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「もう一つの約束」パク・チョルミン“しっかりとした考えの持ち主?僕はただの俗物だ”

TVレポート
見ているだけで笑いがこみ上げてくる俳優がいる。人柄の良さそうな豪快な笑顔と勲章のように刻まれたしわ、茶目っ気たっぷりの声は彼だけの武器であり、トレードマークである。もうお気づきだろうが、俳優パク・チョルミンの話だ。

ここ数年間、パク・チョルミンは韓国の映画界になくてはならない存在だった。予期せぬ瞬間に飛び出して観客に笑いを届けたり、いくつかの作品は彼の生まれ持ったアドリブの才能に多くを依存したりもした。

そんな彼が笑いをなくし、父性愛が深く感じられる顔で観客を待っている。彼は韓国で6日に公開された映画「もう一つの約束」(監督:キム・テユン)で、江原道(カンウォンド)束草(ソクチョ)の平凡なタクシー運転手ハン・サング役を演じ、これまで私たちが知らなかったもう一つのパク・チョルミンの顔を見せてくれる。

「釜山(プサン)で映画『AM 11:00』を撮っているのに『もう一つの約束』のプロデューサーが『ちょっと会える?』と聞いてきた。釜山からソウルに来た当日にキム・テユン監督とプロデューサーに会った。口では『お兄さんが初めてです』と言っていたが、僕の前に2~3人ほど断られたようだった。だが、シナリオを読んでみると、素材を離れてキャラクターが本当に新鮮だった。僕がほとんど出会えないキャラクターだったので好感が持てた」

「もう一つの約束」は、サムスン電子を相手に世界で初めて労災認定判決を受けたファン・サンギさんの実話を基にしている。ファン・サンギさんの娘、故ファン・ユミさんは2003年サムスン電子の半導体工場に入社し、2005年に白血病の診断を受け、2007年に死去した。労災訴訟2審は2011年から現在まで進行中であり、ファン・サンギさんは今でも束草でタクシーの運転手をしている。映画の原題は「もう一つの家族」だった。

意図せずとも自身の専攻分野となったコメディではなく、ヒューマンドラマ。何よりもデビュー25年目にして掴んだ初めての主演だ。しかも、映画は“外圧”説から“製作中断”説まで、様々な浮き沈みを経なければならなかった。演技のキャリアとは別に、軽くはないプレッシャーがパク・チョルミンの肩にのしかかったはずだ。

「僕の情熱と欲で映画をダメにするのではないかと心配もした。しかし、ファン・サングというキャラクターを逃すにはあまりにももったいなかった。映画を撮りながらアドリブはかなり減らした。だからと言ってまったくしなかったわけでもない(笑) 体が勝手にふざけてしまうから。勤労福祉公団の事務長に会って、『徹夜して労災の勉強をして、鼻血も出しました』と言いながら鼻をほじるアドリブをしたが、監督がカットした。ほとんどのシーンでは憤り、苦痛、悲しみを小さな響きを与えながら伝えようと努力した」

「もう一つの約束」は、クラウドファンディング(不特定多数の人がインターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うこと)と個人投資で制作費を調達して作られた初めての作品である。世界一周に行くために集めたお金を果敢に投資した28歳の青年から、結婚資金を快く投資した30代の大手企業の課長補佐まで、それぞれ事情は異なりながらも資金が集まり、このような奇跡を作り出した。

「制作ドゥレ(一般の映画後援者から資金提供を受けた制作募金)で作られた映画なので、その責任感は言葉では表せないほどだ。僕たちの映画に参加してくださった方々の思いに反してはならないと思う。彼らの期待、願いに傷を付けてはならない。エンドクレジットが3分間ある。制作ドゥレに参加した方々の名前が流れるが、壮観じゃないか。また新たなドラマが広がるというか」

「もう一つの約束」は、大手企業を相手取って闘うある家族の物語を描いたが、社会告発に重きを置いた映画ではない。娘に先立たれた後、不義に立ち向かう父親の成長記であり、バラバラになった家族が一つになっていく姿を描いたヒューマンドラマだ。

「小さかった父親が凄まじい苦痛を経て大きな父親、余裕のある父親へと変わっていく。最後の弁論のシーンを撮りながら本当にたくさん泣いた。言いたくても大切にとっておいた言葉を全て思いっきり吐き出した。『これよりも確実な証拠がどこにあるのか』という言葉があまりにも悲しくて泣いた。カットが出た後もしばらく泣いて、監督が『申し訳ない』と言ったほどだ」

パク・チョルミンは映画撮影の前に実際にファン・サンギさんと会い、一緒に焼酎を飲みながら胸のうちを明かしたそうだ。

「ファン・サンギさんは娘さんの話が映画化されること自体にこみ上げてくるものがあって涙ぐんでいた。でも、あまりにも苦しんだり、疲れ果てて絶望しているわけではなかった。不思議なのは、ファン・サンギさんと僕がしわまで似ているということだ。キャスティングされてからたさくん驚いた」

彼はどうしても多く尋ねられることとなった「外圧はなかったのか」という質問に、「外圧は全くなかった。もし、あったとしても当然耐えるべき問題なのではないだろうか」と力んで話した。

「これだけは必ず言っておきたい。僕はしっかりとした考え方を持つ俳優ではない。欲張りで、ビキニのグラビアを見てよだれを垂らしたり、お酒も好きな俗物である。社会的に僕が何かを犠牲にするべきだというより、俳優としての欲が最も大きな自己中心的な人間だと思う。俗物だけど悲しい時には一緒に泣いて、荷物が重ければ一緒に持ってあげる、ただそうやって生きていく普通の人だと……。もし、『もう一つの約束』が皆さんに大きく愛されることになれば、僕ではなく、“大きな父親”になったファン・サンギさんに拍手を送って欲しい」
元記事配信日時 : 
記者 : 
キム・スジョン、写真 : チョ・ソンジン、映画「もう一つの約束」
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