「危険な関係」魔性の男チャン・ドンゴン、心と体は一体どこへ?
写真=Daisy Entertainment
オペラ「ドン・ジョヴァンニ」と映画「霜花店(サンファジョム)-運命、その愛」から見る「危険な関係」
「危険な関係」のシェイパン(チャン・ドンゴン)は、上海最高のプレイボーイだ。女と付き合うも、決して女に心を許さないので、いつも傷つくのは女のほうだ。このようなシェイパンが、静粛な未亡人トゥパンイ(チャン・ツィイー)を落とせるかをめぐり、モジエウィ(セシリア・チャン)と賭けをする。シェイパンは、ベビーのように若く女を簡単に落とせる、何も知らない女よりは、上れない木のように見える静粛なトゥパンイに、征服欲が出る。果たしてトゥパンイは死別した夫の次に、シェイパンにも心を許すのか。
オペラのファンが「危険な関係」を観れば、一気にシェイパンと被るオペラの登場人物を思い浮かべるだろう。それは「ドン・ジョヴァンニ」の主人公、ドン・ジョヴァン二だ。イタリアの名前であるドン・ジョヴァン二よりは、大衆に馴染み深いフランス式の名前で呼んだほうが良いだろうか。ドン・ジュヴァン二をフランス式に発音するとドン・ジュアンになる。
お分かりだろうか。ドン・ジュアンと言えば、カサノバと共に、欧州では指折りのプレイボーイだ。東洋の上海にシェイパンがいれば、西洋の欧州にはドン・ジョヴァン二がいる。ドン・ジョヴァン二は2000人を超える女性を弄んだ、稀代のプレイボーイなのだ。その対象もまた色々だ。ドン・ジョヴァン二は母国であるスペイン人ではもの足りず、イタリア、フランス、ドイツなど、多国籍恋愛を誇る。
シェイパンとドン・ジョヴァン二はいずれも、プレイボーイという点では共通している部分がある。しかし、シェイパンとドン・ジョヴァン二は同じ部類のプレイボーイではない。ドン・ジョヴァン二は女を弄ぶこと自体が目的で、女目当てのプレイボーイではない。
ドン・ジョヴァン二にとって女は、通過の対象であって、最終目的地ではない。「心と体は別」ではなく、女に心を許す余地がまったくないのである。オペラ「ドン・ジョヴァン二」の結末を因果応報として受け止めるのも、ドン・ジョヴァン二のこのような価値観からだ。女の体だけを求め心を許さない、色情に染められたドン・ジョヴァン二への罰だと言えよう。
しかし、シェイパンの場合はドン・ジョヴァン二とは違う。最初はトゥパンイを誘惑することが目的で、トゥパンイとの交際自体が目的ではなかった。この地点まではドン・ジョヴァン二と一緒だ。しかしシェイパンに対するトゥパンイの関心が高まるにつれ、シェイパンもトゥパンイに引かれ始める。ここからプレイボーイのゲームの法則が崩れ始める。今までシェイパンの信条だった「心と体は別」という公式に亀裂が生じ始めるのである。
最初はあまり興味がなかったが、次第に相手に引かれ始めるシェイパンの場合は、骨の髄まで悪人のドン・ジョヴァン二とは違うケースだ。シェイパンとドン・ジョヴァン二はいずれも「心と体は別」との価値観から女と付き合う。しかしその過程が違うのだ。ドン・ジョヴァン二は、地獄の炎に連れて行かれる最後の瞬間までも自身の価値観を貫く。しかしシェイパンは自分も知らないうちに、トゥパンイに引かれ始める。心と体が別ではなく、一緒に動き始め、今まで徹底して貫いてきた自身の価値観が揺れ始める。
こうしてみると「危険な関係」のシェイパンは「霜花店-運命、その愛」の護衛武士ホンニム(チョ・インソン)と共通点がある。ホンニムは自身の意志とは関係なく、王の命令によって王妃と寝る。寝る瞬間までも、ホンニムは王妃に異性としての感情を抱かなかった。
しかし、関係を持ってからは違った。体で情が移ってから、王妃に思いを寄せ始め、王に内緒で二人で会うことになる。最初は心と体が別だった状態で出発するシェイパンとホンニム、しかし二人とも徐々に相手に心まで許すことにより、心と体が一つになる恋愛を始める。
シェイパンのトゥパンイへのゲームが持続されるためには、ドン・ジョヴァン二のように、最後まで心を許してはいけない。しかしシェイパンは違った。最初から許すつもりのなかった心まで、相手のトゥパンイに許してしまうからだ。
恋をゲームだと勘違いして生きてきたドン・ジョヴァン二は悲劇的な最後を迎える。「心と体は別」とのルールを破り、王妃と危険な関係に陥ったホンニムもまた、その最後が平坦ではない。果たしてシェイパンはドン・ジョヴァン二とホンニム、この二人の悲劇的な結末を無事に乗り越えて、トゥパンイと結ばれるのか。ゲームで始めた恋が真剣になってしまった、危ういプレイボーイシェイパンの結末が気になる。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- パク・ジョンファン
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