【コラム】イ・ハイとキム・チュジャ ― チャン・ウチョル
「イ・ハイ見ました?」月曜日、同僚の編集者たちが思い出したように問う。そして「ミュージックビデオとは違いますよ、ステージでは“あのイ・ハイ”が見えていました」と付け加えた。すぐに動画を探してみた。“あのイ・ハイ”という言葉のためだった。結果、イ・ハイが特別な歌声を持っていることを改めて実感した。既存の歌手に負けないほどのステージ演出を見れば、これまでどれほどの努力をしたかも推測できた。ミュージックビデオでは多少過度に表現され、かえって見えなくなっていた“あのイ・ハイ”の魅力も、少しだけ見えた。しかし、そのすべての長所と利点があるにもかかわらず、ぞっとするような印象はなかった。誰かのデビューステージにかける期待として“上手くやる”ことより“驚く”ことを望んでいたためであろう。イ・ハイは誰よりも上手だったが、きらめく恍惚を感じさせるような瞬間を作るにはまだ何か物足りないものがあった。ただ、幸運なことは、彼女にまだチャンスがたくさんあるということであろう。
「あれは一体なんだろう?」と思い、目を見張らせることこそが(マジックを求めてわけではなく)ステージに存在する理由でもある。しかし、最近はそのようなステージはなかなか見られない。理由は単純である。歌手のほとんどが自身本来の“自由奔放さ”よりは、あるコンセプトとキャラクターとしての“自由奔放さ”を掲げようとしているためである。歌手は歌手の名前としてではなく、今回“活動する”曲によって完全に別人に見えるステージを作る。歌手の名前がすなわちジャンルでレーベルになっても足りないのに、曲によって隠し芸を見せるかのように変わる姿をまるで“八色鳥”(八つの色を持っている鳥、多彩な魅力の例え)だと絶賛されている。
また、人間味のない尺度で、歌手を判断しようとする。何事にもすぐ飽きる最近の消費者の好みを考慮したものかもしれないが、今回は可愛らしく、今回はセクシーに、といったコンセプトによって、歌手たちは段々“キャラクター”化されていく。「私は歌手だ」や「不朽の名曲」のような番組を見ても、初々しい新人から卓越したベテランまで、歌手が楽曲に合わせようとばかりしており、楽曲を歌手に合わせようとするケースは、ハン・ヨンエくらいを除けばほとんどいないように見える。
ハン・ヨンエが先日「私は歌手だ」に出演し「風の記憶」を歌った時、見とれてしまった。できる限り、あらゆる感覚でそのステージを経験したくて、目を閉じてもみた。しかし、あの時の感動とは別に、あのステージに関する記事のコメントがまた驚きだった。ほとんどがその曲を聴きながら「笑える」と言っていたためである。もちろん、厳かな雰囲気の葬式会場でさえ笑いが溢れるのはいくらでもあり得ることだが、ハン・ヨンエのあの曲を聴いてあえて「笑える」という話を人に表現しようとする理由が分からなかった。
おそらくそれは、Brown Eyed Soul ナオルの「風の記憶」を中心に置き、R&BだのSOULだのといったジャンル的規格を、ハン・ヨンエにも人間味のない尺度のように適用した結果であろう。そして、その規格に合わないと判断したハン・ヨンエを「笑える」と表現することで、自身がどれほどR&Bをよく理解しているか表現したかったのである。とにかく、そのせいでハン・ヨンエは“笑える”歌手になってしまったことが、本当にとんでもないことである。ただただ残念だ。
イ・ハイで出演した「人気歌謡」を見て、すぐキム・ジョンミが「行くとは言わないでください」を歌う映像を見た。実は、イ・ハイが初めてテレビに出演した時から、キム・チュジャやキム・ジョンミといった名前を思い出していた。理由? それは自由自在に曲を操る歌手であるためである。キム・チュジャが歌った曲を聴いたことがあるだろうか?“あいしてる”を“あえすぃてる”のように発音しても、それが気になるどころか、動物が自分の鳴き声を出すかのように自然であるという恍惚は、キム・チュジャならではのものだった。キム・ジョンミが歌う姿を見たことあるだろうか。何かに囚われたように、それこそ“虚空”に向かって疾走するような姿は、よく言う“情熱”や“破格”といった言葉では言い表せない種類のものである。40年前の歌手と楽曲が、思い出という剥製ではなく、依然として今でも支持されている理由は、慌ただしく生きている生物のパワーがあるためである。
せっかく見たついでに、キム・チュジャを見て、ナミを見て、イ・ウンハを見て、ユン・シネを見て、ミン・ヘギョンを見て、キム・ワンソンを見て、パティ・キムを見て……。そして再びイ・ハイを見た。そこには、はっきりとは言い表せない繋がりと絆が流れている。作りこまれ、練り込まれて、訓練されたコンセプトしかない最近のステージに、自由自在に枝を伸ばす一本の“蔓”が育ち始めている。それがどこまで伸びていくかの期待はすでに高まっている。何より、彼女が2012年現在、韓国最高の(また、もっとも自由奔放なマインドを持つ)事務所に所属している点が妙に刺激的である。イ・ハイに対する様々な期待の一つには“韓国のアデル”といったような“チラシ”のようなタイトルではなく、イ・ハイという名前だけですべてを表す、近年稀にみる本当の女性歌手が登場したことである。
「あれは一体なんだろう?」と思い、目を見張らせることこそが(マジックを求めてわけではなく)ステージに存在する理由でもある。しかし、最近はそのようなステージはなかなか見られない。理由は単純である。歌手のほとんどが自身本来の“自由奔放さ”よりは、あるコンセプトとキャラクターとしての“自由奔放さ”を掲げようとしているためである。歌手は歌手の名前としてではなく、今回“活動する”曲によって完全に別人に見えるステージを作る。歌手の名前がすなわちジャンルでレーベルになっても足りないのに、曲によって隠し芸を見せるかのように変わる姿をまるで“八色鳥”(八つの色を持っている鳥、多彩な魅力の例え)だと絶賛されている。
また、人間味のない尺度で、歌手を判断しようとする。何事にもすぐ飽きる最近の消費者の好みを考慮したものかもしれないが、今回は可愛らしく、今回はセクシーに、といったコンセプトによって、歌手たちは段々“キャラクター”化されていく。「私は歌手だ」や「不朽の名曲」のような番組を見ても、初々しい新人から卓越したベテランまで、歌手が楽曲に合わせようとばかりしており、楽曲を歌手に合わせようとするケースは、ハン・ヨンエくらいを除けばほとんどいないように見える。
ハン・ヨンエが先日「私は歌手だ」に出演し「風の記憶」を歌った時、見とれてしまった。できる限り、あらゆる感覚でそのステージを経験したくて、目を閉じてもみた。しかし、あの時の感動とは別に、あのステージに関する記事のコメントがまた驚きだった。ほとんどがその曲を聴きながら「笑える」と言っていたためである。もちろん、厳かな雰囲気の葬式会場でさえ笑いが溢れるのはいくらでもあり得ることだが、ハン・ヨンエのあの曲を聴いてあえて「笑える」という話を人に表現しようとする理由が分からなかった。
おそらくそれは、Brown Eyed Soul ナオルの「風の記憶」を中心に置き、R&BだのSOULだのといったジャンル的規格を、ハン・ヨンエにも人間味のない尺度のように適用した結果であろう。そして、その規格に合わないと判断したハン・ヨンエを「笑える」と表現することで、自身がどれほどR&Bをよく理解しているか表現したかったのである。とにかく、そのせいでハン・ヨンエは“笑える”歌手になってしまったことが、本当にとんでもないことである。ただただ残念だ。
イ・ハイで出演した「人気歌謡」を見て、すぐキム・ジョンミが「行くとは言わないでください」を歌う映像を見た。実は、イ・ハイが初めてテレビに出演した時から、キム・チュジャやキム・ジョンミといった名前を思い出していた。理由? それは自由自在に曲を操る歌手であるためである。キム・チュジャが歌った曲を聴いたことがあるだろうか?“あいしてる”を“あえすぃてる”のように発音しても、それが気になるどころか、動物が自分の鳴き声を出すかのように自然であるという恍惚は、キム・チュジャならではのものだった。キム・ジョンミが歌う姿を見たことあるだろうか。何かに囚われたように、それこそ“虚空”に向かって疾走するような姿は、よく言う“情熱”や“破格”といった言葉では言い表せない種類のものである。40年前の歌手と楽曲が、思い出という剥製ではなく、依然として今でも支持されている理由は、慌ただしく生きている生物のパワーがあるためである。
せっかく見たついでに、キム・チュジャを見て、ナミを見て、イ・ウンハを見て、ユン・シネを見て、ミン・ヘギョンを見て、キム・ワンソンを見て、パティ・キムを見て……。そして再びイ・ハイを見た。そこには、はっきりとは言い表せない繋がりと絆が流れている。作りこまれ、練り込まれて、訓練されたコンセプトしかない最近のステージに、自由自在に枝を伸ばす一本の“蔓”が育ち始めている。それがどこまで伸びていくかの期待はすでに高まっている。何より、彼女が2012年現在、韓国最高の(また、もっとも自由奔放なマインドを持つ)事務所に所属している点が妙に刺激的である。イ・ハイに対する様々な期待の一つには“韓国のアデル”といったような“チラシ”のようなタイトルではなく、イ・ハイという名前だけですべてを表す、近年稀にみる本当の女性歌手が登場したことである。
文:コラムニスト チャン・ウチョル
「NAVERコラム - チャン・ウチョル編 -」では、今話題の人物にクローズアップし、コラムニストのチャン・ウチョル氏が執筆。韓国で注目が集まっている人物や出来事についてお届けします。- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- チャン・ウチョル
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