【映画レビュー】「かくれんぼ」家で発見される死体が恐怖の全てではない
写真=映画「かくれんぼ」公式ポスター
面白いアクションスリラーの誕生…リアルな感情表現が格別
これを妙な綱渡りだと言えるだろうか。映画「かくれんぼ」はスリラーの顔をしているが、ホラー映画で感じられる恐怖感まで感じさせる。玄関のチャイムの横に残された謎の標識から、事件は観客の想像と現実の間に橋を置く。同映画は隠したい過去を持つ父ソンス(ソン・ヒョンジュ)と、彼の家族を中心に話が展開される。妻のミンジ(チョン・ミソン)と一緒にソンスは自身が存在する現在から幸せを探そうとするが、彼は兄へのトラウマから逃れられない。ある日、兄の行方不明の知らせと共に直面した人物と事件。見知らぬ女性ジュヒ(ムン・ジョンヒ)と原因の分からない連続殺人事件はソンスを更に混乱させる。
漠然とした怪談から始まった恐怖、予想以上にリアル
冒頭で妙な綱渡りと表現したが、「かくれんぼ」は色々な面で賢い映画だ。この作品がホラーに留まらずスリラーに発展できた秘訣は、曖昧な恐怖ではなく、実質的な恐怖を刺激したところにある。掴めそうで掴めない“標識”の主人公は、ミステリアスだがはっきりとした実体がある。彼はソンスの過去のトラウマに関連のある人物であり、ホームレスでもある。彼のトラウマは劇中で兄への罪悪感として描かれる。つまり、消したい過去を持って生きるソンスにとって兄への存在は自身の家族に危害を加えるかもしれないという極限の恐怖となる。
“都市怪談”または“チャイム怪談”として2000年代に広く拡散した物語は「かくれんぼ」で現実の事件として生まれ変わった。怪談が実際の事件になり、最も安全な空間である家が脅かされる事態となる。
家に突如出て来る謎の死体が、この映画が伝えようとする恐怖の全てではない。引き続き起こるあらゆる暴力と殺人事件が、自身と関連があることを直感したソンスは、事件解決のために積極的に介入する。兄を憎んだ自身を省み、謎の標識を追いながら散在しているパズルを合わせていく。散在していたパズルが徐々に形を現す瞬間、映画は劇的などんでん返しを観客に投げかける。
ホームレス、家族というテーゼに対する質問を残す
映画は怪談と家という素材を単純なツールとして使うのではなく、社会的な質問に繋げて解釈する余地を残す。現在韓国社会で居住空間を越え、富の象徴になってしまった住宅にスリラージャンルを取り入れたことは、家が持つ両面性を暴くためだと言えよう。暮らしの基本条件である居住空間さえも持てない人は、韓国社会でまるで永遠の弱者のように思われるが、映画では登場人物に危害を加えられる存在として描かれる。これを巡り貧困層への印象主義的アプローチという批判ももちろん可能だ。しかし、家主を転覆させその地位を獲得しようとする謎の人物は、韓国社会の暗い断面に対する庶民の怒りが反映されたものと解釈するのが正しいだろう。
もう一つ、映画は家族への質問を投げかける。映画で家族は無条件的な愛をやり取りする対象でもあり、幼い頃の闇を象徴する対象でもある。両極の家族が鏡のように向き合い、お互いに違う時間帯で同じ対象を定めている形だ。
「かくれんぼ」の収穫は、この歪曲された家の意味と家族に対する問いかけにまで進んだところにある。緊張感溢れる話と主人公のアクションはおまけだ。ただし、後半に行くほど人物自体が持つ力よりは事件解決に集中するため、集中度が落ちる可能性があるというのが短所だ。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- イ・ソンピル
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