ペ・ドゥナ…過去の発言を探求する「女優は30から」
ペ・ドゥナ探求生活報告書ベータ版「人に見て欲しい映画を選ぶ」
右利きの女優が、映画「ハナ~奇跡の46日間~」で左の肩が砕ける思いで卓球をしまくった。使命感を感じたかのように、彼女は徹底的にヒョン・ジョンファのライバル、リ・ブンヒになりきっていたという。平壌(ピョンヤン)訛りを習って卓球を身に着けたペ・ドゥナは、いつの間にかギラギラする眼差しに冷静な口調、節度ある仕草の“北朝鮮の女性”になっていた。韓国の映画としては「グエムル-漢江の怪物-」以来6年ぶりだ。その間は、海外の空気に触れていた。是枝裕和監督の「空気人形」(2009年)では神秘的な魅力をアピールし、近々公開されるウォシャウスキー兄弟の「クラウド アトラス」で再び観客に演技を見せる。同作品ではトム・ハンクス、ヒュー・グラントなど、最高の俳優たちとの共演を果たした。
「映画を選択する原則は特にありませんが、心に決めたことは一つあります。映画を撮ったら、当然広報ということをやりますよね。作品を多くの人々が見てくれるか、そこが大事です。お金を稼ぐのが目的というわけではなくて、出演した映画を、人々に見てほしいと紹介できるか!そこが私には重要なんです」
原則でない原則があったことになる。映画の話をしていると、自然にペ・ドゥナの人間的な面があらわになった。おかしな話には屈託なく笑い、面白くない冗談には気兼ねなく面白くないと指摘していたペ・ドゥナ。映画と人生において貫く彼女の原則は、率直さと真っ直ぐさではないだろうか。
今回のインタビューは、ペ・ドゥナの過去の発言から彼女の人間的な面をさらに掘り下げてみようという趣旨で行われた。“ペ・ドゥナ探求生活”というタイトルを付けた理由もここにある。しかし、1.0(完成)バージョンではなくベータ版である理由は、当時、単独インタビューではなく、他の様々なメディアとともに囲みで行ったインタビューであったためだ。2%の残念さを抱えて人間ペ・ドゥナを探求してみよう。
1. 2012年、ハ・ジウォンと一戦を交えてみたかった?……“相乗効果”
多くの役者がそうだろうが、映画に出演する最も決定的な要素は、シナリオである。ペ・ドゥナも「ハナ~奇跡の46日間~」を選ぶとき、シナリオの内容が彼女の挑戦意識を刺激したという。またペ・ドゥナは、共演した女優に対する率直な感想も打ち明けた。他でもない、ハ・ジウォンについてだった。ペ・ドゥナは「ハナ~奇跡の46日間~」関連のインタビューで「ジウォン姉さんと共演したらどうだろう?と思った」とし、共演者の組み合わせが出演を確定させるもう一つのきっかけであったことを述べている。
その理由は、相乗効果にあった。ペ・ドゥナは「ジウォン姉さんと一緒にやると、なぜか『相乗効果が出るのでは』と思えた」とし、「一緒に演技しながら、本当に一生懸命になった」と説明した。ヒョン・ジョンファに役になりきったハ・ジウォンとともに、ペ・ドゥナはリ・ブンヒになりきって彼女の感情を全身で感じ取ったという。
「私は、演技するときそのキャラクターにならないと演技ができないんです。徹底してリ・ブンヒになって考えました。『リ・ブンヒはこのような状況ではこうだろうか』なんて想像したわけではありません。試合で負けると本気で不快な気分になりましたし、映画の中で私が体調を崩して実力を出せないシーンがありますが、その時は本当に仲間に対して罪悪感も感じて、辛かったんです」
もしかしてメソッド女優?と尋ねると、ペ・ドゥナは大きな目をさらに大きく開いて「メソッド?」と聞き返した。キャラクターにハマって極限の演技をすることだと説明すると「極限はちょっと違う」と直してくれた。とにかく、ペ・ドゥナはキャラクターにハマり込む女優ということで理解しておこう。
2. 2006年「文章と写真にぞっこんです」……今は?
ペ・ドゥナは、女優としての活動だけでなく、3冊の旅行エッセイを書いた著者でもある。ソウル、東京、ロンドンを訪れ、写真を撮って文章を書いた。「ドゥナの○○遊び」は間もなく彼女ならではの商標になり、それだけ自らの文章と写真に並々ならぬ愛情を示していた。ペ・ドゥナは写真にハマっていた2006年当時、様々なインタビューで写真を撮っていると話していた。また、写真を撮る人たちが入門書として挙げるBarbara Londonの「Photography」を読んでいるとも言った。そういえば、最近はそのような話を聞いていなかったので、尋ねてみた。まだ写真撮影にぞっこん?もしかして間もなく写真家デビューするんじゃないですか?
「最近はあまり撮りません。実は他のことをやっているんですけど……(笑) 去年ベルリンに行った時までは結構撮っていました。撮ったり、撮らなかったり!あ、『Photography』?その本はもうとっくの昔に全部読みましたよ(笑)」
そういえば2010年に購入した「Photography」が、まだページもめくられず自宅で眠っていることを思い出し、少し恥ずかしくもなった。平静を装い、ペ・ドゥナに尋ねた。新しい趣味は何かと。
「言うのも恥ずかしい」と控えめに彼女が告白したのは、英語だった。特にウォシャウスキー監督と一緒に仕事をしながら始めたイギリス式英語の勉強に熱中しているそうだ。忘れるのがもったいないからだという。間もなく、スクリーンでイギリス訛りのペ・ドゥナの英語を聴くことになるかもしれない。「ユー・キャン?アイ・カント(You can? I can't)」というふうに。
3. 2005年「女優は30からだと思います」……これからが始まりか!?
2005年の彼女のインタビューを見ると、「女優は30から」と話した内容が見つかった。だから、当時は自分で見るには、女優としての面が少し足りなかったという話だろう。20代半ば、軽快で神秘な魅力を持っていた彼女の、一体どこが足りなかったのだろう。そんな彼女に、もう30を“とうに”過ぎていると、当時の発言を思い起こさせた。“今や女優の雰囲気がむんむんする”とのコメントも付け加えて。
「もう、知らない~!当時その言葉を言いまくってたみたいです。観客が判断してくれるんじゃないでしょうか(笑) これくらいで勘弁してください(笑) でも、変わった点はあります。今は少し余裕ができたというか。今は、自分が演じるキャラクターだけにこだわるのではなくて、一歩下がって作品を見据える感じです。撮影現場でも、一人の役者として『ああ、ここでは私がこんな部分を支えなくちゃ』と思う面が少しは出てきたと思います。でも!当時言った“女優”という意味は、これでした。女優って、“女性の俳優”じゃないですか。30になれば、あえて女らしさを作り出さなくても、自ずと女性美が出るのでは、という意味だったんです。私って、少し遅れているみたいなんですよ。ううっ」
4. 多作を求める?……「主演は望まない」
ペ・ドゥナの過去の発言を追及しながら、インタビューをした人も追及された。雰囲気を盛り上げてみようと投げたユーモアが、その都度彼女に責められたのだ。例えば「僕も卓球部だった。稲中卓球部」と言ったら、ペ・ドゥナに「そんなたちの悪いギャグを」と返された。ギャグを練習してくるから、彼女ももっと多くの作品に出演する気はないのか尋ねた。この質問で改めてペ・ドゥナは真剣になった。
「私は、主演を望んでいるわけではなくて、(多くの作品が撮れなかったのは)色々な理由があります。私にできない映画のオファーがくるとか、やりたかったのに残念なことにパーになってしまうとか。私、映画を選ぶときには結構こだわるんです。やる直前までも、これをやるべきか、やらないべきか、悩んだ末に諦める場合もあります。そうやってブランクが生じることになるのかも知れません。1年に1作くらいでちょうどいいという考えもあります」
そうなのだ。彼女は貴重な存在だから。良い作品で輝く姿を待ってみよう。とりあえずは「ハナ~奇跡の46日間~」だ!
さてと、それはそうとして、この日のインタビューにペ・ドゥナが着てきた衣装は、自身が直接選んだという。実は、衣装はほとんど自分で選ぶ方だとか。最後にこのことに触れると「私、ファッショニスタですから~。知らなかったんですか(笑)」と言い返してきた。期待してみよう。“ファッショニスタ”ペ・ドゥナの今後の活躍を。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- イ・ジョンミン、イ・ソンピル
topics