「死体が帰ってきた」イ・ボムス“観客が1人だとしても、恥ずかしくない”
実績というものは、イ・ボムスには意味がない。線の太い演技でこれまで愛されてきた彼が、今回は全身の力を抜き、一からスタートした。人物の選択を問う質問に、“あえて”という表現を付けた理由も、彼の演技の経歴からして、有意義な課題だったからだ。映画「死体が帰ってきた」の研究員ペク・ヒョンチョルという服は、イ・ボムスが着るにはそのくらい地味に見えた。
「『サラリーマン楚漢志』でユ・バンを演じた僕が、リュ・スンボムさんを見ながらウズウズしないわけがないんです。誰に強いられたわけでもないのに、実験と検証をしたかったんです。地味なキャラクターで、どうやって存在感を発揮するかと。僕が個性豊かな演技ができないからやらないわけではないことを、キム・オクビンさんも、リュ・スンボムさんもよく知っているので、お互い信じて楽にやったんです」
彼は、今回の演技について語るときに、“成長”という表現を使った。成長…演技を始めて23年目を迎える俳優にはいささか似合わない単語だったが、イ・ボムスは、「これでまた成長したようだ」と言う。イ・ボムスにとっては、俳優が自分のキャラクターを忘れて飛びつく姿は、子供っぽく映ると言う。
「いつも新しいスタートラインに立っている気がします。いわゆるスターとか、経歴を積みながら生まれる実績に頼らないようにしています。身ひとつでスタートラインに立って、自分の五感と感性を信じて最善を尽くすしかありません。演技を初めて習ったときから、そのように学びました。無名のときも、有名になったときも、この瞬間を楽しむのは自分にとっての財産です。頼れるところがあって調子に乗るのではなく、同じスタートラインで楽しむこと自体が、今まで僕が演技する意味があるように思えた背景だと思います」
もうひとつの秘訣は、もしかして結婚して子供が生まれたことだろうか。彼は妻のイ・ユンジンさんとの間にひとり娘がいる。最近娘は1歳になった。若くない歳に生まれた娘は、イ・ボムスにとっては演技を続けさせる重要な理由に成り得るように思われた。
「結婚して、妻に言ったんです。『僕、野性味を失っているみたいだ』と。ギラギラする猛獣の目を失っているのではないか、人としてゆるんでしまうのではないかと話したことがあります。それは、自らゆるむことを警戒しているからです。その理由は後でわかりました。そのとき、これだと思って拍手までしました(笑)
人生を舞台から見たとき、結婚してから俳優として感性がさらに豊かになったんです。ドラマや映画の撮影で、しっとりした感性を表現することが、自分が思うよりもうまくできるようになって、考えてみると結婚をして子供が生まれて、家族ができたからでした。娘を見ながら、自分の両親のことを考えたりします。1歳の僕をみて、こいつ、ちゃんと育てないと、と思ったことでしょう。
そうやってかつて幼い僕を励ましてくれた両親が、今は年老いた老人になっていて、若かった両親の姿と、老いたの両親の姿が混ざって、微妙な気持ちになります。これは、演技の本を千冊読んでもわからないことでしょう」
「現場はもちろんおもしろかったです。また警戒しなければならないのは、気持ちがゆるむことがあることです。現場がおもしろいのも、客観的でなければなりません。映画の雰囲気をよく生かしているのか、ただ知り合いが多くて一緒に騒ぐのがおもしろいのか、そこをはき違えてはならないと思います。
『サラリーマン楚漢志』もそうでしたし、『死体が帰ってきた』もそうです。いいチームワークというのは呼吸がよく合うことですが、それが決まりきった、旧態依然(変化や進歩のないさま)であってはいけないんです。いいチームワークとは、公私をわきまえず、だらだらするのではなく、担当した分野で最善を尽くして、積極的に意見を出して、新しいものに向かって一緒に考えて悩むことです。現場がそうだったので、ドラマへの反応もよかったのだと思います」
映画「死体が帰ってきた」の現場の雰囲気をイ・ボムスは、「決してゆるんでいない、いいチームワークだったので、自ら胸を張れます」と言った。「全国で観客がたったの1人だけになったとしても、決して恥ずかしくありません」と話す姿から、映画に対する愛情がたっぷり感じられた。「それはそうだとして、この映画、ハリウッドでリメイクの話こないですかね」と特有の忠清道(チュンチョンド)訛りでふざける姿は、ファンへのサービスとして明かしておこう。
ベテランの役者とはいえ、イ・ボムス、彼は明らかに成長しつつあった。また、彼は真のスターとは何か、ということについてよく知っているようだった。まるで自動車メーカーが、適宜新車を発表するように、彼はそのように自分をたゆまず成長させていた。
「言ってしまいますと、スターというのは1シーズンのイベントの素材ではないと思います。あえて言うと、職人マインドのような感じ?これまでも、これからもその仕事をしっかりとやっていけそうな、その信頼こそが、称賛に値すると思います。
キム・ユンシクさんとチェ・ミンシクさんが拍手を受ける理由は、彼らが単にヒットした作品の俳優だからではなく、俳優の責任感を持って職人マインドで毎回新しい挑戦に取り組んでいるからです。観客に信頼を与えるんです。そんな俳優が多くなるほど、韓国の人々は幸せになると思います。信じて選択できる俳優が多いということは、韓国の映画にとってもいい影響となりますし。自分もやはり、そういう俳優でありたいです」
「『サラリーマン楚漢志』でユ・バンを演じた僕が、リュ・スンボムさんを見ながらウズウズしないわけがないんです。誰に強いられたわけでもないのに、実験と検証をしたかったんです。地味なキャラクターで、どうやって存在感を発揮するかと。僕が個性豊かな演技ができないからやらないわけではないことを、キム・オクビンさんも、リュ・スンボムさんもよく知っているので、お互い信じて楽にやったんです」
彼は、今回の演技について語るときに、“成長”という表現を使った。成長…演技を始めて23年目を迎える俳優にはいささか似合わない単語だったが、イ・ボムスは、「これでまた成長したようだ」と言う。イ・ボムスにとっては、俳優が自分のキャラクターを忘れて飛びつく姿は、子供っぽく映ると言う。
「何かを信じ、頼り、調子に乗らないように」
まるで新人俳優に会ったような雰囲気だった。それだけ、既製品ではない、フレッシュな感じがした。テレビドラマであれ、映画であれ、演技を始めて以来、彼はほとんどブランクがない。毎年どの作品であれ、欠かすことなくやってきた。言葉とおり、“頑固な堅実さ”だった。「いつも新しいスタートラインに立っている気がします。いわゆるスターとか、経歴を積みながら生まれる実績に頼らないようにしています。身ひとつでスタートラインに立って、自分の五感と感性を信じて最善を尽くすしかありません。演技を初めて習ったときから、そのように学びました。無名のときも、有名になったときも、この瞬間を楽しむのは自分にとっての財産です。頼れるところがあって調子に乗るのではなく、同じスタートラインで楽しむこと自体が、今まで僕が演技する意味があるように思えた背景だと思います」
もうひとつの秘訣は、もしかして結婚して子供が生まれたことだろうか。彼は妻のイ・ユンジンさんとの間にひとり娘がいる。最近娘は1歳になった。若くない歳に生まれた娘は、イ・ボムスにとっては演技を続けさせる重要な理由に成り得るように思われた。
「結婚して、妻に言ったんです。『僕、野性味を失っているみたいだ』と。ギラギラする猛獣の目を失っているのではないか、人としてゆるんでしまうのではないかと話したことがあります。それは、自らゆるむことを警戒しているからです。その理由は後でわかりました。そのとき、これだと思って拍手までしました(笑)
人生を舞台から見たとき、結婚してから俳優として感性がさらに豊かになったんです。ドラマや映画の撮影で、しっとりした感性を表現することが、自分が思うよりもうまくできるようになって、考えてみると結婚をして子供が生まれて、家族ができたからでした。娘を見ながら、自分の両親のことを考えたりします。1歳の僕をみて、こいつ、ちゃんと育てないと、と思ったことでしょう。
そうやってかつて幼い僕を励ましてくれた両親が、今は年老いた老人になっていて、若かった両親の姿と、老いたの両親の姿が混ざって、微妙な気持ちになります。これは、演技の本を千冊読んでもわからないことでしょう」
コミカルとゆるさの妙な境界…「旧態依然を楽しむようになってはいけない!」
前述の言葉でもわかるように、イ・ボムスはなかなか自分に寛大になれない。他人の演技にはやみくもにアドバイスをしないなど配慮しながらも、自分の内面は見据え続けているという。同時に、彼は俳優同士のチームワークを重視する。イ・ボムスのいる現場が、自然と、阿吽の呼吸になった理由がここにあった。「現場はもちろんおもしろかったです。また警戒しなければならないのは、気持ちがゆるむことがあることです。現場がおもしろいのも、客観的でなければなりません。映画の雰囲気をよく生かしているのか、ただ知り合いが多くて一緒に騒ぐのがおもしろいのか、そこをはき違えてはならないと思います。
『サラリーマン楚漢志』もそうでしたし、『死体が帰ってきた』もそうです。いいチームワークというのは呼吸がよく合うことですが、それが決まりきった、旧態依然(変化や進歩のないさま)であってはいけないんです。いいチームワークとは、公私をわきまえず、だらだらするのではなく、担当した分野で最善を尽くして、積極的に意見を出して、新しいものに向かって一緒に考えて悩むことです。現場がそうだったので、ドラマへの反応もよかったのだと思います」
映画「死体が帰ってきた」の現場の雰囲気をイ・ボムスは、「決してゆるんでいない、いいチームワークだったので、自ら胸を張れます」と言った。「全国で観客がたったの1人だけになったとしても、決して恥ずかしくありません」と話す姿から、映画に対する愛情がたっぷり感じられた。「それはそうだとして、この映画、ハリウッドでリメイクの話こないですかね」と特有の忠清道(チュンチョンド)訛りでふざける姿は、ファンへのサービスとして明かしておこう。
ベテランの役者とはいえ、イ・ボムス、彼は明らかに成長しつつあった。また、彼は真のスターとは何か、ということについてよく知っているようだった。まるで自動車メーカーが、適宜新車を発表するように、彼はそのように自分をたゆまず成長させていた。
「言ってしまいますと、スターというのは1シーズンのイベントの素材ではないと思います。あえて言うと、職人マインドのような感じ?これまでも、これからもその仕事をしっかりとやっていけそうな、その信頼こそが、称賛に値すると思います。
キム・ユンシクさんとチェ・ミンシクさんが拍手を受ける理由は、彼らが単にヒットした作品の俳優だからではなく、俳優の責任感を持って職人マインドで毎回新しい挑戦に取り組んでいるからです。観客に信頼を与えるんです。そんな俳優が多くなるほど、韓国の人々は幸せになると思います。信じて選択できる俳優が多いということは、韓国の映画にとってもいい影響となりますし。自分もやはり、そういう俳優でありたいです」
俳優イ・ボムスから韓国の芸能メディアへのお願い
長い経歴の俳優として、多くのメディアのインタビューに応じてきた彼に、韓国の芸能メディアへ主張したいことはあるか、聞いてみた。インタビュー中ずっと落ち着いて言いたいことを全部伝えたイ・ボムスが、メディアに要望する点は何だろうか。
「俳優の一人として、良い俳優を多く掘り出して、取り扱って、励まして、拍手を送ってほしいです。僕の言う良い俳優とは、主演でも助演でも、与えられた条件に留まらず、自己発展のために実験して挑戦する俳優です。スターであることをいいことに、停滞していて何かに怯え、旧態依然な人は本当の俳優にはなり得ません。小さな役でも自己発展のために挑戦する人が、格好いいと思います。
そんな俳優を多く掘り出して紹介する必要があると思います。映画雑誌なら尚の事です。そのような意味で、コ・チャンソクさんやオ・ジョンセさんに拍手を送りたいです。そんな俳優が世間から認められなければならないのに…『死体が帰ってきた』のコ・チャンソク、オ・ジョンセ、そしてペ・ジョンナムさんの健勝を祈ります」
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- イ・ジョンミン、イ・ソンピル、写真:イ・ジョンミン
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