「イントゥギ」リュ・ヘヨン“短編映画界のチョン・ジヒョン”が見せるスクリーンを溶かすエネルギー
観客にとってスクリーンの中の誰かと100%心が一致する瞬間ほど幸せなことはないだろう。さらに、ここに輝く“自分だけの宝物”まで見つけることができれば、それ以上望むことはない。
映画「イントゥギ」(監督:オム・テファ、制作:KAFA FILMS)は寂しさに彷徨う若者たちと共感して、リュ・ヘヨン(22歳)という輝く女優に出会える幸せを届けてくれるという点で、“必見映画”と言っても過言ではない。
「イントゥギ」は、短編映画「森」で第11回ミジャンセン短編映画祭で全会一致による大賞を受賞したオム・テファ監督の長編デビュー作であり、早くから映画界内外の関心を一身に受けたプロジェクトだ。オンラインコミュニティで対立していたニックネーム“チョッジョンソン”に現実世界で急襲されるテシク(オム・テグ)、モッパン(食べる番組)で自らの欲求を解消するヨンジャ(リュ・ヘヨン)、富裕層のインヨ(無駄な人間という意味)である“チュニチュニ”ことヒジュン(クォン・ユル)を通じて、それぞれの人物の人生で最もくだらなく、最も熾烈な青春の断面を描いた。
特にインヨ、モッパン、ヒョンピ(現実の「現」とPlayer Killの「P」を取って作られた造語。ウェブ上の対立が現実世界の喧嘩や殺人などを招くこと)など、これまでの映画では取り上げられなかったインターネット文化は、オム・テファ監督特有の感覚的な映像やキッチュな魅力と出会い、これまでにない独特な映画が誕生した。また、コミュニティポータルサイトDCインサイドの格闘技ギャラリーで実際に行われたアマチュア格闘技“イントゥギ”を題材にしているだけに、リアルな躍動感がそのまま伝わってくる。
今回の作品で自身の欲求を満たすために格闘技を続ける格闘少女ヨンジャ役を演じたリュ・ヘヨンは、劇中で終始スクリーンを溶かすようなエネルギーで観客をとことん引き付ける。2008年に短編映画「女子高生だ」を通じて女優デビューした彼女は、「未成年」(2011年、監督:ヤン・イクチュン)、「卒業旅行」(2012年、監督:パク・ソンジュ)など規模は小さくてもしっかりとした構成の多くの短編映画で印象深い演技を披露し、“短編映画界のチョン・ジヒョン”というニックネームも手にした。
「オム・テファ監督とは『ハートバイブレーター』(2011)、『森』(2012)に続き、今回が3度目の作品です。監督と好みがかなり似ているとも言えましょうか。監督は普段の私の姿をよく知っているので、ヨンジャというキャラクターに“リュ・ヘヨン”をたくさん反映してくださいました。ヨンジャの『~何だ』という口癖も、実際に私がよく使う口癖なんですよ(笑) プロデューサーさんが、英語字幕を作る時に他の俳優たちのは実際に発せられた台詞を聞いて翻訳をしたのに、私の台詞だけシナリオ通りに翻訳をしました。ヨンジャの言葉遣いは実際の私の言葉遣いそのままなので、私もシナリオ通りに台詞を言うことができました。脚本の台詞と変わっているところがないということなんです(笑)」
「イントゥギ」はインターネット文化を題材にしているが、“彼らだけの映画”に転落するようなミスは犯していない。DCインサイド、モッパン、BJ(Broadcasting Jockey:インターネットで個人放送をする人)など、パソコンのモニター画面に映し出される話を背景にしていながらも、その中に盛り込まれている感情はいわゆる“88万ウォン世代(88万ウォン(約8万4千円)世代:韓国で平均給与額が88万ウォンである大卒の非正規雇用者を示す)”、インヨ世代のように現実に馴染めず彷徨う若者たちの孤独と虚しさだ。
「もちろん、用語や題材がインターネット文化に慣れていない人には違和感があるかもしれないので、私だけでなく監督やスタッフみんなが心配していました。その違和感が与えるイメージのせいで多くの人が共感してくれないのではないかと心配しました。しかし、完成した映画を見てみると、慣れていない題材でも全く問題はないようでした。映画を鑑賞し、『イントゥギ』の情緒を理解するには全く邪魔にならないんです。『イントゥギ』はインヨたちの寂しさが重要な映画です。それがとても上手く表現されたと思います」
リュ・ヘヨンの演じた女子高生ヨンジャは、全国大会で準優勝した格闘少女だが、放課後にはモッパンのBJとして活躍している人物だ。昼間には制服を着て退屈そうに教室に座っているヨンジャだが、夜になるとピンク色のかつらを被り、モニターの前でチキンのモッパンを撮りながら寂しさを和らげる。
「『イントゥギ』を撮影しながら、モッパンが人気を博している理由について真剣に悩んでみました。それは一種の欲求の満たし方だと思います。モッパンを撮ろうと、モッパンを見ようとそれ自体が人々の食欲をずっと刺激するんですね。寂しさをモッパンで解消しているんです。面白いのは、私がモッパンのシーンを撮影する際、確かにヤンニョムチキン(フライドチキンにたれをかけたもの)を要求したのですが、撮影チームはフライドチキンを、それも冷たいもので用意していました。『これをどうやって美味しそうに食べるんですか?!』と抗議したのですが、この映画は本当に少ない予算で撮影されたものでして……(笑) しかし、画面では本当に美味しそうに食べているように撮れていました。もう、ヤンニョムチキンとフライドチキンって値段はあまり変わらないのに(笑)」
「イントゥギ」が魅力的なのは、下手に20代の若者を慰めようとも、訓戒を垂れようともしないところだ。その代わり、あなた一人だけが大変なわけでも寂しいわけではないからこの憂鬱な世界と一緒に戦ってみようとそっと声をかける。「私たちは戦っている」という意味の「Ing+トゥギ」というタイトルだけ見ても分かるのではないか。リュ・ヘヨンも悩みが多く不安な20代の青春の真っ只中にいる。撮影が終わり、一人で満員バスに乗って家に帰る時、騒がしい撮影現場で誰かが初めて自分に声をかけてくれた時に喉の奥まで熱い何かが込み上げてくる。
「私は事務所にも所属していないですし、マネージャーもいないので、監督の車に乗って撮影現場へ移動しました。撮影の中盤が過ぎた時、一人のスタッフが私に『ヘヨンさん、元気に過ごしていますか?』と挨拶をしてくれました。その言葉に一瞬呆然としてしまいました。そしてとっさに『ヨンジャは本当に寂しい子です』という言葉が自然と出てきました。実は、私もヨンジャと同じように寂しかったんでしょうね。今まで元気にやってきましたし、これからもそうするつもりですが、時々コントロールがきかず、寂しさが急に込み上げてくる時があります」
桂園(ケウォン)芸術高校を卒業し、建国(コングク)大学映画学科に在学中の彼女は幸せに暮らしたくて役者の道を選んだ。中学時代には成績が全校の上位に入るほど優等生だった彼女は、人生の最も幸せな瞬間である学生時代を勉強だけをしながら生きたくはなかったという。「3年間だけ我慢して、大学に行ってから好きにしなさい」という周りの助言が理解できなかった。リュ・ヘヨンは「一日も勿体無いのに、3年間もどうやって我慢するの!」という気持ちで芸術高校の演劇映画科に入学し、様々な短編映画に出演しながら演技の面白さにどっぷりとハマった。スタッフたちが撮影現場の休み時間に和気藹々と集まってハンバーガーを食べながら会話をする姿を見て、初めて幸せを感じた。
「最近は本当に悩みが尽きません。これからどのような色の役者になるべきか、キャラクターを構築すべきかということです。コン・ヒョジン先輩やペ・ドゥナ先輩が大好きです。お二人のように面白い作品にたくさん出演しながら、自由に演技をしたいです。悩みも心配も多いですが、幸いと思えるのは『私はインヨだ!』と思いながらも漠然とした自信だけは捨てていないことです」
映画「イントゥギ」(監督:オム・テファ、制作:KAFA FILMS)は寂しさに彷徨う若者たちと共感して、リュ・ヘヨン(22歳)という輝く女優に出会える幸せを届けてくれるという点で、“必見映画”と言っても過言ではない。
「イントゥギ」は、短編映画「森」で第11回ミジャンセン短編映画祭で全会一致による大賞を受賞したオム・テファ監督の長編デビュー作であり、早くから映画界内外の関心を一身に受けたプロジェクトだ。オンラインコミュニティで対立していたニックネーム“チョッジョンソン”に現実世界で急襲されるテシク(オム・テグ)、モッパン(食べる番組)で自らの欲求を解消するヨンジャ(リュ・ヘヨン)、富裕層のインヨ(無駄な人間という意味)である“チュニチュニ”ことヒジュン(クォン・ユル)を通じて、それぞれの人物の人生で最もくだらなく、最も熾烈な青春の断面を描いた。
特にインヨ、モッパン、ヒョンピ(現実の「現」とPlayer Killの「P」を取って作られた造語。ウェブ上の対立が現実世界の喧嘩や殺人などを招くこと)など、これまでの映画では取り上げられなかったインターネット文化は、オム・テファ監督特有の感覚的な映像やキッチュな魅力と出会い、これまでにない独特な映画が誕生した。また、コミュニティポータルサイトDCインサイドの格闘技ギャラリーで実際に行われたアマチュア格闘技“イントゥギ”を題材にしているだけに、リアルな躍動感がそのまま伝わってくる。
今回の作品で自身の欲求を満たすために格闘技を続ける格闘少女ヨンジャ役を演じたリュ・ヘヨンは、劇中で終始スクリーンを溶かすようなエネルギーで観客をとことん引き付ける。2008年に短編映画「女子高生だ」を通じて女優デビューした彼女は、「未成年」(2011年、監督:ヤン・イクチュン)、「卒業旅行」(2012年、監督:パク・ソンジュ)など規模は小さくてもしっかりとした構成の多くの短編映画で印象深い演技を披露し、“短編映画界のチョン・ジヒョン”というニックネームも手にした。
「オム・テファ監督とは『ハートバイブレーター』(2011)、『森』(2012)に続き、今回が3度目の作品です。監督と好みがかなり似ているとも言えましょうか。監督は普段の私の姿をよく知っているので、ヨンジャというキャラクターに“リュ・ヘヨン”をたくさん反映してくださいました。ヨンジャの『~何だ』という口癖も、実際に私がよく使う口癖なんですよ(笑) プロデューサーさんが、英語字幕を作る時に他の俳優たちのは実際に発せられた台詞を聞いて翻訳をしたのに、私の台詞だけシナリオ通りに翻訳をしました。ヨンジャの言葉遣いは実際の私の言葉遣いそのままなので、私もシナリオ通りに台詞を言うことができました。脚本の台詞と変わっているところがないということなんです(笑)」
「イントゥギ」はインターネット文化を題材にしているが、“彼らだけの映画”に転落するようなミスは犯していない。DCインサイド、モッパン、BJ(Broadcasting Jockey:インターネットで個人放送をする人)など、パソコンのモニター画面に映し出される話を背景にしていながらも、その中に盛り込まれている感情はいわゆる“88万ウォン世代(88万ウォン(約8万4千円)世代:韓国で平均給与額が88万ウォンである大卒の非正規雇用者を示す)”、インヨ世代のように現実に馴染めず彷徨う若者たちの孤独と虚しさだ。
「もちろん、用語や題材がインターネット文化に慣れていない人には違和感があるかもしれないので、私だけでなく監督やスタッフみんなが心配していました。その違和感が与えるイメージのせいで多くの人が共感してくれないのではないかと心配しました。しかし、完成した映画を見てみると、慣れていない題材でも全く問題はないようでした。映画を鑑賞し、『イントゥギ』の情緒を理解するには全く邪魔にならないんです。『イントゥギ』はインヨたちの寂しさが重要な映画です。それがとても上手く表現されたと思います」
リュ・ヘヨンの演じた女子高生ヨンジャは、全国大会で準優勝した格闘少女だが、放課後にはモッパンのBJとして活躍している人物だ。昼間には制服を着て退屈そうに教室に座っているヨンジャだが、夜になるとピンク色のかつらを被り、モニターの前でチキンのモッパンを撮りながら寂しさを和らげる。
「『イントゥギ』を撮影しながら、モッパンが人気を博している理由について真剣に悩んでみました。それは一種の欲求の満たし方だと思います。モッパンを撮ろうと、モッパンを見ようとそれ自体が人々の食欲をずっと刺激するんですね。寂しさをモッパンで解消しているんです。面白いのは、私がモッパンのシーンを撮影する際、確かにヤンニョムチキン(フライドチキンにたれをかけたもの)を要求したのですが、撮影チームはフライドチキンを、それも冷たいもので用意していました。『これをどうやって美味しそうに食べるんですか?!』と抗議したのですが、この映画は本当に少ない予算で撮影されたものでして……(笑) しかし、画面では本当に美味しそうに食べているように撮れていました。もう、ヤンニョムチキンとフライドチキンって値段はあまり変わらないのに(笑)」
「イントゥギ」が魅力的なのは、下手に20代の若者を慰めようとも、訓戒を垂れようともしないところだ。その代わり、あなた一人だけが大変なわけでも寂しいわけではないからこの憂鬱な世界と一緒に戦ってみようとそっと声をかける。「私たちは戦っている」という意味の「Ing+トゥギ」というタイトルだけ見ても分かるのではないか。リュ・ヘヨンも悩みが多く不安な20代の青春の真っ只中にいる。撮影が終わり、一人で満員バスに乗って家に帰る時、騒がしい撮影現場で誰かが初めて自分に声をかけてくれた時に喉の奥まで熱い何かが込み上げてくる。
「私は事務所にも所属していないですし、マネージャーもいないので、監督の車に乗って撮影現場へ移動しました。撮影の中盤が過ぎた時、一人のスタッフが私に『ヘヨンさん、元気に過ごしていますか?』と挨拶をしてくれました。その言葉に一瞬呆然としてしまいました。そしてとっさに『ヨンジャは本当に寂しい子です』という言葉が自然と出てきました。実は、私もヨンジャと同じように寂しかったんでしょうね。今まで元気にやってきましたし、これからもそうするつもりですが、時々コントロールがきかず、寂しさが急に込み上げてくる時があります」
桂園(ケウォン)芸術高校を卒業し、建国(コングク)大学映画学科に在学中の彼女は幸せに暮らしたくて役者の道を選んだ。中学時代には成績が全校の上位に入るほど優等生だった彼女は、人生の最も幸せな瞬間である学生時代を勉強だけをしながら生きたくはなかったという。「3年間だけ我慢して、大学に行ってから好きにしなさい」という周りの助言が理解できなかった。リュ・ヘヨンは「一日も勿体無いのに、3年間もどうやって我慢するの!」という気持ちで芸術高校の演劇映画科に入学し、様々な短編映画に出演しながら演技の面白さにどっぷりとハマった。スタッフたちが撮影現場の休み時間に和気藹々と集まってハンバーガーを食べながら会話をする姿を見て、初めて幸せを感じた。
「最近は本当に悩みが尽きません。これからどのような色の役者になるべきか、キャラクターを構築すべきかということです。コン・ヒョジン先輩やペ・ドゥナ先輩が大好きです。お二人のように面白い作品にたくさん出演しながら、自由に演技をしたいです。悩みも心配も多いですが、幸いと思えるのは『私はインヨだ!』と思いながらも漠然とした自信だけは捨てていないことです」
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- キム・スジョン、写真 : ムン・スジ、CGV Movie Collage
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