チョ・ジョンソク「自分の人生がなくなるんじゃないか心配にもなるが、演技が楽しい」
休む暇もなく演技をし、新たな人物を作り上げるチョ・ジョンソクに、“演技がそこまで好きか”と聞きたかった。いわゆる“俳優としての人生礼賛”である。質問をすると、チョ・ジョンソクは、素直に他の人の人生を生きるのが楽しくて仕方がないと答える。
しかし、俳優としては必然的についてまわる虚しさもそこにはあった。“道化師としての人生”。人々を楽しませるために、自分を消して空にしなければならない道化師としての人生が、彼は「たまに怖い」と言う。このまま自然体の“チョ・ジョンソク”として生きていく日が減るかもしれないという怖さ。しかし、彼はすぐこう言った。
「結論は“その過程が面白いから”です」
「白紙にその人物を描くこと。それがとても楽しい」
―まず、役者という職業がなぜ好きなのかという質問から始めたいのですが。チョ・ジョンソク:本当にこの職業を楽しめないと、だから、人物を具現することに興味を持たないと、この仕事はできません。できないと思います。俳優が好きな理由ですか……。ありきたりな話なのかもしれませんが、自分ではない劇中の人物として新しい人生を生きることができるためです。人物が持っている感情やストーリーを辿って行くと、普段自分が感じたことのない感情を非常に豊富に感じられる別の世界に出くわします。それが魅力的でした。白紙にその人物を描くこと。そういうのがとても楽しいです。それが“僕は一生役者をやろう”と思った理由です
―ミュージカル俳優としてのキャリアもあるので、この質問も避けられません。舞台に立つときの喜びと、ドラマや映画で演技するときの喜びはどう違いますか?
チョ・ジョンソク:舞台の上で観客の反応を見ると、喜びと同時に、快感を得ます。俳優として何か込み上がってくるものがあります。拍手をもらうとき、カーテンコールを受けるときなど(笑) テレビや映画にはそのようなリアクションから得られる快感は少ないです。しかし、非常に大衆的で範囲が広い。そういう点が違います。
―急に気になったのですが、デビューする前にご自身がこれほどまでに俳優として人気を得ると予想しましたか?(笑)
チョ・ジョンソク:(笑) 以前、誰かに「(演技に)自信があるか」と聞かれて、「自信がなければ演技はできない」と答えました。「僕は大成功する。素晴らしい俳優になる」とまでではありませんが、自信はありました。それが僕をここまで来るように後押ししてくれたと思います。登山するときに、誰か僕に杖をくれたような気分です。
僕には「頑張ればうまく表現できる」という確信がありました。自分に50%の能力があるとすれば、残りの50%は自信で、自らをコントロールしながら埋めなければなりません。実は、当時僕に与えれた状況はこれ(演技)しかありませんでした。3浪して演劇科に入りましたから。大学(ソウル芸術大学)に入学する際に、正門で決心したことがあります。「この門をくぐれば、もう僕は死んだものだ。気を引き締めて、いい俳優になるためには何でもやる」という誓いでした。
「別の人物になって演技し、そこから幸福感を感じればそれでいい」
―これからの“俳優チョ・ジョンソク”に対し期待感を持っている方々がたくさんいます。単刀直入に言いますと、俳優をこれからも続けると思いますか?チョ・ジョンソク:演技は一生やっても楽しいと思います。もちろん、興味深い役柄にこれからも出会う必要があるでしょう。本当にやりたくない作品をやればどんなに嫌でしょう。実は……僕は僕自身がちょっと怖いです。どうせ人生は1回しか生きられないじゃないですか。僕の人生を僕らしく、“チョ・ジョンソクらしく”生きなければいけないんですけど……。そういう時間より自分を捨てて他人として生きる時間のほうが長くなるような気がします。
―それについては心配せざるを得ないでしょうね。俳優になって自身の人生がなくなるようだ。だから“自分に残るものがない”という点も心配だと思います。
チョ・ジョンソク:僕に残る何か、についてそういうふうにも思いました。結論は“その過程が楽しいから”です。別の人物になって演技をする過程が僕に喜びや幸福感を与えてくれれば、それでいいんじゃないかと思います。結果がどうであれ、その過程が面白くて楽しければそれでいんじゃないでしょうか。
それでも僕なりに考えたものがあります。“安息年”という概念ですが、僕がいつか物理的に豊かになれば、休むときは休みながら仕事がしたいです。そして歳を取って結婚したら、作品数を減らすことになると思います。急に減らすというわけではなくて、徐々に(笑)
舞台で演技をする役者たちは、公演が終われば仲間たちとよく飲みに行きます。家に帰ることもありますが、一緒に集まってまた作品について話します。それが楽しいですから。その時間にも作品について話し合って、その日の演技について話し合います。互いに「今日あなたの演技はこうだった」とかアドバイスをしてあげたりもします。それが俳優たちの楽しさではないかと思います。
チョ・ジョンソクが選んだ「キング~Two Hearts」ウン・シギョンの名セリフ
「まず真っ直ぐな人です。父へのコンプレックスのため、そのような性格になったのもあるけど、自分が解いていくべき課題を完璧までではないけど、一つ一つ解決していくシギョンがとてもカッコよくて、素晴らしいと思いました。そしてそれが非常に魅力的でした」
チョ・ジョンソクが言うウン・シギョンの魅力は“真っ直ぐさ”だった。彼の言うとおり、王室の近衛隊長ウン・シギョンは、剛直な人物で、また素直に自身の気持ちを表現する人物だった。ドラマは終わったが、ウン・シギョンという役柄はまだ多くの人たちの心に残っているはず。ウン・シギョンを演じた、いやウン・シギョンとして生きていたチョ・ジョンソクにはどのセリフが一番心に残っているだろうか。
「イ・ジェハ(イ・スンギ)にこう言います。『殿下はすでに僕にとっては世界でもっとも力のある王です』(『キング~Two Hearts』の第10話に出てくるセリフで、失意に暮れているイ・ジェハに君主としての信頼を表すシーンである)。それから、イ・ジェシン(イ・ユンジ)には『お姫様のほうがもっとキラキラしています』(第13話のセリフで、人々の前に出ることを恐れるジェシンを励ますシーン)。
普通なら、そんなシーンで『頑張って』とか『ファイト』と言ったと思います。しかし、シギョンですから。人がやると恥ずかしいセリフも、そのように感じさせないのがシギョンです。なんというか、シギョンの真っ直ぐな面の1つですけど……。相手のために相手を元気づける言葉を言うのです。
そしてたくさんの方々が、キム・ボング(ユン・ジェムン)に『僕は腐った菓子は食べません』(第14話のシーン。自分を味方につけようとするキム・ボングに言ったセリフ)を覚えてくださっているんですが、僕はそのシーンですっきりしました。いつももどかしくてどこか物足りなかった姿が残念でしたが、適切なタイミングで一発食らわせましたから」
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- イ・ジョンミン、イ・ミナ、写真 : イ・ジョンミン
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