映画「傷だらけのふたり」ファン・ジョンミン“40代半ばで演じるロマンス、より深みが出た”
※この記事には映画のストーリーに関する内容が含まれています。
「観客数はいつもそうですが、多いと嬉しいです。『新しき世界』が470万人を動員しましたが、それを超えることが今年の目標です(笑) しかし、必死に演じ、僕の器に水をいっぱい溜めるために努力しましたが、僕の手から離れて映画館で上映されることになると『どうぞお楽しみください』としか思いません」
昨年映画「新しき世界」で青龍映画賞男優主演賞を受賞し、最高の1年を送ったこの俳優。その喜びを満喫するのもつかの間、受賞するや否や荷造りをして釜山(プサン)に赴き、ユン・ジェギュン監督の映画「国際市場で逢いましょう」の撮影に合流した。賞などにとらわれず、いつも私たちの傍で最高の演技を披露するために勢いよく走ってきた彼は、まさに“演技の達人”ファン・ジョンミンだ。
彼は2014年の1本目の作品として映画「傷だらけのふたり」を選んだ。映画「ユア・マイ・サンシャイン」以来9年ぶりに正統派ロマンスに挑戦する。これまでロマンスに対して渇きを感じていた彼にとって「傷だらけのふたり」は「新しき世界」と「生き残るための3つの取引」などで見せてくれた、タフな男らしい魅力だけでなく、「ユア・マイ・サンシャイン」で見せた一人の女性しか見えない猪突的で一途な愛まで表現できる作品だ。「新しき世界」と「ユア・マイ・サンシャイン」、ファン・ジョンミンに男優主演賞をくれた両作品のキャラクターを一つにしたかのようだ。
映画の中でファン・ジョンミンは40歳で、蓄えたものは何もなく、兄の家に居候しながら甥と喧嘩をするみっともないテイルを演じた。ただ、貸金業を営む友達(チョン・マンシク)の下で取り立ての仕事だけは立派にする人物だ。お金を借りたのであれば誰であれ数倍の利息をつけて返してもらう仕事である。
適当に取り立てに回り、喧嘩には自信があるこの男、運命の相手に出会うが、それは長い持病で入院して意識もない父親の面倒を見ている水協の職員ホジョン(ハン・ヘジン)である。彼女の父親が借りたお金を彼女に返してもらわなければならないのだが、血も涙もないテイルが彼女だけは大目に見るのだ。
「テイルは職業上善良な人ではなかったと思います。内面を覗いてみると『あ、あの人も優しい人だったんだ』と観客も分かってくれるでしょう。ヤクザやチンピラたちがみんな、中身まで悪い人ではないと思います。普通は悪い人だろうと思います。風俗店に出入りしたり、田舎で取り立ての仕事をしたり。(テイルも)彼女に出会わなかったらずっとそのような人生を生きていたでしょう。
しかし、テイルは恋に落ち、自身の現実を省みて考えるようになります。自身の現実を客観的に見るのです。周りからいくら良くないと言われても何も感じずにいましたが、愛する女性に『これはちょっと嫌』と言われると、本当にこれが嫌いで駄目なことなんだと感じるようです。しかし、生涯そのように生きてきた人に、それをすぐに正せるはずはありません。なので失敗してしまい、複雑に絡まってしまうのだと思います」
テイルはホジョンに借金を減らす条件として自分と1時間デートをすることを提案する。お昼を一緒に食べようと粉食店(ブンシクジョム、韓国式の軽食堂)に行っては、ホジョンがどんな料理が好きなのか分からず、ラーメンに海苔巻き、焼き餃子にトッポギなど、粉食店にある料理を種類別にオーダーしテーブルいっぱいに並べるが、テイルをヤクザのチンピラくらいにしか思っていないホジョンは箸もつけない。
しかし、テイルが意識もなく身動きもできない自分の父を訪ねては、息子のようにお風呂に入れる姿を偶然目撃したホジョンは、テイルという男がそこまで悪い人ではないということを少しずつ知っていく。彼に対して徐々に好感が芽生え始め、そうしてホジョンは箸を持って料理を食べるようになる。テイルがくれた焼き餃子もぱくっと口の中に入れた。テイルも仕事と介護で疲れたホジョンのためにビタミンや高麗人参をプレゼントしたり、鴨肉を買ってきて食べさせたりする。
「粉食店などのモンタージュシーンを本当にたくさん撮りました。どこでどう使われるか分かりませんので。粉食店だけでなく、パスタなど色々と食べに行きましたが、主に粉食店のシーンが使われましたね。監督の設定でした。恐らく40歳のテイルにできる最善のことだったと思います。田舎ではあまり行くところがありませんので。実は漢方の材料もありました。漢方薬を作ってくれるシーンがありましたが、それは編集されましたね」
愛する女性にも出会い、テイルはチンピラ兼取り立ての仕事を辞めようとする。自身が最も好きなチキン屋を出して、ホジョンとの結婚生活を夢見るのだ。このように素朴だが幸せな未来を夢見ているテイルを脳腫瘍が襲う。生涯兄に兄として接することもなく、父に優しい言葉すらかけなかったテイルは、自身に残った時間が少ないことを知り、家族を見る視線が変わる。特に愛するホジョンを見る視線は更に深く、切なくなる。
「死が目の前にある人生をどう表現すれば良いのかとても悩みました。僕だったら恐怖を感じるのではないかと思いました。しかし、テイルの立場では脳腫瘍と分かってから刑務所で2年という時間を送ったので、病を認め自らそれを受け入れる段階に来ていると思いました。ただし、2年という時間が立っても、死に対する恐怖が瞳には宿っていたほうが良いと思いました。不安や死に対する恐怖は内面でずっと持ち続けたままにしたいと思いました」
特に印象的なシーンは認知症を患っている父親が横になっている姿を見ながら脚を揉んであげるシーンだ。いつの間にか眠った年老いた父の脚が非常に細くなっていることに気づき、脚を揉みながら涙を流すテイルの姿は長く記憶に残る。
「不治の病で死ぬ寸前の状況で、物事を見る視線も以前とは変わるだろうと思いました。いつもの同じ人たちも新しい視線で見るようになるのです。涙を流したバージョンも、流さなかったバージョンもあります。複数回撮影しましたが、そのシーンが選ばれました」
「群山には鉄道も含め、観光地が多いです。まだ群山には過去、日本統治時代だった頃の日本式の建物がそのまま残っていました。料理も美味しいです。『傷だらけのふたり』を見て、ついでに群山へ旅行するともっと良いと思います」
これと共にファン・ジョンミンは映画で散髪屋を経営する兄として出演する俳優クァク・ドウォンと、貸金業の社長であり友人として出演した俳優チョン・マンシクに対して愛情を込めた言葉も忘れなかった。
「家族の中にドウォンがいなかったら本当に大変なことになっていたと思います。本当に自分の役割をよく果たしてくれました。チョン・マンシクとは『生き残るための3つの取引』でも共演したことがあり、心強い方で、今回も本当に見事に演じてくれました」
映画「ユア・マイ・サンシャイン」で恋に命をかけた田舎の青年役で韓国の国民を泣かせたファン・ジョンミン。「ユア・マイ・サンシャイン」と「傷だらけのふたり」を比較しながら見る観客も多いはずだ。
「『ユア・マイ・サンシャイン』の時よりはもっと深みがあると思います。当時僕は30歳で、今は40代中盤です。明らかに40歳の僕に表現できる愛の深さがもっとあるのではないかと思います。昔から、この歳になってロマンスに出演したらどうなのだろうかと気になっていました。
観客には、映画を見て愛の情熱よりは、記憶についてもっと考えていただきたいと思います。愛そのものより、その愛が終わってから、その後に残る記憶のほうがもっと悲しいだろうと思うからです。そのような記憶が一瞬にして壊れる時があると思います。その瞬間は本当に悲しいでしょう。男も女も」
「傷だらけのふたり」の後ファン・ジョンミンは、キム・ユンジンと主演を務めるユン・ジェギュン監督の映画「国際市場で逢いましょう」で今年の下半期に再び観客のもとを訪れる。また、3月からはリュ・スンワン監督の映画「ベテラン」の撮影に入る。未だに忠武路(チュンムロ)の数多くの監督たちが彼を求めており、大衆はファン・ジョンミンという俳優の作品を信じて見る。時間が流れても役者としてトップの座を守っているのだ。
「後悔しないために必死に取り組むほうです。作品に入ると、それが僕の人生の最初であり最後の作品になります。一度関わったら手放さなければならないのが作品なので必死になるしかありません。しかし、30代の時は『とりあえず頑張ろう』と必死に臨んでいたとすれば、40代ではその必死さも楽しむようになりました。今はただ頑張るよりは『楽しみながら必死になろう』に変わりました。そうすると多少楽になったと思います。頑張るだけです。あまり大変なことはありません」
「観客数はいつもそうですが、多いと嬉しいです。『新しき世界』が470万人を動員しましたが、それを超えることが今年の目標です(笑) しかし、必死に演じ、僕の器に水をいっぱい溜めるために努力しましたが、僕の手から離れて映画館で上映されることになると『どうぞお楽しみください』としか思いません」
昨年映画「新しき世界」で青龍映画賞男優主演賞を受賞し、最高の1年を送ったこの俳優。その喜びを満喫するのもつかの間、受賞するや否や荷造りをして釜山(プサン)に赴き、ユン・ジェギュン監督の映画「国際市場で逢いましょう」の撮影に合流した。賞などにとらわれず、いつも私たちの傍で最高の演技を披露するために勢いよく走ってきた彼は、まさに“演技の達人”ファン・ジョンミンだ。
彼は2014年の1本目の作品として映画「傷だらけのふたり」を選んだ。映画「ユア・マイ・サンシャイン」以来9年ぶりに正統派ロマンスに挑戦する。これまでロマンスに対して渇きを感じていた彼にとって「傷だらけのふたり」は「新しき世界」と「生き残るための3つの取引」などで見せてくれた、タフな男らしい魅力だけでなく、「ユア・マイ・サンシャイン」で見せた一人の女性しか見えない猪突的で一途な愛まで表現できる作品だ。「新しき世界」と「ユア・マイ・サンシャイン」、ファン・ジョンミンに男優主演賞をくれた両作品のキャラクターを一つにしたかのようだ。
映画の中でファン・ジョンミンは40歳で、蓄えたものは何もなく、兄の家に居候しながら甥と喧嘩をするみっともないテイルを演じた。ただ、貸金業を営む友達(チョン・マンシク)の下で取り立ての仕事だけは立派にする人物だ。お金を借りたのであれば誰であれ数倍の利息をつけて返してもらう仕事である。
適当に取り立てに回り、喧嘩には自信があるこの男、運命の相手に出会うが、それは長い持病で入院して意識もない父親の面倒を見ている水協の職員ホジョン(ハン・ヘジン)である。彼女の父親が借りたお金を彼女に返してもらわなければならないのだが、血も涙もないテイルが彼女だけは大目に見るのだ。
「テイルは職業上善良な人ではなかったと思います。内面を覗いてみると『あ、あの人も優しい人だったんだ』と観客も分かってくれるでしょう。ヤクザやチンピラたちがみんな、中身まで悪い人ではないと思います。普通は悪い人だろうと思います。風俗店に出入りしたり、田舎で取り立ての仕事をしたり。(テイルも)彼女に出会わなかったらずっとそのような人生を生きていたでしょう。
しかし、テイルは恋に落ち、自身の現実を省みて考えるようになります。自身の現実を客観的に見るのです。周りからいくら良くないと言われても何も感じずにいましたが、愛する女性に『これはちょっと嫌』と言われると、本当にこれが嫌いで駄目なことなんだと感じるようです。しかし、生涯そのように生きてきた人に、それをすぐに正せるはずはありません。なので失敗してしまい、複雑に絡まってしまうのだと思います」
やぼったく香ばしい恋から、死を前にした恐怖まで演じる
テイルの一人の女性を愛する方法は、今の20代や30代とは違う。普通はキラキラした綺麗なジュエリーや美しい香りがする花束、香水などをプレゼントして愛する女性の心を得ようとするはずだ。しかし、テイルの求愛はやぼったいが香ばしく、その残香はさらに長引く。テイルはホジョンに借金を減らす条件として自分と1時間デートをすることを提案する。お昼を一緒に食べようと粉食店(ブンシクジョム、韓国式の軽食堂)に行っては、ホジョンがどんな料理が好きなのか分からず、ラーメンに海苔巻き、焼き餃子にトッポギなど、粉食店にある料理を種類別にオーダーしテーブルいっぱいに並べるが、テイルをヤクザのチンピラくらいにしか思っていないホジョンは箸もつけない。
しかし、テイルが意識もなく身動きもできない自分の父を訪ねては、息子のようにお風呂に入れる姿を偶然目撃したホジョンは、テイルという男がそこまで悪い人ではないということを少しずつ知っていく。彼に対して徐々に好感が芽生え始め、そうしてホジョンは箸を持って料理を食べるようになる。テイルがくれた焼き餃子もぱくっと口の中に入れた。テイルも仕事と介護で疲れたホジョンのためにビタミンや高麗人参をプレゼントしたり、鴨肉を買ってきて食べさせたりする。
「粉食店などのモンタージュシーンを本当にたくさん撮りました。どこでどう使われるか分かりませんので。粉食店だけでなく、パスタなど色々と食べに行きましたが、主に粉食店のシーンが使われましたね。監督の設定でした。恐らく40歳のテイルにできる最善のことだったと思います。田舎ではあまり行くところがありませんので。実は漢方の材料もありました。漢方薬を作ってくれるシーンがありましたが、それは編集されましたね」
愛する女性にも出会い、テイルはチンピラ兼取り立ての仕事を辞めようとする。自身が最も好きなチキン屋を出して、ホジョンとの結婚生活を夢見るのだ。このように素朴だが幸せな未来を夢見ているテイルを脳腫瘍が襲う。生涯兄に兄として接することもなく、父に優しい言葉すらかけなかったテイルは、自身に残った時間が少ないことを知り、家族を見る視線が変わる。特に愛するホジョンを見る視線は更に深く、切なくなる。
「死が目の前にある人生をどう表現すれば良いのかとても悩みました。僕だったら恐怖を感じるのではないかと思いました。しかし、テイルの立場では脳腫瘍と分かってから刑務所で2年という時間を送ったので、病を認め自らそれを受け入れる段階に来ていると思いました。ただし、2年という時間が立っても、死に対する恐怖が瞳には宿っていたほうが良いと思いました。不安や死に対する恐怖は内面でずっと持ち続けたままにしたいと思いました」
特に印象的なシーンは認知症を患っている父親が横になっている姿を見ながら脚を揉んであげるシーンだ。いつの間にか眠った年老いた父の脚が非常に細くなっていることに気づき、脚を揉みながら涙を流すテイルの姿は長く記憶に残る。
「不治の病で死ぬ寸前の状況で、物事を見る視線も以前とは変わるだろうと思いました。いつもの同じ人たちも新しい視線で見るようになるのです。涙を流したバージョンも、流さなかったバージョンもあります。複数回撮影しましたが、そのシーンが選ばれました」
「『傷だらけのふたり』のロマンス、『ユア・マイ・サンシャイン』の時より深くなった」
ファン・ジョンミンは「傷だらけのふたり」の背景である群山(グンサン)で3ヶ月ほど生活をした。たまにソウルに行ったりもしたが、主に群山で監督や撮影監督、照明監督と一緒に映画を見に行ったり、ご飯を食べたり遊んだりしたという。そうしてファン・ジョンミンは全身で群山を受け入れ、カメラの前で繰り広げて見せた。「群山には鉄道も含め、観光地が多いです。まだ群山には過去、日本統治時代だった頃の日本式の建物がそのまま残っていました。料理も美味しいです。『傷だらけのふたり』を見て、ついでに群山へ旅行するともっと良いと思います」
これと共にファン・ジョンミンは映画で散髪屋を経営する兄として出演する俳優クァク・ドウォンと、貸金業の社長であり友人として出演した俳優チョン・マンシクに対して愛情を込めた言葉も忘れなかった。
「家族の中にドウォンがいなかったら本当に大変なことになっていたと思います。本当に自分の役割をよく果たしてくれました。チョン・マンシクとは『生き残るための3つの取引』でも共演したことがあり、心強い方で、今回も本当に見事に演じてくれました」
映画「ユア・マイ・サンシャイン」で恋に命をかけた田舎の青年役で韓国の国民を泣かせたファン・ジョンミン。「ユア・マイ・サンシャイン」と「傷だらけのふたり」を比較しながら見る観客も多いはずだ。
「『ユア・マイ・サンシャイン』の時よりはもっと深みがあると思います。当時僕は30歳で、今は40代中盤です。明らかに40歳の僕に表現できる愛の深さがもっとあるのではないかと思います。昔から、この歳になってロマンスに出演したらどうなのだろうかと気になっていました。
観客には、映画を見て愛の情熱よりは、記憶についてもっと考えていただきたいと思います。愛そのものより、その愛が終わってから、その後に残る記憶のほうがもっと悲しいだろうと思うからです。そのような記憶が一瞬にして壊れる時があると思います。その瞬間は本当に悲しいでしょう。男も女も」
「傷だらけのふたり」の後ファン・ジョンミンは、キム・ユンジンと主演を務めるユン・ジェギュン監督の映画「国際市場で逢いましょう」で今年の下半期に再び観客のもとを訪れる。また、3月からはリュ・スンワン監督の映画「ベテラン」の撮影に入る。未だに忠武路(チュンムロ)の数多くの監督たちが彼を求めており、大衆はファン・ジョンミンという俳優の作品を信じて見る。時間が流れても役者としてトップの座を守っているのだ。
「後悔しないために必死に取り組むほうです。作品に入ると、それが僕の人生の最初であり最後の作品になります。一度関わったら手放さなければならないのが作品なので必死になるしかありません。しかし、30代の時は『とりあえず頑張ろう』と必死に臨んでいたとすれば、40代ではその必死さも楽しむようになりました。今はただ頑張るよりは『楽しみながら必死になろう』に変わりました。そうすると多少楽になったと思います。頑張るだけです。あまり大変なことはありません」
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- チョ・キョンイ 写真 : イ・ジョンミン
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