江國香織「『密会』のシナリオを読んで、韓国の作品も是非見てみたいと思った」
「作家は職業というよりも一つの“性質”であると思います」
日本を代表する感性的な作家江國香織(50歳)が韓国を訪問した。22日、ソウル東大門(トンデムン)デザインプラザ(DDP)で開かれた「ソウルデジタルフォーラム2014」(SDF2014)に出席するため訪韓した江國香織は、韓国の放送作家たちと交流するプログラム「韓国放送作家マスタークラス」で30年間の作家人生について語ってくれた。自らを“運が良い作家”と評し、「保守的な性格だけれど、常に新しい試みにチャレンジしようと努めている」と話す彼女は、小説の中の繊細な筆致のように少女らしい感性がにじみ出ていた。
江國香織:実は読者がどのように受けとめているのか考えたことがない。おそらく、読者のターゲットを設定せずに小説を書いているからだと思う。日本人や韓国人、女性、全世界の人など、特に読者のターゲットを設定していない。小説を書く時はその作品のことだけを考えているので愛されているのではないでしょうか。
―あなたの小説は特に映画化される作品が多い。特別な理由があるのだろうか?
江國香織:理由があるとしたら、おそらくその作品がたくさん売れたからではないでしょうか。私は作家なので言語でしか表現できないものを作っているけれど、映像を作る人たちは彼らなりに映像でしか表現できないものに変換しようとしているからだと思う。
―社会的マイノリティや疎外されている人たちに焦点を当てた作品が多いが、特別な理由はあるのか?今後もそのような視点で創作活動を続けるのか?
江國香織:普段からよくそのような指摘を受ける。私はそのことを意識していないし、そうやって意識せずに小説を書いているので今後もそのような小説を書くと思う。小説を書く時、社会的マイノリティは意識していないけれど、子供の視点で世界を見ていると考え、その観点で見ているのでマイノリティに偏る傾向があるようだ。私が子供の視点で社会を見たいと思うのは“子供は多くの情報に振り回されない”からだ。子供たちは世の中に溢れている情報を持っていないのでぶれることがない。そのためこのような観点を持って小説を書いている。以上のような理由から社会的マイノリティが登場することが多いのだと思う。
―作品が映画化される時、シナリオ制作にも関与する方なのか?
江國香織:映画化する時は全く関与しないし、何も意見を言わない。先ほど話したように私は言語でしか表現できないので、映像も映画を作る専門家たちが映像でしか表現できないものを作る。だから原作を変えても問題ないと思っている。原作を変える方が良い場合は全く関与しない。制作に直接介入することもない。
―作家としての社会的役割について聞きたい。日本も社会的に多くの問題を抱えていて、芸術家や作家たちが社会問題について声をあげることもあるが、自身はどう思っているのか?
江國香織:おっしゃる通り、色んな作家がいると思う。それに、色んなタイプの作家がいることが正しいと思っている。私は詩、エッセイ、小説などを書いているけれど、文章を書くこと以外は発言したくない。書いた文章だけを通してのみ反応を得たいだけで、直接はメッセージを伝えたくない。メッセージを直接発信することで、そのメッセージの正否とは関係なく、それが一つの情報になる。情報というのはその時には価値があるけれど、時間が経つとその価値を失われてしまうので、ストーリーに加工して自分の考えを伝えたい。
―韓国では2000年代の初めに「冷静と情熱のあいだ」、2004年「間宮兄弟」が映画化された。映画を見たことはあるのか。見た後、手が加えられた原作に対して反応する方なのか?
江國香織:韓国映画は見ていないけれど、日本で映画化された作品を見て驚いたことがある。失望する時もある。失望と言うより、どの部分で失望したかを言及することは難しい。嬉しかったことは「スイートリトルライズ」という作品で、小説で描こうとしたことを小説で表現した以上に美しく映像化してくれてとても嬉しかった。「きらきらひかる」も同じ感じだった。韓国映画を見たことはないけれど、韓国でドラマ化されるところだった「東京タワー」を原作にした「密会」のシナリオを見て読んでみた。原作とは全く異なる設定、ピアノ教師と生徒という設定だったけれど、設定を変えたことは全く問題ないと思う。読んでいるうちに次のストーリーが気になり、韓国で作られた作品も是非見てみたいと思った。
―共同作業で小説を書いたりもする江國さんは、基本的に保守的な作品を書いているように見えるが、新しいことも追求しているようだ。創作家、芸術家として創作のアイディアやインスピレーションを受けるものはあるのか?
江國香織:難しい質問だ。保守的でありながら新たな試みをしているという評価は嬉しい。私の性格は保守的で臆病なところがある。だから、できるだけ消極的にならずに新しい試みをしようと努めている。共同で作品を作ったり子供が書いた文体で恋愛小説を書くなど、まだ他の人が試していない方法にも挑戦した。原動力は自分自身の性質にあると思う。“作家”と“クリエーター”は職業でもあるけれど、一つの性質でもある。それが私が作家として成功することができた理由だ。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- チャン・ソユン、写真提供 : SBS
topics