鑑賞コラム Vol.4 ― 残酷な母性が織りなす“愛憎のサスペンス”「蒼のピアニスト」
「蒼のピアニスト」を理解するために忘れてはならないのは、息子と母親の絆が韓国ではとても大切にされているということだ。母と息子はしばしば映画やドラマのテーマにもなっている。
例えば、映画『母なる証明』には息子の無実を晴らそうと奔走する母が登場するし、映画『嘆きのピエタ』は母の愛に飢えた青年の物語。そして、韓国ドラマファンであれば、母と息子が一つの布団で仲良く寝ているシーンを見たことがきっとあるはず。韓国語にある「ママボーイ」という言葉には本語の「マザコン」とは意味が異なり、息子を愛するのは当たり前、母を大事にするのは良い息子という文化的背景があるのだ。
幼いイナに母親のヨンラン(チェ・シラ扮) が言い聞かせるこの言葉は、「蒼のピアニスト」の鍵ともいえるセリフだ。ヨンランは、ピアニストになる夢を捨て、大手楽器メーカーであるプソングループ会長と結婚。夫婦の関係が冷え切った中、夫の愛人が生んだというジホと同居することになる。感情を殺し良い母を演じる毎日において、ヨンランの一抹の希望はイナ(チ・チャンウク扮) のピアニストとしての成功、そして彼を会社の後継者の座につかせることだった。
ところが、ジホ(チュ・ジフン扮) の出現によって、後継者争いは複雑化。さらに2人の息子は母親の愛情を得るためのライバルと化す。ヨンランは、イナに期待と愛情をかける一方で、ジホに対する深い憎悪を隠し愛するふりをして、ジホを窮地に追い込んでいく――。そう、本作を貫くテーマの一つが、「母親の愛」である。
しかし、実際にも一男一女の母であるヨンラン役のチェ・シラは、こう言う。「母親であれば分かるはずです。子供のためなら何も恐れず、命さえも投げ出せます。ヨンランもそんな母親だと思って見れば、彼女の行動を十分理解できるでしょう」
また、「撮影期間中には、チュ・ジフンとチ・チャンウクはオフの時も私を“お母さん”と呼んでいました」と語るチェ・シラ。リアルな関係がつむぎ出す、残酷なまでの母性は、ドラマを2転、3転させ、驚愕の結末へと導いていく。果たしてヨンランは母として本当の愛情を感じることができるのか――？ 「蒼のピアニスト」は、見る人に母と息子の関係というものを改めて問いかけ、考えさせる家族の愛の物語なのだ。
文：ライター・翻訳家 桑畑優香
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＜特典映像＞メイキング、キャストインタビュー
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＜初回限定特典＞サイン＆メッセージ入りポートレート(チュ・ジフン、チ・チャンウク)＜通常特典＞12Pブックレット
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2012年 / 韓国SBS 放送 / 全30話 / 原題：다섯손가락
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「蒼のピアニスト」日本語版製作委員会
発売元：ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント / TBS
販売元：ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
「蒼のピアニスト」DVD公式サイト
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- Kstyle編集部
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