何が彼女をそうさせた?「野王」における悪女ヒロインの魅力 ― 「野王」鑑賞コラム
不幸の連鎖、過酷な生い立ち
ドラマ「野王」の一番のみどころは、ヒロイン、チュ・ダヘのとんでもない悪女ぶりだろう。自分を愛してくれる男たちを踏み台に、数々の罪を重ねながら、おのれの野心を満たし、ついにはファーストレディにまで昇りつめていく…その強烈な姿は視聴者の度肝を抜いた。だがダヘは生まれたときから悪女だったのか?極貧のなか6歳で父が自殺。児童施設で育ち、13歳のときに再婚した母に引き取られるも、義父の性的虐待を受けて逃走。20歳で母が病死したときは3日間飲まず食わずで遺体に寄り添い、自分も命を落としそうになったダヘ。まさに負の連鎖、不幸のてんこ盛り。そんなときに養護施設で一緒だったハリュと再会。その愛に支えられ「貧しい人間が生きる道は勉強しかない。大学に行って成功する!」と一念発起、大学合格に大喜びしたのも束の間、あの義父が目の前に現れる。「ダヘや~、ここにいたのか~お義父さんと一緒に暮らそう」と迫る義父を思わずハサミで刺し殺してしまう!だが、ここで終わるダヘではない。このどん底からどう這い上がり、大統領夫人にまでのし上がるのか? 物語は予想のつかない展開を見せていく。
見下される人生から抜け出したい!
富、成功、名誉、地位、権力…人間の欲は限りない。だがダヘの望みはただひとつ「他人に見下され、侮辱される人生から抜け出すこと」だった。幼い頃から頭が良く、誰よりもプライドが高かったダヘ。貧しい境遇でもつねに凛とした、負けず嫌いの少女だった。母親の死で天涯孤独になったとき、友人の家に庭教師に行ったダヘは、その母親が「親が死んだ子なんか連れてこないで。不幸も伝染するのよ」と言うのを聞き、そくざにその家をあとにする。「身に起こる不幸は自分の責任。神様が味方してくれないのなら自力で這い上がるしかない」。他人に蔑まれ、悔しく、惨めな思いをするたびにダヘの決意は固くなっていく。「見下されたくない」から、「私を見下すものは許さない」そして「いつか見下す立場になってやる」へ。そのためなら手段を選ばない。たとえ犯罪を犯しても、愛する人を裏切っても、天使の顔をした悪女と呼ばれようとも。“国民的悪女”を演じきったスエのチャレンジ
ダヘを演じたのは「ラブレター」「千日の約束」などで知られるスエ。清純派女優の代名詞だったスエにとって、この役は大きなチャレンジだった。スエのトレードマークはどこか素朴なイメージを与える太眉と憂いを帯びた黒い瞳。セレブの仲間入りをし、優雅な高級ファッションを身に着けるようになっても、ダヘは決して眉を細くいじったりはしない。それがなんともいえない魅力になっている。儚さと芯の強さ、イノセントと図太さを同時に感じさせるスエだからこそ、この難役を最後まで演じきれた、ともいえるだろう。「ダヘは僕の天使だ」― 涙を誘うハリュの献身愛
幼い頃に親に捨てられたが、心優しく成長した青年ハリュにとって、ダヘは自分だけの天使だった。2人が出会ったのは養護施設。7年ぶりに再会したとき、ダヘは母を亡くして生きる力を失っていた。すてばちになったダヘを「これからは俺が守る、幸せにしてやる」と抱きしめたのがハリュ。その後、ハリュがダヘにしてあげたことは…「馬の装蹄師になるために貯めた金を母親の葬式費用に差し出す」「ダヘを大学に行かせるために自分がホストになって稼ぐ」「ダヘの義父殺しの罪をかぶろうとする」「その死体を山に埋める」「2人の間に生まれた娘ウンビョルの面倒を見る」「ダヘをアメリカ留学に行かせる」「その学費のために金持ちマダムに体を売る!」「死体が見つかり、死体遺棄の罪で刑務所に行く」「アメリカから戻ったダヘにウンビョルを渡す」などなど。文字通り身を削るようなハリュの献身愛。だが、御曹司ドフンと出会って上流社会に憧れるようになったダヘは、容赦なくハリュを裏切っていく。「お前変わったな」と言われれば「そう?まだ本心の100分の一も見せてないわ」と開き直るダヘ。「ウンビョルにだけはこんな人生を送らせない。不幸を教えたくないの」「お金は返すわ。あなたはあの貧民街から抜け出せない」「あなたを見るのがイヤ。辛かった過去を思い出させるから」。挙句のはてには「私は自分の道を行く。だから邪魔しないで!」。さんざん世話になったハリュにむかって、よくもまあそんなことが言えますね!と突っ込みたくなるような罵詈雑言の数々。だが、これらはまだ序の口。その後ハリュは、あくなき野望に突き進むダヘによって、愛する娘や、やっと巡り会えた家族とまで引き裂かれてしまうのだ…。ついにダヘに復讐を宣言するハリュ。「お前が俺のブレーキを壊した。もう迷わない!」
「ガラスの靴をもった王子様」― 御曹司ドフンの純愛
韓国を代表する大企業ペクハクグループの御曹司であるドフンは独身のイケメン。女子社員から「歩く宝くじ」と呼ばれる彼がダヘに出会ったのは満員電車の中。人に押されて脱げたハイヒールを拾ってあげたのがきっかけだった。ダヘはドフンの父と姉が経営する会社に面接を受けに行く途中。ここまではすべては偶然。ドフンはダヘに一目惚れした。やがて会社に通うようになったダヘに、ドフンは聞く。「恋人はいますか?」「いません」と答えるダヘ。すでにダヘには内縁の夫ハリュと幼い娘がいたのに…。この瞬間、ドフンはダヘにとって、シンデレラにガラスの靴を差し出す王子様になった。「この人の手にすがれば、私も上流階級の一員になれるかもしれない!」
母の愛を知らず、独裁的な父のもと、姉ドギョンに溺愛されて育ったまっすぐなドフン。アイスホッケーに青春をかけてきた世間知らずなおぼっちゃまを、純粋なふりをしたダヘが落とすのは簡単だった。ハリュが必死で稼いだ金で、ドフンを追ってアメリカに留学したダヘは「結婚しよう」といわれて「遊びなら死ぬわ」と答える。こうして次の踏み台は決まった!ドフンと一緒に韓国に帰る飛行機の中でダヘは誓う。「飛行機を降りたら今までの世界を抜け出して生まれ変わるの」。言葉どおり、ハリュと幼い娘を捨てて財閥の嫁となるダヘ。ドギョンや叔母、父親たちと激しい火花を散らしながら、グループ内でも確実にのしあがっていく。ドギョンが子どものように可愛がっている馬を死にいたらしめるのも朝飯前…。だが、そんな悪行がついにドフンにバレる日が来た。「嘘はつくな。真実だけを話してくれ」と哀願するドフンに、ダヘがとった恐るべき行動、その結末とは?
いつの世にも存在する魅力的な悪女。「違う自分になりたくて、悲しいほどに精一杯生きた、その結果、悪い女になっていた…」。そんな悪女に男は弱い。優しくて純粋な男性ほどその罠に落ちやすいのかも。あなたのまわりには、どんな悪女がいますか?
ライター:望月美寿
「野王」DVDリリース情報
【DVD BOX】
・「野王~愛と欲望の果て~ DVD BOX I」21,000円(本体価格)+税
・「野王~愛と欲望の果て~ DVD BOX II」 24,000円(本体価格)+税
【コンプリートDVD BOX】
・「野王~愛と欲望の果て~ コンプリートDVD BOX(初回限定ハリュバージョン)」
45,000円(本体価格)+税
・「野王~愛と欲望の果て~ コンプリートDVD BOX(初回限定ドフンバージョン)」
45,000円(本体価格)+税
【レンタルDVD】
・Vol.1~6 2014/5/2(金) レンタル開始
・Vol.7~12 2014/6/4(水) レンタル開始
※「野王~愛と欲望の果て~ コンプリートDVD BOX(初回限定ハリュバージョン)」はクォン・サンウ ジャパン オフィシャル ファンクラブ専売商品となります。
※「野王~愛と欲望の果て~ コンプリートDVD BOX(初回限定ドフンバージョン)」はBigeast専売商品となります。
全仕様共通 発売日:5月28日(水)
発売元・販売元:エイベックス・ピクチャーズ
(C)SBS
・「野王」公式サイト:http://yaoh.jp/
・「野王」公式Twitter:@Yaoh_jp
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- Kstyle編集部
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