「ハイキック3~短足の逆襲」パク・ハソン“キム・ビョンウク監督が私を挑発しました”
彼氏の前で満面の笑みを浮かべていた女性は、からかわれたり、弱点がばれそうになるとアゴを下に落とし、白目を向いて上ずった声を出し、“男”に豹変する。この変身があまりにもおかしくて、インターネット上では彼女の表情に似せて作られた絵文字が出回った。そして、落ち着いたイメージが強かったこの女性は「私、怒ると怖いからね」とでも言うように、“壊れる”ことなど一向に意に介さない積極的な態度で視聴者をとりこにした。MBCシットコム(シチュエーションコメディ:一話完結で連続放映されるコメディドラマ)「ハイキック3~短足の逆襲」(以下ハイキック3)のヒロイン、そして最大受益者として堂々と名乗りを上げるまで、パク・ハソンの活躍は言葉の通り、縦横無尽だった。
“Roly-Poly ハソン”や“ブラック・ハソン”を演じることがプレッシャーではなかったかと尋ねると、パク・ハソンは手を横に振り、以下のように答えた。頭にひまわりの花を挿して、狂った牛(韓国のギャグキャラクターのひとつ)に変身したりもしたが、パク・ハソンにとってこれらは「ハイキック3」に集中できた“誇り”でもある。
「本当に色々やりました。いや、私にとって『ハイキック3』の時間は、生きるためにもがいていたという感じです。このままじゃ本当に倒れそうと思ったときもあれば、プレッシャーのため、何も考えずにただぐっすり寝ていたいと思ったこともあったのですが、シットコムが終わったら逆に寝られなくなりました。劇中で恋人だったソ・ジソクさんと空港で別れるシーンを撮るときは、本当に心臓が痛くなって“二度とできない”とまで思いました」
「ハイキック3」でのパク・ハソンの役割は「“間抜けな天使”で、人のことばかり気にかけて疲れてしまう人物」として設定されていたが、キャラクターは発展に発展を遂げ、様々な姿を見せることとなった。これは簡単な人物設定から始まり、発展の可能性を見守ってそれに合わせてキャラクターを作る、キム・ビョンウク監督の審美眼がパク・ハソンを“発見”したからこそ成し得たことだった。
「オーディションのときは、むしろオーバーに表現する演技ができませんでした。それから、ハソンが狂犬病にかかったと勘違いするエピソードがあったのですが、監督に後から「あの時、『この子、コメディも上手くできそう』だと思った」と言われました。あのときから、監督は“壊れるエピソード”を私に振り、私はその“ミッション”をひとつひとつクリアしていったという感じですね。監督が私を挑発したんです」
このようなミッションクリアは役者と監督の間だけでなく視聴者にもそのまま伝わり、その結果、パク・ハソンは「ハイキック3」でもっとも目立つキャラクターとなった。「(ネット上での)書き込みに、“あの子、恨みを晴らすように演じる”と書いてあったのが一番記憶に残っています」と話すパク・ハソンは、余すことなく演技の変身を試みることができた「ハイキック3」でのキャラクターの発展に心底満足していた。
「ハソンは、基本的に優しいが故に損をする人物として設定されていましたが、6か月の間、優しいだけじゃない、と“ブラック・ハソン”に変身し、人気のある国語教師に刺激され、負けず嫌いの“狂った牛”に変身しました。私はそこに、本当に生きている人間の姿を感じて、演じている間幸せでした」
「私は、自分がそんな表情をしていることに気づかなかったのですが、私の前で演技していたジソクさんが急に笑い出して。私は本当に、自分の表情があんなだとは思いませんでした(笑) これはホラーとでも言うべきか、画面を見ながら自分でもびっくりしました」
パク・ハソンは「ハイキック3」に出演して印象深かったシーンとして、急にトイレに行きたくなって、ジソクの手に引かれ建物を壊したエピソードと、恋の始まりとなった病院でのキスシーンを挙げた。
「トイレでのエピソードはあまりにも笑いすぎて、撮影が大変だった記憶があります。ジソクさんが鉢植えを抜いて、引き出しを勝手に開けて、“やって、僕が責任取る”と言うじゃないですか。あれが、徹夜で遅くまで撮影していたときだったのですが、状況が面白くて、出演者とスタッフ全員が楽しく撮影していたことを思い出します。そして、病院でのキスシーンは本当にきれいなシーンでしたね。私は恋愛をする演技を今回の『ハイキック3』で初めて演じたのですが、ジソクさんとのシーンは、私が実際に恋愛をするときの姿と重なる部分もあります。なので、腕を組んだり、愛嬌たっぷりで頭を振るなど、アドリブも多かったですね」
「勉強はしていましたが、これといった目標がありませんでした。なので、成績が良いはずがなく、家と学校を行き来するだけの生活に息が詰まる思いでした。私は授業を通してというよりは、一人で勉強するタイプでした。学生のころから思っていたことなのですが、勉強だけが進むべき道だという考えを持つべきだとは思いません。なので、私は『ハイキック3』でのジウォンの選択は十分理解できますし、尊重します。自分が選んだ、楽しいと思える道を進むのが正しいと、年を取るごとに思うようになりました」
そのような考えの末に選択したのが演技だった。彼女は「演技は私が選択した、楽しくて、好きなこと」だと強調して言いながらも、「想像したことと異なる部分も多いです」と顔をしかめた。「ハイキック3」を撮影しながら、時間に追われ、何日も徹夜をしなければならない殺人的なスケジュールのためだ。パク・ハソンは「三日間徹夜をして点滴を打ったときは、『これならいっそのこと倒れてしまいたい』とまで思いました」と言い、極限まで体力を消耗した時期を思い返した。
「半年で会った友達がたった一人だけだと話せば、理解していただけますか?1、2時間しか寝られない生活が6か月間も続くと、本当に精神が疲弊していきます。演技できるのは本当に幸せなことですが、寝かせて欲しいですね」
そのようにして情熱を燃やして挑んだ作品であったが、「ハイキック3」の度重なる放送休止と、上がりそうで上がらなかった視聴率は、パク・ハソンならびに出演俳優たち、制作スタッフにとっては心残りとなった。
「最初は視聴率をチェックしていましたが、途中から見なくなりました。上がりそうになったら、サッカー中継で放送休止になったので、力が抜けてしまいました。1週間放送されないときがあったのですが、あのときに固定の視聴者が離れていったんだと思います。残念なことですが、それでもマニアの方がいてくれただけで満足しています」
「私は心で感じたままを伝えるのが好きです。ですが、最近はそんな感情を一度、ろ過する必要があると思うようになりました。『ハイキック3』で期待されるようになったからか、私の素直な面を見て驚いたり、誤解する方もいました。嘘とまでは行かなくても、少し“精製”した方がいいと思うこのごろです。『ハイキック3』で様々な表情をお見せしたとしたら、シットコムの中でのハソンが少し忘れられたころに、また違う姿で皆さんに姿をお見せしたいです」
「ハイキック3」でスポットライトが当たるようになったことに関するプレッシャーなのか、パク・ハソンは放送終了後、すべてを取り払うためにイギリスへ発つ。少し休みを取った後、マレーシアに渡ってグラビア撮影をし、また違う姿での視聴者の前に立つ計画を立てている。
「生きるためにもがいていた」
「“壊れすぎ”ですか?自分にとってどんなに求めていた役だったことか。『トンイ』(MBC)のときの、落ち着いた仁顕王后役のイメージで私を覚えてくださっている方が多いですが、実際は『ファンタスティック・カップル』(MBC)のハン・イェスルさんや、『乱暴なロマンス』(KBS)のイ・シヨンさんのような役が好きです。ですが、そんな役は私には入ってこなかったんです」“Roly-Poly ハソン”や“ブラック・ハソン”を演じることがプレッシャーではなかったかと尋ねると、パク・ハソンは手を横に振り、以下のように答えた。頭にひまわりの花を挿して、狂った牛(韓国のギャグキャラクターのひとつ)に変身したりもしたが、パク・ハソンにとってこれらは「ハイキック3」に集中できた“誇り”でもある。
「本当に色々やりました。いや、私にとって『ハイキック3』の時間は、生きるためにもがいていたという感じです。このままじゃ本当に倒れそうと思ったときもあれば、プレッシャーのため、何も考えずにただぐっすり寝ていたいと思ったこともあったのですが、シットコムが終わったら逆に寝られなくなりました。劇中で恋人だったソ・ジソクさんと空港で別れるシーンを撮るときは、本当に心臓が痛くなって“二度とできない”とまで思いました」
「ハイキック3」でのパク・ハソンの役割は「“間抜けな天使”で、人のことばかり気にかけて疲れてしまう人物」として設定されていたが、キャラクターは発展に発展を遂げ、様々な姿を見せることとなった。これは簡単な人物設定から始まり、発展の可能性を見守ってそれに合わせてキャラクターを作る、キム・ビョンウク監督の審美眼がパク・ハソンを“発見”したからこそ成し得たことだった。
「オーディションのときは、むしろオーバーに表現する演技ができませんでした。それから、ハソンが狂犬病にかかったと勘違いするエピソードがあったのですが、監督に後から「あの時、『この子、コメディも上手くできそう』だと思った」と言われました。あのときから、監督は“壊れるエピソード”を私に振り、私はその“ミッション”をひとつひとつクリアしていったという感じですね。監督が私を挑発したんです」
このようなミッションクリアは役者と監督の間だけでなく視聴者にもそのまま伝わり、その結果、パク・ハソンは「ハイキック3」でもっとも目立つキャラクターとなった。「(ネット上での)書き込みに、“あの子、恨みを晴らすように演じる”と書いてあったのが一番記憶に残っています」と話すパク・ハソンは、余すことなく演技の変身を試みることができた「ハイキック3」でのキャラクターの発展に心底満足していた。
「ハソンは、基本的に優しいが故に損をする人物として設定されていましたが、6か月の間、優しいだけじゃない、と“ブラック・ハソン”に変身し、人気のある国語教師に刺激され、負けず嫌いの“狂った牛”に変身しました。私はそこに、本当に生きている人間の姿を感じて、演じている間幸せでした」
「私にもそんな表情があったんです」
話題となった、急に真顔になる表情も、「ハイキック3」で発見したパク・ハソンの新たな一面だ。パク・ハソンは「自分にそんな表情があるとは思わなかった」とし、恥ずかしそうに笑った。こっけいな姿で話題になったが、女優である本人には適度なプレッシャーとして作用する新たな発見だった。「私は、自分がそんな表情をしていることに気づかなかったのですが、私の前で演技していたジソクさんが急に笑い出して。私は本当に、自分の表情があんなだとは思いませんでした(笑) これはホラーとでも言うべきか、画面を見ながら自分でもびっくりしました」
パク・ハソンは「ハイキック3」に出演して印象深かったシーンとして、急にトイレに行きたくなって、ジソクの手に引かれ建物を壊したエピソードと、恋の始まりとなった病院でのキスシーンを挙げた。
「トイレでのエピソードはあまりにも笑いすぎて、撮影が大変だった記憶があります。ジソクさんが鉢植えを抜いて、引き出しを勝手に開けて、“やって、僕が責任取る”と言うじゃないですか。あれが、徹夜で遅くまで撮影していたときだったのですが、状況が面白くて、出演者とスタッフ全員が楽しく撮影していたことを思い出します。そして、病院でのキスシーンは本当にきれいなシーンでしたね。私は恋愛をする演技を今回の『ハイキック3』で初めて演じたのですが、ジソクさんとのシーンは、私が実際に恋愛をするときの姿と重なる部分もあります。なので、腕を組んだり、愛嬌たっぷりで頭を振るなど、アドリブも多かったですね」
「ジウォンの選択を尊重します。学校に通っていたときの私もそうでした」
パク・ハソンは高校のとき、退学を真剣に悩んだほど学校生活に興味が無かった。芸術や体育のほうに興味があったが、これといった進路を決めることができず、何を勉強すればいいかも漠然としていた。それなら高校卒業資格試験を受け、その分空いた時間を有効に使い、やりたいことを本格的に見つけようと思った時期が彼女にはあった。「勉強はしていましたが、これといった目標がありませんでした。なので、成績が良いはずがなく、家と学校を行き来するだけの生活に息が詰まる思いでした。私は授業を通してというよりは、一人で勉強するタイプでした。学生のころから思っていたことなのですが、勉強だけが進むべき道だという考えを持つべきだとは思いません。なので、私は『ハイキック3』でのジウォンの選択は十分理解できますし、尊重します。自分が選んだ、楽しいと思える道を進むのが正しいと、年を取るごとに思うようになりました」
そのような考えの末に選択したのが演技だった。彼女は「演技は私が選択した、楽しくて、好きなこと」だと強調して言いながらも、「想像したことと異なる部分も多いです」と顔をしかめた。「ハイキック3」を撮影しながら、時間に追われ、何日も徹夜をしなければならない殺人的なスケジュールのためだ。パク・ハソンは「三日間徹夜をして点滴を打ったときは、『これならいっそのこと倒れてしまいたい』とまで思いました」と言い、極限まで体力を消耗した時期を思い返した。
「半年で会った友達がたった一人だけだと話せば、理解していただけますか?1、2時間しか寝られない生活が6か月間も続くと、本当に精神が疲弊していきます。演技できるのは本当に幸せなことですが、寝かせて欲しいですね」
そのようにして情熱を燃やして挑んだ作品であったが、「ハイキック3」の度重なる放送休止と、上がりそうで上がらなかった視聴率は、パク・ハソンならびに出演俳優たち、制作スタッフにとっては心残りとなった。
「最初は視聴率をチェックしていましたが、途中から見なくなりました。上がりそうになったら、サッカー中継で放送休止になったので、力が抜けてしまいました。1週間放送されないときがあったのですが、あのときに固定の視聴者が離れていったんだと思います。残念なことですが、それでもマニアの方がいてくれただけで満足しています」
「これからは一度、ろ過したいと思います」
インタビューの前に顔を合わせたパク・ハソンは風邪がひどく、記者は心配せざるを得なかった。「ハイキック3」の放送終了から三日が経っていたが、最大受益者らしく、殺到するインタビューとその他のスケジュールのため、休む間も無かったためだ、風邪気味の声で記者の質問に辛そうに答えたが、時間が経つにつれ、パク・ハソンは多様な身振りで当時の状況をリアルに伝えようと記憶をたどるなど、プロらしい一面を見せた。「私は心で感じたままを伝えるのが好きです。ですが、最近はそんな感情を一度、ろ過する必要があると思うようになりました。『ハイキック3』で期待されるようになったからか、私の素直な面を見て驚いたり、誤解する方もいました。嘘とまでは行かなくても、少し“精製”した方がいいと思うこのごろです。『ハイキック3』で様々な表情をお見せしたとしたら、シットコムの中でのハソンが少し忘れられたころに、また違う姿で皆さんに姿をお見せしたいです」
「ハイキック3」でスポットライトが当たるようになったことに関するプレッシャーなのか、パク・ハソンは放送終了後、すべてを取り払うためにイギリスへ発つ。少し休みを取った後、マレーシアに渡ってグラビア撮影をし、また違う姿での視聴者の前に立つ計画を立てている。
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- チョン・ソナ、写真:キム・ジェチャン、場所提供:淸潭洞(チョンダムドン) カフェ・ゴセン
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