「ジャガイモ星」キム・ビョンウクプロデューサー”僕たちなりに物語を扱う方式がある”
写真=CJ E&M
tvN「ジャガイモ星」でシットコムの巨匠が復帰…「審議を気にせず、思うがままにやった」
シットコム(シチュエーションコメディ:一 話完結で連続放映されるコメディドラマ)の“巨匠”が帰ってきた。確かに、巨匠という称号は彼には惜しくない。「順風産婦人科」(1998)、「まあまあ程度では彼らを防ぐことはできない」(2000)、そしてあの有名な「ハイキック」シリーズを作り出したキム・ビョンウクプロデューサーのことだ。彼が転籍し、新たな作品を披露する。実家のようなMBCを離れ、CJ E&M系のチャンネルtvNに移った彼は、「サツマイモのような形をしているジャガイモ星2013QR3」(以下「ジャガイモ星」)という新たなシットコムを誕生させた。
キム・ビョンウクプロデューサーは28日午後、記者会見で作品について色々と話をした。普段からSNSもやらず、大衆との接触がごく稀な人物であるだけに、最近の彼の考えが読み取れる絶好の機会となった。彼がシットコムを続ける理由と、作品の発想、そしてキャスト関連の話を主に交わした。キム・ビョンウクプロデューサーと長らくタッグを組んできたイ・ヨンチョル脚本家も同席した。
「ジャガイモ星」は、2013年のある日、地球に飛んできた謎の惑星ジャガイモ星のせいで起こるノ氏一家のどたばたストーリーを描いたシットコムだ。月曜日から木曜日まで週4回放送されるが、その設定と内容が本当に“キム・ビョンウク”らしい。
「『ハイキック』を通して反省…今回は素直に笑える作品」
―復帰、おめでとうございます。それに、シットコムでの復帰なのでさらに嬉しいです。そこで、「ジャガイモ星」も前作「ハイキック」シリーズのように、色んな社会的、政治的メッセージを盛り込んだ作品なのか、気になりますが。キム・ビョンウクPD:以前「ハイキック」をやるとき、僕についての良くない噂がありました。「ドラマ病にかかった」というような内容だったのですが、今回はできる限りコミカルにしようと思いました。序盤はなるべく楽しく見られるようにしようと考えています。取り扱う話が憂鬱過ぎるという指摘があったので、今回はそのようなことがないように努めようとしています。
僕が必ずしも政治的意識を持っているわけでもないのですが、「ハイキック」に政治色を取り入れたと感じた方も多いようです。振り返ってみれば、ある物語を余計に入れようとしていた部分もあるのではないかとも思います。反省しています。
特に「ハイキック3」は、無理して序盤に物語を展開した傾向があります。若者の失業は、上手く取り扱えば良いストーリーになるのですが、リサーチが足りず、観念的な側面がありました。政治的に正しいドラマが良いドラマとは限らないのに、知らないうちにそういう風に考えていた部分がありました。今回は、ただ素直に笑える作品をやりたいという思いです(笑)
―これまで作品では、ユニークな設定が目につきましたが、今回は小惑星ですね。特に未知の惑星を題材として取り入れた理由とは何でしょうか?
キム・ビョンウクPD:僕たちの日常が危機だと思いました。普通、毎日ドラマや週末ドラマのストーリーテリングに慣れていますが、危機意識に少しは違う設定を与えたかったんです。空にジャガイモの形をした惑星がある世界とはどれほど違うだろうかと想像しました。実は以前、「メランコリア」という映画を見て感銘を受けました。うつ病を取り扱った映画ですが、それ自体が美しくもありましたし。僕たちの「ジャガイモ星」のCG(コンピュータグラフィックス)も美しいです(笑)
―つい先程笑える作品を作ると話したばかりなのに、また鬱ですか。映画「メランコリア」がモチーフになったんですね?
キム・ビョンウクPD:強いて言うなら、コンセプトを取り入れたことは正しいと思います。実際僕の作品って笑いが主眼点ではあるのですが、物語が少し悲しいポイントもありますし、虚しさもあります。ある特定のポイントがあるんです。でも、これが僕の持っている世界観です。それを悲しいと思えば悲しいのですが、一つの特徴にもなるので……僕と一緒に働くイ・ヨンチョル脚本家はどのような考え方を持っているのか分かりませんが、合わせてやろうと努力しているように見えます(笑)
「失敗の確率が高いシットコム、8ヶ月だけ投資してほしいとお願いした」
―実際キム・ビョンウクプロデューサーは、ひたすらシットコムジャンル一筋でした。自分なりの哲学もあるでしょうし、使命感もありそうですが。キム・ビョンウクPD:シットコムは大変です。キャラクターが15人であろうと10人であろうと、皆それぞれのストーリーを持たなければならないので。ドラマではキャラクターが機能的な役割をすることもありますが、シットコムの中のキャラクターは、小さなキャラクターでもいつかは彼らの物語が取り扱われるんです。
キャラクターも生かして笑いも取り入れなければなりませんし、毎日ストーリーも作らなければならないので、難しいです。よほどのことがない限り成功しにくいですし、それこそ失敗の確率が9割以上です。また、これまでやってきた話と重ならないようにしなければなりませんし。今回作品に取り掛かりながら、シットコムの命脈でも繋ごうという考えでした。そして、失敗する確率もありますが、8ヶ月だけ投資してほしいとお願いしました。
―MBCからtvNに転籍するといいというのは確かですか?ケーブルチャンネルに対して色々感じそうですが。
キム・ビョンウクPD:実は、「順風産婦人科」当時から、うちのチームの台本は雑すぎることで有名でした。MBCでは毎日審議室と喧嘩しなければなりませんでした。放送が児童・青少年の時間帯だったので、「畜生」くらいの単語も使えなかったんです。些細なことですが、一つの語彙でも、僕はそれを守り抜きたいという考えです。でもケーブルは、地上波の時より遥かに雑であるにもかかわらず、規制がないんです(笑)
また地上波では、視聴率15%にならないと失敗だと見なされますが、ケーブルは熱血視聴者が探して見てくれるところがいいです。プロデューサーなら、誰もが熱血視聴者層が欲しいものです。もう一つのメリットは、セットを固定しておくことです。制作する人の立場から、作品撮影期間中にセットを持ち続けることは、便利です。大きなメリットではないように見えますが、セットがあれば小道具一つそのままに置いておけるので、当惑することがないんです。普通ミニシリーズはセットを設置すると終わるまで壊さないのですが、僕たちはシットコムだったので、常にセットへの不安がありました。
「地上波から抜け出した記念に…うんこの話をやりたい放題!」
―放送時間帯と審議の話を聞くと、一瞬プロデューサーが主に取り扱っていた下ネタが思い浮かびますね。「ジャガイモ星」にもそんな下ネタがありますか?キム・ビョンウクPD:下ネタ、あります。僕の口から言うのも何ですが、最初の台本を俳優たちに見せたら、皆面白いと言ってくれました。地上波では、審議の時「トイレを露骨に取り扱う理由は何か」「用を足している所を見せ続ける理由は何か」と色々質問されたのですが、「ジャガイモ星」にも確かに下ネタは出てきます。それも、大いに(笑)
地上波から抜けだした記念でもありますし、うんこにこだわっているという指摘に対する補償心理もあります。また、「ジャガイモ星」の放送時間が9時15分なので、思う存分出してもいいと判断しました。少し内容に触れますと、ジナ(ハ・ヨンス)とヘソン(ヨ・ジング)がロマンチックな関係になりますが、それが結局トイレを一緒に使いながら繋がるんです。でも、お互いに用を足している所を見たので、繋がりそうでなかなか繋がらないという設定です。
―それでは、もう一度確かめる意味で質問します。「ジャガイモ星」、本当に素直に笑いながら、絶対に楽しめる作品なんでしょうか?
キム・ビョンウクPD:「ハイキック3」は結末を作らなかったりしましたが、今回の作品の最後は、もう書いておきました。今言うことは出来ませんが(笑) シットコムなら、エンターテインメントの機能を盛り込まなくてはならないという思いです。僕たちなりに物語を扱う方式があると思いますが、それが他の人の目にはあまり快く映らない可能性もあります。大衆が求める結末はどういうものかは分かっていますが、そのようなドラマは多いじゃないですか。僕たちは、それは避けようという主義です。
「ハイキック」シリーズでチェ・ダニエル(イ・ジフン役)が最後まで自身は何を好きなのかが分からなかったように、異色的な結末のドラマは一つぐらいはあっていいと思います。おかしく見えるでしょうが、これが僕ならではのバランス感覚です。悲観的な物語がなければ、バランスがとれないと思います。少しでも差別化しようという思いです。エンディングの是非はともかく、僕たちならではの、話にならないバランス感覚だと思ってください(笑)
―もしかして、それでは「人生は近くで見れば悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」というような哲学を盛り込んでいるのでしょうか?
キム・ビョンウクPD:(少し考えてから)僕はSNSもやりませんし、僕の言葉がいつも誰かを通じて伝わるので、(歪曲の可能性があって)悔しい部分はあります。実は僕は、そのように深く考える人ではありません。僕の作品の99.5%はジョークだと思います。なので、そこに(真剣さが)0.5%くらいあると見ていただけるといいです。100%何も考えないのではなく、0.5%くらいは深い悩みを盛り込んでいるということです。僕はドラマの下位ジャンルであるシットコムを作る人であって、「スノーピアサー」を作る人ではないので(笑)
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- イ・ソンピル
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