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チソン「僕にも頼り甲斐のある秘書がいたら」

10Asia

11月29日に終了したSBSドラマ「ボスを守れ」のラストシーンで、ジホン(チソン)は幸せそうだった。愛するウンソル(チェ・ガンヒ)と一緒に歩く道、甘いキス、傘を伝って流れる雫、そのすべてが美しかった。財閥の御曹司としてヒロインをシンデレラにする王子様ではなく、愛する女性のため、自分の住み慣れた環境を変え、ともに歩んでいくという平凡な道を選んだジホンは本当にカッコいい男だ。強気で風変わりなウンソルが、ぎゅっと抱きしめたくなるほど可愛らしく見えたのは、ジホンを演じたチソンの演技力のおかげだろう。30代半ばという年齢にも関わらず、少年のような愛らしい瞳、無邪気な笑顔。「愛するには値しないほどのジホンをここまで成長させたのは、愛の力だ」というコメントも、とても魅力的だ。

―エンディングのシーンを撮影する時、チェ・ガンヒさんが「チソンさんの目を見ていたら、涙が出そうになった」と言っていたそうですね。その時はどんな気持ちでした?

チソン:撮影の2日前から、“今日は最後の日だな”と思っていました。ウンソルとキスをした階段を下りながら、ガンヒさんとこんな話をしたんです。「お互いこの歳でメロドラマを撮ったという思い出の場所だから、いつまでも覚えておこう」って。そして最後の場面を撮影した時、“このままカメラ側に歩いて行ったら、本当に終わりなんだなぁ”と思いました。今までウンソルと一緒に過ごした時間を思い出したら目頭が熱くなって、胸が詰まるような思いでした。

―特別な思い入れなどがありましたか?

チソン:ジホンがウンソルに出会い、パニック障害を乗り越えて成長していったように、この作品は僕自信をも癒してくれた気がします。今までの人生で、自分の意思で生きてきた部分もあり、そうでない部分もありましたが、「ボスを守れ」のおかげでそのすべてが楽しく感じられました。疲れている時にそう思うのは難しいけど、わずかな感情をひとつずつ感じながら撮影することができました。だから、ジホンというキャラクターと別れる寂しさというよりも、一日一日楽しく作り上げた作品という充実感で胸がいっぱいです。


“難しい考えは抜きに、気の向くままに自分に正直に”

―ジホンは、ウンソルの心を奪う、愛嬌のある魅力的な人物だった。MBCドラマ「ニューハート」のウンソンも同じようなタイプだったけど、このように様々なキャラクターを自然に表現できるものなんですか?実際そういう側面を持っていたりしますか?

チソン:自分の性格というよりも、内側からあふれてくるものを素直に表現しただけです。ジホンがナユン(ワン・ジヘ)の話を聞きたくなくて、ストローでふざけるシーンがあったんですが、それは笑わせようと思ってやったのではなく、本当にそのような状況が頭に浮かんで表現したリアクションでした。ジホンを演じる上で一番大切に思っていたことは、カッコつけない、ウケを狙わない、かわい子ぶるのもなし、ということでした。そうしたら、自然とこうなったんです。足を大きく開いて、気に入らない人を横目でにらんだり、殴ったり(笑)昔は、こういうふうに演じなければという戦略的なものもあったりしたのですが、今はただ気の向くままに素直にやっています。

―撮影を始める前、役作りをする時、黒板にそのキャラクターについてすべてのことを書き出すと聞きましたが、今回もやったのですか?

チソン:今回は、黒板のかわりにノートを使いました。最初のページには、ジホン、何歳で職業は財閥3世、って書いて、その次に、パニック障害を持っている、それはなぜかどの程度なのか、それからジホンの周りを囲む障壁の大きさ、この中でジホンができる行動は?社会に対する不満は?このようにジホンの行動範囲を見渡したんです。このすべての条件を自分の体に叩きこんで撮影に入りました。撮影現場で、自分の内側にある感情を素直に出せるようにしたんです。

―ジホンの独特なヘアスタイルや言葉は、役作りの過程で作られたものなのですか?

チソン:ノートにメモしながら、ジホンの人間像を描いていったんです。最初から漫画キャラクターのヘアスタイル(「スラムダンク」の宮城リョータの髪型のようだと言われていた)を真似ようと決めていたのではなくて、言葉では表現できないジホンの姿を考える過程でヒントを得たんです。ジホンの身分だと、普通持ち物は全て秘書任せですが、ジホンは自分のものは自分で持つタイプ。だとしたら、鞄は大きいはずだし、体に密着する感じのものが良い、だったらバックパックを使おう。それから革靴にスーツ?でも彼はそういう感じじゃないからカジュアルに。でも財閥の跡取りとしてそれなりに見えなきゃいけないから、面倒だけどジャケットぐらいは着ないと。足元は楽なスニーカーで決まり。こういう感じで。

―ジホンとウンソルの甘いロマンスが功を奏して、ドラマは最初から評判がとても良かったですよね。その分、パートナーのチェ・ガンヒさんとの呼吸が大切だったと思いますが、一緒に撮影していてどうでした?

チソン:最初の撮影から、とてもやりやすかったです。ガンヒさんは撮影現場に先に来ていて、すでに役に入り込んでいました。僕が現場に入ると、一人で頭を下げていたんです。何をしているのか聞くと、「うん?ただなんとなく…」とか言いながら、ずっとそのまま座っていました。僕もある時から、ジホンになりきってそうやって座るようになったんです。そうしたらある時目が合ってしまって、何だか気恥ずかしい感じになったこともありますね。はは。

―まだ演技の経験が多くないキム・ジェジュンさんとはどうでした?ウンソルとの恋愛とは別に、チャチャコンビ(チャ・ジホン×チャ・ムウォン)もけっこう人気がありましたけど(笑)

チソン:演技は教えるものではないので、アドバイスにも限界がありました。僕の経験を話しながら、ジホンとムウォンという役がどのように絡んだらいいのか相談し合いました。彼は俳優としての素質があると思います。いつも控えめで、キャラクターに入り込みやすい性格ですね。一人でも欠けるとストーリー自体が乱れてしまうものですが、そのような点では本当にありがたく思っています。

―二人の一番印象的だったシーンは、レストランでウンソルをめぐって喧嘩をするところです。女性みたいに髪を引っ張り合った後、結局ムウォンに殴られノックアウトする。これはチソンさんのアイデアだと聞きました。

チソン:“カッコいい喧嘩”はしたくなかったんです。二人は親戚同士だから子供の頃から叩き合ったりしているだろうし。アクション監督とその部分をどう表現するか話をしているうちにアイデアが出たんです。そうだ、髪の毛をつかもう!って。(笑)髪をつかんで、頭を下に足も曲げてレスリングをする感じ!そうやって動きを決めて、ジェジュンに聞いてみたんです。「君、ケンカ強いの?」「僕?」「いや、君じゃなくてムウォンのこと」「やったことなさそうですけど」「だよね。僕もそう思う。お互い取っ組み合いをするキャラではなさそうだし。こうやって拳で殴ってみようか」とか。目をカッと開いてストレートパンチでね、はは。

―4人が単純な四角関係ではなく、お互いに良い友達になっていくところがとても素晴らしかったです。そういう姿が自然に映るように、共演者同士親しくなる必要もありますよね。

チソン:はじめて会った読み合わせの時は、とてもギクシャクしていましたね。それで、ドラマも明るい内容だから、撮影の前までみんなで一緒に合宿にでも行こうと提案したんです。お酒を飲みながら語り合ったらいいんじゃないかって。それで実際、チソンさんはどんな人なの?ジェジュンさんはどんな人なの?ガンヒさんは?あなたは?って、質問しあったんです。お互い知り合う過程が必要だったんですよ。

―ジホンの立場に立って考えてみると、「ボスを守れ」はラブコメである以前にヒューマンドラマでもありますよね。自分を取り巻く環境の中で愛する女性と幸せになれる方法を探して、それを断固反対する父親を説得する姿が描かれていますね。それについてはどう思いますか。

チソン:ジホンは愛されるには色々な面が欠如した人間だと思います。世間知らずで他人を配慮せず、自分の世界から出ようとしない。働くことを嫌い、漫画やゲームばかりして、早く退勤しようと逃げだしたり。そんな中でウンソルに会って愛を知り、病気を克服していくのですが、人ってみんな同じなんだなぁと思いはじめました。ただ今回のドラマが違う点は、体こそ大人ですが、幼児期から成長していくような、そういう点があったことかな。ジホン自身を成長させたのは、結局“愛”だったわけです。

―ジホンは一見、幼稚な行動をしているようでたまに的を射た事を言う時がありますよね。最終回で父親に「自分の能力の限り、楽しく生きていくのが良い。それが一番幸せなんじゃないか」と言ったように、単純だけど、これって人生の真理ですよね。

チソン:だからジホンは、周りの人が自分の行き方を単純に省みることができるように作られたキャラクターではないかと思っています。歳をとると、大人らしく振舞って、強いふりをする。高い知識を得て、難しく物事を考えるようになってしまい、些細な幸せに気づかずに生きていますが、ジホンはそうじゃない。ジホンを通じて、そういうことを伝えたかったんです。


“どんなに好きな仕事でも、辛いのはまた別の問題”

―俳優は“見せる”職業なので、本人の意思とは別に“ふり”をしなければならない時があるのでは?

チソン:僕たちはとても強いふり、カリスマであるふりをしていますが、よくよく見てみると、軟弱だったりもしますよね。作品を通じて自分自身を晒すこともあります。泣くシーンでは本当に泣かなければならないし、痛みを表現するシーンでは、本当にそのように演じなければならないので、感情に簡単に振り回されて、気が滅入ることもあります。常に周りに人がいるので賑やかに見えますが、実はとても孤独な職業なんですよ。

―だから自分を守るのがとても重要になってくると思うのですが、演技以外にも振り回される要素はありますか?

チソン:以前知人にこんなことを言われたことがあります。「君の仕事は楽しそうで、本当にいいよね」と。どんなに好きな仕事をしているとしても、辛いことはあるんです。ある人が、飲み会の1次会を終えて2次会へ行く車の中で音楽を聴く時が、一番楽しいと言っていたのですが、その言葉に本当に共感できました。ほろ酔いだから、何をしても気分が良いし、次の場所に行くという期待感もありますしね。俳優はそういう楽しさや、みんなの期待に応える職業だと思っています。特別なことではありませんが、決して簡単ではないことです。

―俳優にもウンソルのような秘書がいたら良いですね(笑)

チソン:そうですよね、はは。自分の人生の一挙手一投足をフォローして導いてくれる、そんな心強い秘書がいたらいいのに。ジホンが小さな幸せを感じられるようになったのも、ウンソルのおかげだからね。

―SBS「華麗なる時代」以後、主演を演じ、好調に俳優生活を送っているチソン。俳優として信頼を得てきたという証拠だが、その間、“俳優チソン”というブランドをどのように積み上げてきたのだろうか。

チソン:長い目で見ていました。僕はソン・スンホンさんみたいな二枚目俳優ではないから、自分の個性を作らなければと思ったんです。教育熱心な家庭で育ったせいか考えが堅いところがあるので、それを壊そうと様々なキャラクターに挑戦してきました。だから、SBS「オールイン 運命の愛」や、時代劇「王の女」に出演して、難しい映画にもチャレンジしました。今では演技について少し分かった部分もありますが、その時は2%不足していたとも言われました。そんな状況の中で、兵役の令状を受け取ったんです。すごく悩みましたね。でも、軍隊生活を経験して少し気持ちが楽になりました。

―軍隊生活がもたらした変化とは?

チソン:色々と気持ちの整理もでき、今後どのような方向で演技をするか決めたり、気持ちに余裕ができたんです。除隊後に出演したのがMBCドラマ「ニューハート」です。1本の道を直進するだけだと早く目的地に着きますが、僕はデビューから今まで回り道をしてきました。でも、後悔はしてません。初めから一躍スターダムに上りつめたいという考えもないですし、自分がしたい仕事を一生懸命やるのみです。

―仕事のペースは関係ないようですね。

チソン:ペースにこだわりはありません。歳に関係なく、いつでも会話ができて一緒にいると楽しい、親しみのある俳優になりたいと思います。

―そのような点では、父親役のパク・ヨンギュさんと一緒に仕事をして感じた点は多かったようですね。色々なことを経験して今まで活躍している俳優ですし。

チソン:ベテランなのに、若手俳優に呼吸を合わせてくれるのが素晴らしいと思います。自分のシーンが終わっても帰らずに一緒に見ていてくれたんです。僕も歳をとってもそうありたいですね。それができなくなったら、演技をすべきでないと思っています。

―現場では作品以外の話もしましたか?

チソン:個人的な話はあまりできませんでした。ヨンギュさんは数年前、息子さんを亡くしていらっしゃいます。だから、僕が懐いて息子のようだとか思わせてしまうのが、とても申し訳なくて。息子さんにしてあげられなかったことを、作中で僕にしてくれようとする気持ちが伝わってきて、たまに涙が出ました。僕が直接聞いたわけではないですが、ヨンギュさんの目を見てそう感じたんです。

―そのせいか、最後のシーンでウンソルとの交際を許した父親に抱きついたのが演技に見えませんでした。

チソン:リハーサルの時から感情が高ぶっていました。庭に座っていて、立ち上がってヨンギュさんを見るのですが、気持ちが抑えきれなくて。特に泣くようなシーンでもなかったんですよ。ただ父親を抱きしめて目頭を熱くする程度だったのに、実際にやってみると、本当に切なくて。ヨンギュさんを見てなんというか、色々あったんだな、大変なことも多かったんだなって、そういう気持ちでした。

―「ボスを守れ」で良い仲間に恵まれて、人生について考える時間もあったようですが俳優として一番何を得ましたか?

チソン:勇気ですね。次の作品でも自信を持って人生観や人間性を語ることもできると思います。しばらく映画に出演していなかったので、次は映画に出たいと思っているのですが、僕の長所を生かせるキャラクターに出会えたら幸いですね。自分も周りの人も、みんな幸せになれれば嬉しいです。
元記事配信日時 : 
記者 : 
イ・ガオン、写真 : チェ・ギオン、編集 : ジャン・キョンジン
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