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映画「悪魔は誰だ」誰が誰を悪魔と呼ぶのだろうか

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※この記事には映画「悪魔は誰だ」の結末に関する内容が含まれています。
写真=ミインピクチャーズ、NEW

加害者と被害者を入れ替える賢い頭脳戦

15年前、誘拐犯に娘を拉致されたハギョン(オム・ジョンファ)。これまでハギョンと警察は犯人を追ったが、犯人の行方は分からないままだ。事件の担当刑事であるチョンホ(キム・サンギョン)はハギョンに間もなく時効が成立することを知らせ、もう犯人を捕まえられない事実にハギョンは怒りを感じる。

犯人が姿を消した最後の場所に足を運んだチョンホは、犯行現場に置いてある1輪の花を見つける。再び犯人が現れたことを直感したチョンホは防犯カメラ、ブラックボックス、タイヤの跡などの証拠を手がかりに犯人を追跡する。そして時効が成立する直前に犯人を見つけたが、追撃戦の末に目の前で犯人を逃してしまう。

その後、ハンチョル(ソン・ヨンチャン)の孫娘が拉致される事件が発生した。その犯行の手口が15年前にハギョンの娘を拉致した方法と同一であることが分かった。チョンホはその犯人がもう一度事件を再現しようとしていることを直感し、事件を徹底的に調べ始める。


韓国3大未解決事件が起こった後に残ったもの

1986年~1991年に京畿道(キョンギド)華城(ファソン)市台安邑(テアンウプ)一帯で10人の女性が殺害された“華城連続殺人事件”、1991年1月29日ソウル市鴨鴎亭(アックジョン)洞に住んでいた当時9歳だったイ・ヒョンホ君が30代と推定される男性に誘拐され、殺害された“イ・ヒョンホ君誘拐殺人事件”、1991年3月26日に5人の小学生が蛙を取りに行くと家を出て行方不明になった後、遺骨で発見された“カエル少年失踪事件”は、韓国で3大未解決事件に挙げられている。

2007年、時効に関する法律が改正され殺人罪への時効は25年になったが、1997年以降の事件から同法律が適用された。それによりチョン・ドゥファンとノ・テウによる軍部政権の影で起きた韓国3大未解決事件はその後キム・ヨンサム、キム・デジュン、ノ・ムヒョン政権を経て2006年にすべて時効が成立した。

たとえ検察と警察の捜査の手は緩んだとしても「それが知りたい」などのテレビ番組で何度も扱われてきたこれらの事件は、スクリーンにその舞台を拡大し別の方法で世間の関心を誘導した。

“華城連続殺人事件”を題材にした「殺人の追憶」(2003)が暗かった時代の空気を描くことに重点を置いたことに対し、“イ・ヒョンホ君誘拐殺人事件”を題材にした「あいつの声」(2007)は事件を再現することに集中した。“カエル少年失踪事件”を題材にした「カエル少年失踪殺人事件」(2011)は事件当時の仮説を取り入れ、事実とフィクションを融合した。これらの映画は方法は異なるが、犯人を捕まえたいという気持ちは同じである。韓国3大未解決事件はテレビと映画で時効を延長した。

韓国3大未解決事件が残したのは、ただ犯人を捕まえることができないという無念な気持ちだけではなかった。検察と警察の無能さへの批判や時効の成立が犯人へ合法的に免罪符を与えているという状況に対する怒りの感情は強くなっている。

法律が彼らを処罰しないなら、自ら処罰するという個人的な復讐を描いた映画が多数登場したこともこのような社会の雰囲気と絶対に無関係ではない。男性は「悪魔を見た」「容赦はしない」「アウトロー-哀しき復讐-」で、女性は「公正な社会(Azooma)」「母なる復讐」「オーロラ姫」などの映画で復讐を敢行した。


二つの意味で使われる“モンタージュ”

「悪魔は誰だ」は韓国3大未解決事件と個人的な復讐が交差したところから出発する。映画は韓国3大未解決事件の陰である時効を問題視し、個人の復讐の銃口を犯人に向ける。

ここにキム・サンギョンが演じた「殺人の追憶」のソ・テユン刑事のイメージや「オーロラ姫」でオム・ジョンファが演じた個人的な復讐を断行する母のイメージも反映された。まるで「悪魔は誰だ」は韓国のスリラージャンルの一つの流れにピリオドを打つような印象を与える。

映画のタイトルである「悪魔は誰だ」は二つの意味として使われる。一つは捜査のため合成で作りあげた犯人の顔写真という意味で、もう一つは時間や事件の経過を表すときに使う映像編集方法を意味する。

刑事のチョンホはやっと向かい合った犯人とモンタージュ写真を見ながら「全然似てない」と語る。事件の捜査方向が最初から間違っていたと指摘するチョンホの姿から過去どれほど捜査が混乱し、犯人を逃したのかを察することは難しくない。

映像編集の方法であるモンタージュを使い映画の中の時間をかき乱し、複数のパズルを再構成することで加害者と被害者の位置を入れ替える「悪魔は誰だ」の試みは斬新だ。まるで犯人が要求した身代金の代わりに懸賞金をかけ犯人を追跡する「身代金」の設定を思わせる試みだ。


時効の改定を求める

現在時効は、時間が経つことによってできた事実関係を尊重し、法的安定性確保や時間の経過による証拠判断の困難、社会的関心の低下、被告人の生活安定保障などの理由で存在する。だが、「悪魔は誰だ」は「15年の歳月が経った後、果たして加害者は懺悔していたのだろうか」と問う。

被害者ではなく加害者の涙という事実に気づかなかったと言う刑事チョンホの台詞は、意味深に聞こえる。結局映画の加害者と被害者の位置を入れ替えることは、決して加害者は変わらないという事実を強調するための手段のように思われる。

他の個人的な復讐を題材にした映画と同様に「悪魔は誰だ」の終わりは個人的な復讐が正しいのかという質問にたどり着く。「あの人は私を苦しめたのにどうして私にはできないのですか?」というハギョンの叫びは誰にでも当てはまるものだ。

ここで個人的な正義を実現するキャラクター“ジグソウ”を作り出した「ソウ」のジェームズ・ワン監督が作ったもう一つの映画「狼の死刑宣告」のあるシーンを注意深く見る必要がある。家族の復讐に乗り出したニック(ケヴィン・ベーコン)に復讐の対象であるビリー(ギャレット・ヘドランド)は「私たちと何が違う。(君も)怪物になってしまった」と反問する。「悪魔を見た」で復讐を完成させ涙を流すキム・スヒョン(イ・ビョンホン)と重なって見えるシーンだ。

「別の悪魔を見たのか?私の中の悪魔を見たのか?」この質問に答えることは非常に難しい。確実なのは事件の真実を必ず明かそうとする姿勢だ。先に言及した3大未解決事件のように無念に死んだ人の真実さえ解明できなかったことが私たちの現実なのではないか。まず時効の改定に着手してもらいたい。許しと処罰はその次の問題だ。
元記事配信日時 : 
記者 : 
イ・ハクフ
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