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チン・グ「『26年』を断った俳優は自分の足で福を蹴ったも同然です」

TVレポート
写真=ムン・スジ
黒めの肌に無精ひげ、鋭い眼差しまで。言葉は要らない。チン・グ(32)は、自然体のままでもクァク・ジンベだ。ワイルドで短気だけれど、遊び心に満ちている。作戦実行を目の前にしていても能天気だ。しかしこの男、見れば見るほど心が痛くなる。くだらないジョークを飛ばすその姿が、笑えるどころか肩を叩いてあげたくなる。

5.18光州民主化運動を描いた映画「26年」(監督:チョ・グニョン、制作:映画社チョンオラム)。チン・グは、光州の道庁で戒厳軍に射殺された父親に対する傷を持っているクァク・ジンベ役を演じた。喧嘩には自信がある光州の暴力団、スホ組の有力な一員で、“あの人”(チャン・グァン)を裁くプロジェクトチームの行動隊長だ。胸の奥に深い傷を負っているクァク・ジンベ。その中にチン・グが存在していた。

「映画館で『26年』が上映されているということが信じられません。4年間、何度も制作が中止されていた作品だったので。それに今まで僕は3回も経験したんです。実際、撮影中も不安でした。『クランクインさえできればいいんだ』と思っていましたが、いざクランクインとなったらクランクアップをしなきゃ、と思えてきて。クランクアップをした後は、公開をしなきゃと思ったりして……。今もそんな気持ちです。上映されているという実感がまだありません」

卑怯だった自分が恥ずかしかった

1980年7月20日生まれのチン・グ。5.18光州民主化運動が起きたその年に生まれた。彼自身も経験していない痛みを論じることは簡単ではない。教科書で学ぶぐらいだったという“あの日”を直接演じることはかなり大変であった。いや、恥ずかしかったと言うほうが正しい表現だという。

チン・グは「学生時代は、本から学ぶくらいだった。本格的に知ったきっかけは、4年前に映画の準備をしながら制作会社からもらった膨大な資料を通じてだった。とても多い資料だった」と当時を振り返った。

改めて知った5.18光州民主化運動についてチン・グは、「一発殴られた感じだった」と説明した。チン・グは「4年前に受けたその衝撃は“光州の息子”を演じる俳優として感じた感情ではなかった。それは、僕自身に対する衝撃だった。今になってやっとそのような事実を知ったということが申し訳なかった。何よりも実際の“あの人”に対する怒りよりも僕自身に対する怒りがあった」と自分を責めた。

チン・グにとって「26年」は、映画としての意味よりも韓国の国民としての意味のほうが大きいという。これまで甘く生きてきた自分の人生を振り返るきっかけになったという。怠っていて、傲慢な人生を生きてきたというチン・グは、32年間を安易に生きてきたようだと反省した。

「僕はあまりにも卑怯でした。知ろうとも思っていなかったんですね。観客も僕のように一度くらい振り返ってみたら良いと思います。一緒に苦しむ必要まではないけれど、この傷を抱えている人々が存在するという事実だけは知ってほしいです。心が痛いじゃないですか。このような事実が……」

「26年」を断った俳優たちは後悔しているはず

4年もの間制作が行き詰まっていた「26年」。制作の初期段階だった2008年、キャスティングのラインナップは今とはかなり違うものだった。当時はイ・へヨン監督の指揮の下、クァク・ジンベ役にリュ・スンボムが、シム・ミジン役にキム・アジュンが決まっていた。また、ピョン・ヒボン、チョン・ホジンが加わり、チン・グもキム・ジュアン役として早くから契約を結んだ。しっかりとしたラインナップで制作に勢いが増したが、なぜか投資金を集めることができず、全てが原点に戻った。

しかし「26年」は諦めなかった。引き続き映画の制作のための準備を続け、年初めには「ワンダフルラジオ」のクォン・チリン監督がメガホンを取り、再起したかのように見えたが、これもまた結局は原点に戻ってしまった。最終的には「26年」の美術を担当することとなっていたチョ・グニョン監督が演出を担当し、着々とキャスティングを再整備し、紆余曲折を経て映画館での上映まで導いた。

制作会社チョンオラムに負けないほど、4年間心を悩まされていたチン・グに、これまで「26年」を断った俳優たちについて聞いた。苦難と試練を経験してきたチン・グは、「(断ったのは)彼ら自身が100%望んでいたものではないだろう」と彼らを擁護した。

「所属事務所のほうから、俳優を見る視線が変わるのではないかと気にしていたんでしょうね。互いのためだったのでしょう。所属事務所は俳優を、俳優は所属事務所を思っていたわけですから……。けれど、『26年』についてきちんと知っている人ならば、断っていなかったと思います。彼らは卑怯だったわけではなく、自分の足で福を蹴ったも同然ですね。この間の記者懇談会でハン・ヘジンさんが『この作品を逃した俳優は後悔しているはずだ』と話していましたよね?多分、その“後悔している俳優”が少なくはないでしょう(笑)」

世間では「26年」に出演した俳優たちを懸念する声も時々上がっている。どう見ても公開後の影響を心配するしかない作品だ。しかし、チン・グはやはりクールであっさりとした俳優だった。

「気にしていませんよ。もし『26年』に出演した俳優とは共演しないという人がいるならば、しないといいんです。そんなことまで気にするなんて卑怯でしょう?そんなことを思う人とは、こちらも共演したいと思っていませんので。まるで『26年』を政治的な扇動をしている映画のように勘違いをする人がいますが、全く違います。この映画の根本を知っている人なら、そんなことは言えません」


「母なる証明」以降、秘めていた魅力が表に出た

親指が自然と上がるような男の中の男だ。“カッコいい”という言葉が最も似合う、魅力的なクァク・ジンベだ。もちろん、クァク・ジンベの魅力を引き出した張本人はチン・グだ。クァク・ジンベが劇中で見せてくれた物凄い力。その49%はシナリオが作ったものだが、51%はチン・グが作ったものだ。

チン・グに「最高にカッコよかった」と感想を述べると「そうですね?最高にいいでしょ?」とジョークを飛ばしてくれた。決して憎めない人だ。「26年」でチン・グは、死ぬほどカッコよかった。チン・グは図々しい笑顔でジョークを飛ばすと思ったら、すぐに自分の能力よりもチョ・グニョン監督のおかげであると謙遜した。

チン・グは「クァク・ジンベというキャラクターは、チョ・グニョン監督が作ってくれたものだ。実際、僕は男たちが好きそうなカッコよさしか知らない人だった。いわゆるノワール風の男だった。女性観客が『重い』『怖い』と抵抗を感じそうなカッコよさを披露することに慣れていた。だからか、僕はいつも男性ファンのほうが多い俳優だった」と苦笑した。

暗かった過去を乗り越えたチン・グは、映画「母なる証明」(監督:ポン・ジュノ)を撮ってから考え方が変わった。大人っぽい女性たちから反響もあったという。チン・グは「男のことをそれなりに知っていそうな大学生たちが、ウォンビンではなく僕のことに興味を持ってくれた。最初は『どういうこと?』と思ったけれど、今振り返ると全て監督の力だった。『母なる証明』の時は、ポン・ジュノ監督が僕を作ってくれたし、今回はチョ・グニョン監督がカッコよく撮ってくれた」と語った。

「クァク・ジンベのセクシーさに人々が気付くまで、一生懸命に頑張ります(笑) 最近の反響を見ていると、『母なる証明』の時より女性ファンが増えたようで……それに自分的には年齢層も少し若くなったように思います。だいたい高校2年生くらいかな?それくらいなら僕も嬉しいですね(笑)」

元記事配信日時 : 
記者 : 
チョ・ジヨン
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