「黄金の虹」チョン・イル“ドラマで父親と対峙した時、涙が止まらずNGが続きました”
家族とはどんな状況でも頼れる心強い味方であるが、不幸な運命を持って生まれた者にとって、家族は逃れることのできないしがらみであったりする。そして後者は家族とは何なのか、疑問を抱くようになる。愛すべき人を愛することができない苦痛の方が大きいのか、それとも愛する人を受け入れられない心の影の方が大きいのか。
4ヶ月間俳優チョン・イルが演じてきたキャラクター、MBC週末ドラマ「黄金の虹」のソ・ドヨンも同様の悩みに苦しんでいた。“悪の枢軸”同然の父親ソ・ジンギ(チョ・ミンギ)が犯した罪の重さに押し潰され生きてきたソ・ドヨン。普通の人間には当たり前のことが、彼にとっては乗り越えなければならない課題だった。愛する女性と一緒になることすら決して掴めない蜃気楼のように不可能なことであった。そんな影のある人生を生きていたソ・ドヨンが最終的に極端な選択をせざるを得なかったのは、もしかすると予想された結果だったのかもしれない。自分の頭に銃を向けた残酷な運命を生きたチョン・イルに会った。
チョン・イルはインタビューに参加した記者全員に花束を渡し、春を告げた。受け取った人たちもとても嬉しかったと思うが、それを渡したチョン・イルにとっても一種の癒しになったはずだ。彼はそのように少しずつソ・ドヨンからチョン・イル自身に戻ろうと努力していた。しかし、チョン・イルの視線がしばらくの間記者が持ってきたロマン・ガリーの小説「白い犬」に留まっていた時、依然としてまだ残っているソ・ドヨンの影を感じた。ソ・ドヨンのようにロマン・ガリーが拳銃自殺を図ったことを聞いた瞬間、彼の瞳がこの上なく輝いていたからだ。
チョン・イル:そうですね。共感します(本の表紙をしばらく見つめた後)。ですが、ロマン・ガリーも俳優のように見えますね、映画「ゴッドファーザー」を連想させる顔です。
―ロマン・ガリーが哀れんだジーン・セバーグを通じても分かりますが、スターという肩書きだけがその人のあらゆる面を説明してくれるわけではないと思います。あるスターは外に出ると常に沸き起こる大歓声から逃れ、本当の自分を取り戻す時間を設けるために努力していると聞きました。チョン・イルさんの場合はどうですか?
チョン・イル:僕は子供の頃から親しい友人に会うと本当の自分に戻れます。中学校の時の友人です。作品に入ると忙しくなるので頻繁に会うことはできないですが、普段から週に1度は必ず会っています。その友人と一緒にいると子供の頃の自分を再び呼び戻すことができます。俳優チョン・イルではなく、人間チョン・イルに戻れる時間です。家族といる時も同様です。
―「黄金の虹」が終わってからご友人と釜山(プサン)旅行に行ったとお聞きしました。先程話した友人とは彼らのことですか?
チョン・イル:そうです。釜山まで車を運転して行ってきました。2泊3日の短い日程でしたし特別なことはしていませんが、確実にストレス解消になりました。僕は作品が終わるとプライベートな時間に徹するタイプです。仕事から離れて個人的な時間を過ごします。その時は本を読んだり、旅行に行ったり、色んな計画を立てます。作品に入り込んで乱れてしまった僕だけの時間の流れを再び整える時間です。昨年はその時間を使って英語の勉強をしました。おかげで漢陽(ハニャン)大学も卒業することができました(笑)
―TOEICの勉強をされたのですか?
チョン・イル:そうです。2週間、24時間運営されている学校の法学部の図書館にこもって英語の勉強だけをしました。文法を中心に勉強しましたが、そのためか文法はほぼ正解することができました。そうするうちに無事に卒業証書を手にすることができ、胸がいっぱいになりました。何よりも母がとても喜んでくれました。
―大学の卒業証書を必ず必要としないスターの場合、卒業にあまり拘らない人も多い中で学業をきちんとやり遂げるなんて、密かに模範生のような面もあるようですね。
チョン・イル:逸脱する時はします(笑) ですが10年ぶりに勉強してみると、勉強がとても面白かったのです。本当は卒業できないだろうと思っていました。
―外国語の勉強をしながら海外活動を考えたことはないのですか?最近では韓国の俳優たちがハリウッド映画に出演することも珍しくなく、中国市場への進出はまるで当たり前のように考えられていますが。
チョン・イル:僕ももちろん海外市場に興味がありますし、海外でのファンミーティングも計画していますが、海外で外国語で演じることについては少し慎重です。セリフは正確に表現することが重要ですが、それを外国人である僕が適切に表現できるか心配だからです。ですが、確かに外国人のファンに会うと、もう少し責任感を持とうと思うようになります。それに僕の家族は中国と縁があり、中国は常に関心を持っている国でもあります。
―つい最近終わった作品について話をしましょう。実はチョン・イルさんが「黄金の虹」に出演すると聞いた時、“意外だ”と思いました。トレンディーな雰囲気のスターが週末ドラマに出演するなんて、変化の兆しなのかとも考えました。
チョン・イル:長編ドラマの作品に出演してみたかったのです。ジャンルに捉われるのは良くないという考えもありました。これからは様々な経験が必要だと思っていましたし、僕はまだ若いので実力を磨かなければならないとも思っていました。そんな思いで出演した作品が「黄金の虹」でした。結果的にその4ヶ月の間にたくさんのことを感じました。先輩たちにたくさん助けられ、こんなに長い作品に主人公として参加してドラマを牽引したということが僕にとって大きな意味を持つようになりました。そのおかげで心に少し余裕もできました。
―ドラマの長さもそうですが、ソ・ドヨンというキャラクター自体も演じるのが容易ではなかったと思います。
チョン・イル:だから監督や脚本家とたくさん話し合い、台本も何度も読みました。僕はキャラクターを分析する時、シナリオを完璧に理解した上で頭の中でシミュレーションする方法でイメージトレーニングをします。細かい手の動きや表情の変化も予め計算するタイプです。ですが、現場に行くと変わることも多いので、常に心を開いておく必要があります。とは言っても実際にはこんなことは撮影序盤だけ必要なことで、役やストーリーに入り込んでしまえば事前に準備する必要はなくなります。
―父親を憎む息子という役を頭で理解できても、その痛みまで共感することはできましたか?
チョン・イル:大変でした。血の繋がった唯一の家族であり愛する父親なのに、そんな父親の悪事を阻止するために刑務所に入れなくてはならない状況を受け入れるのが辛かったです。だから父に「僕も父さんをかばった罪があるから、一緒に刑務所に行く」というセリフを言う時は、あまりにも涙がたくさん溢れてきてNGが続きました。そして、ソ・ドヨンを演じながら家庭環境がどれほど重要なのか改めて気づかされました。幼い頃から確執のある家庭で育つと、それが必ず性格に表れるようになると思います。
―そうですね。親を嫌う子供が大人になると、結局その親に似るとよく言いますよね。ですが、あえて極端だったり否定的な事例を挙げなくても、子供が親に似ることは当然のことです。チョン・イルさんの場合、父親との共通点は何ですか?
チョン・イル:父は社会生活を活発に行っているためか、家では無口な方です。食事をする時もそうです。だから母は面白くないだろうなと思います。ところが今、僕も正にそうなのです。
―では母親がさらに退屈になってしまいますね。
チョン・イル:そうです。ですが母親と外でデートしたりもします。でもやはり家ではたくさん話す方ではありません。外で非常にたくさんの人に会う職業なので、家ではありのままの自分に戻るみたいです。
―母親とデートだなんて優しい息子ですね。でも本当の恋愛もしなければならないでしょう。今回のドラマではAFTERSCHOOLのユイさんと韓国版「ロミオとジュリエット」を演じましたが、代償行動になりましたか?
チョン・イル:ドラマの中の恋愛が代償行動になることはないです。ドラマの役を自分の生活に介入させないからです。
―この間、MBC「無限に挑戦」に出演して話題になりました。「無限に挑戦」のメンバーたちの間でほぼ“メンタル崩壊”の状態になったチョン・イルさんを見ることができて面白かったです。
チョン・イル:あの時は本当に顔にそのまま出てしまいました(笑) 完全にメンタルが崩壊していました。でも楽しかったです。撮影という感じではなく、お喋りをするような感じでした。
―今までバラエティ番組にあまり出演していませんでしたが、「無限に挑戦」に出演した理由は何ですか?
チョン・イル:やはり応援団の話でしょうか。サッカーの大ファンなのでワールドカップが開催されるブラジルにとても行きたいと思っていました。実はワールドカップの試合を実際に見たことがまだありません。だから僕にとって夢のような話ですし、ちょうど作品も終わったのでタイミングもぴったり合いました。
―それでは、今後バラエティ番組でもチョン・イルさんをよく見ることができるのでしょうか?
チョン・イル:バラエティ番組の出演は恐らく「無限に挑戦」だけで満足すると思います。たまにはバラエティ番組に出演するかもしれませんが、やはり僕は良い作品で皆さんにお会いしたいです。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- ペ・ソニョン、翻訳 : チェ・ユンジョン、ナ・ウンジョン
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