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Kstyle 12th

Vol.1 ― チャン・ヒョク「『チュノ』はイ・テギルの成長ドラマだ」

10Asia

「武術に関してなら少しは話せるが…」
インタビューを始める前、チャン・ヒョクはまるで武術にかなりはまっているアクションスターのように話した。しかし、インタビューが終わる時には、チャン・ヒョクにとって武術に関して話すということは、自分の演技と人生に関して全てのことを話すのと同じ意味であることが分かった。武道家の悟りの原点が武術であるように、チャン・ヒョクは演技をしながら自分の人生を突き進んでいた。彼は武術を演技に溶け込ませてキャラクターを理解し、分析しながら、自分の人生を振り返る。そのため、チャン・ヒョクがKBSドラマ「チュノ~推奴~」でテギルを演じるということは、過ぎた人生の全てをキャラクターに注ぐのと同じことである。テギルを演じながら、彼が得た悟りがどんなものであるかを確認してみよう。

―「チュノ~推奴~」のシナリオを初めてもらった時、どうだったか。

チャン・ヒョク:最近は、ジャンルの境界線がなくなっていると思う。「第9地区」のような映画も、一本の作品の中でSF、アクション、恋愛や政治風刺などが全て入っているじゃないですか。今はジャンルよりも視線や形式、視点の方が重要だと思う。「チュノ~推奴~」も同じだと思った。一般的に、ドラマは主人公がストーリーを引っ張っていき、助演たちは背景にあるという感じだった。しかし、「チュノ~推奴~」は「バンド・オブ・ブラザース」のように様々な人物がそれぞれのストーリーを持つように思えた。ここではテギルの話をしているけれど、違う所ではきっとまた違う話が展開されているみたいな。それぞれの立場によって事件を見る視線が違うけど、ストーリーにおいて焦点が違うだけで似ているストーリーがバランスよく流れるみたいな形だったので、みんなが主人公でありサブにもなるドラマだと思った。

「皆がただその時代の中で暮らしていく民衆たち」

―そのため、「チュノ~推奴~」はキャラクターに関するストーリーではなく、1つの世界に関するストーリーだと思える。

チャン・ヒョク:僕もそう思って、個人的には「チュノ~推奴~」のエンディングにドキュメンタリー形式の映像を付けて、この世界を客観化したいという望みもある。最初は1人のキャラクターの視点で主観的に始まったが、最後を客観的に終えたら、この世界をありのまま見せることができると思う。映画「ファンサンボル(黄山ヶ原)」が好きだけど、その作品では住んでいる地域によってそれぞれ違う方言を使う。そのように、ただ視点だけ変えたのに、これまでの時代劇では見たこともない現実を見せてくれたことがその映画が好きな理由だ。「チュノ~推奴~」もそのような作品の1つだと思う。

―だとしたら、「チュノ~推奴~」はどんな世界を描いたストーリーだと思うか。

チャン・ヒョク:ドラマの最も重要なポイントは民衆だ。人々がその時代の歴史に影響を受けながら暮らし、その人々の歴史が今まで流れてきたという観点からストーリーを始めたのが「チュノ~推奴~」だと思う。テギルも身分制度のせいで愛する女性と結婚できなかったし、家も没落した。その後、チュノ師(推奴:逃亡した奴婢を捕らえ連れ戻す役)になり、両班(ヤンバン:朝鮮時代の貴族)出身にも関わらず、中人(チュンイン:両班と平民の間の中間層の人)であるチェ将軍と賤民(センミン:最下層の身分とされた人)であるワンソンと一緒に行動する。そのため、「チュノ~推奴~」の中のキャラクターは善と悪の区分がない。皆がただその時代の中で暮らしていく人だからだ。

―テギルを時代的な状況が作り出した人物だと思っているのか。

チャン・ヒョク:僕が一番好きなキャラクターがドラマ「黎明の瞳」のチェ・デチだが、チェ・デチは歴史的な状況のせいで人生が変わってしまった人物だ。もし、日韓合併がなかったら、徴兵されなかったら、従軍慰安婦のユン・ヨオクに出会わなかったら、彼は共産党員にならなかったはずだ。この人に理念なんかない。ただ、生きていく中でどこかに属していなければならなかったし、彼も知らないうちに彼についていく人々ができただけだ。テギルもチェ・デチと同じだ。テハは大義名分をかけて闘争するし、奴婢たちは生きるために団結して“奴婢たちの世界”という理念を学習する。しかし、チュノ師たちは理念など持っていない。ただ、奴婢を捕らえることでその1日を生き延びることができて、その間ごとに消えた恋人、オンニョンを探しながら生きていく。そんな中で、他のチュノ師に奴婢を取られないためにただがむしゃらにやっていたら鬼のようなチュノ師になり、チュノ師の中でも1位となる。オンニョンを探し出すことができなかったら、たぶんそんな風に毎日を生きて、ある日、ある町で剣に刺されて死んだかもしれない。

―しかし、テギルが時代の流れに押し流されながら生きるだけと言うには、彼は非常に複雑なキャラクターである。「チュノ~推奴~」でテハは真っ直ぐで正しい人、ワンソンは軽い人だと言うことが出来ても、テギルは一言で表現できないキャラクターだ。天下のならず者であるが純情派でもあり、軽薄だが真面目でもある。

チャン・ヒョク:テギルは両班層で生まれたが庶民の間で暮らしているから、平等に関する理念が心の中にできそうな人物だ。そのため、そのような感じを根底にしてテギルを演じる。そして、庶民になった後、テギルは生きていくために必死だった。喪中の家の喪主が泣いている途中でもお腹が空いたらご飯を食べるというのに、テギルは言うまでもないと思う。ほとんどの日々は食べていくことに精一杯だったはずだし、ある日は笑ったり昔話もしただろう。そのため、普段生活している彼と彼の精神的な部分を取り出して表現できたら、テギルならではの特徴が表れると思った。

―テギルならではの特徴って何だと思う?

チャン・ヒョク:たとえば、チョン・ジホは本当に残酷だ。チョン・ジホは人を殺した直後も泰然とした声で部下を呼ぶことができる。しかし、テギルは実力は彼より上だが、性格は彼とは違う。奴婢を捕らえるチュノ師だが、奴婢を助けたりもする。それは彼が優しいからというより、その日はただ気分がいいから、昔のことが思い浮かんだから、助けただけだ。もし、その日気分が悪かったら助けなかったかもしれない。チュノ師のイ・テギルの中に両班家の息子であったイ・テギルが残って、かろうじて野生のけだものにはならずにいる。どのような人物というようにコンセプトを決め付けるより、そのような人生の中で、状況の中で感情通りに動いている。

「テギルはいい人とか悪い人ではなく、ただ純粋な人だ」

―状況により、言葉遣いにも変化を与えているようだが、チュノ師同士で気軽に過ごす時はリズムに乗りながら話すように感じた。

チャン・ヒョク:それは監督と脚本家の先生に許可を得て試してみたことだ。テギルの雰囲気を生かせることができるなら、それが正解だと思ったから。テギルが両班家の息子であった時は間接話法を使った。父親が好きな女性がいるかと聞いたら「いないです。そんな人」と言いながら、心の中では父親が気づいてくれることを願うような話法である。
しかし、チュノ師のテギルは自分で話さなくては生きていけないから直接話法を使う。そんな中、彼に様々なことが起こって口論をすることも多い。その時、相手が重要なポイントを話す瞬間、その言葉を切って彼が話し出したら相手はそれ以上話せなくなり、相手を制圧することができる。そうするためには、リズムに乗って話す必要があると思った。
しかし、演技や話術より、気を使っている部分は目つきだ。テギルの目はいつも力が抜けている。重要なことではないと、視線も斜めにして対象を見る。そのように彼は普段、感情を隠して、節制して暮らしているから。

―その目つきがテギルが悲しく見える理由だと思う。夢や希望を諦めて、普段はぼーっとしながら生きて行こうと自分で決めた人のように見える。

チャン・ヒョク:その部分において、映画「ウサギとリザード」の出演経験がテギルを理解するのに役立った。その作品で僕が演じるキャラクターが希少病を持っていていきなり明日死んでもおかしくない人だったが、そのため、他の人はその人の考えを予測することができない。他の人はその人を不幸だと思っているけれど、本人はいつもそんな状況で生きてきたから昨日今日、明日も同じである。今日だけが存在して、世界に意味を付けることなんかしない。テギルも彼と同じだ。オンニョンを探すため、今日も出動して、明日も出動する。それがイ・テギルの純粋さだと思う。いい人とか悪い人ではなく、ただ純粋な人だ。

―それでなのか、テギルは妙に子どもっぽいところがある。仕事面では銃に撃たれたその短い瞬間にも正確に状況を判断するが、他の部分ではチェ将軍の方がおとなしい。

チャン・ヒョク:そうですね。仕事のうえでリーダーはテギルだが、精神的にはチェ将軍が引っ張っていく。そして、テギルがそんな性格を持つことで、チェ将軍やワンソンと一緒に1つのスペクトルでそれぞれの光の色を持つことができる。それぞれ違う姿を持つキャラクターが調和する感じが大事だ。そして、テギルを演じながら一番悲しかった時は、第1話でカン画伯が描いたオンニョンの絵を見るシーンだった。人相書を作らせるが、とりあえず10年前と同じ姿で描くように強く言う。オンニョンは10年前の彼女じゃないといけないし、自分が見た最後の姿でないといけないとテギルは思っているから。しかし、オンニョンを見つけたとしても、テギルはその後、どうすればいいか分からない。ただ、絵を見る瞬間だけは嬉しくなるから、その絵を持ち歩いて、古くなるとまた作らせる。このようにテギルは両班家の息子であったその時の記憶に捕らわれている部分がある。

―それでは、テギルはオンニョンを見つけ出せば、その次のステップを踏むことができるだろうか。今は、オンニョンと別れたその時から彼の人生が止まっているようだが。

チャン・ヒョク:それは少し違う。僕の立場から見たら、「チュノ~推奴~」はイ・テギルの成長ドラマだ。人間は大人になってからも成長するが、テギルの場合はそれがコミュニケーション方法での成長だと思う。テギルはまだ子どもっぽく、他人とコミュニケーションがうまくできない面がある。しかし、テハをはじめ、数多くの人々とコミュニケーションをとりながら少し変わっていると思う。僕は寂しい、悲しい、痛いなどの1つの感情ではなく、その全てが積もった感情で変わるんだ。だから、テギルが少しずつ変わっていると思う。

―そのように、キャラクターの内面に深く入り込むためには時代に関する分析が必ず必要だと思う。時代に関してはどんな準備をしたか。

チャン・ヒョク:以前、「大望」をやった時も、商人を演じるから、その時代の貨幣や行商人、京江商人(キョンガンサンイン:朝鮮時代、漢江を中心に活動し、繁盛した商人)のような内容を勉強したように、今回も基本的な内容の資料は見た。演技のアドリブをするにも、それらの内容を知っておかなければならない。そして、歴史的には中国の明から清に変わる時代で、そのため、社会は混乱していたに違いない。そんな中で、両班の立場からは自分の所有物である奴婢たちの逃亡が頻繁に起こるから、彼らを捕まえるチュノという職業ができた。チュノ師はその時代の一種の傭兵でありながら探偵でもある。足跡をたどり追って、必要な時は戦うから。
元記事配信日時 : 
記者 : 
カン・ミョンソク、写真:イ・ジニョク、編集:イ・ジヘ、翻訳:ナ・ウンジョン
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