「テロ,ライブ」ハ・ジョンウ「“最もホットな”という修飾語、僕にとっては身に余る言葉」
写真=ファンタジオ
俳優ハ・ジョンウ(35)はブレーキのない自動車だ。彼の人生において、後進はない。もちろん左回りも、右回りも。Uターンは決してありえない。衰えのないエンジンを搭載したスリムなスポーツカーのようだ。“直進スンジェ”(俳優イ・スンジェの愛称)顔負けの“直進ジョンウ”だ。進撃のハ・ジョンウが今夏、再び観客の元を訪れた。1月に韓国で公開された「ベルリンファイル」(監督:リュ・スンワン)で北朝鮮のスパイに変身し、715万人の観客を虜にした彼が休むことなくその6ヶ月後、「テロ,ライブ」(監督:キム・ビョンウ、制作:CINE2000)でスクリーン復帰を果たした。今回は“国民のアンカー”ユン・ヨンファに扮し、公開12日で380万人の観客を集めた。公開6日(8月5日)ですでに損益分岐点(200万人)を超えた「テロ,ライブ」側は今、お祭りのような雰囲気だ。
長いか短いかは比べてみないと分からないし、焼肉は噛んでみないと味が分からないと言うが、正直「スノーピアサー」(監督:ポン・ジュノ)と同日に公開された「テロ,ライブ」がここまで健闘するとは誰も予想していなかった。ハ・ジョンウ本人さえもここまで成功することができるとは想像もしていなかった。
多くの映画関係者が「なぜよりによって『スノーピアサー』と…」と心配したが、ハ・ジョンウはその度に意味深な笑顔を見せるだけだった。「大丈夫だ」とむしろ映画関係者のほうを慰めた。信じているものがあったのだ。それは「テロ,ライブ」への自信だった。
「幸い、観客のみなさんが僕のことを忘れず見に来てくださって感謝の気持ちで一杯です。『スノーピアサー』もヒットし、『テロ,ライブ』もヒットして本当に嬉しいです。韓国の映画がここまで多くの声援を受けるのは韓国の俳優としてとても誇らしいことです。観客のみなさん、映画会社のスタッフ、メディア関係者のみなさんのおかげです。僕は大したことはやっていませんよ。ハハハ」
愉快な配慮でも有名なハ・ジョンウは、今回もすべての功績を自身を除いた他の人々に回した。もはや驚くことでもない。度を過ぎた謙遜に見えるかもしれないが、彼は依然自身のことを“物足りないやつ”と表現する。今や“最もホットな”という修飾語に慣れても良さそうだが、彼は依然「ハハハ」と照れたような笑顔を見せた。
「“最もホットな”という言葉って僕にはもう一つの職業のように感じられます。何か引き続き成功していかなければならないような、失敗してはならないような位置だとも言えますね。僕にはあまりにも身に余る、似合わない修飾語なのに、そう呼んでくださってどうすればいいのか分かりません(笑)“最もホットな”という職位から首切りされないように努力し続けないといけないのですが、簡単ではありませんね。ハハハ」
「テロ,ライブ」を通じてハ・ジョンウは本当の“最もホットな”とは何なのかを証明してくれた。なぜなら、97分を上手く率いていくことに成功したためだ。初めての単独主演だったが、テンポを乱すことなく最後まで観客が集中できるようにしてくれた。
正確に計算してみると、これまでハ・ジョンウが積み上げてきた興行の成績は他の俳優と一緒に成し遂げた成果とも言える。それもそのはず、興行の代表作である「ベルリンファイル」ではハン・ソッキュ、リュ・スンボム、チョン・ジヒョンらと共演し、「悪いやつら」(監督:ユン・ジョンビン)では忠武路(チュンムロ:韓国映画界の代名詞)のゴッドファザーチェ・ミンシクが支えていたのではないか。「テロ,ライブ」こそがハ・ジョンウの興行パワーを証明できる秀作と言える理由だ。
「最初から最後まで一人でやろうとしたら、大変なところも多かったです。しかし、劇を率いるというプレッシャーを抱えたままじゃいけないじゃないですか。子供じゃあるまいし、30代半ばとなった男が…(笑) 心配や不安を消すために前もって多くの準備をしました。一人でやるというハンディを逆利用し、もっと面白く演技で勝負したいと思いました。それに仕上げ作業や適切な音楽が加えられ、成功することができたと思います」
演技で勝負する方法をずっと前から見につけていた優れた俳優であるハ・ジョンウは、無理なく演技に臨むことができた。特にユン・ヨンファという人物を説明するにおいて“メンタル崩壊”な表情を演じることに焦点を合わせたという。人が極限の状況に陥った時に崩れていく過程を少しずつ違う角度から表現したというのが彼の説明だ。
「アンカーであり、スタジオから出れない状況だったので、ただ表情だけですべての感情を表現しなければなりませんでした。クローズアップのショットが多く、上半身の演技が多かったです。緩急の調節が必要でした。情的な行動から動的な心理までを導き出さなければなりませんでした。僕がやや理解を間違えると、観客がものすごく退屈になりかねない危険な要素が多かったです。観客を騙す手口の一つでありますが、“メンタル崩壊”な表情を多様にすることで観客の心理を動揺させようとしました(笑) 僕の騙しに、みんな引っかかってくださいました。ハハハ」
“メンタル崩壊”な表情も抜群だったが、何よりもハ・ジョンウが標準語の敬語を使うアンカー特有の口調を演じる場面も面白みを倍増させた。ハ・ジョンウ自身も語尾が「~です、~ます、~ですか」で終わる堅い言葉遣いの違和感を克服する必要があった。何よりもイ・ビョンホンが携帯電話のCMで使い、流行語となった「断言するに」がハ・ジョンウの口からも出てくると、観客は不思議で面白い気分で「テロ,ライブ」を楽しむようになった。
「本来、『断言するに』はイ・ビョンホン先輩よりも僕のほうが先なんですけど…『テロ,ライブ』がもう少し早く公開されていたなら、多分僕の流行語になったのではないでしょうか?ハハハ。やたら観客が僕がその台詞を発する度に笑っていると思いました。さすがビョンホン先輩の『断言するに』は波及力がすごいんですね。アンカーたちの口調を分析したら、『断言するに』『予想するに』を度々使っていました。そこで、僕も劇中で多く使うようになりました。ビョンホン先輩もアンカー役を狙っているのでしょうか?なら、僕は『予想するに』を押しましょうか。ハハハ」
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- チョ・ジヨン
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