韓国におけるBLドラマ市場の今・未来とは?heavenly チャン・ジヘ理事が日本やタイの現状も紹介
写真=「僕らの恋愛シミュレーション」スチールカット
地上波にケーブル、総合編成チャンネル、そしてOTT(動画配信サービス)まで、文字通り“コンテンツの洪水”である2023年現在。ジャンル、長さ、形もそれぞれの「好みの時代」に私たちは生きている。消費者の好みは多様化し、細分化した。そんな中、これまで日が当たらず、陰となっていたジャンルのコンテンツも大型プラットフォームに成長するなど、大衆化が加速している。新人俳優だけでなく、すでに大衆によく知られたチャ・ソウォン、B1A4のゴンチャンのような人気俳優やアイドルもBLドラマに挑戦するなど、BLジャンルに対する敷居はここ数年で低くなった。昨年、タイの人気ドラマ「Cutie Pie」の主人公プルック・パーニ、チャワリン・プラーッピリヤウォンらが記者懇談会が韓国で開かれた。「Cutie Pie」はタイはもちろんアジア全域で大人気を博したBL(Boys Love)ジャンルの作品だ。
今回は、BLコンテンツプラットフォーム、heavenlyのチャン・ジヘ理事にBL市場について話を聞いた。誰かはずっと前から楽しんでいるが、また誰かにはまだ慣れ親しんだものではないBLジャンルについて、そして過去3年間で急速に成長したBLドラマ市場の現在と未来を尋ねた。
――主な消費層はどのような人たちですか?
チャン・ジヘ理事:20~40代の女性、その中でもコンテンツを楽しむ方たちです。BOMTOON、カカオページ、RIDIBOOKSなど主要プラットフォームでも普遍的に人気のあるジャンルです。heavenlyはBLジャンル自体を専門に、ウェブ漫画、ドラマ、オーディオドラマなど、多様な形態のコンテンツを提供しています。最近では小説から多様なメディアにコンテンツが拡大し、様々なファン層の反応を見ることができるようになりました。
写真=「スターストラック」スチールカット
――韓国でBLジャンルはいつから消費されるようになったのですか?チャン・ジヘ理事:BLジャンル自体は1970年代、日本で漫画から始まり、その後小説などで拡張されました。韓国ではウェブ小説が出てきて、アイドルファンダム文化が形成された1990年代からコミュニティ中心に発展してきました。主に女性たちのファンタジー性ロマンスをコミュニティ中心に発展させたストーリーラインなので、誰でも共感できるクリシェ的要素が多いのがこのジャンルの特徴です。一般的なコンテンツの中では、法律、スリラー、ファンタジーなどジャンル物が多くなる傾向があり、それに比べてロマンス物は相対的に減っていきました。それがBLが注目される理由でもあります。ロマンスの典型的なストーリーラインが詰まっていますから。
――韓国国内でBLドラマ市場が形成されたのは最近です。特別なきっかけがあったのでしょうか?
チャン・ジヘ理事:韓国でBLドラマはタイ、台湾の作品の人気と共に少数コミュニティで広がり始め、2020年に初のBLウェブドラマが出てきてブームが始まりました。heavenlyの前身であるアプリW-storyで初めて「君の視線が止まる先に」を扱い始めましたが、当時韓国ではこのジャンルに慣れ親しんでいなかったため、流通できるプラットフォームが限定的だったんです。そこでアーモンドカンパニーと「君の視線が止まる先に」をサービスするアプリを作りました。その後口コミにより、ウェブドラマ制作会社が関心を持ち始めました。そして数多くのBLドラマが制作されたのです。ますますBLドラマのクオリティが高くなり、WATCHAの「セマンティックエラー」が大きな人気を集めました。おかげで大衆的にもBLジャンルがたくさん紹介されるようになりました。
――他国のBL市場の状況はどうですか?
チャン・ジヘ理事:日本では漫画、小説、ドラマ、オーディオドラマなど、全てのジャンルでBLはサブではなく、主流です。また映像の方はタイが強いです。文化的包容力も大きいですし、体系的な制作システムを備えているので、良い俳優をキャスティングでき、作品を制作し、関連イベントも可能な環境があります。韓国は今速いスピードで発展している状況です。heavenlyが統合的な役割を務めながら、制作会社とファンを繋いでいます。
写真=heavenly
――BL市場ではあっという間に競争が激化しました。バブルなのではないでしょうか?チャン・ジヘ理事:「BLは成功する」と言われてわずか3、4年の間に市場がいきなり大きくなり、雨後の筍のようにドラマが制作されているのは事実です。多くの場合はショートフォームであるだけに、蓋然性が欠如しているBLドラマも多いです。消費層の見る目が高くなっているだけに、ストーリーや俳優の演技、演出の面でクオリティが落ちれば自然と淘汰され、良質のコンテンツだけが残ると思います。カカオページやNAVERシリーズ、RIDIBOOKSなどのプラットフォームで、BLジャンルのウェブ小説、ウェブ漫画の消費者は着実に成長しています。BLドラマも今の過程を経て玉石がわかり、着実に成長する時が来ると思います。
――大衆的なジャンルではないという視覚は相変わらずあると思いますが、その点はいかがでしょうか?
チャン・ジヘ理事:BL専用プラットホームであるheavenlyは、この分野で専門性を備えており、それに基づいて作品をキュレーションし、ユーザーに会っています。総合OTTプラットホームで(BLが)人気コンテンツとして浮上すると、まだ見慣れないという反応を見せる方々もいます。ですが、サブカルチャー自体が問題になるとは思いません。文化の多様性の側面において寄与すると考えています。新人俳優の登竜門でもありますし、長編監督、作家へと進む過程でウェブドラマより多くのユーザーを集めるBLジャンルは内容を離れても、多くの意味を持つと思います。大型OTTプラットホームでもBLコンテンツサービスが増えているだけに、一つの趣向であり、文化として位置づけられると思います。
――性的少数者がBLコンテンツをどのように見ているのか気になります。女性向けとして単純に消費されることに反感はありませんか?
チャン・ジヘ理事:BLは文化の多様性を応援するジャンルです。ロマンスのストーリーを志向しており、同性でも異性でも関係はありません。このような側面から、LGBTQコンテンツを愛する方々から多くの支持を得ています。
写真=「Cutie Pie」スチールカット
――期待している作品はありますか?チャン・ジヘ理事:韓国の作品では俳優たちの爽やかさが際立つ「僕らの恋愛シミュレーション」、人気ウェブ小説が原作の「スターストラック」が大きな人気を博すと思います。またタイのBLスターたちが出演する「Cutie Pie 2 You」、昨年の作品ではありますが、初めて公式に翻訳されてサービス中の「Love in The Air」も韓国ファンが待ち望んでいた作品です。
――BLドラマ市場の今後の見通しを教えてください。
チャン・ジヘ理事:原作となるウェブ小説、ウェブ漫画は日増しに多様になり、クオリティも高くなっています。これに合わせて、BLドラマ制作を始める制作会社もますます専門化されています。クオリティが高く、ヒットするBLドラマが出てくれば、投資も活性化されるでしょう。heavenlyはユーザーにどうすればこれをうまく紹介できるか悩んでいる段階です。昨年本格的なサービスを開始して、今年のユーザーはすでに30万人を超え、売上は2022年1年間の売り上げを今年は3ヶ月で50%達成しました。ものすごい上昇曲線で成長していることを意味します。
――BLに対して偏見を持っている方々に伝えたいことはありますか?
チャン・ジヘ理事:2つの側面を申し上げたいと思います。1つ目は、文化の多様性が尊重されてほしいということです。誰かに有害だったり、害を与えるものではないじゃないですか。合法的なコンテンツを楽しむ趣向は尊重されるべきです。2つ目は、BLは愛に関する物語です。暴力的でもなく、刺激的な関心を引こうともしていません。ロマンスの本質、それ自体に対する感性を共有する人々が楽しむ文化なので、一つのジャンルとして認めてもらいたいです。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- パク・ソリ
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