共感度0%!?「左利きの妻」鑑賞コラム…悪が輝いてこそ楽しめる愛憎復讐劇
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ヒールに乾杯!悪が輝いてこそ楽しめるのが愛憎復讐劇
たとえば恋愛ドラマやお仕事ドラマであれば、劇中で描かれる「あるある」に頷き、「この主人公の生き方に憧れる!」だったり、「彼女のセリフは共感意外なにものでもない!」などと、キャラクターに寄り添う瞬間が多く存在する。だが、個性豊かな人物たちが、ありえない状況のなか、ありえない選択を次々としていく愛憎復讐劇の場合は違う。共感度0%の強烈なキャラクターが暗躍するほどに見逃せない展開が約束されており、彼らが悪事を重ねる姿を、驚きと怒り(ときどき感嘆も)をもって視聴する。そう、画面にむかって「早くバレないかな」「この人嫌い!」などと悪口に出してしまうことこそが、物語や悪役たちへの最高の賛辞なのである。
さて、あらためて「左利きの妻」だ。幼なじみのエスターによって、財閥オーラグループの御曹司ドギョンの姿に変えられた医師スホと、その妻サナの揺るぎない愛と、スホの出自にまつわる財閥一家の秘密、めくるめく愛憎模様を事件たっぷりに描く本作における悪役は3人だ(実はもっといるのだが、登場が後半だったり、やや小物だったりするので、ここでは省略する)。そこで今回は、悪役から楽しむ「左利きの妻」鑑賞のすすめを考えてみたい。
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悪役度40%!?憎めない小悪魔エスター
はっきり言って、どうかしている。勝手に幼なじみスホ(しかも初恋相手)を死んだ恋人ドギョンの身代わりにするため整形し、彼の意識がないことをいいことに、財閥家の妻として悠々暮らす(その期間約5年)とは、どういう神経だ! と思う。だが、どうにも憎めない。そもそも、ドギョンが亡くなったとき、自分も殺されると怯えていたエスターだ。「施設育ちの自分にとって、唯一の血の繋がった家族はお腹の子だ。だから絶対幸せにしたい」という気持ちも、わからないわけではない(方法はだいぶ間違っているが)。それに、彼女の悪運の強さ、タフさはある種、尊敬ものである(苦笑)。
スホ(見た目はドギョン)の意識が戻ったときは、彼の記憶喪失に助けられた。スホとサナを引き離すために仕掛ける罠が自分に跳ね返ってきても、別の事件が運良く勃発(強運!)、あるいは、彼女が手を組む相手を変えることで、最悪の事態からまんまと免れていく(タフ!)。その“生存能力の高さ”を目の当たりにすると、むしろこのあとどう生き残るのかに興味がわき、その行動を密かに楽しみ、見届けたくなるのである。とはいえ、「どの口がそれを言う!」と思うことは無限大にあることはつけ加えておきたい。
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悪役純度100%!?息子を溺愛した母エラの罪深さ
スホを整形して、その妻サナと引き離したのはエスターだが、そもそもの原因を作ったドギョンの母エラである。溺愛する息子ドギョンをオーラグループの後継者にするため、手段を選ばないエラ。だが、そのせいで敵(ナムジュン)を作り、命より大事なドギョンを失うことになる。そんな彼女が口癖のごとく発するのが「違う、そんなはずがない」。今、目の前にいるドギョンが別人だということも、そのドギョンの命を奪ったのは自分だという事実も、目の敵にしてきたナムジュンの正体も、そしてドギョン(=スホ)の正体も……「違う、そんなはずがない」と信じないのである。「いやあなたの仕業ですから!」と突っ込まずにはいられないが、なぜここまで身勝手に都合よく思い込めるかが気になってしまう。
このあと、息子を失った悲しみ、復讐と野望の化身となったエラの暴走で物語は新たな展開へ突入していく。エラの関与が明白な赤子のスホ置き去り事件の真相も、誰も想像しなかった結末が待っているので、こちらもお見逃しなく!
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不憫さ120%!?愛と憎しみの塊ナムジュンに夢中
実は、エスターの悪巧みを裏で支えているのがナムジュンだと明らかになったとき、思わずほくそ笑んだ。というのも、復讐者という定番キャラクターを、魅力的にするのは、脚本はもちろん演者の力量によるところが大きいのだが、「このチン・テヒョンなら間違いないな」と確信したのだ。オーラグループを虎視眈々と狙い、ドギョンを陥れるためにサナを利用し窮地に陥れたくせに、サナに恋慕してからは、誰よりも彼女を守ろうと奔走する。エラとも敵対し、善とも悪ともつかない行動をし続けるナムジュンは謎だ。だが、やがてそれらすべてが“愛”のせいだと気付かされる。母の愛を知ることなく育ち、誰よりも愛を欲している男だからこそ、愛も憎しみもぶつけ方が全力。“愛しさあまって憎さ1万倍”を体現する男なのである。
サナの無償の優しさにふれたナムジュンが、サナへの想いを募らせるほど「無理なの。サナの目にあなたはいないの」とつぶやき、憎しみを募らせるほどに「憐れな人よねぇ」などと胸を痛めさせるとは……ナムジュン、おそるべし! 誰よりも愛を求めてきた男の、歪んだ愛と憎しみの物語の結末はサナとスホの運命の愛に負けず劣らず、超ドラマチック。こちらも最後まで一瞬たりとも気が抜けない!
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ライター 杉本真理■「左利きの妻」リリース情報
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