チョ・ドクジェ「トラブルを起こす悪役のイメージ?もっと親近感を与える俳優になりたい」
俳優チョ・ドクジェ(46歳)。20年以上大学路(テハンノ)の演劇舞台でキャリアを積んだ後、これまでに約20本の商業映画に出演した。誰かに分かってもらえようが、もらえなかろうが、本当に真面目に自身の役割を忠実に演じてきた。その結実なのだろか?今、彼の演技に注目する映画ファンが増えている。
彼は強烈で鋭い眼差しが印象的である。そのため、彼が正確にどの映画に出演したのかを覚えていない人なら、ただ悪役を多く演じてきたのではないかと思うかもしれない。しかし実際、映画「チェイサー」「Go Go 70s」「亀、走る」「悪魔を見た」「ハロー!?ゴースト」では、刑事役を演じた。もちろん、お人よしの刑事ではなかったが。
「実は、悪役だと言えるようなキャラクターを演じたことはありません。(記者が「ビー・デビル」の話をすると)ああ、最初に助けてくれそうな感じで登場した警官でしたが、そのまま行ってしまいましたね。その他には、それほど悪役を演じたことはないのに、そんな印象があるみたいです。今出演しているチェ・ホ監督の映画「ビッグマッチ」(仮題)では、コミカルでホダン(しっかりしているように見えて抜けている人)のような悪役です。監督からも『チョ・ドクジェさんはノワール映画にふさわしい顔だ。強いイメージに似合う』と言われました。でも実際、僕は暖かい映画が好きなんです(笑)」
映画「折れた矢」では裁判官役に、映画「26年」では“あの人”の警護室長マ・サンヨル役に扮し、主人公たちと対立しながらも一歩も譲らなかった。チョ・ドクジェは「どうしてもこれまでに演じた役が主人公の味方ではなく、主人公と対立する役が多くてそう思われるようだ」とし「主人公の味方になってこそ、長く生き残れるはずなんだけどね……」と笑った。
「主人公と仲間だとしても優しい役ではありませんでした。表情や感じが柔らかい印象ではないので、僕が映画に出ると何かトラブルを起こすような感じを与えるようです。映画の中で何もせずにじっとしていても僕という存在が気になるようです」
そんな彼が最近では映画「野良犬たち」で本当に悪役を演じた。「野良犬たち」は2012年、全羅北道(チョルラブクド)茂朱(ムジュ)で実際に起きた事件であり、知的障害のある10代の少女に数年間にわたって性的暴行を加え続けた村の住民たちの実話を題材にした作品で、“茂朱版「トガニ 幼き瞳の告発」”だとして話題を集めた。この映画でチョ・ドクジェは鳥肌が立つような悪役を演じた。
「『野良犬たち』では本当の悪役を演じたと思います。実は、悪役は演技の面では引き出しを増やせるので演じる面白さがあるのですが、終わった後はあまり気持ちがよくありません。モニターをする時、画面に映る人物は僕ではなく、劇中のキャラクターとして見ますが、その人物がとても嫌です。『僕はそんな役はやらない』と思っているのに、その役をしているのが僕なんです。
実は、“悪役か、そうでないか”は関係なく、暖かくて人々を浄化してくれるメッセージが入っている映画が好きです。見終わった後に希望と力が出る映画のことです。ただ、『野良犬たち』はメッセージを伝えるよりも恥部を多く晒す映画だったので、もっと後味が悪かったと思います」
「私の両親は二人とも慶尚道(キョンサンド)出身です。でも8歳までは慶尚道に住んで、その後は父親の仕事の関係で全羅道(チョルラド)の田舎に行きました。その時にコミュニケーションがあまり上手くできませんでした。小学校の時に家庭通信欄を見ると、『まだ言葉が分からない』と書いてありました。おそらく新しい環境に適応するために本能的に環境に勝ってみようとした努力が結果的に外部にバリアを張ったのではないかと思います」
幼い頃を振り返っていたチョ・ドクジェは「喧嘩を吹っ掛けてくる人がいた時は、その学校で一番喧嘩の強い子と戦った。その子に勝てば他の子が喧嘩を吹っ掛けてくることはなかった」と話した。
子供の頃の夢は歌手だった。幼い頃から歌が好きで、高校時代にはギターを弾いて歌を歌いながら友達とグループも組んだという。「しかし、当時麗水(ヨス)ではそんな夢を叶える環境は整っていなかった」と彼は振り返った。
「そんな中、読んでとても印象的だった小説『太白山脈』が映画化されることとなり、そのオーディションが行われているという話を聞きました。僕は演技のレッスンを受けたこともなかったんですが、順天(スンチョン)を背景にした映画だったので方言を別に習う必要はありませんでした。それで何も考えずにソウルに来て、イム・グォンテク監督のもとを訪ねてオーディションを受けて初めて映画に出演することになりました」
映画「太白山脈」を皮切りに、彼の演技人生が始まった。その映画に出演してからは20年間近く演劇だけに出演した。演劇舞台では演技力があると好評された彼だったが、映画界に来て一番衝撃的な俳優を目撃した。それはソン・ガンホとイ・ビョンホンだった。ソン・ガンホとは映画「グエムル-漢江の怪物-」「殺人の追憶」「渇き」などで共演し、イ・ビョンホンとは映画「悪魔を見た」と「グッド・バッド・ウィアード」で息を合わせた。
「僕も演劇をしながら、他のことは何も知らなくても勤勉で真面目に頑張る俳優だと自負していました。しかし、映画『グッド・バッド・ウィアード』でソン・ガンホ先輩を見て、現場でものすごく集中し、現場に来るまでにどれだけ時間とエネルギーを沢山注いできたのかが見てとれました。『ああ、僕の努力なんてソン・ガンホ先輩と比べると10分の1にも満たないんだ』ということが分かりました。本当に一生懸命にしなければならないと思いました。ソン・ガンホ先輩を見ながら沢山反省しました。イ・ビョンホンさんも映画を準備する姿が巡礼者のようで、とても徹底していたのでびっくりしました。本当にもっと頑張らなきゃと思いました」
チョ・ドクジェの家族はまだ麗水に住んでいる。彼の母親は彼が出演した作品の中で「26年」が一番好きだと言った。彼は「地元を離れて映画の仕事をすることを両親がとても心配していましたが、『26年』ではそれでも顔がよく登場する役だったので『これからはもっと仕事が上手くいくかもしれないね』と言って喜んでくれた」と伝えた。「折れた矢」に出演した当時、裁判官の服を着た写真を送ったら「うちの息子が裁判官になった!」と喜んでくれたという話も伝えた。
無表情でじっとしていると怒っているように見えるかもしれないが、チョ・ドクジェは「知ってみると突飛でユーモラスな面が多い。鋭く見えるけれど、本当はホダンだ」ともう少し自身のことを親しみやすい人として見てほしいと話した。
「これからは面白い役も見せたいと思います。観客の皆さんにより一層親近感を感じてもらえる役にどんどん挑戦していきたいと思います。そして、演技面で観客に信頼を与える俳優になることが僕のやるべきことだと思います。より真面目に、より真剣に演じる面白い俳優チョ・ドクジェになります」
北朝鮮の残酷な人権について知らない人たちに積極的に知らせようとする意図が強いシナリオでした。僕は、元々リアリズムとリアリティが好きです。『神が送った人』は僕たちが関心を持たなければもっと疎外され、人権を失うしかない実際の人々の話を描いています。僕はクリスチャンではありませんが、そのような事実に目を背けることはできませんでした。
また、映画の構成でドラマチックな力もあったし、確かに情緒的に観客から共感を得られることができると思って、出演を決心しました。低予算なので肉体的に辛いことは分かっていましたが、良いことを伝えられるという俳優としての使命感のようなものがあって出演することになりました」
彼は強烈で鋭い眼差しが印象的である。そのため、彼が正確にどの映画に出演したのかを覚えていない人なら、ただ悪役を多く演じてきたのではないかと思うかもしれない。しかし実際、映画「チェイサー」「Go Go 70s」「亀、走る」「悪魔を見た」「ハロー!?ゴースト」では、刑事役を演じた。もちろん、お人よしの刑事ではなかったが。
「あまり悪役を演じたことはないのに…親近感を与える印象ではないようだ」
チョ・ドクジェを見て実に辟易したことはあった。それは、映画「ビー・デビル」でソ巡査部長役を演じたときだ。キム・ボンナム(ソ・ヨンヒ)が島に閉じ込められて夫と義弟と村人たちに酷くいじめられていることを何となく知りつつも、自身に必要なものだけを持って船に乗って島から抜け出し、絶望感を与えた。「実は、悪役だと言えるようなキャラクターを演じたことはありません。(記者が「ビー・デビル」の話をすると)ああ、最初に助けてくれそうな感じで登場した警官でしたが、そのまま行ってしまいましたね。その他には、それほど悪役を演じたことはないのに、そんな印象があるみたいです。今出演しているチェ・ホ監督の映画「ビッグマッチ」(仮題)では、コミカルでホダン(しっかりしているように見えて抜けている人)のような悪役です。監督からも『チョ・ドクジェさんはノワール映画にふさわしい顔だ。強いイメージに似合う』と言われました。でも実際、僕は暖かい映画が好きなんです(笑)」
映画「折れた矢」では裁判官役に、映画「26年」では“あの人”の警護室長マ・サンヨル役に扮し、主人公たちと対立しながらも一歩も譲らなかった。チョ・ドクジェは「どうしてもこれまでに演じた役が主人公の味方ではなく、主人公と対立する役が多くてそう思われるようだ」とし「主人公の味方になってこそ、長く生き残れるはずなんだけどね……」と笑った。
「主人公と仲間だとしても優しい役ではありませんでした。表情や感じが柔らかい印象ではないので、僕が映画に出ると何かトラブルを起こすような感じを与えるようです。映画の中で何もせずにじっとしていても僕という存在が気になるようです」
そんな彼が最近では映画「野良犬たち」で本当に悪役を演じた。「野良犬たち」は2012年、全羅北道(チョルラブクド)茂朱(ムジュ)で実際に起きた事件であり、知的障害のある10代の少女に数年間にわたって性的暴行を加え続けた村の住民たちの実話を題材にした作品で、“茂朱版「トガニ 幼き瞳の告発」”だとして話題を集めた。この映画でチョ・ドクジェは鳥肌が立つような悪役を演じた。
「『野良犬たち』では本当の悪役を演じたと思います。実は、悪役は演技の面では引き出しを増やせるので演じる面白さがあるのですが、終わった後はあまり気持ちがよくありません。モニターをする時、画面に映る人物は僕ではなく、劇中のキャラクターとして見ますが、その人物がとても嫌です。『僕はそんな役はやらない』と思っているのに、その役をしているのが僕なんです。
実は、“悪役か、そうでないか”は関係なく、暖かくて人々を浄化してくれるメッセージが入っている映画が好きです。見終わった後に希望と力が出る映画のことです。ただ、『野良犬たち』はメッセージを伝えるよりも恥部を多く晒す映画だったので、もっと後味が悪かったと思います」
演劇舞台ではベテラン…「映画界でソン・ガンホ、イ・ビョンホンを見て驚いた」
映画とは別に、日常で“人”としてのイメージはどうだろうか。実際に会ったチョ・ドクジェは強烈な眼差しと鋭い顎のラインの後ろに恥ずかしそうな笑顔を隠していた。しかし、その恥ずかしそうで暖かい笑顔をよく見せてくれなかった。「私の両親は二人とも慶尚道(キョンサンド)出身です。でも8歳までは慶尚道に住んで、その後は父親の仕事の関係で全羅道(チョルラド)の田舎に行きました。その時にコミュニケーションがあまり上手くできませんでした。小学校の時に家庭通信欄を見ると、『まだ言葉が分からない』と書いてありました。おそらく新しい環境に適応するために本能的に環境に勝ってみようとした努力が結果的に外部にバリアを張ったのではないかと思います」
幼い頃を振り返っていたチョ・ドクジェは「喧嘩を吹っ掛けてくる人がいた時は、その学校で一番喧嘩の強い子と戦った。その子に勝てば他の子が喧嘩を吹っ掛けてくることはなかった」と話した。
子供の頃の夢は歌手だった。幼い頃から歌が好きで、高校時代にはギターを弾いて歌を歌いながら友達とグループも組んだという。「しかし、当時麗水(ヨス)ではそんな夢を叶える環境は整っていなかった」と彼は振り返った。
「そんな中、読んでとても印象的だった小説『太白山脈』が映画化されることとなり、そのオーディションが行われているという話を聞きました。僕は演技のレッスンを受けたこともなかったんですが、順天(スンチョン)を背景にした映画だったので方言を別に習う必要はありませんでした。それで何も考えずにソウルに来て、イム・グォンテク監督のもとを訪ねてオーディションを受けて初めて映画に出演することになりました」
映画「太白山脈」を皮切りに、彼の演技人生が始まった。その映画に出演してからは20年間近く演劇だけに出演した。演劇舞台では演技力があると好評された彼だったが、映画界に来て一番衝撃的な俳優を目撃した。それはソン・ガンホとイ・ビョンホンだった。ソン・ガンホとは映画「グエムル-漢江の怪物-」「殺人の追憶」「渇き」などで共演し、イ・ビョンホンとは映画「悪魔を見た」と「グッド・バッド・ウィアード」で息を合わせた。
「僕も演劇をしながら、他のことは何も知らなくても勤勉で真面目に頑張る俳優だと自負していました。しかし、映画『グッド・バッド・ウィアード』でソン・ガンホ先輩を見て、現場でものすごく集中し、現場に来るまでにどれだけ時間とエネルギーを沢山注いできたのかが見てとれました。『ああ、僕の努力なんてソン・ガンホ先輩と比べると10分の1にも満たないんだ』ということが分かりました。本当に一生懸命にしなければならないと思いました。ソン・ガンホ先輩を見ながら沢山反省しました。イ・ビョンホンさんも映画を準備する姿が巡礼者のようで、とても徹底していたのでびっくりしました。本当にもっと頑張らなきゃと思いました」
チョ・ドクジェの家族はまだ麗水に住んでいる。彼の母親は彼が出演した作品の中で「26年」が一番好きだと言った。彼は「地元を離れて映画の仕事をすることを両親がとても心配していましたが、『26年』ではそれでも顔がよく登場する役だったので『これからはもっと仕事が上手くいくかもしれないね』と言って喜んでくれた」と伝えた。「折れた矢」に出演した当時、裁判官の服を着た写真を送ったら「うちの息子が裁判官になった!」と喜んでくれたという話も伝えた。
無表情でじっとしていると怒っているように見えるかもしれないが、チョ・ドクジェは「知ってみると突飛でユーモラスな面が多い。鋭く見えるけれど、本当はホダンだ」ともう少し自身のことを親しみやすい人として見てほしいと話した。
「これからは面白い役も見せたいと思います。観客の皆さんにより一層親近感を感じてもらえる役にどんどん挑戦していきたいと思います。そして、演技面で観客に信頼を与える俳優になることが僕のやるべきことだと思います。より真面目に、より真剣に演じる面白い俳優チョ・ドクジェになります」
映画「神が送った人」…現実的な北朝鮮の軍人パク・チョンシク役
「最近、韓国では北朝鮮を題材にした映画がたくさん作られていますが、北朝鮮の実状を知らせるよりも商業的に映画をより面白くするための素材として利用されている部分もあると思います。しかし、『神が送った人』は本当に実態を告発するように描かれていました。北朝鮮の残酷な人権について知らない人たちに積極的に知らせようとする意図が強いシナリオでした。僕は、元々リアリズムとリアリティが好きです。『神が送った人』は僕たちが関心を持たなければもっと疎外され、人権を失うしかない実際の人々の話を描いています。僕はクリスチャンではありませんが、そのような事実に目を背けることはできませんでした。
また、映画の構成でドラマチックな力もあったし、確かに情緒的に観客から共感を得られることができると思って、出演を決心しました。低予算なので肉体的に辛いことは分かっていましたが、良いことを伝えられるという俳優としての使命感のようなものがあって出演することになりました」
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- イ・ジョンミン、チョ・ギョンイ、写真 : イ・ジョンミン
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