【REPORT】イ・チャンドン監督が5年ぶりの来日!仲野太賀、憧れの巨匠を前にファン全開のトーク炸裂「素敵な言葉をいただいた」
イ・チャンドン監督の代表作「シークレット・サンシャイン」「バーニング 劇場版」を含む全監督作6作品、そしてフランスのドキュメンタリー映画監督のアラン・マザールと共に製作した、イ・チャンドン自らが過去作を振り返り、創作活動の原点とその歩みを見つめる日本初公開の新作ドキュメンタリーで編成されたイ・チャンドンの本格的な特集上映「イ・チャンドン レトロスペクティヴ 4K」が8月25日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他、全国順次開催される。
長編デビュー作「グリーンフィッシュ」から「バーニング 劇場版」までの全6作品が4Kとなってスクリーンで上映。さらに、イ・チャンドン監督の制作会社パインハウス・フィルム全面協力のもと、自身が水先案内人として本作に深く携わったフランス人ドキュメンタリー映画監督のアラン・マザールによる新作ドキュメンタリー映画「イ・チャンドン アイロニーの芸術」が組み込まれ、イ・チャンドンの映像世界を存分に堪能できる本格的なレトロスペクティヴとなる。
レトロスペクティヴ開催を前に、イ・チャンドン監督が来日。「シークレット・サンシャイン 4K レストア」の先行上映会の舞台挨拶に特別ゲストで俳優の仲野太賀とともに登壇した。
上映作品は、配給元の事前アンケートで「劇場で1番観たいイ・チャンドン作品」に選ばれた「シークレット・サンシャイン 4K レストア」だった。即日完売、満席となった場内で大きな拍手で迎えられたイ・チャンドン監督は「私は映画館で観客の皆さんにお会いするのがとても久しぶりなので、とても胸がいっぱいで嬉しく思っています。皆さんにとって良い時間になってくれたら」と挨拶。続いて、かねてよりイ・チャンドン監督の大ファンを公言する仲野太賀が花束を携え、特別ゲストとして登壇!
仲野太賀は「初めて(イ・チャンドン)監督の作品に触れたのは『オアシス』でした。本当に素晴らしく美しいラブストーリーです。そこから監督の作品の虜です」と、熱い思いを伝えた。それに対し、イ・チャンドン監督は「私の映画は、観客の皆さんにとって少し居心地の悪さを感じる作品かもしれません。それでも観客の皆さんが(居心地の悪さに)打ち勝って、登場する二人の愛を受け入れてくれたら嬉しい、そんな気持ちで作りました」と話し、「仲野さんは私の願い通りに、“美しいもの”として受け入れてくださった。俳優でもある仲野さんがそれを感じてくれたことが尚更嬉しく、私にとっても意味のある事だと思います」と明かした。
舞台挨拶後に上映された「シークレット・サンシャイン 4K レストア」について、イ・チャンドン監督は、「タイトルは劇中の舞台でもある『密陽(ミリャン)』という韓国の地方都市からとっており、“謎めいた日差し”という詩的な意味も込められているこの地名に子供の頃から惹かれ、一見平凡な人生のように見えても秘密の意味が隠されている。一体それは何なのかを探し続けるような、私たちにとっての人生を象徴しているように感じていました」と明かした。
仲野太賀は同作を「究極の人間ドラマ」だと述べ、「人間のあらゆる側面をまざまざと見せつけられる。主人公が絶望の淵に追いやられる姿、藁をもつかむ気持ちで神様を受け入れる姿、その先にある究極の決断だったり……。人間って、聖なるものと俗的なものを行ったり来たりするなと思って。信じたり疑ったり、人間の複雑さに心を揺さぶられて……しゃべりすぎですか(笑)?!」と、作品への思いが一度話し出したら止まらない。
それを受けて「“聖”と“俗”、この2つはまさに映画のスタート地点で、ノートにメモをした言葉でした。言い当ててくれたのでとても驚きながらも、感謝しています。でも、これから初めて観る方のためにそれ以上は言わないでください」と、にこやかに微笑みながら静止するイ・チャンドン監督。
徐々にヒートアップする仲野太賀は、「ネタバレになるか……。いや、絶対越えていくから、大丈夫だから!」と観客へことわりを入れつつ、この作品でいちばん好きなシーンを挙げると、そこに込められているであろう、自分なりの思いの丈をぶちまけ「こちらからは以上です!」とファン全開のトークがさく裂! 会場を沸かせていた。
そして話題は、レトロスペクティヴで初上映となる監督を追ったドキュメンタリー「イ・チャンドン アイロニーの芸術」へ。意外にもイ・チャンドン監督は「じつは最後までちゃんと見れていないんです。(自身が出ていることが)あまりにぎこちなく、恥ずかしくてバツが悪い」と告白。今までのフィルモグラフィをなぞりながら、ロケ地を訪れ、あまり語られることのなかった映画監督になる前の小説家として、幼少期のエピソードが織り込まれたドキュメンタリーに「ファンならこんな言葉を聞けるのかと、嬉しい事ばかり」と仲野太賀は必見作として観客へアピールした。
最後にイ・チャンドン監督へ1つだけききたい事を、と水を向けると「映画を撮る上で、脚本を書く上で、人間を描く上で大切にしていることは何ですか?」と熟考した仲野太賀が問いかけ。「あえて言うならば、本物の人生を描きたい。作られたものではなく、ありのままの人間の姿を見せることだと思っています。観客がそれを本当のように感じられたら、自分の人生と重ねて結びつけてくれると思う」と明かし、「そういう映画を作って、私は皆さんとコミュニケーションを取りたいです」と、ゆっくりと真摯に応えた。
イ・チャンドン監督の言葉に仲野太賀は「本当に素敵な言葉をいただけて、大事にしたいと思います」と感無量。その姿にMCから監督の作品に「出たいですか?」と聞かれると「そりゃそうです(笑)! 日本の映画もイ・チャンドン監督に多大な影響を受けています。ぜひ多くの皆さんに見ていただきたいです」と伝え、舞台挨拶は和やかに終了した。
■イベント概要
「イ・チャンドン レトロスペクティヴ 4K」先行上映会 舞台挨拶
8月9日(水)19時00分~19時30分
場所:ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター1
登壇者:イ・チャンドン監督、仲野太賀 / MC:古家正亨 / 通訳:根本理恵
■作品情報
8月25日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次開催!
「イ・チャンドン アイロニーの芸術」
出演:イ・チャンドン、ムン・ソングン、ソル・ギョング、ソン・ガンホ、チョン・ドヨン、ムン・ソリ、ユ・アイン
監督:アラン・マザール「THE STRANGE CASE OF ATOM EGOYAN」(10・未)
2022 / フランス、韓国 / 韓国語 / カラー / ビスタ / 5.1ch / 99分 / 原題:LEE CHANG-DONG : THE ART OF IRONY / 協力:ツイン / 配給:JAIHO
(C)MOVIE DA PRODUCTIONS & PINEHOUSE FILM CO.,LTD.,2022
「バーニング 劇場版 4K」
出演:ユ・アイン、スティーブ・ユァン、チョン・ジョンソ
監督:イ・チャンドン
2018 / 韓国 / 韓国語 / カラー / シネスコ / 5.1ch / 148分 / 原題:버닝 / 協力:ツイン / 配給:JAIHO
(C)2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved
「ポエトリー アグネスの詩 4K レストア」
出演:ユン・ジョンヒ、イ・デヴィッド、キム・ヒラ、アン・ネサン
監督:イ・チャンドン
2010 / 韓国 / 韓国語 / カラー / ビスタ / 5.1ch / 139分 / 原題:시 / 協力:ツイン / 配給:JAIHO
(C)2010 UNIKOREA CULTURE & ART INVESTMENT CO. LTD. ET PINEHOUSE FILM. TOUS DROITS RESERVES
「シークレット・サンシャイン 4K レストア」
出演:チョン・ドヨン、ソン・ガンホ、チョ・ヨンジン、キム・ヨンジェ
監督:イ・チャンドン
2007 / 韓国 / 韓国語 / カラー / シネスコ / 5.1ch / 142分 / 原題:밀양 / 協力:ツイン / 配給:JAIHO
(C)2007 CINEMA SERVICE CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED
「オアシス 4K レストア」
出演:ソル・ギョング、ムン・ソリ、アン・ネサン、チュ・グィジョン、リュ・スンワン
監督:イ・チャンドン
2002 / 韓国 / 韓国語 / カラー / ビスタ / 5.1ch / 133分 / 原題:오아시스 / 協力:ツイン / 配給:JAIHO
(C)2002 Cineclick Asia All Rights Reserved.
「ペパーミント・キャンディー 4K レストア」
出演:ソル・ギョング、ムン・ソリ、キム・ヨジン、パク・セボム
監督:イ・チャンドン
1999 / 韓国・日本 / 韓国語 / カラー / ビスタ / 5.1ch / 130分 / 原題:박하사탕 / 協力:ツイン / 配給:JAIHO
「グリーンフィッシュ 4K レストア」
出演:ハン・ソッキュ、ムン・ソングン、シム・ヘジン、ミョン・ゲナム、オ・ジヘ、ソン・ガンホ
監督:イ・チャンドン
1997 / 韓国 / 韓国語 / カラー / ビスタ / 5.1ch / 111分 / 原題:초록물고기 / 協力:ツイン / 配給:JAIHO
(C)2005 CINEMA SERVICE CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED
■関連リンク
「イ・チャンドン レトロスペクティヴ 4K」公式サイト
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- Kstyle編集部
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