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「コインロッカーの女」キム・ヘス“役作りのため、本当はスポーツ刈りにしたかったが…”

OSEN
写真=CGVアートハウス
女優キム・ヘスにはいつも名前の前につく修飾語がある。それは“カリスマ性”だ。元気な美しさから吹き出してくる堂々さ、歯切れのいい口調からにじみ出る知性など、彼女には相手を魅了する力がある。スターキム・ヘスを超える女優キム・ヘスはさらに魅力的だ。ギャンブル場の花(映画「タチャ イカサマ師」)あるいはセクシーな金庫破りのエキスパート(映画「10人の泥棒たち」)に扮して観客の心を盗んだり、優れた能力を持つ非正社員(ドラマ「オフィスの女王」)になって韓国中の非正社員を慰めたりもした。大胆な挑戦。これは彼女が映画界で女帝と呼ばれる理由だった。

29日に韓国で公開された映画「コインロッカーの女」(監督:ハン・ジュニ、制作:ポルックスピクチャーズ)では、キム・ヘスの名声をそのまま確認することができる。「コインロッカーの女」は地下鉄の10番コインロッカーに捨てられた少女と、彼女を養女として育てたサラ金業者の母の話だ。キム・ヘスは金になることなら何でもする非情な母役を演じた。これまで男性には残酷なボスキャラが多かったが、「コインロッカーの女」の母のように映画全体を圧倒する女性のボスキャラは稀だった。そのため、キム・ヘスは持ち前の華やかさを捨て、楽しい冒険を敢行した。彼女から特別だった作品「コインロッカーの女」について聞いてみた。

写真=CGVアートハウス
―(インタビューで言及した)映画「セッション」(原題:Whiplash)は最善を超える渾身についての話だと言った。「コインロッカーの女」は渾身の力を込めた映画なのか?

キム・ヘス:最善を尽くす人々を目撃した。毎瞬間ごとに最善を尽くしているが、自分に「渾身の力を込めたか」という質問を投げることはできないと思う。人って毎瞬間ごとにベストを尽くすことも難しい。それができる作品に会ってそうなれる瞬間があるだろうかと思う。最近では1年に1本ほどのペースでやっている。こだわりがあるわけではないが、作品を選ぶのが難しいのもある。もちろん以前は10作が入ってきても心を動かすものは多くなかった。この頃入ってくる作品数は減ったが、ほとんどが本気で悩むほどの作品だ。その部分については感謝しているし、嬉しい。作品を選択することは演技以上だ。近い将来、誰に会ってどのように過ごすかという問題でもある。

―「コインロッカーの女」に出演して一番良かったことは何か?

キム・ヘス:キャラクターを準備していたときが一番よかった。扮装チーム長とすっぴんで演技すればどうだろうかについて話し合った。スッピンというのが照明を当てれば逆に透明に見えるときがある。「コインロッカーの女」の中の母はそういう人ではない。全ての権力を握っているが、事務所でカッコよく働く人ではない。偽装した写真館で中華料理の出前をとって食べながら働く人だ。スーツを着てハイヒールを履いて、栄養クリームを塗ることはなかったはずだ。女性の身で非情な世界を経験したなら、それが肉眼で感じられなければならないと思った。それで肌はいつも疲弊して、いつも疲れ切っている状態でなければならないと思った。一般的な生活でないため、人生の凄惨さがにじみ出ることを希望した。荒くて圧縮された人生を生きてきたので見た目で年齢や性別が推察できないことを望んだ。いつも会う中年の女性ではなく、本当に道で偶然に会ったら、目が合うだけで圧倒される人になることを望んだ。本当は、スポーツ刈りにしたかった。この状態で白髪がとても多い。しかし、そのときはシャンプーのCMを撮っていた。作品に入る前、広告を契約したし、印刷広告を撮らなければならなかったのでそういうふうにはできなかった。このような部分を扮装チーム長と話しながら多くの部分で意見が一致したし、私の考えは間違ってないと思った。ハン・ジュニ監督と詳細な部分について話しながら「これが正しかった」と思った。私が間違ったり、別の方向に変えなくてもいいという安堵と興奮を感じた。もっと具体的に嬉しかったのは、扮装チーム長が半分白髪の短い男性かつらを持って来たときだ。内心とても良かった。突然撮影したい気持ちになってワクワクした。

写真=CGVアートハウス
―体型にも変化を与えた。実際に体重を増やしたわけではないが、劇中ではぼっちゃりとした体型だった。

キム・ヘス:目で見たとき、不都合に見えるのを望んだ。体重を大幅に増やしたり、完全に痩せることを望んだ。より柔軟に演技するためだった。太った身体なら高血圧と高脂血症、糖尿病のある女性になることを望んだ。いい人そうに見える大柄ではなく、健康状態の悪い身体になりたかった。そんなに脂っこい食べ物にお酒をよく飲むから痛風もありそうだった。扮装チーム長もそのような話をしてくれて嬉しかった。実は食べることに比べ、それほど体重は増えない。仕事をするときは少し食事を調整して2~3kgほど減量するが、そうだとしてその状態でもっと落ちることもない。それほどじゃ画面で劇的な効果を出すことはできないだろうと思った。私にとっては死ぬほど減量した身体が「タチャ イカサマ師」のチョンマダムだった。チョンマダムもちょうど良いくらいに痩せていたとは思わない。体重を減らすことができないと言ったら、扮装チーム長が扮装について話した。自然な扮装が可能だと言った。下半身をもう少し太く見せるために重ね着した。ボードに乗るときは保護服を着てお尻が大きく見えるようにした。「キム・ヘスが太ってるふりをしてる」のではなく、骨盤が広がって完全に太った身体になりたかった。できれば弾力のない腕を見せたかったが、母が結構隠していた(笑)

―劇中の母は容姿だけでなく、キャラクターそのものが独特だ。イルヨン(キム・ゴウン)について二面性を持っている。

キム・ヘス:彼らだけのリーグで彼らだけの生き方だ。イルヨンを母のところに連れてきたタク(チョ・ボクレ)がイルヨンについて「人間でなく獣一匹」だと言う。母は「タク、あなたの人生狂っちゃう」と言ったが、その瞬間気付く。自身の後任だと思ったのだ。母の過去もそうだったので、そういう人は自分と同じ人を見分けるわけだ。もうその瞬間、母はイルヨンの存在を見て分かったと解釈した。「働かなきゃ」と言ったときソン(イ・スギョン)は置いてイルヨンだけを起こす。母はイルヨンを見る瞬間、選択をして待っていたわけだ。母は自身の組織を維持するため強制し、統制し、懲らしめる。イルヨンに特別な愛情を表現するのがそういう方法だ。感情の基調は同じだと思う。そもそも常識的なところから出発するわけではない。この作品には心を重く押しつぶす何かがある。映画では「あなたがどれほど使えるか証明してみろ」と言う。初めて台本を見たとき「世の中に使えない人間なんていない。使い道の有無を誰が、どんな根拠でなぜ判断して生きていかなければならないだろう」と思った。それぞれの方法で熱心に生きていくだけだ。「コインロッカーの女」に登場する家族は捨てられた人間があるきっかけによって家族をなした形だが、ここで生き残るためには必要な人間であることを証明しろと言われる。これは単純に残酷なものではなく、悲しくて胸の痛いことだと思った。

写真=CGVアートハウス
―後半部で母とイルヨンが対立する。母はイルヨンの感情を揺さぶったソッキョン(パク・ボゴム)を言及し「何が良かったの」と言う。たくさんの意味を込めた台詞だと思う。

キム・ヘス:二人の関係がそこまでになった理由が気になったのかも知れない。もしかしたら母と娘が日常的に話せる会話なのに、そういうおかしい状況と関係の中でさりげなく出てくるのだ。観客になぜこのような事態が起きたか、イルヨンの気持ちがどうしてそうだったか語ってあげるきっかけでもある。ひたすら生存のために生きてきたイルヨンはソッキョンを通じて一度も経験したことのない親切心を感じた。母が尋ねるが、まともに説明できない。そういう言葉さえ知らないのだ。口の外に出したことのない言葉だった。チャイナタウンの人々は自分自身に親切でなかったし、非常に厳しくて恐ろしい仕事ばかりさせた。脅すために訪ねた男が初めて、慣れないが温かい感情を見せてくれた。生まれて初めてそういう感情を感じる自身にイルヨンは驚いたのだ。それがとても悲しかった。それが彼女たちの人生を見せる台詞だった。答えを決めておいたわけではなかったが、たくさん考えさせられる台詞だった。撮影するとき、母がタバコを吸いながら笑顔を見せるシーンがあった。多分、後半の感情に集中するために編集したのだろうが、その顔が出たらどうだっただろうかと思った。

―キム・ゴウンと息を合わせた。キム・ゴウンと初めて会ったときはどうだったか?

キム・ヘス:第一印象は「本当に綺麗だ」ということだった。私はそうではないので、整った顔がとても可愛い。女優としてよい資質をたくさん持っているし、作品にアプローチする態度がよい。ハン・ジュニ監督もそうだし、見守ることのできる大事な俳優と監督を得たと思う。二人と同じ年だった頃、私はそれほど映画をまともに理解し、向き合うことができなかった。女優として自意識がそれほど成立していなかった。特別な仕事をする特別な才能を持った人々の間にいることがただ良かった。これからも色々な波があるだろうが、“特別な人”と感じるには確かに理由があると思う。

―韓国映画界が男性中心に流れているという指摘が多かった。「コインロッカーの女」は久しぶりに出てくる女性キャラクター中心の映画だ。使命感のようなものがあったか?

キム・ヘス:そうではなかった。使命感を持つことで解決するものではない。女性の話をまともに扱える人が出てこなければならないし、そのような話を受け入れられる社会の雰囲気が醸成されなければならない。女優として現実をよく知っているが、誰かの責任や犠牲だけで可能なわけではない。本質に迫るべきだし、そうするためにはさらに時間が必要だ。厳密に話せば韓国だけでなく、全世界的にそうだ。映画は商業性を持つ芸術だが、男性俳優が演じたときにカタルシス(解放感)がより大きくなること、それを人々が求めていることを否定することはできない。これを改善するため、具体的にできることがあれば喜んですると思う。
元記事配信日時 : 
記者 : 
キム・ユンジ
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