【トクtionary】 N:西島秀俊
※この記事は2012年当時のものです。
西島秀俊
a.日本の俳優。1971年生まれ。東京アクターズスタジオの1期生。1993年に放送されたフジテレビ「あすなろ白書」で演じた同性愛者の松岡純一郎役で注目された。
b.2011年12月に最終回を迎えたフジテレビのドラマ「僕とスターの99日」の主人公。キム・テヒの日本初出演作として話題となったこのドラマで、彼は正義感あふれる性格がために思わぬ事故に巻き込まれつつ、いつも不平を言いながらも韓流スターのハン・ユナ(キム・テヒ)に振り回されるガードマンの並木航平を演じている。
c.2月9日に韓国で封切られた映画「CUT」の主人公。イラン出身のアミール・ナデリが監督したこの映画で、西島は亡くなった兄の借金を返済するために人に殴られて金をもらう秀二役を務めている。
関連語:「春、バーニーズで」
a.2006年2月に衛星放送のWOWOWで放送された短編ドラマ。吉田修一の同名小説をドラマ化した。大都会で理想の夫婦といわれながら平凡な日常を生きている男と彼の日常からの脱却を、控えめな映像で描き出した作品。
b.巨匠、故・市川準監督が演出をし、西島秀俊が主人公の筒井を演じた。西島秀俊は市川準監督が村上春樹の小説を原作にして制作した映画「トニー滝谷」(2004年)でもナレーションを担当したことがある。
「僕は存在してますか?本当にまともに存在してるんですか?」
黒沢清監督の映画「ニンゲン合格」(1999年)で西島秀俊が演じた吉井はそう問いかけた。交通事故で昏睡状態に陥り、10年後、奇跡的に目を覚ました吉井は、体ばかりが大きくなっただけで、依然として事故当時の14歳に留まっている、大人でも子供でもない存在であった。西島はこの作品で初の主演を務め、自分の意思とは関係なく過ぎてしまった時間を受け入れることのできない青年を演じている。この映画での西島のイメージは、それからも長らく彼の上に影響を及ぼしているように見える。だからこそ、彼を眺めているとこちらから時々同じように問い返したくなってしまう。「あなたは本当にまともに存在しているんですか?」。過去も未来もなく、現在だけが存在する男。スクリーンやテレビ画面を通して眺める西島は、どこかそのようなイメージである。西島は20年という長い年月を考慮しても驚くべき長さの経歴を持っている。彼は監督やスタッフ、共演る俳優からの誘いがあればどんな些細な端役でも喜んで引き受けるからだ。同時に多くの監督が夢と現実、純粋さと残酷さの曖昧な境界に立ち、無表情でそれを眺める彼の表情に魅せられたからでもある。
水分のない乾燥した砂漠のような西島の表情からは、容易に欲望を読み取ることができない。だからこそ黒沢清や北野武、市川準のような日本の巨匠たちは、彼の無欲な顔に自分たちの欲望を投影してきたのかも知れない。特に吉田修一の原作小説を市川準監督が映像化した「春、バーニーズで」は、そうした西島のイメージがもっとも上手く生かされている。西島が演技した30代のサラリーマンである筒井は、昨日と今日、そして明日が違わない静かで平穏な日々を毎日積み重ねながら暮らしている。だがある日、高校の修学旅行で失くした腕時計の行方を捜して、ふと出勤途中から日光へと向かう。「春、バーニーズで」では一見すると理解しがたいこうした脱線の理由をあえて説明しない。それでも西島のドライで無心な表情だけで、簡単に説明しきれないその時間に説得力が生まれてしまうのである。西島の空虚な目と無表情は、時には底なしの純粋な心を、またある時には抑えきれない怒りや砕けそうな挫折した心を映し出している。それでも何故か冷たいとは感じさせない。それは西島の表情が、とやかく説明せずとも、誰もが感じたことのある日常の不安を的確に表現し、それ自体で慰める力を持っているからだろう。まるで吉田修一の小説に出てくる主人公たちのように。
西島秀俊
a.日本の俳優。1971年生まれ。東京アクターズスタジオの1期生。1993年に放送されたフジテレビ「あすなろ白書」で演じた同性愛者の松岡純一郎役で注目された。
b.2011年12月に最終回を迎えたフジテレビのドラマ「僕とスターの99日」の主人公。キム・テヒの日本初出演作として話題となったこのドラマで、彼は正義感あふれる性格がために思わぬ事故に巻き込まれつつ、いつも不平を言いながらも韓流スターのハン・ユナ(キム・テヒ)に振り回されるガードマンの並木航平を演じている。
c.2月9日に韓国で封切られた映画「CUT」の主人公。イラン出身のアミール・ナデリが監督したこの映画で、西島は亡くなった兄の借金を返済するために人に殴られて金をもらう秀二役を務めている。
関連語:「春、バーニーズで」
a.2006年2月に衛星放送のWOWOWで放送された短編ドラマ。吉田修一の同名小説をドラマ化した。大都会で理想の夫婦といわれながら平凡な日常を生きている男と彼の日常からの脱却を、控えめな映像で描き出した作品。
b.巨匠、故・市川準監督が演出をし、西島秀俊が主人公の筒井を演じた。西島秀俊は市川準監督が村上春樹の小説を原作にして制作した映画「トニー滝谷」(2004年)でもナレーションを担当したことがある。
「僕は存在してますか?本当にまともに存在してるんですか?」
黒沢清監督の映画「ニンゲン合格」(1999年)で西島秀俊が演じた吉井はそう問いかけた。交通事故で昏睡状態に陥り、10年後、奇跡的に目を覚ました吉井は、体ばかりが大きくなっただけで、依然として事故当時の14歳に留まっている、大人でも子供でもない存在であった。西島はこの作品で初の主演を務め、自分の意思とは関係なく過ぎてしまった時間を受け入れることのできない青年を演じている。この映画での西島のイメージは、それからも長らく彼の上に影響を及ぼしているように見える。だからこそ、彼を眺めているとこちらから時々同じように問い返したくなってしまう。「あなたは本当にまともに存在しているんですか?」。過去も未来もなく、現在だけが存在する男。スクリーンやテレビ画面を通して眺める西島は、どこかそのようなイメージである。西島は20年という長い年月を考慮しても驚くべき長さの経歴を持っている。彼は監督やスタッフ、共演る俳優からの誘いがあればどんな些細な端役でも喜んで引き受けるからだ。同時に多くの監督が夢と現実、純粋さと残酷さの曖昧な境界に立ち、無表情でそれを眺める彼の表情に魅せられたからでもある。
水分のない乾燥した砂漠のような西島の表情からは、容易に欲望を読み取ることができない。だからこそ黒沢清や北野武、市川準のような日本の巨匠たちは、彼の無欲な顔に自分たちの欲望を投影してきたのかも知れない。特に吉田修一の原作小説を市川準監督が映像化した「春、バーニーズで」は、そうした西島のイメージがもっとも上手く生かされている。西島が演技した30代のサラリーマンである筒井は、昨日と今日、そして明日が違わない静かで平穏な日々を毎日積み重ねながら暮らしている。だがある日、高校の修学旅行で失くした腕時計の行方を捜して、ふと出勤途中から日光へと向かう。「春、バーニーズで」では一見すると理解しがたいこうした脱線の理由をあえて説明しない。それでも西島のドライで無心な表情だけで、簡単に説明しきれないその時間に説得力が生まれてしまうのである。西島の空虚な目と無表情は、時には底なしの純粋な心を、またある時には抑えきれない怒りや砕けそうな挫折した心を映し出している。それでも何故か冷たいとは感じさせない。それは西島の表情が、とやかく説明せずとも、誰もが感じたことのある日常の不安を的確に表現し、それ自体で慰める力を持っているからだろう。まるで吉田修一の小説に出てくる主人公たちのように。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- キム・ヒジュ、翻訳 : イム・ソヨン
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