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イ・ユンジ「30歳になったら自分にプライドを持てるようになりました」

10Asia

人々が女優イ・ユンジを身近に感じる理由は、彼女がデビュー10年になるからだけではないだろう。時間の経過と親しみやすさは必ずしも比例しない。築いてきた10年という時間よりも、はっきりとした目鼻立ちの裏に隠された彼女の温かくて明るいイメージが、身近な女優として人々の記憶に刻まれている。

しかし、10年という歳月の中で、彼女の親しみやすいイメージが彼女にとって障壁になったこともあったかもしれない。実際に会ったイ・ユンジは、作品で見た通りしっかりしていて堅実な女性だった。しかし、のびのびとした明るい笑顔だけが彼女の全てではないようだ。

では、まだ私たちが発見できていないイ・ユンジとはどんな人物だろう? 30歳を越えた女優イ・ユンジも、その答えを見つけるため必死に生きている。女優として役の中で生きている時間とその狭間で生きている時間、女優イ・ユンジとイ・ユンジの境界を区別するために設けた1時間のインタビュー。そのイ・ユンジとの対話をまとめた。

―ドラマ「王(ワン)家の家族たち」は圧倒的な人気を誇ったため、他のインタビューではほとんどドラマについての話をしただろうと思う。昨年は演劇「クローザー」の舞台にも立ち、同じ時期にドラマにも出演した。全く違う2つのキャラクターを演じ、バランスを取ることが難しかったと思うが。

イ・ユンジ:全く違うタイプのキャラクターだったので自分でも不安に思っていましたが、混乱はありませんでした。背景があまりにも違ったため、明確に区別することができました。アリスになったりワン・グァンバクになったり、“イ・ユンジ”が2人の女性の間を行き来していることを忘れないよう、常に緊張を緩めずに頑張りました。体調を崩したり怪我をしないように、普段よりもしっかり体調管理をしました。

―「クローザー」のアリス、「王家の家族たち」のグァンバクの間を行き来するイ・ユンジと言うと、「2つの役を行き来する中で守りたかったものは自分自身だった」という風にも聞えるが。

イ・ユンジ:そうです。アリスはとても明るいキャラクターというわけではなかったのですが、気難しいキャラクターでもありませんでした。グァンバクも家族の集団の中にいたのでそれほどプレッシャーを感じる役ではありませんでしたが、自分自身の存在を忘れないために努力しました。実際、ドラマの撮影をして演劇の舞台にも立つ日もありましたが、その度に“しっかりしよう! ドラマも演劇も両方重要な仕事だし、演じたかった役なんだから!”と自分に言い聞かせ、自分で自分を試す機会だと思っていました。不思議なことに、2つの作品は両方とも雰囲気が非常に良く、6ヶ月の間、携帯のトークアプリの中にある「クローザー」のチャットルームと「王家の家族たち」のチャットルームでは、メッセージが頻繁に飛び交っていました。

―「クローザー」と「王家の家族たち」の両チームとも和気藹々とした雰囲気だったと聞いた。そして両チームの共通点はイ・ユンジだが、“イ・ユンジがムードメーカだった”ということだろうか?(笑)

イ・ユンジ:ハハハ。私の存在というよりも、どちらのチームも皆食べることが好きだったからだと思います。いつも“私が参加しない今日は皆、練習しながら何を食べているのかな?”とか“今日は誰があみだくじゲームでおやつを御馳走するのかな?”と現場の様子が気になっていました。特に「王家の家族たち」の出演者たちは皆“本当に俳優?”と思うほどずっとお箸を動かしていました。「クローザー」も同様でしたが、「王家の家族たち」はタイトルからも分かるように、家族が皆ご飯を通して繋がっています。そういう意味で今回私はたくさんの家族を得ることができました。

―「王家の家族たち」は最初から家族という言葉ではなく、同じ屋根の下で共に暮らしながら皆で一緒に食事をする人たちを強調していた。放送中に“マクチャン”(日常では起こらないような出来事や事件が次々と起きる韓国特有のドラマのこと)議論が起こり、エンディングも衝撃的だったが、家族皆で一緒にテーブルを囲む食事は以前として変わらなかった。エンディングで30年後の年老いた姿になった時はどんな気持ちだったのか?

イ・ユンジ:マクチャン議論は知っていましたが、脚本家の先生が「最後まで見守りましょう」とおっしゃってくれました。エンディングシーンは本当に楽しかったです。普通、あのような扮装をするドラマはないですし、家族全員が年老いた扮装をするケースなんてあまりないですよね。恐らく今後もないと思います(笑) さらにドラマが放送されてから次の週、「ギャグコンサート」でパロディーされたと聞いて“「王家の家族たち」のエンディングは異色だったんだ”と感じました(笑)

―かなり型破りなエンディングだった。最近ほとんどのドラマでエンディング間近で緊張を緩める傾向があったが、そう考えると「王家の家族たち」のエンディングは一枚上手だった。

イ・ユンジ:期待が高ければ高いほど不満も出てくると思います。視聴率だけでなく、「王家の家族たち」はドラマ放送中に色んな事件や事故があった作品ですし、最終回を間近に控えても色んな意見が飛び交い、残りわずかの放送でどんな展開になるのか気になったのではと思います。通常、46話や47話になるとどんな展開になるのか徐々に見えてきますが、「王家の家族たち」の場合はまるで今ドラマが始まったばかりでまだ10~20話くらい話が残っているような展開になりました。その圧倒的なストーリー展開を最後まで引っ張ってくださったことを考えると、本当に脚本家の先生は名不虚伝(名声や名誉が広く知られるのにはそれだけの理由があるという意味)だと思います。ドラマでは刺激的なところがあったことも認めますが、最終的には視聴者を泣かせることができました。最後まで撮影する中で個人的に、“ああ、人生ってこんな風に騒々しいものなんだな”と思いました。世の中の現実をあまりにストレートに描き過ぎたのではと思いましたが、“一緒に暮らし、騒々しい毎日を送りながら年老いていくのが人生なのかな?”と感じながら終わりました。型破りだったりメッセージ性のないエンディングではなく、まるでイベントのようであり、不意を突くようなエンディングだったのではないでしょうか。

―「王家の家族たち」のグァンバクはイ・ユンジと同年代の人たちが悩みそうな悩みを持っているキャラクターという点で色々共感したこともあると思う。また、「クローザー」のアリスも愛についてもう一度考えさせられるキャラクターだった。愛や恋愛、結婚を間接的に経験したことで、それに対する自信があるのでは?

イ・ユンジ:そうですね、本当にそんな自信が湧いてきました(笑) 特に「王家の家族たち」は私の人生をがらりと変えた作品です。作品という言葉だけでは全てを表現できません。女優として感じたこともたくさんありましたが、30歳を過ぎた女性として感じる部分も多かったです。私は未婚ですが、結婚やシーワールド(夫の実家)をもう既に経験したような感じがします。

―スマートに恋愛する自信はあるのか?

イ・ユンジ:理論的に幅広い知識がついたので大丈夫だと思います。少なくとも人に対する理解は広がりました。理解するということは相手を認めることから始まりますが、私たちは他人を理解する時に自分が決めた基準で理解することが多いです。そんな風に自分だけの基準で人を判断しても人間関係の役には立ちません。自分だけが理解し、自分の基準だけで判断した愛は、必ずしもその関係に良い結果をもたらさないことが分かりました。今回ドラマを通して学んだ様々な美徳を実践で活用したいと思います。正直言うと、以前は他人の理解できない行動を見て“どうしてあんなことをするんだろう”と思っていましたが、今は自分だけの基準で人を評価するのは間違いだと思っています。人を判断する基準がドラマを通して広くなり、確固たるものになったと思います。

―では、“結婚はこうでなければならない”という点で、悟ったことは何だろうか?

イ・ユンジ:結婚は本当に慎重になる必要があります。ただお互いが好きだからといって結婚できるものではなく、シーワールドのことも考慮しなければならないです。ただ自分の立場ばかりを主張するよりも、親の立場に立って考えるきっかけを作ってくれたのがこのドラマでした。“娘のような嫁”や“息子のような婿”とよく言いますが、そんなものはこの世の中に存在しません。グァンバクは先に嫁いだ姉が2人いたので現実を知った上で嫁ぎましたが、シーワールドとの関わりは大変でした。ですが、そんな状況にならないよう事前に避けることは可能だと思います。30年もの間、違う環境で育った私をただ息子と結婚したからといって一瞬で娘として受け入れることは難しいと思います。結婚し、夫の父親と一緒に暮らすことは私にとって初めてですが、夫の父親にとっても私を迎え入れることは初めなのだと理解することが出来ました。このように、現実的なことが分かったので結婚についてもっと現実的に考えるようになりました。

―作品に対する愛情がとても大きい。SNSに書き込まれた文章で「インタビューを行うことでようやく作品とお別れすることができる。グァンバクと私との境で両方を見つめる大切な時間を過ごしている」とあったが、グァンバクと良い別れはできたのか?

イ・ユンジ:無理にお別れしようとは思っていません。グァンバクは心に傷を負っていたり、感情が激しかった、りハプニングに巻き込まれるキャラクターではなかったですし、「王家の家族たち」は人生の色んな面を描いたドラマだったので無理してお別れする必要はないと思いました。グァンバクだけではなく、「王家の家族たち」の全てが私の心の中に残ったとしても全く問題ありません。ですので、この作品が終わった時は他の作品が終わった時とは気持ちが違いました。

―30歳で出会った作品が「クローザー」と「王家の家族たち」だった。イ・ユンジ自身もこれらの作品が重要な作品であり、チャンスだったと語った。これらの作品と共に過ごした30歳を振り返ると?

イ・ユンジ:最近になって女優ではない私自身の人生についてもう一度整理する必要があると思うようになりました。ちょうど30歳の時に「王家の家族たち」と「クローザー」に出演することになりましたが、これらの作品に出演する中で“今までもそうだったけど、丁度良い時期に自分にぴったりの作品が現れるな”と思いました。それに29歳から30歳になった時、とても幸せを感じました。私は30歳になりたいとずっと思っていましたが、実際に30歳になってみるとまるで百人力を得たような気持ちになったのです。20代の頃は常に自分の人生に自信を持ち、堂々としていたくて最善を尽くしていましたが、そのせいで辛いこともたくさんありました。ですが、30歳になったら自分にプライドを持てるようになりました(笑)

―最後に、この質問をしてみたかった。女優としてのイ・ユンジもあるだろうが、自分だけが知る最もイ・ユンジらしいイ・ユンジは?

イ・ユンジ:私の場合は体を動かしている時がそうです。仕事のために始めた運動ですが、続けてみると本当に良かったです。普段から体を動かすことが好きなので、些細なことでも生活自体が運動になっています。雑念を消してくれる時間でもあります。
元記事配信日時 : 
記者 : 
ペ・ソニョン、写真提供 : ナムエクタス、翻訳 : チェ・ユンジョン
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