演ではあっても素敵な人物の設定にしてほしいとお願いしたんです。ドラマではイ・サンウさんは愛する人をめぐってのライバル役ということになるのでちょっと悪役的なところも必要なんですね。悪人にならないといけないのに、イ・サンウさんに申し訳なくて悪人に仕立てることができず、いい人の役で話を展開しました。もともとの役とは違った設定になったんですね。ペク・クァンヒョンを非難したりねたんだり罠にはめたりする設定だったのに、イ・サンウさんに申し訳なくて悪人というよりライバルという設定になったのです。脚本家には結局、悪人を悪人にできず、苦悩しながらも最後までペク・クァンヒョンを助ける役になってしまったよと言いました。イ・サンウさんだったから最初の悪人の設定とは変えたのですが、それでもいつも申し訳なく思っていました。当初イ・サンウさんが私に期待していたほど、ドラマ中での彼の比重は大きくならなかったからです。本人にも謝ったんですが、彼は時代劇は初めてだったので監督のおかげでとてもいい演技の勉強になったと言ってくれて仮にドラマでの役が不完全燃焼でもこのドラマを通じて演技を学ぶことができたので満足だと何度も言ってくれました。私が謝ると「監督とんでもない、僕はこのドラマでたくさんのことを学んだ」と言ってくれたのです。― 印象に残っているシーンは?イ・ビョンフン:動物とのシーンが印象に残っています。2つだけ紹介しますね。4話のシーンで馬がじっと横たわっていて目を開けます。主人公の男の子も意識を失って倒れています。そこで馬が目を開けて瀕死の男の子を見て母性を感じて近づいて舐めてあげて介抱した結果、馬も元気になり男の子も助かって命を取り留めるシーンがありました。このシーンは馬が言う通りに動かず撮影が本当に大変でした。馬が目を開けて男の子を見て優しい眼差しになり、そっと起き上がって男の子に近づくという撮影に4日を費やしました。馬がただ起き上がるシーンは撮れましたが、近づいてくれなくて4日間の撮影で諦めました。馬が目を開けて男の子を見て起き上がるというシーンも2日かけてもダメでした。偶然にももう諦めたその時、突然馬が目を開けて起き上がったんです。カメラ回っているか?と慌てて聞くと回っていて偶然の幸運によるショットでした。あきらめたシーンが撮れていたんです。偶然に助けられなかったら絶対に撮れませんでしたね。もう一つは8話か9話で牛を70~80頭動員するシーンがありました。牛が病気にかかり逃げるシーンです。牛ってあんなに怖い動物だとは知りませんでしたね。おとなしくてやさしいとばかり思っていました。私はせっかちな性格で、思った通りに動かないと自分のほうから動いちゃうタイプで馬の時も自分の手で動かしたりしたんですが、牛が動かなくて牛の群れの中に入って牛を押しました。それで牛は前に向かって歩き出しましたが、2頭の牛に足を踏まれて、足の骨が折れたかと思いました。踏まれた瞬間の感覚で「ああ、右足の骨が折れたな」と思ったんです。2頭の牛に踏まれたくらいですから、牛が全部移動したあとものすごく痛くってそっと足の指を動かしてみたら動いたんです!とにかく痛かったけど骨折はしなかったと思いました。助演出のスタッフはレントゲンを撮ってみたほうがいいと勧めましたが、足の指が動くんだからひびは入ったかもしれないが骨は絶対に折れてはいない、翌日まで様子を見ようと私は言いました。次の日はかなり腫れましたが、足の指が動かないならレントゲンを撮りに行くけど動くなら行かないつもりでした。撮影が沢山あるからです。でも翌朝、足の指は動いたので大丈夫だと伝えました。幸いなことに痛みは一週間で消えて治りました。あの牛に踏まれた時、ものすごい痛さで牛の体重ってすごいんだなと衝撃を受けました。牛を飼育している牧場のオーナーに聞いたら牛は馬よりもちょっと頭脳は劣るそうです。だから馬は人の足を踏んだりすることは絶対ないけれど、牛は踏んだりぶつかったりはよくあることだし、馬は人が落馬したとしてもその人が馬に悪さをしない限りは決して踏みつけたりはしない。だけど牛は前に人がいてもそのまま踏みつけて行くらしいです。牛の群れの中に入っていくなんて死にたかったのか?牛の中で牛を手で押すなんて!と怒られました。群れの中で牛に押し倒されていたら踏まれて死んでいたかもしれませんね。― 監督のこれまでの作品が日本で人気がある理由は?イ・ビョンフン:人気作とのお言葉ありがとうございます。いい側面からドラマを見てくださったおかげだと思います。私がドラマを作るときにいつも言うのは、ドラマはまず面白くなければダメで、面白くなければドラマじゃない、これが私の信条なんです。次にテレビドラマは公共媒体ですから有意義でなければならない。何か教育的な要素を取り入れなければならないと常に思っています。家族一緒に見られるドラマでありつつ面白いドラマでなければならないのです。ストーリーをどうしたら面白く展開させていけるのか、いつもドラマを作る時にこだわっていますね。面白いドラマにはいくつかの要素があります。一番目は面白いストーリーです。特に時代劇はストーリーがつまらないと人々は見てくれません。二番目は台本上の不文律とも言えますが、登場人物をきちんと生かすことですね。ドラマの人物は面白くて魅力的で愛らしくなければなりません。そうでないと視聴者は感情移入したり同一視したりできないのです。視聴者はドラマの中の主人公に自分を重ね、一緒に喜怒哀楽を味わって楽しむものですが、登場人物が面白くないとそれができません。ですからこの2つに常に焦点を当てて面白いドラマを作らなくてはいけないと思っています。その面白さこそが人気につながるのです。また、もう一つ大切なことはドラマに登場する職業や素材には、2013年の現在でも関心を持ってもらえるものを選択することです。どんなに昔の面白い話であっても、2013年の現在の視聴者には興味が湧かない話ならそれはダメだということです。「ホジュン」「商道サンド」「チャングムの誓い」「薯童謠ソドンヨ」「イ・サン」「トンイ」「馬医」すべて21世紀の現在でも関心を持たれている素材です。視聴者が昔話ではなく最近でもありうる話だと思える素材なのです。例えば「チャングムの誓い」は料理と健康の話、「ホジュン」は名医の話、「イ・サン」は優れた政治家の話、「トンイ」は教育熱心な母と捜査する人の話ですし、絵を描く人を扱った話もあります。こうしたものは現代でも関心を持たれる素材ですよね。トンイは息子を産んで教育に悩みます。それは日本のお母さんも同じですよね。どうしたらちゃんと教育してあげられるかを考えるわけです。それをトンイが息子の延礽君ヨニングンの教育について、いろいろ悩む場面として取り入れました。現代の視聴者にも関心の持てる素材だからです。もう一つ大切なのは登場人物の性別に関係なく、前向きで専門的な職業を選ぶことです。ドラマの視聴者は現代人ですから、登場人物の職業は現代人が憧れるようなものであってこそ視聴者の興味を惹きつけ、ドラマを楽しく見てもらえるからです。「ホジュン」のヒロインは看護師でしたし、「商道サンド」のヒロインは立派な商人でした。「チャングムの誓い」のヒロインは腕のいい料理人、「イ・サン」のヒロインは優れた絵師、「トンイ」のヒロインであるトンイは優秀な捜査官でした。そして「馬医」のヒロインは医師です。時代劇であっても視聴者は現代に生きているのでこうした素材・職業・物語という要素が興味を惹きつけるのだと思います。― これから「馬医」を観る日本のファンに一言。イ・ビョンフン:「馬医」に出てくる獣医師は李氏朝鮮時代には身分の卑しい者の職業でした。これは最下層の身分から王の主治医というトップの地位に登りつめる立志伝のような一人の人間のサクセスストーリーです。主人公は「馬医」の序盤では獣医師ですが、人を治療するようになります。学校に入学して医師となり、修行を重ねながらさまざまな物語が展開されていくのです。また、ドラマの中でペク・クァンヒョンは愛や喜びにも出会いますが、非常に大きな試練にも見舞われます。師匠にまつわる大きな試練が立ちはだかり、ペク・クァンヒョンは将来を期待される医師だったのに、あっという間に奈落に落ちて死刑宣告を受け、死の一歩手前まで行くといった波乱万丈なストーリーが展開されます。このドラマでは胸を痛めたり痛快に感じたり、拍手を送ったり気の毒に思ったりしながらも最後には満たされた気持ちになれることでしょう。これから「馬医」は変化に富んだ展開を重ねていきます。ご期待に十分に沿えるたくさんの話が繰り広げられますので、皆さん楽しみにご覧ください。■作品情報馬医出演:チョ・スンウ(映画「マラソン」、映画「ラブストーリー」)、イ・ヨウォン(「善徳女王」「私の期限は49日」)、イ・サンウ(「神々の晩餐‐シアワセのレシピ‐」)、ユソン(「ソル薬局の息子たち」)、キム・ソウン(「悲しき恋歌」「花より男子」)、ソン・チャンミン(「シンドン」「ロードナンバーワン」)ほか演出:イ・ビョンフン(「チャングムの誓い」「イ・サン」「トンイ」)脚本:キム・イヨン(「イ・サン」「トンイ」)制作:MBC/KIMJONGHAK PRODUCTION発行:NHK エンタープライズ 販売元:ポニーキャニオン(C)2012-13 MBC■DVD&Blu-ray情報●Blu-ray BOX I<第1話~第10話収録> PCXE-60058(6枚組)価格:¥23,000(税抜)/¥24,150(税込)●DVD BOX I<第1話~第10話収録> PCBE-63456(6枚組)価格:¥19,000(税抜)/¥19,950(税込)<BOX 映像特典>・チョ・スンウ インタビュー・馬医ミュージッククリップ「ただひとつの」運命の出会い・馬医トレーラー・制作発表会見・馬医 韓国放送直前特番・韓国版エンディング<封入特典>馬医 ブックレット※Vol.1~2 レンタル中レンタルDVD各巻に特典映像として韓国版エンディングを収録。Vol.3~5は11月29日レンタル開始!■関連サイト・NHK BSプレミアム 海外ドラマ「馬医」番組サイト
Vol.1 ― 放送終了「馬医」陳腐なストーリーにも俳優たちの演技は輝いた
※この記事にはドラマ「馬医」の結末に関する内容が含まれています。最終話も予想通りだった。主人公は名誉と愛を手にし、幸せな人生を生きた。もう彼を妨害する障害や陰謀はなかった。MBC月火ドラマ「馬医」(脚本:キム・イヨン、演出:イ・ビョンフン)の結論だ。25日午後、韓国で「馬医」が第50話を最後に6ヶ月間の放送を終えた。主人公のペク・クァンヒョン(チョ・スンウ)は初恋の相手であるカン・ジニョン(イ・ヨウォン)と結婚し、顯宗(ヒョンジョン)の支持で御医(オイ:王の主治医)となった。グァンヒョンはあらゆる苦難や試練を乗り越え、最高の地位についた。昨年10月、「馬医」は人々の期待の中でスタートした。チョ・スンウがデビュー13年目で初出演したドラマだった。また、時代劇韓流の先駆けとも言えるイ・ビョンフン監督が陣頭指揮をとった。制作の段階から成功が予想されていた。予想通り視聴率1位を記録したが、王座は常に危うかった。「馬医」は放送中、常にありきたりで陳腐な展開から抜け出すことができなかった。イ・ビョンフン監督の前作「ホジュン~宮廷医官への道」(1999年)、「宮廷女官チャングムの誓い」(2003年)とすべてが似ていた。テーマや登場人物が違うだけで、低い身分の主人公があらゆる困難を乗り越え、成功するというところがそうだ。イ・ビョンフン監督の最大の長所はディテールだ。「宮廷女官チャングムの誓い」が世界的な成功を手にした理由は彼の繊細な演出にある。朝鮮時代の水剌間(スラッカン、朝鮮時代の宮殿の厨房)の世界がリアルに描かれ、毎話で華麗な水剌床(スラッサン、王様の食膳)が視線を独占した。チャングムが医女になる過程も興味深かった。「馬医」は「ホジュン~宮廷医官への道」「宮廷女官チャングムの誓い」とストーリーラインが非常に類似している。前作の成功をそのまま踏襲した。似たようなストーリーを繰り返すマンネリズムに陥ったのだ。予測が可能だというのが致命的な弱点だった。「馬医」が楽々と視聴率20%台を突破することができなかった理由がそれだ。視聴率が思うままに上昇することもなかった。毎話で危機に直面した。新しいライバルが登場するたびに緊張した。序盤の競争作品だったKBS 2TV「ゆれながら咲く花」は新鮮だという好評を得て「馬医」のすぐ後まで追いついてきた。予想外の作品が王座を脅威したのだ。SBS「野王」も「馬医」を狙った。「野王」はスピーディーな展開で人気を博した。クォン・サンウの復讐が始まるにつれ、視聴率も上昇し、「馬医」は何回も王座を譲った。新鮮さや話題性に欠ける「馬医」にとって新しいドラマは常に伏兵であった。「馬医」のストーリーは非常に単純だ。3つのパターンだけが繰り返された。試練に直面した主人公が困難を乗り越え、成長するという試練、克服、成長の3要素がそれだ。同じ内容を繰り返し、流れについていけない視聴者でもストーリーを理解することができた。それは長所ともなるが、新しい視聴者を確保することにおいては弱点であった。朝鮮時代の獣医である馬医は、これまでの韓国ドラマでは一度も取り上げられていなかったテーマだった。だが、残念なことに、これを上手く活かすことに失敗した。初めてのテーマではあったが、「馬医」の馬屋は「宮廷女官チャングムの誓い」の水剌間のように新鮮には感じられなかった。職業的な描写に力を入れず、グァンヒョンというキャラクターを描写するに留まった。キャラクターからストーリーまで、すべてが表面的なものに偏っていた。グァンヒョンが馬医であろうと、人を治す人医であるだろうと、内容は同じだった。試練に直面し、それを克服するエピソードだけが繰り返された。深みのある主人公の内面に注目したり、心理を描くことはなかった。周辺人物も独立的に扱われることなく、主人公のためのサブキャラクターであった。すべての焦点がチョ・スンウに合わせられ、俳優にも視聴者にも疲れを感じさせた。イ・ヨウォンの存在感が議論となったのは、彼女の演技力のせいではなく、すべてを主人公に集中させた展開のせいだ。多くの登場人物がいたが、それらをきちんと活用できなかったのが残念だ。すべての人物が単に善人と悪人で分けられた。全体的な完成度と劇的な緊張感が落ちるしかない構造だった。「馬医」は様々な面で残念な作品だったが、チョ・スンウの演技には異見がなかった。映画やミュージカルで培った安定した実力はドラマでも発揮された。「馬医」が度を過ぎた陳腐さを克服できたのは、チョ・スンウの演技力があったためだ。「昼は貞淑で夜は遊べる女性」(PSYの「江南(カンナム)スタイル」の歌詞をパロディした台詞)という台詞を図々しく発するチョ・スンウの演技に、同ドラマは追いついていなかった。チョ・スンウをはじめとする俳優たちの演技は輝いていたが、作品は古く、陳腐だった。陳腐を通り過ぎありきたりな内容だった「馬医」の台本にもどかしさを感じる。
「馬医」イ・ビョンフン流時代劇は、なぜ期待ほど成功できないのか
イ・ビョンフン流時代劇が限界にぶつかった理由月火ドラマの視聴率戦争が、まさに佳境に入っている。MBC「馬医」とSBS「野王」が同時間帯1位の座をめぐってしのぎを削っているためだ。「馬医」が余裕でリードするという当初の予想とは裏腹に、復讐という強烈な題材を掲げた「野王」の勢いが、対立構図を揺るがしている。時代劇の達人イ・ビョンフン監督が演出し、トップスターのチョ・スンウを掲げた「馬医」は、なぜ期待ほどの成績を出せずにいるのだろうか。毒となってしまったイ・ビョンフン流時代劇トップスターチョ・スンウの初めてのドラマ出演作としても話題を集めた「馬医」は、イ・ビョンフン流時代劇のヒット神話を引き継ぐ作品として、内外から大きな注目を集めた。しかし、放送終了まで8話を残したこの時点で、「馬医」の勢いは依然として横ばい状態であり、なかなか20%台の視聴率を超えられないでいる。申し訳ない話だが、期待をはるかに下回る成績を記録していることだけは確かなようだ。言うまでもなく、イ・ビョンフン監督は素晴らしい演出者だ。1999年「ホジュン~宮廷医官への道~」で韓国時代劇の新しいページを切り開いただけでなく、2003年「宮廷女官チャングムの誓い」では類い稀なる能力を見せつけた。几帳面で細かい演出力と、現場を仕切るカリスマ性は、他の追随を許さないほどだ。問題は、彼の時代劇が15年の歳月を経て、次第に古くて月並みなものへと変質してきたことにある。「馬医」の限界は、まさにこの部分から始まるのだ。イ・ビョンフン流時代劇のストーリーのほとんどは、身分の低い主人公が色んな逆境と苦難を乗り越え、目標を達成するという典型的な英雄譚に基づいて作られる。「ホジュン~宮廷医官への道~」「商道-サンド-」「宮廷女官チャングムの誓い」「薯童謡(ソドンヨ)」「イ・サン」「トンイ」に至るまで、このようなパターンは変わらなかった。正確に言えば、人物と題材だけ変わっただけで、ストーリーの大きなあらすじは毎回二番煎じになったわけだ。視聴者がイ・ビョンフン監督の時代劇に飽きを感じる理由は、まさにここにある。さらに大きな問題は、似たような商品を出しているなら、最低でもデザインや包装くらいは変えなければならないが、それさえもままならなかったところにある。「馬医」は、これまで目にしてきたイ・ビョンフン流の英雄譚に、漢方医学や宮中の暗闘を加えた程度に留まっている。「ホジュン~宮廷医官への道~」と「宮廷女官チャングムの誓い」で、漢方医学と水刺間(スラガン:王の食事を作る台所)という新鮮な題材を取り上げたイ・ビョンフン監督が、「イ・サン」「トンイ」「馬医」を経ながら、古臭い政治的暗闘と陰謀だけに埋もれつつあるのは、残念極まりないことである。自分の役割を果たせていない脚本家も問題ここで注目すべき人物が、もう一人いる。それは、脚本家だ。ドラマは、脚本家の影響力が絶対的なジャンルだ。イ・ビョンフンはかつて、「朝鮮王朝500年」シリーズでシン・ボンスン脚本家とタッグを組み、「ホジュン~宮廷医官への道~」「商道-サンド-」ではチェ・ワンギュ、「宮廷女官チャングムの誓い」ではキム・ヨンヒョンとタッグを組んだ。3人とも現代最高のドラマ脚本家と言っても過言ではない。シン・ボンスンは、韓国最初の時代劇「国土万里」から「朝鮮王朝500年」シリーズ、「韓明澮(ハン・ミョンフェ)」などを手がけた脚本家で、韓国時代劇の生き証人だ。チェ・ワンギュは「ホジュン~宮廷医官への道~」「商道-サンド-」「朱蒙(チュモン)」など時代劇だけでなく、「総合病院」「オールイン 運命の愛」「光と影」など、ジャンルをまたがり大成功を収めたヒットメーカーで、キム・ヨンヒョンもやはり「宮廷女官チャングムの誓い」「薯童謡(ソドンヨ)」「善徳女王」「根の深い木~世宗(セジョン)大王の誓い~」など大ヒット作を作り出した大物脚本家だ。しかし、キム・イヨン脚本家は、「イ・サン」「トンイ」「馬医」共に、貧弱なストーリーラインと踏ん張りのなさによって、確固たる勢いを作り出せずにいる。特に彼の作品は、主人公に大きすぎる比重を与えてしまい、周りの人物の個性があまり活かされないという弱点がある。現在の「馬医」でも、目につくのはただ一人ペク・クァンヒョン(チョ・スンウ)だけだ。このような状況で、「ホジュン~宮廷医官への道~」のユ・ウィテ(イ・スンジェ)や「宮廷女官チャングムの誓い」のハン尚宮(ヤン・ミギョン)のような素敵な師匠の登場を期待するのは難しい。新しい題材をうまく活かしきれていないことも残念だ。「馬医」は、獣医という題材を扱う点で、「ホジュン~宮廷医官への道~」「宮廷女官チャングムの誓い」とは明白に差別化できていた。人間と動物との交流、そこから起こる色んなエピソードをドラマチックに描いたならば、きっと大きな呼応を得ていたはずだ。しかし、「馬医」は、これまでの時代劇のヒットパターンを繰り返しただけで、視聴者が期待する新しい絵を与えることはできなかった。これは以前「イ・サン」の図画署(トファソ:王室の画事を担当する官庁)、「トンイ」の剣契(コムゲ:賤民たちの秘密組織)が非常に新鮮な題材だったにも関わらず、メインストーリーの背景程度に留まり、その機能を失っていたことを思い浮かばせる。このように現在の「馬医」は、収拾しきれない様々な限界に直面したまま、足踏み状態が続いている。残念なのは、このドラマがイ・ビョンフン監督が直接演出する最後の作品になる可能性が高いということだ。時代劇の巨匠イ・ビョンフンは、果たして「馬医」をうまく締めくくり、有終の美を飾ることができるのだろうか。名誉ある退場を誰よりも切実に望んでいるであろう彼が、放送終了を1ヶ月前に控えたこのタイミングでどのような話を準備しているのか、また、競合作を抑え同時間帯1位の座を逃さずにいられるのか、気になるところである。
【ドラマレビュー】「ホジュン」 vs 「馬医」同じようで違う2つの“イ・ビョンフン流”ドラマ
主人公の成長は似通っているが、女性の至高な犠牲は違うMBC月火ドラマ「馬医」(脚本:キム・イヨン、演出:イ・ビョンフン、チェ・ジョンギュ)が絶賛放送中だ。朝鮮時代、馬を治す医者から王を治す御医(オイ:王の主治医)になるペク・クァンヒョンの一代記を描くこのドラマは、主人公チョ・スンウの好演においても連日話題を呼んでいる。ところで、「馬医」を観れば思い浮かぶドラマがある。1999年から2000年まで韓国で放送されたドラマ「ホジュン~宮廷医官への道~」(以下「ホジュン」、脚本:チェ・ワンギュ、演出:イ・ビョンフン)だ。最高視聴率63.5%を記録し、国民的なシンドロームを巻き起こした「ホジュン」は、「東医宝鑑」の著者であり、かつ御医だったホ・ジュンの一生を描いている。この2つのドラマは、イ・ビョンフンという韓国時代劇の巨匠の手から誕生した作品でもある。「ホジュン」にもあり、「馬医」にもある3つとは?それでは、演出者が同じこと以外に、「馬医」と「ホジュン」の共通点は何があるだろう。第1に、主人公があらゆる逆境を乗り越え成長していく、ファンタジー英雄の属性を持っている点だ。主人公はまるでゲームのように、1つ1つ技を会得し、やがてはその分野の独歩的な存在になっていく。これを見守る視聴者は、主人公の成長過程を一緒に歩むことになるわけだ。このような点から、「ホジュン」と「馬医」は妙な中毒性を持っている。第2の共通点は、2つのドラマに個性豊かな助演が必ずいることだ。その中でも、「この人が出ているから、イ・ビョンフン監督の作品だな」と思わせる人物がいる。それは、「馬医」でチュ・ギベ役を演じる俳優、イ・ヒドだ。彼は「ホジュン」でもホ・ジュン(チョン・グァンリョル)の側近であるク・イルソ役を演じている。第3の共通点は、主人公がこのすべての逆境を乗り越えるうえで手を貸す女性キャラクターがいる点だ。「馬医」でこの役割を果たすのは、医女カン・ジニョン(イ・ヨウォン)だ。また、ペク・クァンヒョンに片思いを寄せるスクフィ姫(キム・ソウン)もやはり、今後ペク・クァンヒョンの助力者として活躍する可能性が高い。「ホジュン」でも、医女のイェジン(ファン・スジョン)が物心両面からホ・ジュンを助けていた。「ホジュン」にはあるが、「馬医」にはない2つとは?このように酷似しているように見える2つのドラマにも、もちろん違いはある。「ホジュン」にはあり、「馬医」にはないもの。その1つは、師匠の犠牲だ。「ホジュン」のホ・ジュンは、庶子という身分の制約により非行に走ったあまり、密輸人の道に足を踏み入れる。しかし、そこで出会うのがホ・ジュンの一生の師匠である、ユ・ウィテ(イ・スンジェ)だ。ユ・ウィテはホ・ジュンには超えることのできない壁のような存在で、常に叱ってばかりの人物だったが、自分の死が差し迫るとホ・ジュンに自身の遺体を解剖させる。ホ・ジュンはこのような師匠の愛に報いるために、当時は御法度だった遺体解剖を行う。これが基になり後々ホ・ジュンは御医になり、「東医宝鑑」を執筆するに至るのだ。しかし、「馬医」では彼の師匠として活躍するコ・ジュマン(イ・スンジェ)の犠牲はまだ見られていない。そしてもう1つ、「ホジュン」にはあり「馬医」にはないものがある。それは、一人の女性の献身的な至純の愛だ。「ホジュン」のイェジンは、ホ・ジュンが死を迎える瞬間までも運命を共にしようとする純粋な愛を見せる。ホ・ジュンのことなら、何でも助けようと努力するのはもちろんだ。妻のいるホ・ジュンとの愛は結局叶わなかったにも関わらずだ。このような犠牲的な女性の愛が「ホジュン」にはあるが、「馬医」には現れない。ペク・クァンヒョンを手助けするカン・ジニョンの姿はただの助けであるだけで、犠牲にまでは至らない。スクフィ姫もやはりペク・クァンヒョンに思いを寄せ彼を助けようとするが、彼のために犠牲になるような姿まで見せてはいない。しかし、ここで挙げた共通点と違いがこれから変わる可能性ももちろん存在する。「ホジュン」は既に終了しているドラマだが、全50話で予定されている「馬医」はまだ第18話までしか展開されていないためだ。制作陣がどのように物語を展開するかにより、2つのドラマの共通点と違いはさらに増えることも、或いは減ることもあるだろう。現在「馬医」は視聴率20%に近づき、順調である。果たして今後「馬医」が「ホジュン」を超えることができるか、その展開が注目される。「OhmyStar」ではスターはもちろん、バラエティ、ドラマなど、様々な市民記者のレビューや主張を幅広く掲載しています。もちろん、いかなる反論も歓迎します。いつでもノックして下さい。「OhmyStar」は市民記者の皆さんの参加をお待ちしています。―編集者コメント
「馬医」チョ・スンウ“超人的な魔性の男”
MBC「馬医」でペク・クァンヒョン(チョ・スンウ)は毎回重要な瞬間に、周りの女性たちの助けを借りる。スクフィ姫(キム・ソウン)はペク・クァンヒョンを司僕寺(サボクシ:朝鮮時代に宮中の輿や馬に関することを司る官署)の馬医に採用し、カン・ジニョン(イ・ヨウォン)は彼が医員の試験に合格できるよう、惜しまず時間やお金をかけて彼を手伝う。また、ペク・クァンヒョンが命を救ったソ・ウンソ(チョ・ボア)の兄は彼に「必ず恩返しをする」と約束し、ペク・クァンヒョンの運命を変える秘密を握っているのは医女チャン・インジュ(ユソン)だ。それに、これから有名な飲食店ムギョタンバンの主人チュ・イノク(チェ・スリン)がペク・クァンヒョンに無料のクッパを食べさせるだろうし、ペク・クァンヒョンを見て「ハンサム」と喜ぶ医女たちは彼にいつも好意的である。ペク・クァンヒョンはMBC「宮廷女官チャングムの誓い」のチャングム(イ・ヨンエ)のように、自分の仕事に対して生まれつきの才能を持ち、MBC「ホジュン~宮廷医官への道~」のホジュン(チョン・グァンリョル)のように患者の生命を助けることに渾身の力を注ぐ。さらに、カン・ジニョンに「僕の手が握りたくなるようにできているんです」とずうずうしく言う彼のユーモアのセンスは、MBC「トンイ」の粛宗(スクチョン)のそれと似ている。これまでイ・ビョンフン監督の時代劇の主人公たちが生まれつきの性格と才能を持った超人たちだったとしたら、ペク・クァンヒョンはそのうえ、女性とのコミュニケーションや共感できる能力まで持った魔性の男だ。「馬医」で女性たちは男性たちに結婚を強いられたり、未亡人は夫の死を追って死ぬことができなかったことに対してプレッシャーを受ける。そんな時代に、ペク・クァンヒョンはソ・ウンソが女性として明かすことが難しい病気にかかっていることを知り、彼女が恥ずかしくない方法でその病気を彼女に知らせる感性まで持っている。ペク・クァンヒョンは馬医だから、女性たちは女性だからという理由で世の中の壁にぶつかるが、この2つの階層が愛情をもとにして連合することで、ペク・クァンヒョンが身分制の壁を乗り越える可能性ができる。馬医が人医になるため必要なもの◆グァンヒョンを助ける女性たちは自由と能力をすべて持っており、それは相当の部分が父親の世代から譲られたものである。しかし、イ・ソンハ(イ・サンウ)はペク・クァンヒョンにカン・ジニョンとの関係について宮の外では身分の上下が厳しい関係と注意した。イ・ソンハのこの警告は、ペク・クァンヒョンの周りにいる女性たちにも同じく適用される。ペク・クァンヒョンの周りの女性たちは他の女性たちに比べ、プライベートで自由を持っている。カン・ジニョンは孤児だが膨大な遺産の相続人でもあるので、後見人のイ・ミョンファン(ソン・チャンミン)に自分の意見を強く主張するし、スクフィ姫は兄の顯宗(ヒョンジョン)の力で他人の顔色を伺わない。ソ・ウンソは夫が死んだことで精神的に苦しむが、それと同時に未亡人になった裕福な家柄の娘であるため、比較的に自由にペク・クァンヒョンに会うことができる。彼女たちのこのような自由は、宮の中の権力者たちが積み重ねた富と権力をもとに、彼女たちのそれぞれ独特な事情が結びついた結果であり、宮の外の平凡な女性たちは決して持つことができないものである。また、自分の能力で成功を果たしたチュ・イノクは、彼女の財力を使って働きかけるロビー活動(私的な政治活動)に焦点が合わせられ、チャン・インジュの職業的な成果の後ろには首医(スイ:御医(オイ:王の主治医)の中の最高責任者)のコ・ジュマン(イ・スンジェ)のように公明正大な上司の配慮がある。「馬医」は身分制の問題点を主張してはいるが、その身分制を乗り越えることにおいて個人の努力や運が決定的な役割を果たす。そして、身分に束縛されない世の中というテーマは、イ・ビョンフン監督の一貫したテーマだ。彼が「馬医」で選んだ新しいストーリーの話し方が、自由に生きる、もしくはそのように生きたいと思う女性たちと一人の男性の話を描くということだ。しかし、このように変わったストーリーが視聴者たちに伝えていることは、むしろ退行に近いメッセージである。馬医が人医になるためには才能や人柄はもちろん、女性の心を虜にする魅力まで持っていなければならなく、彼を手伝う女性たちも宮の外ではなかなか許されない自由と能力をすべて持っていなければならない。イ・ビョンフン監督は「ホジュン~宮廷医官への道~」で時代の限界を乗り越える偉大なる一個人を見せてくれたし、「チャングムの誓い」では水刺間(スラガン:王の食事を作る厨房)を通して指導者の交代による政治とシステム改革の可能性を示した。MBC「イ・サン」でのイ・サン(イ・ソジン)は政策を変化することで国家の改革を語り、「トンイ」では身分制の矛盾に耐え切れなかった賤民(センミン:最下層の階級の身分)たちの抵抗を描いた。それが成功的だったかどうかは別として、イ・ビョンフン監督は身分制をはじめ、社会改革に対する視線を宮の中の一個人から宮の外の世界中に徐々に拡張させてきた。考試生が自分の力で成功するストーリーの異なるバージョン◆イ・ビョンフン監督の前作「チャングムの誓い」と「イ・サン」では、主人公が自分の成長とともにドラマ内の世界も変えた。しかし、「馬医」はすべての問題をもう一度、宮の中の一個人の努力に戻した。それは、「馬医」が宮の中の医員たちのストーリーであるからではない。顯宗とコ・ジュマンはひたすら改革を話し続けるが、18話までストーリーが進んでも彼らの改革案は個人の能力によって平等に人材を登用するという原論的な話に留まる。そのため、コ・ジュマンの反対側にいるイ・ミョンファンもペク・クァンヒョンを妨害することにだけ集中し、ストーリーはペク・クァンヒョンがどれほど超人的な能力を発揮し、どの女性の助けや幸運を通じて危機を脱するかにだけ焦点が合わせられている。イ・ミョンファンが生きている限り、また、彼の出生の秘密が明らかになるまで、ペク・クァンヒョンは繰り返して危機に直面するだろうし、彼をめぐる世界はなかなか変わらないはずだ。「チャングムの誓い」と「イ・サン」は主人公が成長する間、水刺間が、もしくはイ・サンをめぐる情勢が少しずつ変わった。しかし、「馬医」は成功に必要なすべての努力も結実も結局はペク・クァンヒョンに戻るようになっている。そのほか、宮の外にいる馬医たちの人生は変わらない。ペク・クァンヒョンの出生の秘密のストーリーを素早く進めた幼少期を除くと、「馬医」はまるで毎日ドラマ(月~金に放送されるドラマ)のように優しく能力を持つ主人公が受難と克服を繰り返すだけだ。そのため、ペク・クァンヒョンが女性たちの助けを借りて医員に一歩ずつ近づく過程は、ドラマが進むにつれ、身分の壁を崩すことなく、自分の力で人生を立てる考試生(各種国家試験を準備する受験生たち)の話のように見える。優しくハンサムで優れた能力も持っているが家が貧しい考試生が、裕福な女性の助けを借りて成功する。このような考試生の合格はそれ自体ではいい話だが、世の中を変えるわけではなく、ずば抜けた能力と運までついている個人の美談に過ぎない。もちろん、それだけでも見る面白味はある。毎日ドラマが依然として面白いように。しかし、イ・ビョンフン監督にできることが果たしてそれだけだったのだろうか。「ホジュン~宮廷医官への道~」と「チャングムの誓い」は視聴者たちに平等で正義のある人に対する希望を与え、「イ・サン」は何かを変えなければならないというメッセージを伝えた。しかし、「馬医」は何を残すのだろうか。素敵な男性と女性が愛し合い、成功するストーリーだけが残っているかもしれない。もちろん、その主人公が自分になる可能性は0%だが。
「馬医」繰り返される“イ・ビョンフン監督流”…それでも愛される理由とは
「ホジュン~宮廷医官への道~」「商道-サンド-」「宮廷女官チャングムの誓い」「薯童謡(ソドンヨ)」「イ・サン」「トンイ」そして最近MBCで放送されている「馬医」まで。イ・ビョンフン監督が目指しているのはヒューマニズム英雄叙事だ。非凡な才能があるが、身分上の限界を持っている主人公が自身を取り巻く逆境を乗り越え、最高の座に登り詰めるイ・ビョンフン監督のペルソナはすでに何度も見ている。「馬医」のペク・クァンヒョン(チョ・スンウ)もイ・ビョンフン監督のこれまでの作品の主人公と変わらない。謀反の濡れ衣を着せられ、両班(ヤンバン:朝鮮時代の貴族)から賤民になったペク・クァンヒョンは、両親から譲り受けた才能を発揮し、馬医として宮殿に入る。このとき、卑しい賤民のペク・クァンヒョンが馬医になるように助ける助力者は王、大妃、王妃の次の身分であるスクフィ姫(キム・ソウン)だ。しかし、馬を治療する馬医から人間を治療する医員になりたいペク・クァンヒョンは、馬医として宮殿に入ったときとは違って、姫の助けなしに、自らの実力で身分を上げようとする。しかし、内医官試験は中人(両班と常民の中間層)以上が挑戦できるものであり、賤民であるペク・クァンヒョンが身分制度の厳しい朝鮮で人医になるのは難しいように見える。しかし、並外れた医術の実力を持ち、真なる人医になりたいペク・クァンヒョンの意志は、結局身分の壁を打破することになるはずだ。助力者、悪縁、三角関係イ・ビョンフン監督流時代劇で欠かせないものペク・クァンヒョンだけではなく、イ・ビョンフン監督のこれまでの作品の主人公は、身分の壁を超えて頂上に登り詰める立志伝中のキャラクターだ。ただ、イ・ビョンフン監督の他の作品の主人公とは違って、「イ・サン」の正祖(イ・ソジン)は世子(王の跡継ぎ)の息子として生まれ、子供のときに世孫に冊立された高貴な身分だった。しかし、父親の思悼世子(サドセジャ)を米びつに閉じ込めた外戚勢力と一生戦わなければならないイ・サンの一代記は、身分の差別を乗り越え最高の座に立った偉人たちに劣らないほど劇的だ。もう一つ、イ・ビョンフン監督の作品には、主人公が最高の座に登り詰めるまでに、主人公の並外れた才能を妬み、危機に追い込む人物が常に存在する。「宮中女官チャングムの誓い」のチェ尚宮(キョン・ミリ)や「イ・サン」の貞純王后(キム・ヨジン)、「馬医」のイ・ミョンファン(ソン・チャンミン)のように、主人公の親の世代から始まった悪縁が、主人公が本格的に活躍する時代に繋がる場合もよくある。同時に主人公とその恋人、そして別の主要人物の間で三角関係に絡んだ恋心が、対立の大きな軸をなすという点も興味深い。まだ「馬医」は、ペク・クァンヒョンとカン・ジニョン(イ・ヨウォン)の関係を深く設定しておらず、現在までペク・クァンヒョンとカン・ジニョンの関係で障害物となるスクフィ姫を可愛らしい片思いというように描いている。しかし、今後ペク・クァンヒョンとカン・ジニョンの仲が発展すると、イ・ミョンファンの息子でカン・ジニョンに恋心を抱くイ・ソンハ(イ・サンウ)が本格的に三角関係に加わる予定だ。その後、カン・ジニョンと最高医員の座をめぐって一世一代の対決をするペク・クァンヒョンとイ・ソンハの対立は、避けられない「馬医」のクライマックスだ。陳腐だが引かれる「馬医」にはこれがあるしかし、イ・ビョンフン監督の作品がいつもそうであったように、賤民のペク・クァンヒョンと御医(オイ:王の主治医)である父親を後ろ盾にしたイ・ソンハの対決は、結局は医術に天賦の才能を持っているペク・クァンヒョンの勝利で終わることを確信させる。予想外の結果も期待できそうだが、実際の歴史やシノプシス(ドラマや舞台など作品のあらすじ)を考慮すれば、必然の結末になると言わざるをえない。すでに結末を予想してから見るイ・ビョンフン監督の作品とは言え、「馬医」は視聴者を魅了する妙な魅力を持っている。チョ・スンウの愛想のいい笑顔と男心をくすぐるキム・ソウンの可愛らしい魅力が、「馬医」の人気上昇のための大きな原動力とされているのだ。しかし、何より「馬医」が持つ決定的な力の源は、「絶望の中でも夢を失わず、前へ進んでいけば成し遂げられる」というメッセージだ。学校の倫理の教科書に出てきそうな、古い教訓だと思うかもしれない。にもかかわらず、続く危機や挫折の中でも、勇気を失わず人医に挑戦するペク・クァンヒョンのポジティブな姿勢は、様々な理由で夢を失い漂流している人々に何かしらの希望を与えてくれる。鳶が鷹を生めなくなった今の社会。「馬医」の中で最高の背景を持った鷹を抑えて鳶が龍となる男の物語は、不可能に見える夢を代わりに叶えてくれるジーニーのような存在ではないだろうか。暗い現実をしっかりと直視することも重要だが、たまにはあらゆる逆境を勝ち抜く英雄の一代記を通じて、膨らむ希望を持つことも悪くない。いかなる挫折にも屈せず前へ突き進むペク・クァンヒョンを通じて、今を生きる人々に勇気を与える「馬医」。陳腐だと拒否したくても、どうしても興味を引かれる理由だ。
新しいところのない「馬医」だからこそ惹かれる
恐ろしい勢いの「馬医」3つの人気要因を分析時代劇の巨匠イ・ビョンフン監督と、演技の神様チョ・スンウの組み合わせがその理由だろうか。MBC月火ドラマ「馬医」が恐ろしい勢いを見せている。遠くは「朝鮮王朝500年」、そして「ホジュン~宮廷医官への道~」「宮廷女官チャングムの誓い」「イ・サン」など数多くの時代劇ヒット作を演出してきたイ・ビョンフン監督が、新ドラマ「馬医」で帰ってきた。しかし、ドラマ序盤の成績は振るわなかった。視聴率が6.9%まで落ち込み、「もうイ・ビョンフン監督の時代も終わるのではないか」という懸念も出てきたほどだった。しかし、それは杞憂に過ぎなかった。成人役者の登場に伴い、その勢いは驚くほどだ。実は、馬医という斬新な題材を取り上げていることを除けば「馬医」はイ・ビョンフン流時代劇パターンを維持している。いつからかイ・ビョンフン監督の時代劇は、似たような物語構造を繰り返している。「主人公は人並みならぬ才能を持って生まれるが、周りの妬みと嫉妬、または親世代の悪縁により苦労をする。しかし、それに屈せず立ち向かい、主人公はようやく成功する」といった、ありきたり過ぎるサクセスストーリーなのだ。そのためか出生の秘密を加えたが、これもやはり他のドラマで多く見すぎているため、新しいどころか、かえって月並みに見えた。これはドラマの序盤に視聴者から背けられた原因の一つにもなった。「馬医」の勢いには、理由があったしかし、第5話から俳優チョ・スンウが登場しながら、ドラマが流れに乗ったかと思うと、第6話からは視聴率1位を占めている。マスコミではこれをチョ・スンウの力とも見ている。もちろん、俳優の演技力が視聴率の上昇に一役買ったのは事実だ。どれだけドラマの作品性が良くても、俳優の演技力が至らなければドラマへの集中を妨げ、視聴者から背けられがちなためだ。しかし「馬医」の視聴率上昇の原因は、ただそれだけではない気がする。第一に上げたいのは、ペク・クァンヒョン(チョ・スンウ)を通じての視聴者の満足感だ。出生の秘密はあるにはあるが、ペク・クァンヒョンは賤民(センミン:最下層の階級の身分)の身分である。身分社会で、賤民の能力は宝の持ち腐れだ。しかし彼は、身分社会で自分の持って生まれた能力をもって王の主治医である御医(オイ:王の主治医)にまでなる。親の財産でもなく祖父母の財産で勉強する時代になり、身分上昇がほとんど不可能な状態になってしまったこの時代に、ペク・クァンヒョンの存在は視聴者に対して慰めになったことだろう。第二に、いつも同じパターンであるにも関わらず勧善懲悪のテーマは常に有効だという点だ。イ・ビョンフン流時代劇の大きなあらすじは、善良な人は福を授かり、悪人は罰を受けるという勧善懲悪の構造である。おとぎ話で韓国の人々はそれに接しているが、歳月が流れ21世紀になった時代にも、それは依然として教訓を与えてくれる。第三に、個性派助演俳優たちの活躍だ。イ・ビョンフン流時代劇は、一歩間違うと重くなりがちな劇の流れを、個性派助演の演技で愉快に展開させるのが長所である。これまでヒョンシク、イ・ヒド、チ・サンリョル、イ・グァンスなどに続いた個性派助演俳優の活用は、劇を飾るデコレーションの役割を果たし、完成度を高めてきた。ありきたりで飽きがきそうなものだが、そのありきたりなストーリーがイ・ビョンフン監督ならではのカラーになり、結局はイ・ビョンフン流時代劇の長所になったかも知れない。いつまでイ・ビョンフン監督の時代劇が視聴者から愛されるかは分からないが、今のように愉快な笑いと暖かいメッセージの盛り込まれたドラマを作ってくださるよう、期待したい。
韓国時代劇の歴史を顧みる…1960年代「国土万里」から2011年「根の深い木」まで
2012年、韓国では時代劇がブームを巻き起こしている。年頭から「太陽を抱く月」を始め「武神」「神医」「アラン使道伝」「大王の夢」「馬医」など、数々の時代劇が出ている。時代劇の人気は、昔も今も変わらないようだ。いったい韓国の時代劇の魅力とは何だろうか。韓国の時代劇の歴史は、どういうものなのだろうか。初期野史中心から本格的な王朝史への拡大テレビで放送された韓国最初の時代劇は、1963年にパク・ジンマンが脚本を手がけ、キム・ジェヒョン監督が演出したKBS「国土万里」だった。好童(ホドン)王子と楽浪(ナクラン)姫のラブストーリーを題材にした同ドラマは、当時高い人気を得た。キム・ジェヒョン監督は、「国土万里」で放送業界において自身の能力を認められ、スター監督としても注目を集めた。キム・ジェヒョン監督と「国土万里」の登場は、韓国の時代劇が一歩を踏み出す歴史的な瞬間だった。この時点から各放送局は、どこでも意味があるうえにお金にもなる時代劇を作ることになった。この時期に作られたものが「麻衣太子」「ミンミョヌリ-許嫁-」のような作品だ。当時の時代劇は、王朝史よりは野史や古典を中心に視聴者の民族情緒を刺激することに集中した。このような特性は、1970~80年代にもそのまま受け継がれ、「伝説の故郷」のようなドラマの誕生につながった。興味深いことは、1960年代中盤から後半になって官僚的な権威主義体制だったKBS、商業的で軽快だったTBC、その両局の中間だったMBCが多様な時代劇を制作し、時代劇ブームを加速させたということだ。このとき作られたドラマが「チョンミョンお嬢様」「淑夫人伝」「月山夫人」「首陽大君」「林巨正-快刀イム・コッチョン」「女人天下」「元暁大師」「善徳女王」「キム・オッキュン」のような作品だ。この時期になって時代劇の題材は、野史や古典のみならず、本格的な王朝史へ拡大した。そして、よりスケールの大きい作品が登場し始めた。1970~80年代キム・ジェヒョン監督のライバル、イ・ビョンフン監督が登場放送業界で起きた時代劇ブームで脚本家も世間の注目を集めた。このとき登場したのが、シン・ボンスンとイム・チュンだ。彼らは、当時一番高い人気を得たドラマの脚本家として活躍し、高い原稿料をもらった。シン・ボンスンとイム・チュンは1960年代に登場し、それから30年間韓国の時代劇を左右する影響力を発揮した。時代劇で一躍スターダムに駆け上がった俳優も多かった。そのうちの1人が女優のユン・ヨジョンだった。1971年にMBC「張禧嬪(チャン・ヒビン)」で張禧嬪役を演じたユン・ヨジョンは、ドラマの高い視聴率とともに当時一番ホットな女優として注目を集めた。もちろん、悪役だったためにCMから降板させられたり、視聴者から非難を受けるなどの紆余曲折もあった。それにも関わらず、彼女はその時期を「私の全盛期はその時」と語る。1980年代のカラーテレビの導入は、韓国の時代劇にもう一度変革をもたらした。当時彗星のようにドラマに登場し、韓国の時代劇で波乱を起こしたのが、キム・ジェヒョン監督の永遠のライバルイ・ビョンフン監督だった。彼は、最高の時代劇脚本家であるシン・ボンスンとともになんと8年以上「朝鮮王朝500年」シリーズを演出し、放送業界に新しい変革をもたらした。誰もが口を揃えて不可能だと言った「朝鮮王朝500年」シリーズは、イ・ビョンフン監督の根気と強い意志で誕生した傑作中の傑作だった。8年間にわたって放送され、視聴率には浮き沈みがあったが、彼は太祖から純宗に至る朝鮮500年の歴史の大事件を安定的に演出する手腕を発揮した。このシリーズでイ・ビョンフン監督は、当代最高のスター監督だったキム・ジェヒョン監督と肩を並べる時代劇の達人として名を馳せることになる。面白い事実は、このときのイ・ビョンフン監督が「朝鮮王朝500年」のような王朝史のみならず、「暗行御史(地方官の監察を秘密裏に行った国王直属の官吏)」のような時代劇でも能力を発揮したことだ。イ・ビョンフン監督とキム・ジョンハク監督が手を組んで作った「暗行御史」は、毎回完結するエピソードで3年間人気を得た。恋愛ドラマのスターだった俳優のイ・ジョンギルが暗行御史を演じ、房子(お使い)役を演じた俳優のヒョンシクは、同ドラマでスターダムを駆け上がった。特に、特有のコミカルな演技をアピールしたヒョンシクは、「暗行御史」を始め「馬医」が放送されている2012年まで、20年以上イ・ビョンフン監督の時代劇に出演し、活躍している。1990年代優れた時代劇の作品で社会的ブームを起こした「龍の涙」1980年代に一番注目された作品は、イ・ビョンフン監督の「暗行御史」と「朝鮮王朝500年」シリーズだったが、90年代にはキム・ジェヒョン監督の活躍が目立った。その中でもキム・ジェヒョン監督が演出し、シン・ボンスンが脚本を書いた1994年のKBS「韓明澮(ハン・ミョンフェ)」は、40%を越える高い視聴率を記録し大きな反響を得た。韓明澮役を熱演した俳優のイ・ドクファは、このドラマでその年のKBS演技大賞を受賞し、世祖役のソ・インソク、仁粹大妃役のキム・ヨンランも注目を浴びた。1995年には、KBS「王妃チャン・ノクス~宮廷の陰謀~」、SBS「妖婦 張禧嬪」など、宮中時代劇もたくさん出演した。特に、チョン・ハヨンが脚本を手がけ、俳優のユ・ドングン、パク・チヨン、ハン・ヒョンジョンなどが熱演したKBS「王妃チャン・ノクス~宮廷の陰謀~」と、イム・チュンが脚本を手がけ、俳優のイム・ホ、チョン・ソンギョン、キム・ウォニが出演した「妖婦 張禧嬪」は、それぞれ40%を越える視聴率を記録し時代劇不敗の法則を証明した。だが、明成(ミョンソン)皇后の一代記を描いたハ・ヒラ主演の「燦爛たる黎明」や、光海君から愛された女官キム尚宮(ケトン)の人生を描いたイ・ヨンエ主演の「宮廷女官キム尚宮」は、それほど注目されなかった。1994年に「韓明澮」で人気を得たが、1995年「宮廷女官キム尚宮」の成績不振で面目がつぶれたキム・ジェヒョン監督は、丸1年間歯を食いしばり、1996年「龍の涙」で韓国時代劇の新たな境地を切り開いた。韓国の時代劇は「龍の涙」以前とそれ以降に分かれると言っても過言ではないほど同ドラマの興行成績は、時代劇がドラマのレベルを超え、社会的にどれほど莫大な影響力を与えられるのかを見せてくれた一大事件だった。太祖イ・ソンゲの朝鮮建国から王子の乱、太宗の即位、譲寧大君(太宗の長男)の廃位、世宗(セジョン)の即位まで、朝鮮初期の膨大な歴史を息詰まるほど描き出した「龍の涙」の最高視聴率は、何と49.6%(AGBニールセン・メディアリサーチ、以下同一)で、歴代の時代劇が記録した視聴率を全て上回る記録となった。同ドラマで太宗イ・バンウォン役を演じた俳優のユ・ドングンは、その年のKBS演技大賞を受賞し、ミン氏役を鳥肌が立つほどリアルに表現した女優のチェ・ミョンギルは、演技派のベテラン女優として確実なイメージの変身に成功することになった。1996年、キム・ジェヒョン監督が「龍の涙」でブームを起こしたとき、SBSは当時無名に近かった俳優チョン・フンチェ主演の「林巨正-快刀イム・コッチョン」を制作し、大きな話題を集めた。現代ドラマのようなスピーディーな展開で視線を引いた「林巨正-快刀イム・コッチョン」は、商業放送であるSBSの色を明確に示した企画物だった。「林巨正-快刀イム・コッチョン」で代表されるSBSの企画時代劇は、1998年キム・ソクフン主演の「ホン・ギルドン」につながり、もう一度大ヒットすることになる。1990年代末時代劇の危機、「王と妃」「ホジュン~宮廷医官への道」で乗り越えただが「好事魔多し」と言うのだろうか。次々とヒットした時代劇は、1998年本格的に始まった通貨危機とともに危機に直面する。各放送局は、大規模な制作費を要する時代劇の制作を一時中断することになり、この時期に計画されていた数々の時代劇は撮影中止、または延期されることになった。だが、その時期にもかなり良い時代劇の作品が出ており、それが「王と妃」であった。「龍の涙」の後続ドラマとして制作された「王と妃」は、KBSが制作費を節約するために「龍の男」のオープニング音楽をそのまま使うようにするなど、放送局からあまり支援を受けずに始まった。だが、仁粹大妃を熱演した女優チェ・シラの本格的な登場ともに上がった視聴率は、最高視聴率44.4%を記録し、「韓国の時代劇は死んでいない」という気持ち良い反応を得た。チェ・シラは、この作品を通じてシン・ソンウとの婚約破棄騒動を完全に克服し、KBS演技大賞を受賞した。1996年「龍の涙」、1998年「王と妃」に続き、1999年にはその名も有名な「ホジュン~宮廷医官への道」が登場する。イ・ウンソン脚本家の小説「東医宝鑑」を原作に、チェ・ワンギュが脚本を手がけ、イ・ビョンフン監督が演出を担当したMBC「ホジュン~宮廷医官への道」は、言葉通り韓国全土から人気を集め、大きな話題を呼び起こした。「ホジュン~宮廷医官への道」の放送とともに原作小説「東医宝鑑」は飛ぶように売れ、ベストセラー1位を記録し、全国の漢方病院は例を見ないほど賑わった。最高視聴率63.7%という驚異的な視聴率を記録し、最高の民衆時代劇で国民的時代劇と呼ばれた同ドラマは、イ・ビョンフン監督が10年ぶりに復帰し、直接演出を担当した作品でより意味があった。「朝鮮王朝500年」シリーズで王朝時代劇の可能性を見せた彼は、10年ぶりに「ホジュン~宮廷医官への道」で民衆時代劇の新たな境地を切り開き、韓国が自慢する最高の監督としてその位置を確かにした。また、同作品で主演を演じた俳優のチョン・グァンリョルは、その年MBC演技大賞を受賞する。2000年代初めキム・ジェヒョン監督 vs イ・ビョンフン監督、避けられなかった2回の対決2000年代に入ってから時代劇の歴史は、より一層多彩に発展する。2000年に注目を浴びたのは、キム・ヨンチョル、チェ・スジョン主演のKBS「太祖王建(ワンゴン)」だった。「太祖王建」は、朝鮮時代が中心となっていたそれまでの時代劇から一歩離れ、高麗の歴史に注目したという点で大きな意味を持った作品だったし、最高視聴率も60.2%を記録する国民的な時代劇になった。ほぼ2年近く放送された同ドラマは、2000年には弓裔(クンイェ)役のキム・ヨンチョルに、2001年にはワンゴン役のチェ・スジョンに演技大賞の栄光を抱かせる快挙を達成した。一つのドラマから演技大賞の受賞者が2人も出る珍しい光景が展開された。「太祖王建」が人気を得た2000年を過ぎ、2001~2002年には時代劇ブームが復活する。この時代劇ブームをリードしたのは、やはりキム・ジェヒョン監督とイ・ビョンフン監督だった。KBSを離れ、SBSに移ったキム・ジェヒョン監督は、チョン・ナンジョンと文定王后の一代記を描いた「女人天下」でブームを起こし、イ・ビョンフン監督もチェ・インホの小説を原作にしたドラマ「商道-サンド-」を作り、20%を上回る良い視聴率を記録した。当時「女人天下」と「商道-サンド-」は、同じ時間帯に放送され激しい視聴率競争を繰り広げたが、結果的にこの視聴率合戦で一勝を挙げた、キム・ジェヒョン監督だった。「女人天下」と「商道-サンド-」が激しく競争した2002年には、チョン・ハヨン脚本、イ・ミヨン主演のKBS「明成皇后」も制作され、高い人気を博した。一時期30%に近い視聴率を記録し、人気を得た「明成皇后」は、「私が朝鮮の国母だ!」という流行語を残すなど、数々の話題を呼んだ作品だった。しかし、高い人気にも関わらず、女優のイ・ミヨンが、放送延長に反対し途中で降板し、論議になった。2002年「女人天下」と「商道‐サンド‐」で激突したキム・ジェヒョン監督とイ・ビョンフン監督は、2003「王の女」と「宮廷女官チャングムの誓い」でもう一度激突する。韓国時代劇のプライドのような2人の巨匠の二番目の激突は、意外とイ・ビョンフン監督が序盤に圧倒的な人気を得て簡単に勝敗が決まった。キム・ヨンヒョン脚本、イ・ビョンフン演出、イ・ヨンエ主演の「宮廷女官チャングムの誓い」は、主人公が数々の苦難を克服していくストーリーでイ・ビョンフン監督の時代劇の水準を一段階グレードアップさせたと高く評価され、57.8%という高い最高視聴率を記録した。特に、この作品は韓国での人気をもとに海外に輸出され、幅広い人気を得た。イランでは、視聴率が90%に達するほど高い人気を博した。イ・ヨンエはこのドラマ一つで韓国を代表する最高の女優として認められることになり、イ・ビョンフン監督も演出家として享受できる富と名誉を一気に享受する栄光を得た。「宮廷女官チャングムの誓い」は、いまだに韓流最高のキラーコンテンツであり、輸出の担い手として評価されている。2000年代半ばまだ時代劇の進化は続く「宮廷女官チャングムの誓い」の成功から、韓国の時代劇は様々なジャンルへの変化を試し、もう一度変身を試みた。この時期に登場したのがチェ・スジョン、チェ・シラ主演の「海神(ヘシン)」で、チェ・スジョンはKBS演技大賞を受賞する。2006年には、50%を越える視聴率を記録したソン・イルグク主演の「朱蒙(チュモン)」が人気を集め、2007年にはイ・ビョンフン監督のもう一つのヒット作である「イ・サン」が、2009年にはキム・ヨンヒョン脚本、コ・ヒョンジョン、イ・ヨウォン主演の「善徳女王」が50%に近い視聴率で大きな人気を得た。2006年にソン・イルグクは「朱蒙」で、2009年にコ・ヒョンジョンは「善徳女王」でそれぞれMBC演技大賞を受賞した。2010年には、チャン・ヒョク、オ・ジホ主演の「チュノ~推奴~」がフュージョン時代劇の新しい境地を開き、話題を呼んだ。「チュノ~推奴~」は、韓国の時代劇がどれほど洗練される形になれるのか、その中でどれほど面白さを与えることができるのかを確かに見せてくれた意義のある作品だった。同ドラマでチャン・ヒョクは、KBS演技大賞を受賞した。2011年に注目すべき時代劇は「根の深い木~世宗(セジョン)大王の誓い~」だった。イ・ジョンミョンの同名小説をもとに作られた同ドラマは、「善徳女王」の名コンビ、キム・ヨンヒョン&パク・サンヨン脚本家が執筆し、俳優のハン・ソッキュが出演して大きな話題となった。ハングル創製を題材に、優れた推理ドラマを描いた「根の深い木」は2011年最高の優れたドラマとして高く評価され、主演のハン・ソッキュはその年のSBS演技大賞を受賞した。このように韓国の時代劇は、50年あまりの歴史の中で大きく変化、発展しながら視聴者の期待を満たしてきた。時代劇に含まれているイデオロギーと思想、悠久な歴史はその時代の精神を眺める一つの窓としての役割を忠実に果たしてきたのだ。そして、これを見守った私たちは、その中で新しい時代のイデオロギーと理念をもう一度発見することができた。これまで時代を描くために努力し、歴史を創造するために情熱を注いだすべての方々に心より拍手を送る。また、これからその道を歩いていく方々にも声援を送りたい。
「馬医」自由自在なチョ・スンウの演技でカバーできるか
「馬医」放送6回で同時間帯の視聴率1位MBCドラマ「馬医」がこれまで同時間帯視聴率トップを維持してきたKBS2の「ウララ・カップル」をおさえ、1位を獲得した。視聴率調査会社のAGBニールセン・メディアリサーチによると、16日に放送されたMBC月火ドラマ「馬医」は、全国基準で視聴率12.9%を記録したという。これは同ドラマの最高視聴率であった10.4%より2.5%上昇したものである。この日同ドラマは首位をキープしていたKBS 2TV月火ドラマ「ウララ・カップル」(11.1%)を1.8%の差でおさえ、1位に躍り出た。つい最近まで6.9%と酷評を受けていた「馬医」が視聴率1位になったのは、やはりチョ・スンウの力だろう。第5話の後半から登場したペク・クァンヒョン(チョ・スンウ)は、飲み屋でスクフィ姫(キム・ソウン)に「君がお姫様だったら、僕は領議政(朝鮮王朝時代の最高行政機関の官職の一つ)の息子だ」と嘘をつくが、病気にかかった動物を診る時は誰よりも真剣だった。一言でいうと、図々しさと真剣さを巧みに操りながら、人々を熱中させる演技を披露しているのである。チョ・スンウが演じるペク・クァンヒョンというキャラクターにとっては、犬も猫もみんな大切な命である。また彼は人を治療する人医であれ、動物を治療する馬医であれ、どちらも命を救うという職業だという信念を持っている。「馬医」の演出を担当しているイ・ビョンフン監督は、ドラマの大きな長所として、チョ・スンウの演技、人間と馬の触れ合いを挙げていた。しかし序盤、子役の登場と共に出生の秘密、陰謀などありきたりなドロドロな展開で、関心を得られなかった。その結果、酷評と共に視聴率も6.9%まで落ちてしまった。しかしイ監督が長所として挙げていた2つの要素が出てきて、視聴率1位に躍り出たのである。それにも関わらず「馬医」の道のりはまだまだ遠い。まずイ監督は長い間、時代劇を演出してきているため、これまでのパターンを踏襲する恐れがある。また一部の視聴者はキム・イヨン脚本家の台本に不満を持っている。これらのことをどうやって克服していくのかが残された課題である。また「ウララ・カップル」も、いつでも1位に返り咲くことができる底力のあるドラマである。さらにSBS「シンイ-信義-」の後番組であるキム・ミョンミン、チョン・リョウォン主演の「ドラマの帝王」との対決も、これから繰り広げられるため、月火ドラマ視聴率争いはこれからだと見られる。果たして「馬医」が前述した懸念材料を乗り越え、幅広いチョ・スンウの演技や、動物と人間の暖かいコミュニケーションで奪還した1位の座をキープできるのか、注目されている。
「馬医」時代劇の名匠イ・ビョンフンプロデューサー、初回からお茶の間を圧倒
ソン・チャンミン、チョン・ノミン、ユソンの抜群の演技力やはり名声通り「ホジュン~宮廷医官への道~」「宮廷女官チャングムの誓い」「イ・サン」をヒットさせた時代劇の名匠イ・ビョンフンプロデューサーの新作「馬医」がベールを脱いだ。1日、第1話が放送されたMBC創立51周年特別企画ドラマ「馬医」(脚本:キム・イヨン、演出:イ・ビョンフン、チェ・ジョンギュ)では、主人公ペク・クァンヒョン(チョ・スンウ)の父親カン・ドジュン(チョン・ノミン)と彼の親友イ・ミョンファン(ソン・チャンミン)、チャン・インジュ(ユソン)の出会いから典医監(チョニガム:朝鮮時代の医療行政と医学教育を担当する官庁)で医学の道を志す姿が描かれた。この日の放送で、大提学(テジェハク:朝鮮時代に宮の経書や史書の管理、書類の処理や王の意見に応じることを担当した官庁である弘文館と王の命令などを作成、記録する官庁である芸文館の最高位の官職)の長男であるカン・ドジュンと馬の治療をする馬医の息子イ・ミョンファンが典医監で出会い、身分は違うが友人になった。その後、彼らは二人とも医科試験に合格するが、進む道は違った。イ・ミョンファンは内医院(李朝時代に宮中の医薬をつかさどった官庁)に入り、カン・ドジュンは彼の夢の通り、お金がないため病院にもいけず死んでゆく民を治療した。彼らの運命は、昭顕(ソヒョン)世子(チョン・ギョウン)の入国から狂い始めた。清に人質に取られたソヒョン世子が戻ってきて危篤に陥り、カン・ドジュンは疑惑を持ち始める。彼を手伝うイ・ミョンファンは調査の過程で毒針を発見するが、背後に昭顕世子の父親、仁祖(インジョ:ソヌ・ジェドク)がいるという話とイ・ミョンファンの卑しい身分をあげつらうイ・ヒョンイクの脅迫に屈し、身分が低い彼を友人として受け入れてくれたカン・ドジュンを裏切る。結局、カン・ドジュンは斬首され、生まれる子供が女なら官婢にし、男なら殺すようにと命じられる。そして、カン・ドジュンの妻(チャン・ヨンナム)は苦労の末に息子を出産した。だが、間もなく官軍が押し入り一触即発の危機というところでドラマが終わり、次回に対する視聴者の好奇心を高めた。やはり名声通りだった。1億が投入されたことで知られる典医監の入学式のシーンなど、壮大なスケールと細かい演出を見せたイ・ビョンフンプロデューサーの演出力や生き生きとした役柄を作り上げたキム・イヨン脚本家の台本が調和し、興味深いストーリーで視聴者を魅了した。前半に子役が出演する通常の時代劇とは異なり、「馬医」はソン・チャンミン、チョン・ノミン、ユソンなどの中堅俳優たちがドラマをリードし、安定して優れた演技力でお茶の間を圧倒した。特に、イ・ミョンファン役のソン・チャンミンは、権力を追ううちに堕落していく人物で、初回から砂漠を彷徨うインパクトのある演技でドラマのスタートを知らせた。「ゴールデンタイム」のチェ・イニョク(イ・ソンミン)教授のようなカン・ドジュン役のチョン・ノミンは、特別出演だが強烈な印象を残し「馬医」に貢献した。ユソンもまた、その存在感を遺憾なく発揮した。ドラマ「馬医」は卑しい身分の馬医から御医(オイ:王の主治医)にまで上りつめた実在の人物ペク・クァンヒョンの波乱万丈の生涯が描かれる予定だ。
「馬医」良質の時代劇…若年層の関心を得ることができるのか
予想通り、イ・ビョンフンプロデューサーの新作「馬医」は、手堅い構成と俳優たちの熱演、美しい映像で視線を釘付けにした。MBC新月火ドラマ「馬医」が24日午後、京畿道(キョンギド)龍仁市(ヨンインシ)MBCドラミアで開かれた制作発表会で初公開された。この日、俳優たちの共同インタビューの前に公開されたハイライト映像は、時代劇の巨匠イ・ビョンフンプロデューサーの名に相応しく、美しい映像と興味深いキャラクター、俳優たちの名演技で非の打ち所がない姿を見せた。これまで「ホジュン~宮廷医官への道~」「宮廷女官チャングムの誓い」「イ・サン」「トンイ」などで時代劇界のヒット神話を築いてきたイ・ビョンフンプロデューサーが長考の末に誕生させた作品に相応しく、人気ドラマとして名を上げるのに足りない点は見当たらなかった。しかし、この日の制作発表会でイ・ビョンフンプロデューサーは自ら「自分は60代なので、視聴者に新しいものをお見せするには若い感覚が必要だ。何度も一緒に働いたチェ・ジョンギュ監督が、このドラマを活気溢れるものにしてくれているので、とても頼っている」と話したように、中長年だけでなく若い層にも愛されるのがこのドラマの成功においての鍵となる見込みだ。「馬医」が馬の治療をする医師から御医(オイ:王の主治医)になった朝鮮最初の漢方外科医ペク・クァンヒョンの波乱万丈な生涯を描いているとはいえ、厳しい時代を乗り越え一分野で成功する人物を取り上げてきたイ・ビョンフンプロデューサーの今までの作品と大きく差がないことも、少し惜しいところとして残りそうだ。イ・ビョンフンプロデューサーも、「宮廷女官チャングムの誓い」「ホジュン~宮廷医官への道~」とどのような違いがあるか非常に悩んだと打ち明けた通り、「馬医」がどのような新しい姿でお茶の間に定着できるかが期待されている。「馬医」は来月1日に韓国で第1話が放送される。